ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
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663: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2023/09/16(土) 01:57:59.88 ID:qSyOaFWb0
…ランデヴー・ポイントのカフェ…

アンジェ「……サ・ヴァ(お元気)?」

ギャルソン「ウィ、サ・ヴァ、サ・ヴァ……エ・ヴ(そっちは)?」

アンジェ「サ・ヴァ、メルスィ(どうも)」

…カウンターでワイングラスを拭いているギャルソンに向かって、やる気なく話しかけるアンジェ……一方のギャルソンも視線を向けることすらせず、上の空で返事をした…

アンジェ「……飲み物を」

ギャルソン「何にします?」

アンジェ「そうね……それなら『マッカランの十二年ものとアンジューのロゼ』をそれぞれもらおうかしら」フランスのカフェで普通ならまず出ないような酒の組み合わせを合い言葉に定めてあったが、それを聞いたギャルソンは表情一つ変えるでもなく、了解したしるしに肩をちょっとすくめた……

ギャルソン「どうぞ」

アンジェ「メルスィ……どう、お味は?」

ドロシー「グレンリベットだ……つまりは大丈夫だな」

…もしもギャルソンが脅されて合い言葉を言うようにされていた場合の「保安措置」として、本部は脅されている場合は合い言葉通りに「マッカラン十二年」を、安全な場合はわざと注文と違う「グレンリベット」を出すように決めていた……当然、マッカランが出てきた場合アンジェとドロシーは何食わぬ顔で酒を飲み干し、知らんふりをして出ていくことになる…

アンジェ「そう」ロワール地方で産する「アンジュー」の口当たりのいいロゼワインを頼み、少し時間をかけて味わった……

…しばらくするとギャルソンが会計をつけた紙をさりげなく置き、それをドロシーが受け取る…

ドロシー「ふぅん、八フランと五十サンチームね……ここは私が持つよ」料金を置くと店を出た……

アンジェ「……さっきの「八フラン五十サンチーム」だそうね」

ドロシー「ああ……ってことは次にサロン「ル・ファンタスク(空想)」へ行けって事だな」

…サロン…

アンジェ「貴女はこういう場所だと、まるで水を得た魚のようね」

ドロシー「ああ、会員制社交クラブだの、サロンだのキャバレーだのは得意分野だからな……」

…ロンドンやパリにあるようなお高いサロンと違った、港町にありがちな「庶民派」といった雰囲気のサロンは夜の早い時間帯と言うこともあって客の入りもそこまでではなく、今ひとつの小楽団が軽い音楽を流し、酔っ払っていれば美人に見えるかもしれないマドモアゼルや、かつては美人だったであろうマダムたちが地元の商人、航海の給料をもらって羽目を外しに来た船員、小金のある旦那衆といった客に酒や軽食を運び、時にはおしゃべりに興じたり笑い声をあげたりしている…

アンジェ「……それで、コンタクトの人間はどれかしら」

ドロシー「さぁな……いずれにせよ、向こうからやってくるだろうさ」

…しばらくして…

アンジェ「どうやらあれがそうみたいね」

ドロシー「……なるほどな、そりゃあ国外に出たらおかしいはずだ」

…店内を観察していた二人が目星を付けた相手は旅回りをしながら芝居やものまね、あるいは皮肉を効かせた冗談などを聞かせる流しの芸人で、古ぼけたシルクハットにはね上げた口ヒゲ、そしておどけた態度で席を巡りながら客の出すお題に答えてちょっとした笑いを取ると「どうかお笑いになった分だけお鳥目を」と帽子を差し出す……芸人は席を順々に回り、ドロシーたちのテーブルまでやってきた…

芸人「おやおや、こんなところに素敵なマドモアゼルが二人も……ささ、物真似なんていかがですか?」

ドロシー「そうだな……じゃあ『鼻持ちならないフランス人の物真似』でも頼むよ」フランス人なら絶対に頼まないであろうリクエストを合い言葉に、物真似を見せつつ顔を近づけた芸人……

芸人「……情報の受け渡しに来るとは聞いていたが、あんたみたいな娘さんだとは思わなかったな」

ドロシー「私だってドサ回りの芸人がそうだとは思わなかったさ」

芸人「じゃあおあいこってことで……」とても小さく折りたたんだ一枚の紙を指の間に挟んで差し出した……

アンジェ「確かに受け取ったわ。それと本部がよろしくとのことよ」

芸人「ああ、それじゃ……お気に召しましたか、お嬢様方?」

ドロシー「はははっ、とっても上手だったよ。 ほら♪」紙片のやり取りをするアンジェを隠すように、ドロシーが派手な身振りで金貨を渡す……

芸人「おやおや、こんなに頂けるとは光栄ですな。ぜひ今後ともごひいきに!」

………

…

…夜・ホテル…

アンジェ「……それで、メモの内容は?」

ドロシー「ああ。明日の午前十時、マルシェ(市場)にいる古物商から『ヴォークランから掘り出し物があると聞いてきた』と言ってティーカップを買え」だと……店の場所も書いてある、ほら」サロンで受け取った紙片は気付かれないよう持ち帰り、ホテルの部屋でようやく内容を確かめた……

アンジェ「確かに」確認がすむと今度は手際よく紙片を燃やした……



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