月岡恋鐘「長崎で逆レ●プが人気? そんなわけ無かよー」
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4: ◆FreegeF7ndth[saga]
2020/04/19(日) 23:34:57.20 ID:gtMoMWxlo

※03

「燃ーえろよ燃えろーよー♪ ……っていうには、ささやかな炎やけど、じゅうぶんたい!」

 恋鐘は荷物からインスタントコンロを取り出して包装ビニールを引き裂き、ガスライターで火を点けた。
 冬場にコンビニなどで売っているアルミ鍋の鍋焼きうどんに使われているような容器の中に、
 網と木炭と着火剤が入っていて、屋外で気楽にグリルが楽しめるシロモノだ。

「クーラーボックスやなんやら抱えてたから、釣りでもするのかと思ったが……そういうことだったのか」

 瀬渡し船に乗る前、恋鐘はクーラーボックスや大きなリュックを抱えていた。
 見かねて荷物を肩代わりしたところ、それなりの重さだったので「何の荷物だ……?」と思っていたら、

「和牛日本一の平戸牛、波佐見の肉厚シイタケっ。
 ジャガイモ玉ねぎニンジンも俵ヶ浦の赤土で甘ぁか育っとるっ。
 な・に・よ・り〜……おっちゃんおばちゃんがしっかり育ててくれとるから、
 夏だって、ばぁりうまか九十九島カキもあるたい!」

 恋鐘は無人島で地元の食材(こういうとき、恋鐘はちゃっかり平戸や波佐見を地元に含める)を使ったバーベキューと洒落込むつもりだったらしい。
 俺もすでにヨダレが口中に沁みだしてしまっている。なんだかくやしい。

「んふふ〜、んふふ〜♪ みぃんなよか子やけん、どんどん美味しかぁなってなぁ〜♪」

 俺は手伝おうとしたが、野菜も肉もすでにカットされたりタレに漬けこまれたりしてパックされており、
 恋鐘に「プロデューサーは黙って見とるよー」と押し切られ、座り込んで恋鐘を眺めていた。

 恋鐘は鼻歌交じりでエプロンがわりらしき上着を羽織ったかと思うと、
 網の上でぱちぱち音を立てる食材たちにあれこれ話しかけながら、
 刷毛でたまり醤油を塗ってガスバーナーで炙ってメイラード反応を煽ったり、
 小鍋に酒を注いでフランベの火柱を立てたり、もはや調理と言うよりパフォーマンスを繰り広げていた。

「恋鐘は、本格的にそっち方面で売り出そうか」
「そっち?」
「料理とか、グルメとか、そういう方面だ」

 俺の担当アイドルは恋鐘を含め5人いて、アンティーカと名付けたユニットでアイドル活動を進めていた。
 ユニットとしてはゴシック系の路線で、なんとか全国区の知名度を得るまでにはたどり着いているが、

「任せるたい! と言いたいところ……だけど、それって、きっと、ソロのお仕事になるんよね」

 ゴシック路線は、ユニットの5人がカラオケに行ったときのノリと勢いで決まったもので、
 それもここまである程度は突き進んできた。
 今は、各メンバーにとってほかにベターな売り方があるのでは、と検討する段階に入っていた。

 特に恋鐘は、アンティーカの中で(内側から見ていると、精神的支柱を担っているおかげで実感しにくいが)、
 一人だけキャラクターが家庭的で――それ単独ではぜんぜん悪い要素ではないのだが――グループを外から見たとき、いささか浮いているきらいがある。

 それもアンティーカという単位なら、ちょうどよいアクセントになっているのだが、
 月岡恋鐘というアイドル個人としてみると、もっとよい道が考えられそうなのだ。




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