【ミリマスR-18要注意】中谷家次期当主の育様が二人の従者から女を教えてもらう話
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2:僕が当主になったら 1/19[sage saga]
2021/03/28(日) 23:52:55.01 ID:fAK5h5KF0
 そよ風の吹く中庭で麗らかな日差しを浴びながら、育は紅茶を飲んで無邪気に笑っている。あの誘拐事件から一年と少々。一族を束ねる当主の御曹司にあたる中谷育は、無事に屋敷へと帰還を果たした。育本人の表情からは凄惨な恐怖体験もすっかり剥がれ落ちたように見える。

 上級使用人として育の身近に仕える歩と真は、責任を問われて屋敷を追われることもなく、悪戯好きな主に振り回される日常へと戻ってくることができた。もっとも、五体無事に育を取り戻した功績との相殺に過ぎず、苛烈な叱責は免れなかった。上級使用人からの降格も言い渡されたが、育本人の強い抗議と、父親たる現当主が子息に甘かったことで、それも無しになった。

「ねぇねぇ、真」

 育の呼びかけに「どうされましたか?」と振り向いた真の頬に、人差し指が突き付けられた。

「呼んでみただけ!」
「またお戯れを……」

 頬に窪みを作りながら、真が苦笑した。

「育様も、いつまでもイタズラっ子ではいられませんよ? いずれ家督を継ぐ身なのですから」
「それは……分かってるよ」

 木漏れ日の中でキラキラしていた顔に翳りが生じた。憂いを帯びた瞳が、視力に偏りのある片目を眼帯で隠す歩へ突き刺さる。歩がどこか寂しげな育の視線を浴びるのは、これが初めてではなかった。誘拐事件の日を境にして、主の物憂げな表情を目にする機会が増えた。だが何があったかを尋ねても、要領のある回答を得ることができなかったのだ。

「……育様?」
「ねぇ、僕はいつまで、お前達と一緒にいられるんだろう」

 誰に聞かせるでもなく、独り言のように育は呟いた。

「心配は御無用です。育様がボク達を庇って下さったおかげで、この屋敷でお仕えし続けることができるんですから」
「違うんだよ真。そうじゃないんだ」

 テーブルの上で、小さな拳が固く握られた。

「僕はもうしばらくしたら屋敷を出て、寄宿舎のある学校へ行くようになる。そこで屋敷の外の世界を見て、色んなことを身に着けて……ずっと未来の話だけど、許嫁とセイリャク結婚して、一族の勢力を拡大する役目がある」
「……育様は聡いですね」

 歩の率直な感想だった。神妙な顔をして真も頷いている。

「実はね……二人には話していないことがあったんだ」

 それから育は、周りに漏れ聞こえることを嫌うように二人をテーブルにつかせ、静かに語り始めた。


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