R-18 安価とコンマでダンジョンタワー攻略 Part2
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615:塔の主 ◆VfcsCSY7us[saga]
2019/07/27(土) 19:16:23.87 ID:oHYtXUDU0
「…変な人だな、あんた」

ヒイラギは向かいのチェアに腰かけながら言った。

「幸せを知らない、か。確かにそうかもな」

目に見えない何かを追うように、ヒイラギは宙を見つめる。

「アタシ、一族のしきたりとか掟とか言われるようなものにウンザリしちゃって。おじいやおばあと喧嘩して、故郷の村を飛び出してきちゃったんだ」

オルティナの指摘した通り、彼女が一族を抜け出したのは数年前のこと。

それ以来彼女はずっと一人で生き抜いてきた。

「でも結局アタシって殺しのこと以外なにも知らないから、食べていくためにやることと言ったらやっぱり暗殺稼業しかなくて…気がついたら賞金首。アタシの人生、なんなんだろって思っちゃうよ」

そう言って、ヒイラギは自嘲気味に笑みを浮かべる。

「今更故郷にも帰れないし、結局アタシ、殺し続けるしかないんだよね。ただ一人でさ」

徘徊する魔物や賞金稼ぎたちを返り討ちにしながら孤独な闘いの日々を続けるうちに少女の心はすっかり疲弊しきっていたのだ。

「はは。ま、助けてもらってこんなこと言うのもなんだけど、死んでたほうがいくらかマシ―」

ぎゅっ。

そう言いかけたヒイラギをふっくらとした暖かみのある何かが優しく包み込んだ。

(え…)

「ダメ。ダメよ、ヒイラギちゃん。そんなこと言っちゃダメ」

怒るようでもなく、咎めるようでもなく。

慈愛に満ちたその言葉は少女の心に沁み込んでいく。

「ヒイラギちゃんは幸せになっていいの。幸せがわからないなら、これから知っていけばいいの」

ワンピースの生地ごしに伝わってくるふわりとした温もりが妙に懐かしくて。

「だから生きて、ヒイラギちゃん。これが幸せなんだ、って思えるまで生きるのを諦めないで」

冷たく荒んでいた荒野に穏やかな安らぎの風が広がっていくように。

「な、なんだよ…」

ヒイラギの心が暖かなモノに満たされていく。

「なに…しったふうなコト…言ってんだよっ…アタシは…アタシはっ…」

視界が滲んで、目の奥が熱くなって。

いつしかヒイラギは―

「うっ…う…うぇっ…うぇぇぇっ…」

小さな子供の様に泣きじゃくっていた。

「うぁぁぁぁん…うぁぁぁぁっ…」

「よしよし。寂しかったね、ヒイラギちゃん」

胸元が涙と鼻水にまみれるのも構わず、嗚咽する少女の頭を優しくなでるオルティナ。

「大丈夫よ、ヒイラギちゃん。もうあなたは苦しまなくていの」

「だ、だって。アタシ、たたかうことしか、ぐすっ、しらなくてっ…」

「私が教えてあげるから。とても素敵な、女の子の幸せを…ね。ふふ…」

オルティナが慈愛に満ちた微笑をたたえながら…唇の端でちろり、と小さく舌をなめずるように動かす。

ヒイラギはオルティナの瞳の奥に宿る怪しげな輝きに気づくことなく…母に抱かれる子供の様に安らかな気持ちに浸っていた。

これから自分の身に何が起こるのか、知る由もなく―。


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