【モバマス】 和久井留美「富士そばには人生がある」
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[sage saga]
2019/02/22(金) 12:49:01.28 ID:+K0KOsmIO
「そばにしますか、うどんにしますか?」
「……うどんでお願いします」
カウンターで食券を出し、店員さんにうどんをお願いしてようやく着席。立ち食いと謳っているが、この店もカウンター席がずっと並び座ることができる。
私がまだスーツ組だった時、富士そばは何度か利用したことがあったけれど――あの時はこんな風に迷ったりはしなかった。
「お待たせしました。コロッケうどんとカツ丼と生ビールでお待ちのお客様―」
「ありがとうございます……」
やってしまった……。まだ酔いが残っているらしい……。
コロッケうどんにカツ丼に生ビール――これ、完食できるかしら。
思えば私、何かに流されてばかりだわ……。
「……いただきます」
立ち食いそばで生ビール……。完全におじさんまたはおじいちゃんじゃない。
傍から見たら会社帰りのおじさん、もしくは競馬・競艇帰りのおじいちゃん――きっと悲壮感が漂っていることだろう。
「……ふふっ」
完全に変人。酔いを醒まそうと入ったそば屋でアルコールを飲み、そして一人ほくそ笑む女……。完全無欠の変人よ。
(わくわくさん、あんたは『コロッケうどん』になれ!)
そうよ、あんたのせいよ――ホームラン男。
あんたがコロッケうどんとか言うから、結局頼んでしまったじゃない。
「……」
コロッケうどんになれ――だって? このコロッケうどんが私?
「……」
まずはコロッケをひとかじり――うん、ごく普通のコロッケだわ。
(ただ、つゆを吸ってくたくたになったコロッケ――口の中でしんなりとほぐれて不思議な感触)
例えるなら、それは先程まで降っていた雪のような……。コロッケといえばパサパサなイメージがどうしてもあるけれど、つゆによってほぐれたそれが、口内でじゅわりと溶けて消えていく……。
後に残るのは衣の油――ただ、その油も余韻のようにどこか心地よくて。
(これは、なかなかいけるかも……!)
ただのコロッケではない。このしょっぱいつゆの風味も吸っている。
(もう一口……。いや、待って……!)
間髪入れずもう一口――しかし、とある考えが浮かぶ。
(このコロッケ、つゆを吸っていい感じになっているけれど……)
もう少し時間を置いて、更にくたくたになったコロッケを楽しむこともできるんじゃ……。
(それに、今度はこのコロッケの油がつゆに溶けて、完全なる一杯が出来上がるかもしれない……!)
コロッケうどん――恐るべし。
(可能性の化物ね……)
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