宮本フレデリカは如何にしてこの世を去ったのか
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1: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:05:59.44 ID:p0TmPlc30
「にゃあお」

黒猫が鳴いている。
悲しげな鳴き声が一つ、また一つふわりと飛んで消えていく。

「にゃあお」

猫は鳴くのを止めない。
体の中に溜まっていき、抑えきれなくなったものを垂れ流すように。

「にゃあお」

壁にもたれかかる女性にしきりに頭をこすりつけ、
猫はただひたすらに鳴き続けた。
痛々しい血の赤に覆われながらも、彼女はどこか満足そうに微笑んでいた。
終わりを知らせる夕焼けが女性の髪を金色に照らす。
彼女の名前は「宮本フレデリカ」だった。


2: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:07:48.07 ID:p0TmPlc30
うだるような真夏の日光が容赦なく辺りに降り注ぐ。
黒猫は日陰ででろんと寝ころび暑さに耐えていたが、
不意に耳をピクリと立て、歩いてくる女性に跳びかかった。

「にゃはは、グッドモーニン♪」
以下略 AAS



3: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:09:09.16 ID:p0TmPlc30
冷房の効いた店内は快適そのもので、ソファに座った猫は軽く伸びをすると
早々に丸くなり寝る体勢に入る。
志希は猫の背中を撫で、メニューを手に取ると少し遠くにいる例のウェイトレスを見つめた。


以下略 AAS



4: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:09:44.14 ID:p0TmPlc30
その黒猫、キシは志希の飼い猫というわけではない。
志希がきまぐれに野良のキシを連れ歩き、さらにキシもそれに乗っているだけである。
更に言うと志希とフレデリカに特別な交流はない。
志希はフレデリカがアルバイトしている店の一常連に過ぎない。
しかし志希はほぼフレデリカ目当てで店に通い、
以下略 AAS



5: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:11:15.31 ID:p0TmPlc30
「へーっ、じゃあ何で辞めちゃったの?」

「んーっとね〜、……なんとなく♪」

「なんとなくか〜…じゃあ、仕方ないね」
以下略 AAS



6: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:11:52.91 ID:p0TmPlc30
その不可解な事件はメディアに取り上げられた。
怨恨からの殺人事件と考えたマスコミは、彼女の短期大学で取材をした。
彼女はとても人気のある女性だったという。
美しい金髪に整った目鼻立ちという外見はもちろん、
人の心に潜り込むようなフレンドリーな性格で男女問わず好かれ、嫉妬の対象にすらならなかった。
以下略 AAS



7: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:12:45.76 ID:p0TmPlc30
「はぁっ……ふっ……」

薄暗い部屋で女性が喘ぐ。悪夢にうなされているようだ。
酸素を求め金魚のように口を動かし、額には脂汗が滲んでいる。

以下略 AAS



8: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:14:22.14 ID:p0TmPlc30
待ち合わせ場所は喫茶店最寄りの駅前。
約束の時間から数分遅れ、志希は到着した。

「おはよー、待ったー?」

以下略 AAS



9: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:15:00.51 ID:p0TmPlc30
和気藹々と話しながら二人は切符を買って電車に乗った。
平日の朝とはいえ、ラッシュを過ぎた絶妙な時間で二人は難なく席に座ることができた。
志希はリュックを抱え、隣に座るフレデリカを横目で見つめる。
彼女は窓の外で流れる景色を眺めていた。

以下略 AAS



10: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:16:00.75 ID:p0TmPlc30

「友達とお出かけなんていつぶりかなー?」

フレデリカは外に視線を戻す。

以下略 AAS



11: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:16:38.47 ID:p0TmPlc30
志希は優しく彼女の目を見つめると、ゆっくりと再び窓の外に視線を移した。

「あたしはこういうの初めてだよー」

「えっそうなの!?」
以下略 AAS



12: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:17:45.75 ID:p0TmPlc30
志希がリュックの口を開くと、黒猫がニュッと顔を出した。

「わー、キシちゃん!来てたんだー!」

キシはリュックから飛び出ると、座り込んで毛繕いを始める。
以下略 AAS



13: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:18:24.95 ID:p0TmPlc30
駅を出た二人は、特に目的もなく歩き出す。
じりじりと蒸し焼くような暑さと鼓膜を劈くような蝉の鳴き声が二人に襲いかかる。
絶え間なく流れ出る汗を拭い、ぱたぱたと手で扇いでいると、神社の境内に露店を見つけた。
アイスクリームと水を買うと、リュックから猫を出して木陰で涼む。
しばらく休んだ後、鈴を鳴らして何処の何かも知らない神様を拝んだ。
以下略 AAS



14: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:19:14.23 ID:p0TmPlc30
とある雨の日の事だった。
彼女の家に、遠い親戚を名乗る男が一晩泊めて欲しいと訪ねてきた。
急な来客にも関わらず、彼女たちは雨に濡れた男を嫌な顔一つせず招き入れた。
男は深く感謝し、翌日にはお礼として一家に手料理を振る舞った。

以下略 AAS



15: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:20:01.89 ID:p0TmPlc30
フレデリカはビクンと体を震わせると、
「いけないいけない」とつぶやき口元のよだれをナプキンで拭う。

「いいよー、あたしも疲れたししばらくゆっくりしていこ」

以下略 AAS



16: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:21:17.93 ID:p0TmPlc30
「あたしが小学生だった頃の話なんだけどね、やんちゃな男子がいたんだよ」

「って言うと?」

「女子のスカートをめくったり、オッパイ触ったりして」
以下略 AAS



17: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:22:50.61 ID:p0TmPlc30
「以上、即興の作り話でしたー♪」

「はー、はー・・・エヘン、ありがとーございましたー♪」

笑いすぎて溢れてきた涙を拭うと、ぱちぱちと拍手して讃える。
以下略 AAS



18: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:24:32.87 ID:p0TmPlc30
フレデリカは志希を見つめる。

穴が開くほど、じっと、ぐりぐりと見つめ続けた。

「見た目は人間と同じだよ」
以下略 AAS



19: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:25:49.58 ID:p0TmPlc30
フレデリカは親指と人差し指を伸ばし顎に手をやる。

「ふむふむ・・・他の人と同じだけど、人間ではない・・・」

目を瞑ってうんうんと唸り続けると、尋ねた。
以下略 AAS



20: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:26:26.07 ID:p0TmPlc30
「皆何かしら違うもん。シキちゃんの顔も、匂いも、ふわふわでツヤツヤな髪も、同じ人なんていないよ」

「違ってるのがフツーなんだよ」

優しく微笑みかける。
以下略 AAS



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