【ミリマスR-18】初体験同士のPと莉緒が一夜を共にする話
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4:夢の半ば 3/17[sage]
2020/10/23(金) 18:19:53.29 ID:W50xWqsD0
 音を立ててグラスを置き、座椅子から体を起こした莉緒が、俺の肩を掴んだ。

「キミの……キミの視線を感じるから、もっと魅力的になりたい、って思い続けていられるのに」
「……り、莉緒」
「私、一人で勘違いしてただけだった? ただの担当アイドルの一人に過ぎない? 恋しちゃったら、迷惑……?」

 俯いた顔から絞り出される声が震えていた。

 百瀬莉緒という個人の守るべき将来、百瀬莉緒というアイドルを慕う数多のファンへの裏切り、発生しうるスキャンダルがもたらす損害、保たれているアイドル達の調和の崩壊……。道理に適った判断をするのならば、ここで俺は心を鬼にして突き放さなければならないはずだった。でも、どうやって……?

「迷惑だなんて、そんなわけないだろ……」

 結局、俺は、手を差し伸べていた。できなかったのだ。今、目の前で泣き出してしまった莉緒に向き合わず、将来のための最善策をとることが。今俺がしようとしていることは正しいか間違っているかと言えば、恐らく間違っている。でも、正しい行動をとったとしても、それが、誰にとって、どう正しいのか、誰が正しさを保証してくれるのか。仮に正しさを保証してもらったところで、何を代償にすることになるのか。一瞬迷う間に考えてみたけれど、きっと何時間かけても答えを出すことはできなかっただろうと思う。

「……ぐすっ……ちっとも振り向いてくれないじゃない……それどころか、私のこと避けて……」
「悪かった。でも、違うんだ。迷惑だなんて、思ってない」

 前髪の隙間から覗く莉緒の赤い瞳と目が合った。涙で濡れている所も綺麗だった。
 いよいよ、観念する時が来てしまったのかもしれなかった。

「……莉緒からアプローチかけられるの、嬉しかったんだ。仕事帰りに気軽に飲みにいったりできるぐらいに距離が近くて、スタイル良くて、色っぽくて。そんな同い年の女と仲良くいたら、特別視だってしたくなる」

 どう言えば状況をうまく治められるか、という考えを、抑圧されていた自分の本音が押し流していく。

「だけど、自分の担当アイドルに惚れてしまったプロデューサーなんて……許されないだろう。会社の大切な財産だし、アイドル個人の人生だってある。ファンだっている。そう自分に言い聞かせていたんだが、そんな間にも莉緒はどんどん魅力的になっていって……二人きりでいようものなら、気がどうにかなりそうだったんだ」

 半ば饒舌になりながら言葉を紡ぎ出している内に、肩が少しずつ軽くなっていくのを感じていた。

「だから……最近、二人で会ってくれなかったの?」
「……すまん」
「……ううん、いいのよ。……キミの気持ちも、分かったから……。ふふっ、両想いだったのね。嬉しい……」

 決定的な告白こそお互いにしていなかったが、俺が好意かもしれないと受け止めていたのは錯覚では無かったらしい。俺の本音も打ち明けてしまった。役割を担った社会人としての自分が水を差していたが、想いが通じたことには全身が熱くなった。手を伸ばせば相手をすぐに抱き締められる距離をもっと縮めたい衝動が突き上げるが、酒が回っていてもまだ理性は生きていた。

「……でも、お互い好きだからって、めでたくカレシとカノジョ、ってわけにはいかないわよね。自分を取り巻く環境のことが分からない程、幼くはないもの」

 莉緒が溜息をついた。同感だった。

「そうだな……。少なくとも、莉緒がアイドルとして進み続ける間は、俺はプロデューサーとして背中を押し続けたい」
「そうね。アイドル、やりがいあるし、楽しいし、まだ発展途上だもの。一緒に頑張ってる仲間もいるんだから、私も、まだまだ続けたいわ」

 空になっていた莉緒のグラスと、ひっくり返されたまま使われていなかった俺の分のグラスに、梅酒の残りが注がれていった。瓶の中にはもう空気しか残っていない。莉緒のグラスに残っていたグラスから氷をお裾分けしてもらい、同じ飲み方をするよう促された。甘酸っぱい香りと共に、濃い酒特有の、ヒリつくような熱さが口内に広がる。


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