何も無いロレンシア
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1: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 02:25:59.22 ID:zJUkddjZ0
プロローグ




 彼には何も無かった。

 これを聞くと笑う者がいる。

 何を言う。そいつに目は無いのか? 耳は無いのか? 命は無いのか? 何かあるんだろ? 大げさに言いやがって。

 そう笑い飛ばした者も、彼を直に見ると凍りつく。

 彼が立ち去り、なんとか顔に血の気が戻ると唇をわなわなと震わせ、かろうじて呟くのだ。



 何も、無かったと。



 彼を例えるのなら戦場の荒野。

 戦場を連想させる男ならいる。歴戦の勇士がそれにあたるだろう。

 しかし彼が連想させるのは、戦争が終わり荒れ果てた後のこと。はらわたから糞が漏れ出て、光を失った死体の目玉をついばむカラスの光景が自然と思い浮かぶのだ。

 目の前で生きている者が、ただひたすら死を連想させる。それも[ピーーー]姿、死ぬ姿ではなく、とうの昔に終わって野ざらしとなった死体の光景を。

 それほどまでに、彼には何も無い。

 だから彼はこう呼ばれる。

 “何も無い”ロレンシア。

――これは地獄を生きる彼が、他の人にとってありふれた、しかし彼にとっては命がけの願いを掴みとろうともがく物語。


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