月岡恋鐘「長崎で逆レ●プが人気? そんなわけ無かよー」
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◆FreegeF7ndth
[saga]
2020/04/19(日) 23:36:08.59 ID:gtMoMWxlo
※05
「プロデューサーどの。一献、どがんですか」
夕方、瀬渡し船で無人島から市街へ帰してもらったあと、俺は恋鐘の実家で晩酌のご相伴にあずかっていた。
珍しいことに、恋鐘の父親からお酒を誘われたのだ。
「娘からは、辛党と聞いとりますけん、どこまでお付き合いできるかはわかりませんが」
妙な雰囲気だと思った。
恋鐘の父親は定食屋を営んでいて、ふだんなら仕事の時間――これはまだ理解できる。きょうは恋鐘が帰省しているとのことで、店をお休みにしたらしかった。
帰省といっても、佐世保での収録の予備日が余ったので、恋鐘に予定より一日多く実家に泊まらせていくことになった程度であるが。
なお、そのことを恋鐘に提案すると、
『そんならプロデューサーもうちん泊まっていき! あんたホテル一人で泊まらせたら、
うちを休ませときながら、自分はパソコンば開いて仕事しかねん!』
と言われ、強引に月岡家に泊まることにされた。俺はそんなワーカホリックに見えるのか。
それはさておき。やはり妙な雰囲気だった。
恋鐘の父親の語り口が、かしこまっている――なぜだろう? 娘・恋鐘を預かる身として、俺は父親とサシで話したことも何度かあるが、こんなに固くなっている様子は初めてだ。
いつもは恋鐘に似て――恋鐘が似た、というべきだが――もっと気さくな物腰の人だった。
「お酒は好きで、正直飲むほうですが、一合でも五勺でもそれだけの満足ができます」
と返すと、父親は破顔一笑した。何がそんなに愉快だったんだろう。
酒の楽しみの多寡は酒量の多寡とぜんぜん違う、というのは上戸によく言われる(そしてよく忘れられる)心得のはず。
「プロデューサーどのに恋鐘が世話になってから、もうすぐ4年になると……ですか?」
「そうですね」
やっぱり恋鐘の父親はどこかおかしい。
初めて俺とオーディションで顔を合わせたときの恋鐘と同じぐらい、ぎこちない。
「長いもんですね……おかげさまで、あん子も別人のように立派になりまして」
「性格は、4年前から変わっていない気がします」
「これはご謙遜なされる」
俺や恋鐘からすると4年はあっという間だったが、親から見れば……まったく別の感覚なのだろう。
「恋鐘が『アイドル、なるばい!』とか威勢のよかこと地元で言うとったときは、
恥ずかしながら、おいは本気で言うとると思っておりませんで」
「実際にお仕事してもらうまでは、どれぐらい本気なのか私もわかりかねます」
かつて恋鐘から、父親と『ちょっと喧嘩しとると』『今はちょっとだけすれ違っとるけど……』とこぼされたことがあった。
どれぐらい前の話だっただろうか。すれ違いってそういうことだったのか。
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