星梨花「ちょっとだけ大人になった日」
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2: ◆W56PhqhW.M
2019/02/20(水) 00:55:22.30 ID:cQcjrJXB0
2月20日。
私――箱崎星梨花は、所属するアイドル事務所の765プロダクションを訪れていた。
今日はロケの仕事の予定があり、私ともう一人のアイドルがここに召集されていた。
3: ◆W56PhqhW.M
2019/02/20(水) 00:56:48.33 ID:cQcjrJXB0
「はあぁぁ……」
目の前で重苦しい声を漏らした少女も、どうしようもない理不尽にやりどころのない感情を抱えているようである。彼女の名前は七尾百合子。今日の撮影で私のパートナーを務めるはずであった、年齢的には先輩にあたるが事務所では同期の頼りがいのある仲間である。
「ねえ、星梨花ちゃん……」
4: ◆W56PhqhW.M
2019/02/20(水) 00:57:40.94 ID:cQcjrJXB0
「どうしたんですか?」
彼女は何かに頭を悩ませている。私にできることであれば何でもしてあげたい。
「この問題、分からないよおぉ……」
5: ◆W56PhqhW.M
2019/02/20(水) 00:58:41.43 ID:cQcjrJXB0
はぁ……。出鼻をくじかれた気分である。そもそも彼女は中学三年生で、私は中学一年生である。藁にも縋る思いとはいったものだが、私が彼女の助けになるとは到底思えない。
とはいえ完全に見放すのも酷な話である。私は先ほどまでは軽かった重い腰を持ち上げ、机に身を乗り出して彼女の手元を覗き込んだ。
「ふんふんふん……」
6: ◆W56PhqhW.M
2019/02/20(水) 00:59:37.52 ID:cQcjrJXB0
「どう、星梨花ちゃん?」
「すいません、私にもわからないです……」
「うへぇ……」
7: ◆W56PhqhW.M
2019/02/20(水) 01:00:27.67 ID:cQcjrJXB0
「ごめんなさい! 私、勉強は得意なのに……」
「ううん、私の方こそごめんね。せっかく星梨花ちゃんの誕生日なのに、こんなに辛気臭い私なんかと一緒で……」
そう、今日は私の誕生日である。今朝、彼女と会った時も、開口一番お祝いをしてもらったのと共にプレゼントを渡された。彼女の他にも今日出会った仲間たちやプロデューサーからもプレゼントを貰った。明日には事務所で誕生日パーティーを開く予定である。
8: ◆W56PhqhW.M
2019/02/20(水) 01:01:16.09 ID:cQcjrJXB0
仲間の誕生日は全員で祝う、これは765プロの伝統である。要するに、仲間の誕生日は決して他人事ではないのだ。
それは受験を控えた彼女とて例外ではない。受験勉強と仕事の合間に、私のためにプレゼントを買いに行っていたのだとすると、何だか申し訳ない気分になってくる。
9: ◆W56PhqhW.M
2019/02/20(水) 01:01:54.91 ID:cQcjrJXB0
「はぁ……」
彼女は依然として眉間に皺を浮かべたままだ。都内の公立高校の入試は二度あり、彼女は一度目の試験を逃している。彼女の志望校は都内でも有数の公立高校であり、例年倍率は高い。志望を下げるという選択もあったが、彼女は意志を変えない決断をした。その決意の裏に、どれほど壮絶な葛藤や苦悩があったのか私にはわからない。しかし、彼女が答えにたどり着いたことが容易ではないことは私にもなんとなく理解できた。
10: ◆W56PhqhW.M
2019/02/20(水) 01:02:48.34 ID:cQcjrJXB0
「あのっ」
気づいた時には声に出ていた。
「どうしたの、星梨花ちゃん?」
11: ◆W56PhqhW.M
2019/02/20(水) 01:04:02.49 ID:cQcjrJXB0
困った。彼女の気遣いは嬉しいが、口先を衝いて出た言葉であるが故に、何を尋ねるべきなのか分からない。私が思いあぐねて黙っていると、彼女の方から催促してきた。
「別に何でも大丈夫だよ。私、これでも星梨花ちゃんよりお姉さんなんだから、遠慮せずに言ってごらん?」
彼女の言葉により私の思考はさらに混沌を極めた。
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