【ミリマスR-18】秋月律子「私、悪い子になっちゃいました」
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9:悪い子 8/20[sage]
2020/11/14(土) 23:59:10.99 ID:LClhfPZl0
 そうでしたっけ、と律子は口元を緩めた。懐かしむにはそれほど昔では無いようにも思うが、プロデューサーとして駆け出しだったあの頃は失敗だらけだったし、担当アイドルとのコミュニケーションだって上手くいかないことが多かった。律子だって、デビューをしてから苦労をかけ通しだったのに、よくここまで見限らずについてきてくれたものだ、と思う。

「素直でもない、可愛くもない私のために、こんな顔になって涙まで流してくれるなんて。そんなに大事に思われてたんだって。『私のプロデューサーはこの人しかいない、ずっとこの人と一緒に頑張っていきたい』って、あの瞬間思ったんです。そういう熱心な所、今でも尊敬してるんですよ?」
「そりゃ、光栄だな。ちょっと照れくさいが」
「……尊敬してるだけじゃ、ありませんけどね」

 左隣で、律子が、小さな声でぽつりと漏らした。海風が、切り揃えた前髪をさらさらと揺らしている。

「私、悪い子になっちゃいました」
「悪い子? 律子が?」

 そういうのがぴったり当てはまる子が、何人も頭に思い浮かぶ。「悪い子」なんていうのは、律子の生き方には到底当てはまらない。

「偶然握っちゃった弱みを利用して、わざわざオフの日を調整させて、あなたの自由な一日を、こんな風に独り占めしてる」

 俯いたまま、律子がこちらを見た。レンズ越しの瞳が上目遣いになって、こちらの目に矢を投げかけてくる。薄暗い中にあっても、その眼差しはキラキラと細かな光の粒をたたえていた。夜景の光を、円の中に収めたようだ。視界の遠くで、海の水面がざわついていた。

「あのモヤモヤにラベルを付けて、たっぷり熟成させてしまいました。抱いてはいけない気持ちを抱いて、理性では『いけないことだ』って分かっていながら、『自分の本心に正直になりたい、この熱い思いを受け止めてほしい……』って、思っちゃったんです」
「……律子」
「私のこといっぱい見てくれたし、可愛いって言ってくれたから、悔いは無いです。担当アイドルなんて好きになれないって言われても、仕方無いって思えます。タイプじゃないから、ってフラれちゃってもいいし、他に好きな人がいたっていい。口に出すの、怖いけど、これだけは、これだけは……私の口で言わせてください」

 夜風が止んだ。
 律子は、俺の耳元にゆっくりと口を寄せてきて、熱い吐息をかけながら、

「あなたが好き」

 と囁いた。そして、ほんのり触れた体温が遠ざかり、告白をやり遂げると、自分の両膝に顔を埋めてしまった。



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