245: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/08/19(月) 00:10:38.15 ID:jYO41k6b0
「……勝ったんだね」
地平線に沈もうとする太陽を望みながら沙織さんが言う。背後ではヘリが飛ぶ轟音が時たまする
「うん……」
「そうですね……」
実感が薄いというのもあるが、何か落ち着かない。もしかしたら澤さんが離れた場所で涙を流しているのも影響しているかもしれない。夕日が明るさを失い、次の試合会場への移動に向けてトラックに戦車が載せられ、カバーが掛けられる。
闇に落ちる空を各々が各々それぞれの思いで見ている。その空の星を数え始めた頃、静粛な空気を破るように声が掛かる。声の主は河嶋さんだ
「どうしましたか?」
「いや、ただ手紙を預かっただけだ。冷泉、お前宛だ」
右手に持っていたごく普通の手紙を麻子さんに手渡す。河嶋さんから渡されたハサミで封筒の封を切り、三つ折りの紙を開く。
彼女が開かれた紙を見ていた時間はとても短かった。すぐに手を離すと、手紙は左右に揺れながら空中に身を委ねる
「麻子、どうしたの?」
沙織さんが声をかけ、肩を叩く。かつて手紙に向けていた視線の向きから変化はない
「……なんでもない」
「なんでもないわけないじゃん!なんなのよ!」
「冷泉さん、話してください」
沙織さんと華さんがそれぞれマコさんの肩を握り揺さぶる
「……おばあが倒れた」
「……えっ?」
「冷泉殿のお婆様が倒れられたのでありますか!一大事であります。一刻も早く病院に向かいませんと!」
「といっても……親族の方は?」
「……麻子が小学生の時に両親が交通事故で亡くなったの。だからおばあちゃんが唯一の肉親」
最悪な環境で悪い話を聞いたものだ。なんとかしたくなるじゃないか
麻子さんが会いに行ける策を必死に考えようとした。僅かな可能性でも探そうとした。しかしどう考えてもその壁を乗り越えるのは無理だった
708Res/678.46 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20