48:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 00:01:15.40 ID:3bKI/3gF0
「待て一花。一体何をするつもりだ」
「セッ――」
「――やっぱ言うな。早まるな。話せばきっともっといい妥協点があるはずだから」
「……もう、しょうがないなぁ」
「ふぅ、見立て通りやっぱりお前は話が分かる奴――」
49:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 00:02:14.11 ID:3bKI/3gF0
オレンジジュースだろうか、この味は。目線で机の上を追うと、ちょうどそんな感じの色をした液体が置かれていたので、俺の味覚もまだまだ捨てたものではないらしい。
で、問題なのは、その味をどこから感じているかなのだが。
50:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 00:02:45.60 ID:3bKI/3gF0
「…………」
しかし自身の口許を確認しようにも、目の前に人間大の障害物があるためどうにもならない。というか実際に人間が立ちふさがっている。覆いかぶさっている。俺の胸部にはこれまた覚えのある柔らかな感触が押し付けられていて、機能不全に陥った口の代わりに鼻で息を吸うと、風呂場で感じるような甘い香りがした。
とっくに理解できてしまっている現状を知らんぷりで誤魔化すべく必死になっていると、上の前歯あたりからこつっという衝撃が響いた。これは知らない感覚で、思考が一気に現実に引き戻される。
51:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 00:04:22.87 ID:3bKI/3gF0
今夜はここで終わり
52:名無しNIPPER[sage]
2019/01/09(水) 00:15:21.43 ID:Kg1WfTmQ0
一旦乙 期待してる
53:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:24:22.55 ID:3bKI/3gF0
おはよう
54:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:25:06.72 ID:3bKI/3gF0
「……下手くそだね、私」
眼前の一花が気まずそうに笑い、俺からちょっとだけ離れる。彼女の右手は口許を覆っていて、今の一瞬に何が起きたかを薄ぼんやりと把握した。
「…………醒めたか?」
55:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:25:40.22 ID:3bKI/3gF0
「なんか、ごめん……」
「いや、謝られても……」
なんだか超絶気まずい空気が流れている。情動を支えるには最低限のテクニックが要るんだなあとどうでもいい発見を得て、肌面積が大きすぎる一花から目を離した。長時間眺めているのは体に毒だ。
俺の反応を見て、一花は腕で自分の上半身を掻き抱いて、ちょっと恥じらってみせた。女性とは恥じらいの生き物だったなあと肝心なことを思い出す。どうにも俺の周りの女子はスタンダードではないらしいので、徐々に俺の感性がメインストリームから逸れていっている気がしないでもなかった。
56:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:26:26.84 ID:3bKI/3gF0
「…………これで十分だろ、共有する秘密。キス下手くそって。黙っておくから、そっちも頼む」
「うん……」
重っ苦しい空気感から脱しようと努めて、手持無沙汰な右手で未だくすぐったさが抜けない耳を掻く。次いで立ち上がってかけっぱなしになっている一花の上着を取り、乱雑な手つきで彼女に羽織らせた。
57:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:26:57.15 ID:3bKI/3gF0
しかし一花は三角座りのままどんどん小さくなっていくばかりで、一向に行動に移らなかった。なんというかもう、見ていて痛々しいばかり。
俺の感性ではよく分からないが、世間一般的にキスの技能は必須だったりするのだろうか。ここまで凹むってことは、実際そうでもないと説明がつかないし。二乃も三玖も、まあ取り立てて下手だったわけでもないし。
でも……なあ?
「そんなに落ち込むことか?」
58:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:27:33.31 ID:3bKI/3gF0
そう言われようにも、歯が当たってしまった事実は消えてくれないし、ここはどうにか切り替えてやっていくしか選択肢がないと思うのだが、気持ち的にそう簡単には割り切れなかったりするのだろうか。理想と現実との乖離が思った以上に大きくて、そのギャップに打ちひしがれているとか。
でも、それは彼女個人の問題だから、外野の俺がどうこうしてやれることじゃないし……。そもそもまた女の子から強襲されて、いよいよ誰を信じればいいんだよ状態に陥ってるし……。
「ねえ、フータロー君」
「なんだ」
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