ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
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680: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2024/01/20(土) 01:45:01.90 ID:JPKfl4zq0
…プリムローズ・ヒル…

アンジェ「……隣、よろしいですか?」

7「ええ、どうぞ?」

…リージェント公園を抜け、小高い丘になっている公園「プリムローズ・ヒル」のベンチに座っている「7」の隣に腰かけたアンジェ……周囲は眺望がよく、煙突の煤煙やボイラーのパイプから漏れる水蒸気で煙っているロンドン市街が一望できる……つばの大きい婦人帽にピクニック用のバスケット、手に小さな望遠鏡を持った「7」はいい空気を吸いに来た中産階級の婦人といった雰囲気で、大きなバッフル(ふくらみ)のついたスカートがベンチに広がり、短い上着と胴衣をまとっている……かたわらにはたたんだ日傘も置いてあり、それがベンチの座面をいくらか隠している…

7「……それで、受け取ってきた?」

アンジェ「持ってきたわ」

…アンジェがティーカップの箱を置くと7が日傘を動かし、下に隠すようにしてからティーカップの箱を受け取った……日傘の陰にはもう一つ同じ箱があり、アンジェがそれを受け取って鞄におさめた…

7「ご苦労様、後で詳細な報告をお願いね。それと、チョコレートはあげるわ」

アンジェ「ええ……」7がバスケットから取りだしたチョコレートを受け取ると、しばしの間ロンドン市街を眺め、包み紙をむいてチョコレートをかじった……

…同じ頃・自然史博物館…

L「……それで、現地でなにか変わったことは?」

ドロシー「ああ。ちせが情報の受け渡しを行った大使館職員の私邸が旧幕府方の侍たちに襲撃を受けた」

…アンジェが情報を受け渡している間にデブリーフィング(状況報告)を済ますべく、再び博物館へとやって来たドロシー……手元には図録とレポート用紙があり、ときおり説明板の文書を書き写したり化石のスケッチを取りながらひとり言をつぶやくようにして「L」に報告を行う…

L「旧幕府方か……続けてくれ」

ドロシー「成りゆきで私とアンジェも介入する事になっちまったが、顔を見た相手はしゃべれないようにしてきた……それよりも、ノルマンディ飛び地でフランス情報部が活動できたというのが気になる」

L「というと?」

ドロシー「正直、ノルマンディ公配下の防諜部が目を光らせている中で、カエル(フランス人)の連中があんな勝手に振る舞えるとは思えない。現地の「フランス王国軍」とも繋ぎをつけているようで、駐屯地から数マイルもないところでドンパチが起こっているのに二時間以上も兵隊を展開させる様子がなかった」

L「……それで?」

ドロシー「こいつはただの推論だが、もしかしたら王国の連中とカエルの間で何かの取引か密約でもできたのかもしれない」

L「なるほど……他には?」

ドロシー「日本政府の新暗号だが、ノルマンディ飛び地で受け取ったのは佐伯っていう事務官だ。暗号表の文字列はアンジェがのぞき込む機会があったから、見えた部分に関しては書き写して渡す」

L「ふむ、重要な手がかりだ」

ドロシー「ああ、そうだろうな……」

L「……友人の属している政府を探るのは気に入らないか?」

ドロシー「なにを今さら……そんなきれいごとが言えるような純粋さはとうの昔に無くしちまったよ」

L「確かに汚いやり方だとは思う……だが、これも仕方のない事なのだ。こんなことをせずに済むのなら私だってそうしたい」

ドロシー「よく言うよ……ところで話は変わるが、あっちから戻ろうって日に海峡の霧で船が欠航になってね。延泊することになっちまったから、その分の宿代その他もろもろを予備費から出してくれ」

L「分かっている、気象予報はこちらにもあるからな……いつもの銀行に振り込んである」

ドロシー「そりゃあどうも」

L「ああ……ところで学業の方は?」

ドロシー「一日欠席しちまったからガミガミ言われたが「霧ばかりはどうしようもありませんので」って言ってやったよ」

L「ふむ」

ドロシー「これにはさすがの先生方も文句の付けようがなかったらしくてね……それで「明後日までに任意のレポートを書き上げてくること」って課題を出されたわけだ」

L「では、いい機会になったな」

ドロシー「ああ。おかげさまで恐竜だのシダ植物だのに詳しくなれそうだ」

L「結構だ。世の中、どんな知識でも役に立つ……特にこの世界ではな。とにかくご苦労だった」すっと離れて、そのまま歩き去った……

ドロシー「ああ……」

ドロシー「……化石か。あの「サムライ」たちも古くさい矜恃だの義理だのに縛られて化石になっちまってたってわけか」

ドロシー「もしかしたら、いずれ私もお前さんたちみたいになるかもしれないが……だが今のところ、まだそのつもりはないんでね」

ドロシー「それじゃあな、アンジェのご先祖さん♪」蜥蜴の化石に向けて小さな声で話しかけると、足取りも軽く博物館の出口へと向かっていった……



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