【ガルパン】 不死の感情
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616: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/11/10(日) 23:15:49.92 ID:SASSSKiG0


向かい合ったティーガーII。砲塔はこちら。こちらは停止状態。絶望以外の何を捉えればいいのだろう。絶望の一部を一瞬で払い、とっさに麻子は両方のレバーをそれぞれ逆に力を入れて動かし、時計回りに超信地旋回を開始させた。足回りへの被害など考える暇は無かった

しかしそれは命中を避けるものでは無かった。ティーガーIIから撃たれた88ミリ砲弾はIV号の砲塔右後部に命中した。麻子は反動で運転機器に額を強く打ち付け、背中にも大きな痛みを感じた
頭を打ち付けたせいか少しばかり気を失っていたが、間も無く全身を痛みに襲われながら、何とか運転機器から頭を放す

「ううっ……背中をハンマーでぶん殴られたみたいだ……」

何が起きたかは分かっている。痛みが特に強い背中に手を当てると、生暖かい液体が手に着く。戻してみると右手の平全体は完全に、一部の隙間もなく紅に染まっていた。有能なだけに麻子は分かってしまった
焦げ臭い匂いがする。自分でさえこれなのだ。背後が怖い

恐る恐る後ろを振り向くと、空が見える。青い。しかし、赤い

「五十鈴……さん……」

もう砲手五十鈴華の顔は写真か想像でしか見ることはできない。もう、砲手席に腰掛けたその身体は目も、鼻も、口も、耳も、長い髪も有していない。両手を降ろした手と胴と足だけがそこにはあった

「クッ」

涙を堪えつつレバーに力を入れて、再び車輌を前に動かした。幸い、動きからしてエンジンに大きな支障は無いらしい
逃げなきゃ。とにかく、ここから。私たちは黒森峰には屈しない。西住さんを生かそうとする限り。表情も声もないが、きっと五十鈴さんも同調してくれるだろう
外では何かが起こっている。エンジン音に混じって続く砲撃の音。何だ。何が起こっている。そして、何ができる?




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