ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
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734: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2025/04/25(金) 01:31:33.00 ID:GuWsPWPR0
…見本市・二日目…

ドロシー「おやおや、昨日よりもさらに盛況じゃないか……まぁ新聞広告にチラシとずいぶん宣伝していたようだったしなぁ……」

ちせ「うむ、芋を洗うような人混みじゃな」

ドロシー「はぐれるなよ?」

ちせ「そちらもご同様に、じゃ」

ドロシー「へへっ、言うじゃないか♪ 冗談はさておき、もしはぐれたら事前に打ち合わせておいた場所で落ち合おう」

ちせ「うむ」

ドロシー「それではゆるりと参るとしますか♪」

…前日に比べてさらに増した人混みを縫うように進むドロシーとちせ……会場にいくつもそびえている大テントはどれも日差しと人いきれでむっとするほどの熱気がこもっており、暑さで短気になった男たちの小競り合いやむずがり泣きわめく子供、失神するご婦人など催し物ならではの騒動が次々と巻き起こる…

ドロシー「くそ、こう暑くちゃやってられないな……ちょっと喉を潤そうじゃないか」

ちせ「同感じゃ。それにこうも混雑しているようでは人の背中しか見えぬ……」体幹の強いちせゆえに辛うじてドロシーにくっついていられるが、監視どころか押しつぶされそうな状態になっている……

ドロシー「よし、こっちだ……!」

…見本市・広場…

ドロシー「ふぅ……」どうにかテントを抜け出した後ハンカチを取りだして額の汗を拭うドロシーと、同じく手拭いで頬を軽く押さえるちせ……

ちせ「この調子では監視など出来そうもないのう」

ドロシー「確かに大天幕の方は難しいが、建物の方なら二階のギャラリーからのぞき込めるな」

ちせ「うむ……」まだみずみずしさが残るオレンジを搾った涼やかなオレンジジュースで一息つき、ほっとため息をついた……

ドロシー「とはいえこの調子じゃあどいつが繋ぎ役かなんて分かりゃしないな……今のところ同業者らしいのも見当たらないが、それだってこう人が多くちゃ分かったものじゃない……」

ちせ「確かに。雑音が多すぎて気配があったとしてもかき消されてしまうのう」

ドロシー「仕方ない、今日は全体を見渡せるところに陣取ってゆっくり人間観察と行こうじゃないか」

ちせ「承知した」

…見本市・展示場の二階…

ドロシー「よし、ここならまぁまぁ観察できそうだ。あんまり目立つわけにも行かないから、しばらくしたら移動することになるが……」

ちせ「う、うむ///」

…小柄なちせは二階の外周部をとりまくギャラリーでドロシーの前に立ち、柵のすき間から会場を物珍しそうに眺めている演技をしていたが、行き交う人たちによってドロシーが押されるたびに張りのある乳房がぎゅっと後頭部に押しつけられ、同時に香水のふわりと甘い香りが鼻孔をくすぐった…

ドロシー「……それにしてもえらい混みようだ。まるで競りの時のコヴェント・ガーデン(青果市場)かセヴン・ダイヤルズ(ロンドン市内の低所得者が住んでいた住宅街)だな」

ちせ「こうも人に押しつけられると、あばら骨が軋みそうじゃ……」

ドロシー「ああ、まったくだ。もうちょいしたら一旦降りるとしよう……ん?」半分もみくちゃになりながら、目ざといドロシーが一人の男に目を留めた……

ちせ「誰かおったのか?」

ドロシー「本命じゃないがな……あいつ、妙な動きをしてやがる」

…注視しすぎないよう気を配りながら向けた視線の先には、ハンチング帽にあまり綺麗ではないシャツ、それにブカブカの上着を着た一癖ありげな男が歩いている……混み合った会場で押し押されしながらゆっくり動いているように見えるが、そのくせ自分の行きたい方に無理することなく進んでいるように見える…

ちせ「なるほど、あやつか……」

ドロシー「ああいった手合いはガキの時分に腐るほど見てきたから良く分かる……スリだよ」吐きすてるようにそうつぶやいた矢先、ハンチング帽の男が前を歩く紳士の後ろについて小さな動きを見せた……

ドロシー「……盗ったな」

ちせ「うむ……それよりドロシー、向こうに例のひげの男がおるぞ」

ドロシー「ああ、見つけた」

…ドロシーとちせが植民地政府のエージェントとにらんでいる口ひげの男を視界におさめた矢先、スリにあった紳士がふとポケットに手を突っ込むとけげんな顔をし、それから念入りにポケットを探り始めた……スリの男は何食わぬ顔をしているが、会場に入ろうとする人と出ようとする人の波で混み合ってしまい身動きが取れなくなっている…

ドロシー「あいつ、ちょっとばかり場所の選び方が悪かったな……」

…ドロシーがそうつぶやいている間にも持ち物をスられた紳士が前後左右の人間に何やら話しかけ、その周囲でざわざわとやり取りが高まりはじめた……どうにか一人分の距離を開けたスリは何食わぬ顔をしているが、ちらちらと視線を巡らし逃げる機会をうかがっている……と、近くにいた山高帽とステッキの男がスリに声をかけて持ち物を確かめようとした…

ちせ「む!」

ドロシー「やりやがったな」スリはシラを切っていたようだが腕を押さえられた途端にさっと相手を振り払い、人混みをかき分けるように逃げ出し始めた……


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