天空橋朋花「子作り逆レ●プのお供と言えば葡萄酒ですよ〜」
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24: ◆FreegeF7ndth[saga]
2020/05/11(月) 23:31:57.34 ID:i9qakCF1o

※22

 朋花は怒らなかった。逆に俺の腹の底からむかつきが突き上げてくる。
 朋花には、クソほど似合ってない哀れっぽいツラが鼻につく。

 朋花は可哀想ぶっていた。
 恵まれた才能と積み重ねたレッスンの賜物か、可哀想ぶりは綺麗で強くて俺は気圧されていた。
 このまま朋花を汚してやれば『聖母』は死んで晴れて悲劇のヒロインだ。
 
「……もう、どうでもいいことです」
 
 朋花はそれを望んでいそうだ。

「あんたにとっちゃどうでもいいでしょうけどね――ねぇ?」

 俺はまっぴらごめんだった。
 朋花の熱と匂いは、甘く、つけすぎの香水のように不愉快だった。

「俺は、まだ根に持ってるぞ。お前、俺が反対しているって知ってて、二回も空を飛びやがった」

 今しがた『Maria Trap』をうっかり口ずさんだせいか、あの時の憤懣までぶり返す。
 この『聖母』の亡骸か枯尾花のような朋花に何を言っても今更遅いのに、出てきてしまう。

「お前『聖母』が嫌になったと言うなら、こっちもなかったことにしてくれよ。
 そのためにわざわざこっちに来てくれたんじゃないのか、なぁ、朋花――聞いてるか俺の話――」
「――く、ぁ、ぅあ……わ、私、は……ぁ……ッ」
「そうだな、無理だな。『代案が必要です』とはこのことだ」

 暑苦しくなってきたので、朋花の体を剥がして立ち上がる。
 狭い部屋。小さい座卓に、冷めた知覧とヨックモック。
 朋花のそばにMac Bookとミニキー。

「腹減った。朝メシ買ってくる……そういえば、朋花は? 朝食べたの?」

 満足な朝食を摂ってきた顔にはとても見えなかった。

「……あらあらお腹がグルグル歌ってる、あれれれ頭がクラクラ踊る」

 腹の虫の音なんか聞こえなかったが、いっそ鳴ってくれと気分で口ずさんだ。
 そのまま朋花の顔をじっと見つめていると、やがてかすれ声で俺に続ける。

「……忘れず食べよ、きょうの朝ごはん」

 ぜんぜん『聖母』らしくない。素の朋花、そんな歌い方するのか。
 もう俺にとってもどうでもよくなった。

「居座るんなら、食費と光熱費は出してくれ。もう『聖母』なんか知らない。
 『Nicola Copernicus』――そこにいるでしょう、できるでしょう。さぁ作って見せて。
 ……俺にとっては名付けた子なんだから。たかが1曲2曲で死なれたらがっかりだ」

 そうして俺から見た朋花からは、それだけが残った。
 以前には用意できなかった代案になるのか……さぁ? それしか投げつけてやる案がなかった。

「あぁ、できるんなら、マナを降らせてくれたりパンを増やしてくれてもいいぞ」
「……そんなことできないってわかってるくせに」
「本当にできない? 残念だ……」
「人を何だと思ってるんですかっ」

 ぷりぷりしはじめた朋花を部屋に残すのが不安だったので、いっしょに朝餉を食べに行った。
 空腹が解消されたらしき朋花は、帰ってそうそう俺の部屋にあったイヤホンの一つを、
 勝手に自分のMac Bookにペアリングしてミニキーをいじりはじめた。俺も仕事を始めた。



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