158:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 14:06:03.70 ID:e2KAc5lx0
「……いいことばかりじゃないわよ」
ため息をこぼすように、高山は言った。
「気づくってことは」
ハッとして、俺は顔を上げる。
発言の意図を探るように見つめていると、高山はむずがるように目を細めた。
「……なに?」
「井美雪哉のことか?」
図星だったらしく、高山は恥ずかしさに顔を赤らめた。
しかし過度に照れることはなく、むしろ誇らしげに井美雪哉のことを語った。
「……そう、ユキのこと。言葉なんかなくても、あいつが何考えてるのかすぐにわかる」
相手が何を考えているのか、言葉を交わさなくてもわかる。
そんなことができたらいいと思っていたけれど、違うのか?
たとえ完全に分かり合えたとしても、それはそれでいいことばかりではない、と……?
俺は高山と井美の関係を思う。
分かり合えなくて、ではなく、分かり過ぎるほど分かってしまって、互いに傷ついたのだろう、二人のことを。
「……確かに、それは少し厄介そうだ」
高山の忠告を吟味するように、俺はコーヒーに口をつける。
「――それで」
高山は急に雰囲気を変え、どうしてか心配そうな顔で、こちらを見据えた。
「カケル、あなたはいなくなるの?」
質問の形を取っていたけれど、高山は俺の答えを必要としていないようだった。
「なんだかそんな気がして……」
そう言う彼女も、どこか遠くへ行ってしまいそうに、俺には思えた。
171Res/212.06 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20