中野四葉「まにまにりぽーと」
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63:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:06:01.42 ID:X8w2p+8S0
 彼女の言うように、去年の勤労感謝の日にも似たような調子で街を練り歩いた。その時は金持ち特有の壊れた金銭感覚に散々振り回されたが、現況を鑑みれば、流石にあの時と同じようにはいかないだろう。彼女たちはバイトで生計を立てる身になったし、棲み処だって大幅にランクが下がった。それでもなおウチよりはよっぽどマシな場所に住んでいるが、節約することは覚えたはずだ。そもそも元はかなり貧乏な生活を送っていたらしいから、ひもじさやら惨めさやらには耐性があるのかもしれない。
 生活レベルを下げるというのはなかなかに苦痛の伴うことだと聞いているが、残念ながら最底辺を脱したことがないので俺にその感覚は理解できなかった。同時に、それを彼女たちに聞こうとも思わない。ドンケツ同士の比べあいなど、虚しいだけで何も生み出さないという自覚があるからだ。



64:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:06:28.39 ID:X8w2p+8S0
「四葉」
「はい?」
「それ、楽しいか?」
「ええ、すっごく」

以下略 AAS



65:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:06:54.83 ID:X8w2p+8S0
「綺麗なものを見ていると、なんだかとても幸せな気持ちになれますから」
「そんなもんか」

 さっきまで四葉の手のひらの中にあった小物を、今度は俺が手に取る。
 なんてことはない、ただの雑貨。そもそもからして雑貨という単語が担う構造物の範囲が曖昧すぎて俺はもやもやするのだが、そんな愚痴を彼女に言っても意味がない。生産性がない。だから、俺も彼女がそうしていたように、ガラス細工を照明に透かして見る。
以下略 AAS



66:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:07:22.79 ID:X8w2p+8S0
「どうです、何か感じました?」
「この前解いたレンズの問題を思い出した」
「……む」
「ってのは嘘で」

以下略 AAS



67:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:07:51.97 ID:X8w2p+8S0
「嘘なんだが……」
「なんでしょう?」
「……すまん、こういう時って何を思うのが正解なんだ?」

 堪らず教えを乞うた。俺の人生経験からでは、彼女が望む回答を導き出せない。それこそ逆立ちしたって無理なものは無理。加減乗除を知らない人間に複雑な方程式が解き明かせようはずもないのだ。
以下略 AAS



68:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:08:36.92 ID:X8w2p+8S0
「上杉さんは、難しく考えすぎなのかもですね」
「そうか?」
「はい。綺麗なものを見たら綺麗。美味しいものを食べたら美味しい。面白い話を聞いたら面白い。それで全然良いんです」
「発展性が……」
「応用問題ばかりじゃないんですよ、世界は」
以下略 AAS



69:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:09:05.68 ID:X8w2p+8S0
「たとえばほら、こんなのはどうです?」

 近くにあったしゃれた髪飾りを手に取って、頭に重ねて見せる四葉。それに対して、どうですかと言われれば。

「しっかり着用しないあたりに売り物への配慮が見える」
以下略 AAS



70:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:09:37.99 ID:X8w2p+8S0
 感じたことをそのまま言ってみたけれど、それでもまだ答えがひねたものになっているらしい。こうなると、もはや彼女の裁量に俺の価値観を合わせているだけにも思えてくるが。

「女の子がかわいいものを身に着けているんですよ?」
「似合ってる?」
「惜しい! ニアピン賞です。でも、もっともっと単純なの、ありません?」
以下略 AAS



71:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:10:11.63 ID:X8w2p+8S0
「…………かわいいな、それ」
「はい!」

 ようやく俺から引き出せた言葉にご満悦なのか、花のように笑う四葉。誘導尋問だろと文句の一つも言ってやろうかと思っていたが、こうも幸せそうな顔をされると、毒気を抜かれてしまってダメだ。

以下略 AAS



72:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:10:39.07 ID:X8w2p+8S0
「で、今のは結局何点だったんだ?」
「合計して今日の終わりに発表する手筈ですので」
「繰り上がりには注意な」

 酷い忠告だが、四葉なら冗談抜きでやりかねないミスだ。それに対して彼女は「オブラートに包むのとはまた別です!」とぷっくりむくれていた。相変わらず、他人の心情を推し量るのは難しい。
以下略 AAS



73:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:11:04.76 ID:X8w2p+8S0
「じゃあ、お会計してくるのでちょっとだけ待っててください」
「買うのかそれ?」
「はい。褒めてもらったので」

 ほとんど褒めさせられたのだけれど、そこは関係ないらしい。
以下略 AAS



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