ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
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661: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2023/08/26(土) 01:55:13.98 ID:857u2nZT0
千代「さあ、それではどうぞ……」そういってちせを案内しようとした時、奥から男性が出てきて声をかけた……

モーニング姿の男「千代や、お帰り……おや、そちらのお客様は」

千代「ただいま戻りました。こちらがわたくしの言っていた「お友達」ですわ」

ちせ「……千代どの、こちらのお方は?」

…親子のようには見えないが、かといってお嬢様と使用人でもなさそうな様子の二人の間柄が気になり小声で耳打ちした……千代は分かっているといった様子で、ちせとモーニング姿の男を引き合わせた…

千代「紹介致しますわ。こちらはわたくしの父の友人であり、この商会の留守を預かっている佐倉丹左衛門(さくら・たんざえもん)さま……丹左衛門さま、こちらがお友達になって下さったちせさん」

ちせ「千代どのに紹介預かりましたちせと申します。山家(やまが)育ちゆえなにかと不調法者にございますが、どうぞよろしくお願い致します」

丹左衛門「これはこれは、こちらこそ何とぞご懇意に……親しくお付き合い出来れば嬉しく思いますよ。千代はこちらに近い年の友人もなく、話し相手になるものもなかなかおりませぬので」


…丹左衛門と呼ばれた男は折り目正しくきちんとした身なりで、背筋のぴしりと伸びた様子は貿易商の留守を預かる番頭として一銭のごまかしもしないといった雰囲気を漂わせている……しかし剣士としてのちせの嗅覚は、丹左衛門にどちらかと言えばそろばんをいじる貿易商の番頭と言うよりは一国の家老……あるいは剣術の師匠といった武人らしいものをそこはかとなく感じ取った…


千代「丹左衛門さま、それはおっしゃらない約束です///」

ちせ「いや、その気持ちは私もよう分かる……」

丹左衛門「というと、ちせさんもご家族の都合でこちらへ?」

ちせ「いや、私は官費留学でこちらに参ったのじゃ」

丹左衛門「そうでしたか。ということはさぞや学業に秀でておられるのでしょうな」

ちせ「いや、そこまででは……特に横文字は難しくてかなわぬ///」

丹左衛門「私もこちらへ来たばかりの頃はそうでした……申し訳ありませんが片付けなければならない書類があるので、失礼致します。ちせさんに失礼のないようにな」

千代「分かっております……さ、どうかくつろいでくださいましね♪」

ちせ「う、うむ……///」

…千代はフランス暮らしが長いのか、親しげに手を握ったり頬を寄せたりというような、ちせにとってはまだ少し恥ずかしいようなスキンシップや親しげな態度を取ることが多く、しかもそれをちせが恥ずかしがっているのを分かった上でからかい半分にしているフシがある…

千代「まぁまぁ、そう固くならないで……自分の家のようにくつろいで下さいな」

ちせ「そ、そうじゃな……」

…千代の部屋…

千代「さ、どうぞ遠慮無く脚をのばして下さいな。私もこちらに来てからというもの、靴や服が窮屈なのには常々閉口しておりましたから」

…千代の部屋は小ぶりながらも二間に分かれていて、案内された奥の部屋は洋室だったものを和室に改装したらしく、ちょっとした茶室のようになっていた……靴を脱いで畳に上がると、爽やかな藺草(いぐさ)の香りが立ちのぼる…

ちせ「いや、お言葉はありがたいが……じゃが「親しき仲にも礼儀あり」とも申す」くつろぐようにと勧められたが、きちんと正座して座るちせ……

千代「まぁまぁ、ちせさんったら真面目なこと」口元に手を当てて「ふふふ♪」と小さく笑ってみせる千代は年相応の少女らしさを感じさせる可愛さがある……

ちせ「いや、別に真面目というほどでは……///」

千代「ふふ……さ、お茶の準備が整いましたから頂きましょう?」砂時計がサラサラと砂を落としたのを見て、千代が手ずから紅茶を注いだ……

ちせ「かたじけない」

千代「いいえ。お砂糖とミルクは?」

ちせ「うむ、ではそれぞれ少しずつ……」

千代「はい……それでは、好きなお菓子をお取りになって?」

ちせ「おう、そうじゃな……しかしどれも美味そうで、恥ずかしながら目移りしてしまうのう」

千代「なら遠慮なさらずにお一つずつどうぞ。これはクリームの入った「エクレール(エクレア)」というもので、こちらの輪っかの形をしたものは「パリ・ブレスト」……何年か前にパリと港町のブレストの間で行われた自転車競技を記念して作られたお菓子ですわ」

ちせ「なるほど、では……んむ」パリ・ブレストはさくりとしたシュー生地にふわりと甘いアーモンド風味のクリームを挟み、上には粉砂糖がかけてある……

千代「いかが?」

ちせ「うむ、これは実に美味じゃ……!」はしたなく見えないよう遠慮しようと思うものの、ついつい甘くて美味しい菓子に手が伸びる……

千代「こうしたお菓子は「プティ・フール(小さなお菓子)」と言って、色々な種類が楽しめるようになっておりますの」

ちせ「フール……こんなに上等な菓子が「フール(マヌケ)」なのか?」

千代「まぁ、ふふ♪ フールは英語の「マヌケ」でなくって、フランス語の「four」……プティ・フールはお料理のために熾した火の残り火で作ることから「小さな窯」という意味なのだそうですわ」

ちせ「なるほど」クリームやフォンダンのかかった色鮮やかな小さな菓子をつまみながら他愛ないおしゃべりをしていると、つい昨日知り合ったばかりとは思えない気分になってくる……


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