186: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 17:24:33.85 ID:iX/HvtXE0
私はその後も質問を続けた。
彼女がここの住所を知った経緯は簡単なことだった。
彼女の元プロデューサーに連絡し、過去の肉体関係を盾に脅して私の情報を聞き出したのだという。
彼女は昔からそうやってプロデューサーを利用していたのだ。
かつて私とのドラマの共演を仕組んだのも、裏でそうした手引きが行われていたからだった。
そして、私の元を訪れようと思った理由も、些細な偶然がきっかけだった。
淫蕩な生活に明け暮れていた彼女は、ある日、同年代の女性と一夜の関係を持った。
その女性がたまたまアイドルに詳しかったために、紗枝ちゃんは正体を知られ、そして過去に出演していたドラマの話題からふいに私の名前も上がった。
その女性は、嬉々として水本ゆかりの現在のアイドル活動について紗枝ちゃんに話して聞かせた。
それが決定打になったのだという。
紗枝ちゃんは数日後には家を飛び出し、残り少ない貯金を全て下ろして東京まで赴いた。
紗枝ちゃんがベッドの上で滔々と呟いた。
「……一度は、ゆかりのこと諦めよう思うた時もあった。あの演奏会の時……ゆかりの演奏してる姿見て、ああ、もう手遅れなんや、って……ゆかりはもう、うちの知らない人になってもうたんや、そう思て……。せやからうち、ゆかりとは二度と会わへんようにしよう、そう心に決めてたんどす」
「…………」
「けど、ゆかりが楽しそうにアイドル続けてるの知ったら、そんなんどうでもよくなってもうた。うちのことなんかすっかり忘れたみたいに呑気に生きてるゆかりが、憎くて、憎くて、許せんかった……。ほんまはうち、ゆかりを殺そう思て東京に来たんどす。ゆかりを殺してうちも死のうって、それで家を飛び出て……けど、無理やった。うちにはそない度胸なかった。それどころか、ゆかりの姿を一目見て、ああ、やっぱし綺麗やって、こない愛らしい人を殺すなんてうちにはできひん、って、そしたらもう、わけが分からんくなって……」
「……ご両親には、何て言って出たの?」
「なんにも……今頃、うちのこと探してるかも分からん。けど、それももう、知ったことやない……」
すると彼女は突然、ふふっ、と笑い出して、いい気味どすえ、そう吐き捨てるように言った。
私は、そんな罰当たりな言葉を口にする彼女を咎めはしなかった。
それよりも別のことが気がかりだった。
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