614: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/11/10(日) 23:12:34.80 ID:E1fl5AjpO
その時、視界の右側から二本の筋がパンター目指して流れた。その内一本がパンターの側面に当たり、黒い煙が砲塔から砲身までまとわりついた
「おっ」
顔を出し左に向けると、破壊され中が見える建物の一番上で、愉快げに手を振っている人を視認できる。茶髪ロングである
「沙織さん……」
その隣に棒を構えたままの優花里さんを認めたのとほぼ同じくして、IV号はさらに素早く車輌を後退させ始めた。パンターは車輌丸ごと燃え続け、音と煙をあたりに撒き散らしている
だが動かない。彼女らは私を見つけたらしく、何を言っているのか、どんな表情をしているのかは分からないが、身ぶりを交え何かを伝えようとしている。しかしそんなことする暇はない。もう既に彼女らの立ち位置はバレているし、そして今まさに撃破した戦車の裏から、ティーガーIが砲塔をそちらに向けたまま接近しているのだ
このまま彼女たちを失うのは今後の戦略的に損失が大きい。いや、それ以上に私が、私が彼女らを失いたくない
逃げろ!その場を離れろ!早く……持ち物なんざ捨ててどこかに行け!
今から近づいても間に合わない。せめて逃がそう。我を忘れんばかりに声を届けようとした。しかしそれは燃え盛るパンターの音と先程から増してきた他の場所からの砲撃音に邪魔される。死んでもなお邪魔するかこのやろう!
そして最早逃げる時間もなくなり、間も無くその砲塔のアハトアハトが建物の最上階狙って砲弾を撃ち込んだ。その建物の吹っ飛ばされる様子からは思わず目を逸らした
後に残るは、崩れる瓦礫の音と煙の増加。そして戦車は隅にいた私の前を気づくことなく通り過ぎていった
そして次の角を戦車が曲がると、やっと私はその建物から向こう側へと飛び出せた
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