160:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 14:13:23.30 ID:e2KAc5lx0
*
流星群を見に行ってくる。
そう言って家を出て、俺は日乃出浜の街を歩いた。
坂が多く入り組んだ街並み、海からの風、潮の匂い、やまない蝉の声、甲高く鳴く鳶。
ほんのひと月しか過ごしていないのに、不思議と懐かしく感じる。
懐かしく、名残惜しい。
最後にやってきたのは、あの高台だった。
草の上に寝転がり、目を閉じて、耳を澄ませる。
《欠片》は聞こえない。
けれど、待ち人は現れた。
さっ、さっ、と草を踏む、柔らかい足音が近づいてくる。
「……駆くん?」
目を開け、声のしたほうを見て、俺は待ち望んでいた人の名を呼ぶ。
「透子……」
上体を起こして、俺は彼女を見つめた。
本当はすぐさま立ち上がって、迎えにいきたい。でも、できなかった。
透子は穏やかな表情で俺を見つめたまま、すぐ目の前までやってくる。
「横に座っていい?」
その言葉だけで、霧が晴れるように、救われた気持ちになる。
「……ああ」
扉を開いて、部屋へと迎えるように、俺は微笑む。
透子はごく自然に、怖がることなく、俺の隣に腰を下ろした。
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