R-18 安価とコンマでダンジョンタワー攻略 Part3
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176:塔の主 ◆VfcsCSY7us[saga]
2020/08/22(土) 12:56:54.71 ID:t/8s5NQ40

「聞こえなかったのか。 一億だ」

ざわ…ざわ…

客たちがざわめきだす。

いくら極上の福娘といえど、一日限りのお楽しみで一億とは。

ミルキィでさえ、あっけにとられたような表情を浮かべている。

「…お客様。一億。本当に、一億でよろしいので?」

務めて冷静に、オークラ氏が念を押す。

「何度も言わせるな。俺にはそれだけの額を出す理由がある」

「はい、ちょっと失礼」

壇上の脇から、オークションの成り行きを見守っていた柚が現れた。

「一億とはまた豪気なお支払いで。 そやけどお客様…本当にそれだけの代金、支払うてもらえるんどすかねぇ?」

確かに…他の客は大金のぎっしり詰まったカバンを携えているのに、彼が所持しているのは手にした小さな箱のみ。

「確かに現金などない…しかし、代わりにこれを持ってきた」

男が箱を開くと、中にはオークラ氏の拳ほどの大きさの石が収められていた。

「おきつね堂の支配人、柚。 貴様にならわかるはずだ。これが一体なんなのか」

最初は訝し気な表情を浮かべていた柚であったが、箱を覗き込んでいる間に彼女の表情がみるみるうちに変化していく。

「この石…いや、これは…まさか…

『黒竜黄丸(こくりゅうおうがん)』」

ざわざわざわ…と周囲から驚愕と疑惑の声が上がる。



黒竜黄丸。

年老いたブラックドラゴンの胆石である。

肉体の強化、不老の効果、あらゆる病への効能があるとされる最高級素材であるが、ブラックドラゴンが希少な上に討伐が非常に困難であるため、市場に出回ることは殆どない、まさに幻の逸品である。

無論、この手の素材にはニセモノが出回ることもよくあることだが…



「間違いあらへん。昔おばあ様に欠片を見してもろうたことがあります…けれど、これほどの大きさとは…」

食い入るように石を見つめる柚。

壇上のオークラ氏はそんな柚の横顔に思わず見入っていた。

彼女がこれほど真剣な表情を浮かべているのを見るのは初めてである。

ここまでの反応を見せるということは、やはりこの石は本物なのだろう。

「一億は下らない価値は有るはずだが…まだ納得はできないか?」

男は眉一つ動かさず、柚の返答を待つ。

やがて柚は「ふーっ…」と息を吐くと、男の顔を見据えて言った。

「オークラさん、商談成立や。オークション終了の宣言を」

柚の姿に見入っていたオークラ氏が慌てて姿勢を正す。

「は、はい。では…一億! 本日の福娘、ミルキィ嬢の落札金額は一億で、こちらのお客様に決まりました!」

オークラ氏はハンマーで卓上をダンダンと叩き、落札者が決定したことを宣言する。

パチパチパチ…

周囲の客たちが落胆の表情を浮かべながら拍手を送るも、落札者の男の視線はミルキィだけに向けられたままだ。

「えー、それではこちらの書類にサインを…って、お客様?」

ミルキィを落札した男は、書類を手にしたオークラ氏など気にも留めず、ミルキィの前に歩み寄った。



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