白石紬「う、うちがセクハラに弱すぎ……?」【R18】
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9: ◆FreegeF7ndth[saga]
2020/03/20(金) 23:16:10.38 ID:0kmcNV+Co

※08

「き、きす……くちづけ、接吻のこと、ですよね」

 まだプロデューサーの指の感触も生々しく残る私のくちびるは、
 たどたどしい応(いら)えをこぼすのが精一杯。

 私から腕を離して、私の正面に舞い戻ったプロデューサーは、
 ――『セクハラ対策としては厳しすぎる気もするが』など、と。

「あなたは、私を気遣うのか、私に厳しくするのか、どちらなのですかっ」

 私も、女……女の子、なのです。キスに、人並みの夢を見ます。
 こんな、情緒や浪漫のカケラもない場面で、くちびるの操を捧げるなど……という葛藤もあります。

 ただ、プロデューサー……あなたに関して言えば。
 あなたのせいで、キスよりもずっと重い覚悟の必要なことを既にしているわけですから……。

 そうです。今更あなたとキスするなんて、動揺することでは。
 だから、抵抗する気が起きないだけ、で……。

「あ、あなたは、私なんかと、その……キス、したいの、で――」

 私は『したい』の部分を発声した瞬間に、
 口から出したばかりのそれが愚問である、と気づいてしまいました。

 プロデューサーは今さっき私のくちびるについて『味が知りたい』とのたまったばかり。
 しかもそれ以前に、私は、このふしだらを『あなたが楽しむためではない』とクギを刺したのに。
 これでは自分のクギを踏む醜態を――

 ――『したい、紬と、キス、したい』……と、聞こえたのですが。
 私の聞き間違いではありませんか。
 舌がおかしくなっているのですから、耳までおかしくなっていても、おかしくありません。

 あ……そ、そんな、何度も、言わんでぇ……わかりました、わかっています、からっ。

 プロデューサーがキスのことを話すので、ついそっちに視線を向けてしまいます。
 何の変哲もないはずの――私は誰かさんと違って人の顔をまじまじと眺める趣味は持ち合わせていないので、
 私が知らないだけで本当は特別なのかもしれませんが――あなたの口元。

 ……私がこんなにも浮ついてるのに、あなたは口元を引き締めたままですね。
 血色はまずまずのようですが、かさついている具合がします。
 リップクリームを塗ってはいかがでしょう。

 このくちびるでむさぼられたら、私は内側まであなたのものにされてしまうかもしれません。
 ……冗談にしても悪趣味な想像ですが、私にとっては笑って済ませられない夢想です。

 だって私は、まさにあの口車で、金沢から東京までやってきて、まるで別人に……

 え、ええいっ。何がおかしくて度を失っているのですか白石紬っ。
 そうです。これはスカウトのときと同じですっ。
 プロデューサーが『したい』とのたまって、私が、応じて。

 お、お、応じる……の、ですか……?

「そ、そうですね。くちづけですから。目を、閉じなければ、いけません……」

 細くなる視界の中で、正面のプロデューサーが屈んで、ゆるゆると私に近づいてきます。
 私の肩から、面輪にかけて、手をそえられ、指先で少し首をかしげるよう誘導されます。

「わ、わたし、その、はじめて、なので……うまく、できなくても、笑わないでっ――」

 私のためらいは、プロデューサーと私のくちびるの間で押しつぶされ、はかなく霧散しました。



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