535: ◆WEXKq961xY[saga]
2020/12/02(水) 22:17:45.53 ID:dRBcb8qO0
「はい。社長秘書の阿舞です。…申し訳有りません。社長は只今、取り込み中でして。…はい、はい。では、後ほど」
携帯電話を仕舞った、30代頃の女。一人用のソファに腰掛ける彼女は、普段はきっちり纏めている髪を下ろし、素肌に白いバスローブだけを着ている。
そこへ、一人の男が歩いてきた。濡れた白髪交じりの黒髪を垂らして、女と同じくバスローブを纏っている。
「やあ、誰だったね」
古めかしいラベルのワインと、2本のグラスを手に彼女の向かいのソファに深く座ると、男はワインのコルクを指で引き抜いた。
女が欠伸しながら答える。
「外交部長でした。ナイーブによる戦闘地域への被害の隠蔽工作が、これ以上回らないと」
「ああ」
男は苦笑しながら、ワインをグラスに注いだ。片方を女に差し出し、片方を自分で取り上げる。
「彼は脱走兵を、相当恨んでいるからね。交戦する度『色々』撒き散らしたくなるのだよ。…さて」
女がグラスを持ったことを確認すると、彼はソファの横の、大きな窓から外を見た。
そこには、光り輝く巨大な鉄塔が堂々とそびえ立っていた。頂点から雲に投影された、『ミライタワー』の文字。
「ミライタワーに、そしてリーヴォの理想に」
「乾杯」
2人…社長と火廻は、グラスを打ち合わせた。
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