天空橋朋花「夢の中ならレ●プしてもいいとお思いですか〜?」
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5: ◆FreegeF7ndth[saga]
2020/11/14(土) 14:36:14.14 ID:42YhWwR9o
※3

 アイドル・天空橋朋花は、文節末を伸ばし、アクセントの切り返しを緩やかにしている。歌ったり演技したりナレーションしたりするときを除き、すべての発声がそうだった。
 プロデューサーは、『間延び』が少女らしくなく、まさしく「保母さんが子供に言い聞かせる」さまに似ている、と言ったつもりらしい。朋花が『聖母』を名乗ることもあって、ファンや関係者や同僚アイドルの大半が、『間延び』が朋花のキャラ付けの一環だと思っている。

「保育士さんとは……言われれば、そんな気も、しなくもありませんが」

 けれど、プロデューサーや、あるいは朋花をアイドルデビュー前から知る一部の「子豚ちゃん」や「天空騎士団」は、むしろ「保母さん」が朋花の素に近いと知っている。

「朋花の言葉は、チクリと刺さるから。声音だけでも丸めてもらわないと、なかなか受けづらくて」
「刺さるような痛いところの覚えがあるから、刺さるのではありませんか」

 プロデューサーの『チクリと刺さる』と口にした響きこそ、朋花にも刺さった。
 朋花は規律を重んじるたちだが、朋花自身は「他人へ積極的に『秩序を守れ』と言って回る人間ではない」と自分を見なしていた。事務所で永吉昴が野球に興じていても、双海亜美がプロデューサーにいたずらを仕掛けているのを見ても、秋月律子や田中琴葉が注意すると思って口うるさく言わなかった(松田亜利沙が不審な動きをしていたときは、さすがに釘を刺した)。

「痛いところの覚え、かぁ……聖母をただの女の子扱いしたとき、とか」
「いつのことですか。私、覚えが多すぎて、もう」
「確か、冬のカラカラに乾いて寒いったらない夜の……あぁ、思い出してもらう必要はないな」

 朋花は、プロデューサーに右手首を掴まれていた。現実世界に置き去りにしたはずの体温と脈拍が、一気にここまで飛んできた。

「そういう自己完結、しないでいただきたいのですが……そうですっ、あなたは私に何の断りもなく、いきなりプロデューサーも事務所も辞めるなんて――」

 プロデューサーの手が、朋花の手首を掴み、彼女の体をぐいと傾がせた。
 いままでプロデューサーが朋花へ働いたことのない狼藉をされて、朋花は現実感をまったく抱けなかった。
 掴まれたままの手首は現実以上の圧迫感を訴えていた。




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