ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
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676: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2023/12/28(木) 01:25:23.64 ID:TyFwlol10
ちせ「ふん……っ!」

千代「えい……!」ちせが繰り出した下からの払いを飛び退いていなすと、続けざまに斬り込んだ一撃を太刀で払いのけた……

ちせ「たあ……っ!」

千代「む……っ!」

…互いに距離を離すとふっと息をつき、それからまた円を描くような動きとともに必殺の間合いを測るにらみ合いが続く……相手が息継ぎをする瞬間を狙うべく、お互い呼吸を止めて刀を構えたままで、額からはじんわりと汗が滴ってくる…

ちせ「……はぁっ!」

千代「くっ!」

…二人の白刃が交錯した瞬間、ちせの斬撃が千代の持つ太刀の切っ先を二寸ばかりのところで折った……返す刀で行き過ぎる千代の背中に一太刀浴びせようとしたが、それよりも早く千代が振り向きざまに脇差を抜き放ち、ちせの刃をはじいた…

ちせ「むむ……」

千代「……ふ」

…練り込まれたケイバーライト鉱の影響でかすかに青緑色の燐光を放つちせの脇差と、おりしも霧が晴れてきた夜空の月光を受けて青白く光る千代の脇差……

千代「……やぁっ!」

ちせ「……っ!」

…刃が触れあって「ピィィ……ン!」と透明な音を残し、互いに行き過ぎた二人……ちせは腰を入れて振り抜いた構えのまま息をつき、千代はがくりと片膝をついた…

ちせ「千代どの……!」脇差を鞘に収めると、ずるずると崩れ落ちた千代のもとへと駆け寄って抱き起こし仰向けにした……

千代「……ふふ、お見事」

ちせ「かたじけない」

千代「いえ、最後のは実に素晴らしい一撃でした……私も鍛錬を積んでいるつもりでしたが、これも慢心というものか……」

ちせ「いや。千代どのの太刀さばき、見事なものじゃ……父を……見ているようであった」

千代「さようですか……嬉しい事を言ってくれます」先ほどまでの殺気はすっかり失せて、褒められた子供のように純粋な笑顔を浮かべた……

ちせ「うむ……」

千代「私の脇差は貴女に譲りましょう……これだけの使い手にもらわれれば刀も喜ぶ」

ちせ「かたじけない」

千代「それと、折れた太刀と小柄は……私と一緒に……」

ちせ「……承知した」

千代「わ、わたくしは……最後まで……志士として……」

ちせ「うむ。立場こそ違えど、その振る舞いは立派なものじゃ……」

千代「良かった……」そのまますぅっと力が抜け、ちせの小さな身体に沈み込むようにして目を閉じた……

ちせ「……」

…庭先…

副官「丹左衛門どの、霧が……」

丹左衛門「承知しておる……それにフランス側の足止め工作もそろそろ時間切れのようだ」遠方から呼び交わす声や敷石に響く足音が聞こえてくる……

副官「いかがいたします?」

丹左衛門「仕方あるまい。お主たちは事前の手はずに従って衣服を替え、ふたたび潜伏せよ……いつかまた、再起を図る機会も訪れよう」

副官「ははっ……それと、千代も戻りませぬが」

丹左衛門「うむ、あの「ちせ」と申す娘、やはり大したものであった。あれだけの相手と刃を交えることができて、千代も剣士として満足であろう……それから最後に、介錯を頼みたい」

副官「……ははっ!」

丹左衛門「……さて」能舞台のように揺らめくかがり火に照らされた庭先で、きちんとした所作で羽織を脱ぐと小柄に懐紙を巻いた丹左衛門……介錯を頼まれた副官と、もう二人の志士が見届け役として控える……

丹左衛門「では、参るぞ……!」

副官「ふん……っ!」丹左衛門が真一文字に腹を切るのと同時に、後ろに立った副官が首筋へ太刀を振り下ろした……

副官B「……見事なものであったな」

副官「いかにも。丹左衛門どのは最後まで立派な方であった……」

………


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