501: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/10/17(木) 20:39:25.83 ID:zgNk9AA8O
その時でした。首の後ろを一筋の風が吹き抜けます。後ろの髪の数本が自分ではなくなります。耳元では鼓膜がちぎれんばかりの音が轟きます。壁には弾丸がめり込み、その周辺も放射状にひび割れていました
恐る恐る左を見ると、高く挙げられた姉の銃からは縦に煙が登っています
「まさか撃たないとでも思っていたのか?お前が黒森峰、ひいては西住流の敵となるなら、遠慮なく頭に撃ち込むぞ」
恐怖で支配され、声帯は固定されました。考える余裕は全くありませんでした
「さあ、やれ」
姉は次弾発射の用意を終えて冷酷に言い放ちます。私はハンマーを移動させましたが、手の震えで狙いが定まりません
すると姉は部下2人に指示をして、床にいた者の肩を掬い上げて、頭が銃口に当たるようにさせます。目の前の者はあと数分もないことに気づいたのか号泣し、口を塞がれていても分かる程大きく嗚咽を繰り返しています。その目は路上に捨てられた猫が助けを求めるようでした
「さあ、早く。なんなら私がこいつを撃った上で、お前を銃床で殴り殺すか?確かに反逆者に銃弾を捧げる価値もなさそうだしな」
姉が銃口で左側頭部を突きます。次はありません。生きることが、全てでした
私は大きく息を吐いたあと、目を瞑り指に大きく力を込めました。先程と同じ大きな音がして、私の指には温かい液体がかかります。その者の背中側には、放射線状に広がるヒビの入ったコンクリートの壁がありました
涙を流さなくなったその者は肩を離され、力なく顔からコンクリートの床に倒されました。私の手はその時が限界でした。手を滑らせて床に落ちるモーゼルの音は私の耳に焼き付いています
「よくやった」
「西住みほ伍長、万歳」
姉が銃を降ろし、左手で肩をたたきます。周りの者も右手を掲げて敬礼します
「これでお前は本当に我々の一員となったのだ。ただ銃は手放すなよ。暴発されたら厄介だ」
その時から、私は命のやり取りの場でも冷静になれるようになってしまったのです。そう、これよりはマシだ、と
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