月岡恋鐘「長崎で逆レ●プが人気? そんなわけ無かよー」
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7: ◆FreegeF7ndth[saga]
2020/04/19(日) 23:36:51.19 ID:gtMoMWxlo

※06

「……恋鐘と同じぐらいの頃、おいはジョージ・ベンソンにかぶれて、ギターば担いで上京したことがありまして」
「ジャズ、たしなまれるんですか」
「下手の横好きですよ」

 村上龍やら小玉ユキやらが描写している通り、佐世保はジャズが盛んだ。米軍第7艦隊が近いからだろうか。
 フラットファイブなど、恋鐘のお仕事でジャズバーをいくつか紹介した覚えがある。

「けっきょく、東京で芽の出ませんで……あん子に、そげん苦労はさせとうなか」

 父親の心配は、少なくともまったくの的外れではないと俺は知っている。

 なにせ俺との初対面で恋鐘は、
 『オーディションは全部、片っ端から受けとーよ』『それが……なぜか、全部不合格やったばい……』
 とのたまっているぐらいだ。

「でも、自分があっちゃん行ったくせに娘に行くなとは言われんけん、止められんで」
「それは……その……」

 それは、物分りがいい……と口走りそうになって、あやうく口をつぐむ。

「仲間ば連れて1年かそこらで、ちゃんとアイドルになって凱旋されると、
 娘といっても、恐れ入ってぐうの音もなかですよ」

 仲間、というのはアンティーカの面々のことだろう。
 アンティーカは結成1年ぐらい経って「W.I.N.G.」をぶんどってから、
 それぞれの地元で里帰りライブを組んでいる。
 北から青森、福島、神奈川、高知、そして恋鐘の長崎と出身地がややバラけているので、
 かなり苦労するのだが、みないつも以上に熱心に取り組んでくれて、期待以上の売上や反響を収めている。

 もっとも、ジャズがお好みらしい恋鐘の父親にとって、
 アンティーカのゴシック・メタルがお気に召したかどうかは……。

 俺の危惧を知ってか知らずか、父親は急に話題を変えた。

「カノコユリ、ご存知ですか?」

 恋鐘と出会って初めて知ったのだが、カノコユリは佐世保のシンボルとされている花だ。
 初夏から盛夏にかけてこのあたりの海岸に咲く。漢字で書くと「鹿の子百合」となる通り、
 白い花びらに赤い点々が鹿の子まだらについている。

「はい。まだ、咲いていました。きょう、九十九島のほうを歩いたので」

 出島に来たシーボルトが「このユリにまさるユリはない」としてヨーロッパに持ち帰り、
 (飛行機もない時代、真水の不足しがちな航海で持ち帰るのはたいそう苦労したらしい)、
 品種改良でカサブランカなどを産んだといわれている。



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