ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
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668: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2023/11/04(土) 02:09:26.21 ID:1O4Bz8jM0
…夜・ネスト…

アンジェ「……時間ね」懐中時計を引っ張り出し、ぱちりと蓋を開けて時刻を確かめる……

ドロシー「着替えもすんだし、そろそろ行くか」

…ドロシーは活動的な「男装の麗人」風にまとめ、シルクハットに黒のチョッキ、濃緑と黒の上着を羽織り、下は乗馬用のぴっちりしたズボンスタイルで短靴を履いている……アンジェは動きやすいようひざ丈のドレススタイルで、袖はフランス風のパフスリーヴ(袖などを膨らませてあるもの)で胸元にはギャザー(ひだ)を入れてある。脚には黒絹のストッキングを履き、つま先が細い……しかし作りのがっちりしたショートブーツで足元を固めている…

ちせ「かたじけない」

ドロシー「いいってこと……それよりそのキモノ、似合ってるぜ♪」冗談めかしてちょっぴり色っぽい視線を向けたかと思うと、ウィンクを投げつつ笑いかけた……

ちせ「そ、そうか……///」

…ドロシーの冗談に口ごもっているちせは深草色の地に菖蒲と蜻蛉をあしらった縁起のいい着物姿で、小刀を銀ねず色の帯に差し、堀河公からいただいた脇差「備前兼光・改」は車に乗るときつかえて邪魔になるので、腰に差さず手に持っている……足元はいまだに靴をきゅうくつに感じているちせらしく白足袋に下駄姿で、髪は後ろで結い上げて南天(なんてん)を模した飾りの付いたかんざしを一本挿している…

(※菖蒲(しょうぶ)の花は「勝負」に繋がり、蜻蛉(とんぼ)は後ろに飛べないことから退く(負ける)ことのない「勝ち虫」であり、ふたつの柄が組み合わされると「勝負に勝つ」と武人にとって縁起がよく、南天は「難を転じる」ことからこれも縁起物)

アンジェ「ドロシー」

ドロシー「おいおい、自分が褒めてもらえないからってそう怒るなよ」

アンジェ「そうじゃない」

ドロシー「ああ、分かってるさ……さ、行こうぜ」

ちせ「承知した」

…仮のネストには馬小屋を改造した車庫スペースがあり、ドロシーはそこに借りておいた車を停めていた……薄暗い車庫にあるのはフランスの「パナール・ルヴァッソール」社製四人乗り乗用車で、いつも使っているケイバーライト動力のRR(ロールス・ロイス)に比べてきゃしゃでエンジン馬力も小さいが、まずはちゃんと動く自動車であり、アルビオンのケイバーライトエンジンを真似た二十馬力の蓄圧蒸気エンジンはできるだけ手入れをして、タイヤチューブの予備も車体の後ろにきちんと積み込んである……ランタンでぼんやりと照らされたパナールは黒い塗装に部分部分の真鍮部品が艶やかで、なかなか優雅なスタイルをしている…

ドロシー「さ、乗りな」

ちせ「うむ」下駄や刀の鞘ををひっかけたりしないよう、注意深く後部座席に乗り込む……

アンジェ「準備いいわ」

…アンジェがランタンを吹き消して車庫の門を開け、ドロシーがエンジンをかけるのに合わせて車体の前にある始動クランクを回す……普段のRRなら一発でかかってくれるのだが、燃料の吸い上げが悪いのかパナールのエンジンは動いてくれず、ドロシーは「ちっ」と小さく舌打ちした…

アンジェ「もう一回」

ドロシー「ああ……ったく、これだからフランス製は……」ぶつくさこぼしながらもう一度エンジンを回す……

アンジェ「……かかった」

ドロシー「どうにかな」車を表に出すとアンジェが車庫の扉を閉め、それから助手席に乗り込んだ……

ドロシー「よーし、出発♪」

…そのころ・とある裏通り…

フランス情報部員「……リベルテ(自由)」

丹左衛門「デモクラティ(民主)」

情報部員「よし、あんたが例のジャポネ(日本人)だな」暗闇からすっと現われたフランス情報部のエージェント……

丹左衛門「そうだ」

情報部員「結構……あんたらの欲しがっているものはすでに準備が整っている。だからまずはあんたらが我々にとって有用である事を証明してみせることだ」

丹左衛門「うむ、そのことは重々承知している」

情報部員「ビアン(結構)……我々が欲しいのはジャポネの公館で使われる事になっている最新の暗号表だ。そいつを手に入れた段階でこちらは残りの武器を手渡し、あんたらが乗る予定の船をル・アーヴルへと回す」

丹左衛門「よろしい」

情報部員「目的の場所には警官が詰めているが、こちらが手を回して決行の時間にはいなくなるように仕込んである」

丹左衛門「承知した」

情報部員「それから軍隊なんかも同じで、地元の駐屯地からは多少の騒ぎが起こっても兵隊が駆けつけないように手はずを整えた。ここノルマンディじゃアルビオンが幅をきかせていて、王党派の連中とはいえフランス人は不満を持っているからな……」

丹左衛門「……その気持ちはよく分かる」

情報部員「そうか。とにかく、目的の物と引き換えなのを忘れるな……暗号表がなければモノもなし、だ」

丹左衛門「分かっている」

情報部員「じゃあ、任せたぜ」

丹左衛門「……」


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