【ミリマスR-18】桜守歌織「お友達から始めませんか?」なお話
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My god(dess) 5/18
[sage saga]
2020/12/12(土) 00:01:03.66 ID:MTPtsTI60
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その日を境に、俺と歌織さんの生活は少しずつ重なり始めた。外回りの仕事の寄り道。仕事が遅い時間になった歌織さんを家まで送る間。重なる機会が少なくても、どちらかがオフの日には、仕事が終わった後に少しだけ。ある時は俺の車で。ある時は、歌織さんの車で。喫茶店で。人気の無い橋の上で。そんな風に、一緒にいるということを目的に、スケジュールの空白を埋め合うようになった。甘い時間だった。それなのに、フィルターでもかかっているかのように、「愛しています」というシンプルな言葉を己の口で伝えることが、どうしてもできなかった。
生きてきた世界も、生きている世界も、俺とは違っている。一緒にいて初めてそう感じたのは、格好つけて歌織さんをフレンチのレストランへ誘った時のことだった。ネットで調べた付け焼き刃のテーブルマナーしか持ち合わせていなかった俺に引きかえ、彼女の所作は、生まれた頃からずっとそうしていた、と言わんばかりに自然だった。滅多に来ない場所へ来てぎこちなかった俺を見ていたはずなのに、「こういう所を選んで誘ってくれた、その裏にある思いが嬉しい」と微笑んでいた歌織さんは、後光が射しているように見えた。女神様は実在するのかもしれない。
ビリヤードも、ダーツも、勿論カラオケも、歌織さんは達者だった。こちらの方が教える側に回れたものといったら、大学時代に多少遊んだアイススケートぐらいのものだった。何かで上回っても、それを勝ち誇るような真似をしない。歌織さんにとっては常識のようなことを知らない俺を嘲笑うことなどせず、優しく教えてくれる。一貫した慈しみは俺の心に傷を作らなかったが、その分、懺悔をしたい思いに駆られた。隣に立つ男がこんなに情けないことを、どうかお許し下さい。信心深いとは到底言えない生き方をしてきた自分は、神への祈り方すらもよく分からなかった。あの日に貰って、家に帰るなりすぐに机へ飾ったチューリップが、自分への戒めのように思えた。
焦っていた。俺なんかが歌織さんと寄り添って生きるなんて、とんでもない。こんな人間が女神様にお近づきになんてなっていいものか。少しでも、それ相応の男にならなければ。そんな男の定義なんて霞のようにあやふやだった。とにかく、現状の自分を変えたい思いに突き動かされている。そんな思いになるのなんて、初めてだったかもしれない。
自分の部屋が急に汚く思えて始めた掃除は、仕事の日々の隙間で進め、完了するまでに六日かかった。外に出せない書類のゴミが予想以上に多くて、事務所のシュレッダーは紙を貪るのに連日忙しい。大学生の頃に買ってもう着なくなった服も、こびりついていた元カノの未練ごと葬り去ることにして、ゴミ袋に思い切り叩きつけた。埃が舞ってむせてしまったが、たまらなくスッキリした。
健康を意識することも多くなった。健康診断の思わしくない数値を見てギクッとしたことにも、背中を押されていた。毎回とはいかなかったが、運動量確保のため走り込みに同行することを申し出ると、事務所のアイドル達の多くは大手を振って歓迎してくれた。海美や紗代子に付き合った時は胃袋から飛び出そうになるものをこらえるのが大変だったが、体を動かして汗を流すのは人間に必須のサイクルであるのだと、しばらくすれば実感するようになった。
食生活が一番の課題点だった。半ば習慣になっていたエナジードリンクを断つのは骨が折れたし、寝る前の酒も然り。今の部屋に入居してから、キッチンのコンロに自分で火をつけたことが何回あっただろうか。台所の勝手については、ずっと住んでいる俺よりも、たまに遊びに来る歌織さんの方が詳しいだろう。今日だって、こうしてドアを開ける間にも、ぶら下げた買い物袋の中身をどうするか、具体的なアイデアを出しているのは彼女の方だった。
お邪魔します、と口にしてエコバッグを置くと、歌織さんは目深に被った焦げ茶のキャスケットを脱ぎ、薄いブルーのサングラスも外した。喉の保護も兼ねて黒いマスクまでつけているのだから、コートを着たこの女性が桜守歌織であることなんて、言われなければ自分でも分からないぐらいだ。
「すみません、さっき遠隔で暖房つけたばかりなんで、ちょっと冷えるかもしれません」
「……それなら、あたたかくなるまで、ちょっと甘えさせて下さい」
声のする方へ振り向く前に、胴体へ腕が絡みついてきた。ファスナーを開けていたダウンジャケットの内側へ、歌織さんが入り込んでくる。鎖骨の辺りに額が当たった。
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