149: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 16:50:14.99 ID:iX/HvtXE0
十五
駅でお母さまのお姿を発見して、手を振った。
するとお母さまも私の方に気付いて、ぱっとお顔を輝かせた。
そして相変わらず人混みをものともしない優雅な調子でつかつかとお歩きになって、その品のある振る舞いは見ているだけで襟を正されるような思いがした。
お母さまは私の傍で「ふう」とひと息つくと、「わざわざありがとう」と嬉しそうにおっしゃって、それから目の前の私を頭からつま先まで眺めながら、
「素敵なコートね。似合ってるわ」
「お母さんこそ……長旅お疲れ様でした」
私ははにかみながら答えて、お母さまが重たそうに抱えている手荷物をいくつか預かった。
中身はどうやら私への仕送りのつもりで持ってきたお菓子だのフルーツだのが入っているらしかった。
「ゆかり、背、伸びたかしら?」
「そう?」
「ずいぶん立派に見えるわ」
お母さまは見上げるような仕草で私の頭に手をかざした。
実際、だいぶ前からお母さまの身長は越えていた。
とはいえ、ここ一年で特に背丈が伸びた覚えはない。
今度、事務所へ行ったら一応測り直してもらおうかしら、そんなことを考えていたら、お母さまが私の顔をまじまじと見つめておっしゃった。
「美人になったわね、ゆかり」
「もう、またそんな……お母さんほどじゃないよ」
しかしお母さまは大真面目に首を横に振って、
「なんだか、しばらく見ないうちにすっかり大人のひとになっちゃったみたい」
などとおっしゃるので、私は照れ隠しに「そうかなぁ」と首をかしげてはぐらかした。
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