【ミリマスR-18】桜守歌織「お友達から始めませんか?」なお話
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My god(dess) 4/18
[sage saga]
2020/12/12(土) 00:00:36.52 ID:MTPtsTI60
「『僕は、真剣に、佳織さんとお付き合いがしたいんです』というくだり、まだ覚えてらっしゃいます?」
「え、ええ、まぁ」
深夜ドラマ「セレブレーション!」の立ち稽古で、代役の男性役を俺が務めた時の一幕だった。だが、あれは単なるセリフだ。文字の羅列を読み上げたに過ぎない。あれは……俺の言葉ではない。そう弁解したが、「そんなことは思っていない」と口にすることはできなかった。
「台本にある言葉に過ぎないことは承知しています。あの後返すセリフも、忘れていたわけではなく、本当は……きちんと頭に入っていました。でも、あの瞬間、貴方に対して抱いていたものが、尊敬や友愛の情だけではなかったのだということを、はっきりと……自覚してしまったのです」
視界の端に、猫のようなものが動いているのが微かに見えた気がしたが、歌織さんの目から視線を外すことができなかった。「我が家は貴方を歓迎します」という言葉が胸中を去来する。青天の霹靂だった。いつも刹那的に生きてきた自分には、歌織さんの父親の話も、歌織さん自身が今から話そうとしているに違いないことにも、どんなリアクションを取るべきなのか、考えが及ばなかった。
「突拍子も無いお話ですよね。お仕事で繋がっているだけの関係ですし、アイドルのプロデュースに真剣な貴方のことですから、お断りされて当然かもしれません。でも――」
「……」
「お……お友達から、始めませんか?」
決定的な言葉こそ無かったが、そう言い切って顔を背けてしまった歌織さんの意図は理解できた。魅力的な異性から好意を向けられることが、嬉しくないわけが無い。だが、その真剣な思いを受け入れるのは、許されないことだ。アイドルには潔白でいてもらわなければならないプロデューサーとしての思いと、禁忌を越える決断をして踏み出した意思へ真摯に応えたい個人としての思いが、心を板挟みにしている。進むことも退くこともできなくなっていた。だから、きっと――
「俺なんかでよければ……よ……よろしく……お願いします」
「まあ……!」
だからきっと、歌織さんの手を取った俺を動かしていたのは、そのどちらでもない、封印してもう消し去ったと思っていた、出会ってすぐの頃の、一目惚れにも似た何か……だったのだと思う。
* * * * *
「プロデューサーさん、これを」
曲がり角を過ぎたらすぐに駅だった。事務所へ向かう俺との別れ際、歌織さんは「季節外れなこともあり、造花ですが」と前置きしつつ、束ねられた六本の赤いチューリップを差し出して来た。
「今の私は、オスカー・タルボットではありませんし、一輪の薔薇でもありません。でも……受け取って欲しいんです。どんなお返事を頂いてもお渡しするつもりだった、私の正直な気持ちです。恥ずかしすぎて、言葉にはできなくて……」
本数によって花の持つ言葉は変わるものということまでは知っている。思わず歌織さんに尋ねてみたが、色々な説がありますから、とはぐらかされてしまった。
それがどうしようもなく野暮なことだったと思い知ったのは、赤いチューリップの「愛の告白」、それが六本で「あなたに夢中」という、スマホで調べた花言葉を電車の中で目にした瞬間だった。鞄の中へそっとしまった小さな花束に込められた想いを知って、人目がある所だというのにどうしようも無く顔が熱くなってしまい、十数分前の自分のデリカシーの無さを呪いたくなった。
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