118:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/15(月) 10:49:05.03 ID:SWPDcXJr0
*
透子が雪を見たという、美術準備室。
何か手がかりがあるとすれば、残るはここだけだった。
佇んでいると、遠くから声が聞こえた。
「ジョナサン!」
それは《未来の欠片》による幻の《声》ではない。
「待って……!」
今この瞬間、確かに誰かが発した生の声。
振り向くと、廊下の真ん中に透子が立っていた。
透子はゆっくりとこちらにやってくる。
「……駆くん……」
透子は俺と、いつの間にやってきたのか俺の足元をうろつき回るジョナサンを見、それから視線を美術準備室の窓の外へ向けた。
この間と、ちょうど時間帯も見える景色も同じ。
窓という額縁に切り取られた一枚絵――強い西日の中、濃い緑を背景に、簡素な鶏小屋が建っている。
ありふれた夏の風景。
俺の目に透子が見たという雪は見えない。
透子の抱える不安を、俺は何もわかってやれていない。
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