【ミリマスR-18要注意】中谷家次期当主の育様が二人の従者から女を教えてもらう話
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20:僕が当主になったら 19/19[sage saga]
2021/03/29(月) 00:12:01.01 ID:xlYSjD+E0
 現当主がある一家から譲り受けた不思議な樹木が、今年も薄ピンクの花を咲かせた。満開になってから散ってしまうまでは一週間ほどしかない。散った花弁がそこかしこに散らかるため、庭掃除が大変になってしまう時期でもあるが、庭園で最も目立つ春がそこにあった。

 その日の歩は朝からそわそわしていた。定期的に届く手紙によれば、今日、学校の寄宿舎から長期休暇で育が屋敷に戻るとされている。幼き日々から見守り続けてきた主がどのように成長しているのか、一刻でも早く目にしたかった。自覚せざるをえないほどに大きくなった、恋慕とも親愛ともつかぬ情熱が身を焦がしそうにもなっていた。今日は朝から眼帯も着けていなかった。

 訪問客の見送りを終えて屋敷へ戻る途中、テンポの速い足音が近寄ってくるのが聞こえた。振り向くと、記憶にあるよりも高い位置に、見慣れた顔つきがある。よく知った黒い髪が風になびいていた。

「後ろから脅かしてやろうと思ったのに、気づかれちゃったね」
「育様……! お帰りなさいませ」

 恭しく礼をしながら、歩の鼓動は急激に高鳴っていた。

「背が高くなられましたね。見違えるようです」
「うーん……僕の方が高くなったかと思ったけど……まだ少し、歩の方が大きいね」

 自分を見上げるばかりだった双眸は、今や水平に自分を見据えている。線の細さは相変わらずだったが、骨格が女性のそれとは違っているのが一目で分かった。

 それから育は近くにあったテーブルに腰を下ろし、茶を出そうとする歩も、ただその場に腰かけるよう促された。仕事の手を休めることになってしまったが、大事な主の話し相手になるのならば、話は別だった。そうしてしばらく話した後、育は屋敷に戻る前に歩を手招きした。

「いかがされましたか」
「歩……今晩、僕の部屋に来てくれないか」

 育は声を潜めていた。平静を装っているように見えるが、頬が赤くなっている。

「! ……ええ、何なりと。真にも声をかけておきます」
「……今日は、歩と二人っきりがいいんだ。真とは……二日後に約束してるから」
「かっ……畏まりました」
「じゃあ……」

 互いの匂いが感じ取れる距離を、育が更に詰めようとした。顔を近づけて唇を重ねようとしてきたが、歩はその唇に指を当てて制止した。

「なりません。ここでは人目がありますゆえ」
「ダメなの? 真はさせてくれたのに……」
「……今は、これでご辛抱下さい」

 そよ風に吹かれた黒髪が、歩の頬をくすぐった。

 顔が離れたとき、ほんの一瞬の間にされたことを悟った育が、自分の頬に手を当てた。

「今晩、お部屋で続きをいたしましょう」
「……わ、分かった。じゃあ……後でね!」

 照れ笑いを隠すこともできないまま、育は背を向けて屋敷の玄関口へと駆けていった。その後ろ姿を見送りながら、歩はハンカチを取り出し、こめかみから頬に垂れてきた汗を拭った。

 樹木の花弁が風に吹かれて、拭いたばかりの頬にぴたっと張り付いた。



 終わり



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