大崎甘奈「キャッチャー・イン・ザ・バスルーム」
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21: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2020/04/22(水) 02:14:45.42 ID:GqcyeRvh0

「プロデューサーさん、甘奈のことを避けてるよね。ホテルに入ってから、ずっと」

浴室内は音が反響しやすい。全身を甘奈の声で包まれるような感覚がある

「プロデューサーさんは、プロデューサーだし……甘奈もアイドルだし、そうしない方が良いってのは甘奈もわかるよ。一緒のお布団で寝たりとか、そもそも、一緒の部屋に泊まったりとか。分かってる。でもね、分かってても、したいことだってあるの。」

そりゃあ気がついていた。俺だって馬鹿じゃない。甘奈が何かを期待しているような視線を投げかけてきているのは知ってた。甘奈が俺の事をどう思っているかも、知っていた。だからこそ、頑なに避け続けた。互いの合意があっても、駄目なことだってこの世にはある

「プロデューサーさんはそうじゃないだろうけど……甘奈は本当に、嫌じゃないから、嫌なんかじゃないから、全然大丈夫だし、むしろ……でも、強引になっちゃった。わがまま言い過ぎちゃった」

段々と小さくなって、言葉が途切れた

「…………甘奈、プロデューサーさんに嫌われたのかな。言うこと聞かないし、変なこと言っちゃったし……失敗しちゃったなぁ」

さっきまで淡々と語っていたのとは違う。いや、さっきまでなんで淡々と語っていたのか分かった。

堪えていたんだ。抱えた分が漏れないように。頬を濡らして、声を震わないように

「ごめんなさい、プロデューサーさん……明日から、ちゃんと言うこと聞くから……」

鼻をすする音が響く。まるで懺悔をするかのように、自分が抱えた感情を甘奈は潰していく

違う。違うんだ。甘奈は何も悪くない。悪いのは俺の方だ。懺悔も俺がするべきなんだ。ハッキリとさせずに、回答を浮つかせたまま、後へ後へと先延ばしにしてきた俺が悪いんだ

ちゃんと断るか、全てを背負う覚悟で受け入れるか。そのどちらも選択しなかった俺の責任なんだ

「…………話して、泣いたら、スッキリしちゃった。じゃあね、おやすみ」

明るい――取り繕った声だった。俺は、口を塞いでいた手を伸ばす。ここでおやすみをしたらダメだ。甘奈に取り繕わせちゃダメだ。甘奈に『嫌ってる』なんて、思われたままは嫌だ

カーテンを掴む、まだ濡れていた。思いっきり開けて、甘奈と対面する。甘奈は驚いた顔をしていた。向けられた目は、周りが赤くなっていた

「えっ、ちょ、プロデューサーさん、起きて」

赤いだけじゃない。まだ指で拭っている途中だ。

固い浴槽の中で縮こまっていたせいだろう。身体が痛む。思うように動かない。関節が硬い。それでも、甘奈がドアにかけた手を取った

「いつから起きて――」

「甘奈、俺は……」

俺は、と言葉を続けた。今まで先延ばしにしてきた事の回答を、今ここで甘奈にする。甘奈の耳へ答えが届く。一瞬固まってから、甘奈は泣いて、それから笑った。今度の涙は、俺のガウンで拭われた。




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