30: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:40:27.26 ID:p0TmPlc30
男はにやりと下品な笑みを浮かべると、志希に向かって口を開いた。
「一ノ瀬志希、俺の事を覚えているか?」
腹部を押さえ蹲る志希を見下ろし男は一方的に語りかける。
「忘れたか?それもあるかもな。お前にとって俺はその他大勢の一人。
人生を潰したところで印象にも残らないか」
「ああ、アリだ。最高だ。孤高の天才が歯牙にもかけなかった一人の凡夫に殺される。
名前も知らない男に自慢の頭脳を使う間もなく殺されるんだ」
「長かった。この時を迎える為にどれだけ苦労したか。俺の勝ちだ。お前は確かに俺の手によって死ぬ。
俺はお前を殺し、なお生き続ける。これを勝利と言わずして何と言うんだ」
志希はゆっくりと顔を上げ、息を切らしながら呟いた。
「きょう、じゅ」
男は目を丸くすると、大きく笑った。
「これはこれは、光栄だ。一ノ瀬サマほどの方が俺を覚えていてくれるとは」
両手を広げわざとらしく喜ぶようなポーズをとると、男は呟いた。
「良かったな。納得はせずとも理解してあの世に逝ける」
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