【モバマス】 和久井留美「富士そばには人生がある」
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[sage saga]
2019/02/22(金) 12:35:28.27 ID:+K0KOsmIO
「嬢ちゃんやったね!」
僅か数打席でホームランが出るとは――自分でも驚いて、呆然としていた。
そうして投球は規定数に達し、終わりを迎え、フロアへ戻るとおじさんに声をかけられる。
「――これ、ホームランの景品ね」
呆然としていると、おじさんからホームランの景品を渡される……。ささやかなお菓子の詰め合わせだ。
「あと、これはおまけね」
続いて、おじさんはそう言ってウインクをする。ホットの缶コーヒー。微かな温もりが冷えた手に染み渡る。
「――また来てくれよ! ホームラン女!」
「その呼び方は……」
やがて、私はバッティングセンターを後にする。
ホームラン男には追い付けない。だけど、いつかは近付くことができるだろうか。
「さてと……」
バッティングセンターを出て、再び外へ。
(そういえば――)
あの時も、私はやけになっていたわね……。
おじさんから貰った缶コーヒーをさっそく頂くことにする。
少し温い缶コーヒーが、冷めた体に浸透していくのを感じる……。
秘書を解雇され、会社も辞めた私――自分を見失った私は、こうして連日の如く自暴自棄になり飲み歩いていた。
そうして辿り着いたバッティングセンター。貯金も底をついてきていよいよ地元に帰ろうと思っていた時だ(なんだか負けた気がして帰りたくもなかったのだけれど)。
(今度は、君が打席に立つ番じゃないか? あんな風に――)
そう言って私をアイドルの世界に誘ったのが、紛れもないホームラン男だ。
あの時も酔っていたし、記憶は定かではない――きっと酔った勢いで洗いざらい吐き散らかしたのだろう。
そんな私をあの男は全て受け止めて、「アイドルにならないか」と突拍子もないことを言ってのけたのだ。
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