151:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 12:58:33.29 ID:OU1b3DXA0
――だが、現実はそうではなかった。
『どうしたんだ?』
『……なんでもない』
152:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 13:37:53.27 ID:e2KAc5lx0
<第13話 流星>
倒れた透子をソファに寝かせ、目覚めるのを待った。
父さんや母さん、透子の家族たちは、俺たちに気を遣ってか庭に出ている。
153:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 13:40:23.49 ID:e2KAc5lx0
*
残ってどうするのかと思ったら、透子はまたしても予想もつかないことを言い出した。
「えっ? もう一曲?」
154:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 13:50:27.73 ID:e2KAc5lx0
*
眠れない夜を過ごした、その翌朝。
重たい身体を引きずるようにテントから出て、庭の水道で顔を洗い、縁側に腰掛けてぼんやりと考え事をしていると、父さんがコーヒーを持ってやってきた。
155:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 13:54:41.33 ID:e2KAc5lx0
*
いつかの井美雪哉のように、高山は俺を外へ連れ出した。目的地はカゼミチとのこと。用件も察しがつくので俺は従った。
以前会ったときより随分と吹っ切れたような、軽やかな足取りで歩く高山に続き、しばらく街を歩いていく。
156:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 13:58:19.46 ID:e2KAc5lx0
*
カゼミチの店内に入ると、高山は奥のテーブル席に向かった。
俺は彼女と向き合うように席を選び、そこに落ち着く。
157:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 14:00:58.24 ID:e2KAc5lx0
「それに、透子の存在が必要だったことは確かだ」
俺は透子と出会い、ついには《欠片》も聞こえなくなった。
その過程で彼女には随分と助けられた。
158:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 14:06:03.70 ID:e2KAc5lx0
「……いいことばかりじゃないわよ」
ため息をこぼすように、高山は言った。
「気づくってことは」
159:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 14:08:25.29 ID:e2KAc5lx0
*
高山に別れを告げたあと、俺は家に帰り、両親と今後の話をした。
母さんについていく、そう決めたと、二人に伝えた。
160:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 14:13:23.30 ID:e2KAc5lx0
*
流星群を見に行ってくる。
そう言って家を出て、俺は日乃出浜の街を歩いた。
161:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 14:15:58.67 ID:e2KAc5lx0
「今日、流星群が見られるらしい。花火みたいに見えたら最高かな」
「また一緒に、花火が見られたらいいね」
来年の花火をまた二人で――透子の願いに応えられないことに、胸が痛む。
162:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 14:18:39.27 ID:e2KAc5lx0
「そうか……。一人で見たのか」
あの時、俺はみんなと確かに約束した。
『一緒に花火を見に行こう』
163:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 14:23:14.31 ID:e2KAc5lx0
「その俺は楽しそうだったかい?」
「うんっ、とっても」
透子の笑顔を見る限り、その世界の俺はかなりうまくやっていたらしい。
164:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 14:29:06.26 ID:e2KAc5lx0
正直、透子の『なんでもない』には随分やきもきさせられた。
けれど、今はそれも透子らしさだと思える。
俺も少しは透子のことをわかってきたんだ。
165:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 14:32:04.71 ID:e2KAc5lx0
まだ起こってない、だけど、きっと、これから起きること。
それが、透子の出した《欠片》の答え。
確定した未来ではなく、可能性であったり、希望であったり、はたまた仮想であったり。
166:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 14:39:26.44 ID:e2KAc5lx0
「……でも、どうして私? 私、冬の花火のときも、駆くんに何もしてあげられてない。ただ、駆くんの気持ちが少しわかったような気がしただけ。なんにも……なんにもしてあげられてないよ?」
なんにもしてあげられてないなんて、そんなこと、あるものか。
安らぎをくれた。気にかけてくれた。色々なことをわからせてくれた。特別な場所に招いてくれた。幼い俺の夢を叶えてくれた。そして何より――、
167:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 14:47:28.38 ID:e2KAc5lx0
*
「星、見えないね……」
そう言うと、透子は「そうだっ!」と何か思いつき、持っていた包みを解いた。
168:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 14:50:05.99 ID:e2KAc5lx0
*
「ねえ、駆くん」
「なに?」
169:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 14:58:01.68 ID:e2KAc5lx0
†
いくつもの季節が巡り、俺は母さんと渡り鳥のように世界各地を飛び回った。
彼女とはあれから一度も会っていない。
170:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 15:04:34.29 ID:e2KAc5lx0
†
久しぶりの帰国が決まったのは、いよいよ本格的に夏が始まろうという時期だった。
俺と母さんは、かつての国名を冠するガラス工芸で有名な、海上の街に滞在していた。
171:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 15:56:11.54 ID:e2KAc5lx0
ご覧いただきありがとうございます。
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