月岡恋鐘「長崎で逆レ●プが人気? そんなわけ無かよー」
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9: ◆FreegeF7ndth[saga]
2020/04/19(日) 23:38:35.66 ID:gtMoMWxlo

※08

 俺は月岡家の和室――客間なのだろう――に敷かれた布団に寝転がって、
 竿縁天井の暗くて見えるか見えないかという木目をぼうっと眺めていた。
 夕食も入浴も済ませて、いい具合に酒精も入って、心地よくはあるのだが、眠気がない。

 というのも、あれから恋鐘と、恋鐘の母親も晩酌に入ってきて、
 ハイペースでお酒が進んで『だいじょうぶか?』と思ったら、
 かなり早くお開きとなり(恋鐘いわく『佐世保が夜は早かよ』とのことだった)、
 だいぶ時間に余裕をもって床に入っていた。

 今は、ふだんの俺であればまだ就寝しない――下手をすると、事務所で残業している――時間だった。
 恋鐘が俺をワーカホリック扱いしたのも、こんな時間感覚のギャップのせいかもしれない。

 夏の夜なので、掛け布団は畳んだまま。薄物の寝衣とタオルケットでちょうどよかった。
 いつもと違う部屋、担当アイドルと一つ屋根の下というのは……どうかと思ったが、まぁ、田舎だから。
 仕事関係の人間を泊めるぐらいはあるのだろう。九十九島のときと違って、二人きりというわけでもない。

 ぼうっとしているうちに、自分の故郷に思考がふらふら飛んでいく。しばらく帰っていない。
 佐世保とは特に共通点もないところなのに、恋鐘と家族を見ているうちに郷愁を催した。
 あの、佐世保を田舎扱いできるほど栄えていると言えるかどうか、という――

「……寝とーと?」

 するする、という衣擦れのような音は、襖(ふすま)の開閉音だろう。
 声は……恋鐘に違いない。23だか24だかにしては、ちょっと幼く、ころころアメ玉を転がすような……

 返事をしようとしたのだが『ん、んんっ』ぐらいの、
 声だか寝息だかよくわからないぐらいの音しか口からでない。
 知らず識らずのうちに俺も疲れていたのか、恋鐘に何も返事してやれない……。

 用事か……? 頼むからあしたにしてほしい……。

「……から、ゆーたんよ……疲れ……でも、な……」

 恋鐘の声が途切れ途切れ。
 なんか足先に触れた気がする。

「ぷろでゅーさー……プロデューサー……うち、な……」

 どうしてか、金縛りにでもあったように体が動かない。
 するする、するする……襖? いや、これは、本当の、衣擦れ……か。

「……そいぎん、うち、プロデューサーに」

 ……昼間嗅いだ恋鐘の肌熱(いき)れ。

「こがね……恋鐘……ぇ……えっ」

 なんだかあんまり寝苦しくなったので目を開けると、
 目を閉じた恋鐘の顔が、吐息の混ざり合ってそうなほどすぐそばにあった。



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