ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
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662: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2023/09/07(木) 01:11:12.99 ID:nq9fJ+hJ0
…一刻ばかりして…

ちせ「これも舌先でとろけるようじゃ…!」

千代「お気に召したようで何よりにございますわ……紅茶のお代わりはいかが?」

ちせ「かたじけない」

千代「ではお注ぎ致し……あっ!」

ちせ「っ!」

…紅茶を注ごうとし、ドレスの袖口で砂糖つぼを払いのけてしまった千代……横ざまに倒れて低いテーブルから落ちる砂糖つぼを、ちせはとっさに手を伸ばしてつかみ取った…

千代「……まぁ、なんという飛燕の早業でしょう!」

ちせ「い、いや……たまたまじゃ///」鍛え上げられた反射神経が悪い形で出てしまった事に「しまった」と内心ほぞをかむ……アンジェやドロシーのように必要ならば「舌先三寸」になれる演技力をうらやみつつ、下手な言い訳を口にする……

千代「たまたまだとしても素晴らしいですわ……それよりお召し物が」

ちせ「いやなに、構わぬ」スカートについた白砂糖をぱたぱたとはたく……

千代「ああ、それならわたくしが……」千代が隣にやってきて、しなやかそうな白い手でスカートにこぼれた砂糖を優しくはたく……スカート越しとはいえ太ももに手を当てられているので少し恥ずかしい……

ちせ「千代どの、もうそのへんで構わぬ……それにずいぶんと長居をしてしまったゆえ、そろそろおいとまさせていただこうと思うのじゃが///」

千代「あら、本当……楽しいひとときというのは短いものですわね。 またいつでもお出で下さいまし…ね?」

ちせ「う、うむ……では御免」

…同じ頃・一軒のカフェ…

ドロシー「なぁ……あいつ、どう思う?」

アンジェ「ベレー帽の男?」

ドロシー「そう、あの額の広いサル顔のやつさ……典型的な「アパッシュ」ってやつに見えるが、やけに周囲を気にしてないか」

(※アパッシュ…十九世紀末から二十世紀初頭におけるフランスの乱暴者やちんぴらを指す総称。ベレー帽と横じまの水夫シャツを着るスタイルで知られた。語源はアメリカ先住民の「アパッチ」族から)

アンジェ「そうね。もしかしたらフランス情報部にでも雇われて、人相をあらためているのかもしれないわ」

…窓際の席に陣取った二人は、ワガママ勝手で世の中に飽きている上流階級の令嬢のような気だるい様子で人々の行き交う通りを眺めている……が、実際は視界の片隅に見えるランデヴー・ポイントのカフェに監視がいないかを確かめていた…

ドロシー「気に入らないな。情報を持ってくるエージェントのことを追っているとしたら、この状況でコンタクトを取るわけにはいかないだろ」

アンジェ「ええ。でもランデヴーの場所はあの男がいるカフェのすぐ隣の店よ……おまけに他のポイントはどこも都合が悪い」

ドロシー「時間の余裕もあまりないしな……くそ、こういうときこそカットアウトの一人でも挟んでくれればいいものを」

アンジェ「そんなことを言っても仕方ないでしょう……例の手を使ったら?」

ドロシー「……そうだな、いいだろう」

…二人はちびちびとカルヴァドス(リンゴ酒)をすすっていたが、アンジェは代金を置くとさりげなく店を出て、すぐそばにある別なカフェへ入るとギャルソン(給仕)に声をかけ、小銭を渡してトークン(代用コイン)に両替してもらうと電話ボックスに入った……ドアを閉めて番号を回し、交換手を通じてフランス情報部の回し者らしい男がねばっている店へと電話をかける…

フランス人の声「……アロー(もしもし)、こちらはカフェ・リベルテ」

アンジェ「もしもし、済みませんがそちらにいる客の一人に伝言をお願いします……急いで」どこか冷たく、うむを言わせない口調で一気にしゃべった……

声「ウィ、マドモアゼル。伝言をどうぞ?」

アンジェ「ええ「例の人間は五分後に、カフェ・ルナールに現れる」とだけ」道すがら記憶していた、ランデヴーの邪魔にならない町外れにある店の名前を告げる……

声「分かりました。それで、その伝言はどのお客さんに?」

アンジェ「黒いベレー帽の男がカウンターに座っているはずです、やせた男です」相手にあれこれ詮索されないよう、せかせかした口調で電話口に話す……

声「いえ、そういった風体の人はカウンターにはおりませんよ」

アンジェ「でしたら隅のテーブルにいませんか?」

声「少々お待ちを……ああ、いました」

アンジェ「良かった、ではその男性に伝えてください……それじゃあ」

…通話は終わったがあまり短いと店員に怪しまれるので、アンジェは電話を切ってからもしばらくのあいだ通話するフリをして空気に向かって話し続けた……一方、ドロシーがさっきの店で粘りながらカルヴァドスをすすっていると、窓越しにギャルソンが書き留めたメッセージを持って隅のテーブルに向かい、男に何か言いながらメモを渡すのが見えた……男は急にギャルソンがやって来たのでけげんな顔をしていたが、メモを見るなり酒の代金を置いて店を飛び出して行った…

アンジェ「……ただいま」

ドロシー「ああ……間抜けが見事に引っかかりやがったぜ」

アンジェ「ええ、見たわ。彼らが連絡するとき合い言葉を使っていなくて良かったわね」

ドロシー「そうだな、それじゃあ今のうちにランデヴーと行くか」


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