馬場このみ「よい夜に、初めての」
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5: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2019/12/17(火) 02:37:43.49 ID:YE8hyfTS0

「突き飛ばす、とか、そういうのは……」

「……いや、その……私も、かなり強引だし」

ここに来て臆病風に吹かれる。何をしているんだ私は……いや、きっとここで終わっても良いと、心のどこかで思っているんだと想う。ここまでしておいて、何を言っているのだという話だけど

彼に彼女がいないことを知った、彼の恋人になれるかもしれないと喜んだ、けれど、向こうもそうだとは限らない。プロデューサーは私の事を、一アイドルとしてしか観てないかもしれないのだ

すると、彼の腕が私の背中まで回った。そのまま、密着する。腕にも筋肉が付いてるんだ、とそのとき知った

積み上がってもないムードが壊れたまま。彼はおずおずと、拙い口調で言葉を紡いだ

「俺は、その」

彼はまた謝罪の言葉を吐いた。その後に、自分はダメな奴だと、プロデューサーであるのに、抱いてはいけない感情を得てしまったのだと語った。

今日、私に嘘を明かしたのは、私にそう思われているのが嫌になってきたから、だとか。こうなるとは、一切予想していなかったけど、とも言っていた

私はそこまで飲んでいない。お酒を呑ませることに注視して、飲む方は全くだった。でも、お酒を呑んだときよりもずっと顔が熱くなって、呼吸の仕方を忘れかける。胸の奥が締め付けられる。その痛みが心地よかった。

抱き締める彼の頬へ手を添え、軽く唇同士を触れ合わせた

「それ、嘘じゃないわよね?」

「……絶対に、違います」

いつも事務所のアイドルを引っ張るっているときのような、頼もしい声色だった。

私達は大人だ。『たった一度』、『今回限り』、『明日になれば二人とも忘れる』、『お酒を呑んだせいで』。言い訳の言葉ならいくらでも使える。嘘も二人なら貫き通すことが出来る

「できるなら」とお願いの言葉を言おうとして止めた。聞いたらきっと、彼は「ダメだ」としか言えない。彼はプロデューサーで、私はアイドルだから

だから、言葉の代わりに、近くにあった手を握って、彼の指輪を外した



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