【ミリマスR-18】秋月律子「私、悪い子になっちゃいました」
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10:悪い子 9/20[sage]
2020/11/14(土) 23:59:50.57 ID:LClhfPZl0
 ここに座り込んで話し始めた時から、何となく雰囲気は匂わせていた。そんなことを言ってくるのではないか、という予測、あるいは希望を、持たないでも無かったが、いざ、律子の口からそんな甘い言葉を告げられると、頭がヤカンのように熱を放っているような気になってしまった。

「面接試験の結果……知りたいです。教えてください」
「え……? 面接試験って、俺に対する試験じゃなかったのか」
「あなたを試すとは一言も言ってませんよ。可愛い女の子いっぱい見てるから、きっと目が肥えてるんだろうと思って、おめかし、かなり頑張ったんですけど……私のこと、気に入ってくれましたか?」

 滲み出る、いじらしさや健気さ。元々持っていたものだったのか。アイドルとして生きる内に、身についたものだったのか。どちらかは分からなかった。だが、口元に笑みを浮かべているのにどこか自信無さげに揺れる律子の瞳――それを覗き見た瞬間、俺の中で何かが臨界点を振り切ってしまった。

「律子」

 華奢な肩を掴むと、律子は目を閉じた。鼻息がかかる。俺が――律子も――業を背負った瞬間だった。

「これが……俺の答えだ」
「……イエス、ってことですよね」
「ああ」

 よかった、とかすれた声で呟きながら、脱力した体がしなだれかかってきた。腰に手を回しても、律子は嫌がるそぶりを見せなかった。

「なけなしの勇気でしたけど、ちゃんと振り絞れました」
「ライブをたくさんやったおかげかな?」
「……そうかもしれませんね」

 甘い空気を吸い込んでいると、場に相応しくないビープ音が突如鳴った。昨日、夕方に仮眠をとるためセットして、止めたきり解除を忘れていたスマートフォンのアラームだった。ビープ音を停止させるために画面を見れば、自然と現在時刻が目に入った。視界の中にも、ちらほらと、その場を立ち去っていく人の姿が見える。

「もう、こんな時間か……」
「……あの……」

 立ち上がろうとする俺の膝に、小さな掌が被せられた。

「私、今日は……帰りたくないです」

 雲間から顔を出した月が、頬を照らしている。

「いいのか?」

 律子は、静かに頷くだけだった。


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