佐久間まゆイチブンノイチ人形
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17:名無しNIPPER[saga]
2018/12/01(土) 14:36:23.42 ID:3QcdtyFE0



「……え?」

 かからなかった。彼女の指は予想に反し首を通り過ぎ、強張っているであろう俺の頬をそっと撫でたのだった。その、まるで産まれたての赤ん坊にするようなふわりとしたタッチからは、俺に対して何か害を加えようという気持ちは感じられない。

 ――温かい?

 ここにきて、初めて違和感に気が付く余裕ができる。彼女の指からだけではなく、のしかかられている腹にも寝巻越しにじわりと熱が伝わってきていた。彼女は無機質なただの人形だったはずだ。

 一体、どうなっているんだ。

 まゆは俺の頬を撫でる手はそのままに、俺の疑問などお見通しだと言わんばかりに軽く微笑んだ。そして、動かしていた手をぴたりと止めて上半身を倒してくる。彼女の整っている顔が近づいてきて、次の瞬間には唇を奪われていた。

 温かい。

「ん……っ」

 俺の鼻先に、彼女のぬるい鼻息が当たる。彼女は舌で俺の口内に入ろうと試みていたようだが、俺が口を硬く閉じているのを感じ取ったのだろうか、一度顔を離して俺を見つめた。彼女の唾液が細い糸のようになって彼女自身に一つの筋を作る。先程よりも心なしか赤く染まっている頬と相まって、彼女の顔は非常に扇情的に見える。

 恐怖で凍り付いたように血の気の引いた身体は、いつしか汗をかき出していた。つい先ほどまでくっついていた唇に目が行ってしまう。俺の唾液でテラテラと光っている唇を、小さな舌を見せつけるように一周させてなめとった後、まゆは俺の耳元まで顔を近づけた。



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