36:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 19:40:39.16 ID:8Bqh101l0
そこで少女は、天井の白熱電灯に照らされた壁を見て息を止めた。
何か巨大な肉食獣の爪で薙いだように、壁一面に無数の切り傷がついていたのだ。
石造りのそれに、おびただしい数の抉り傷がついている。
兎は、それにやられたようだ。
37:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 19:41:26.59 ID:8Bqh101l0
男の子の声だった。
血で濡れたベッドの上に、小さな猫がゆらりと現れちょこんと立っていた。
今まではいなかったのに、まるで蜃気楼のように現れたのだった。
そして猫は、にやりと口の端を歪めていびつに笑って見せた。
38:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 19:44:09.49 ID:8Bqh101l0
「君が殺したんだ。そのラビットをね」
猫の方から声が聞こえる。
混乱した顔をした少女に、猫は続けた。
39:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 19:45:08.22 ID:8Bqh101l0
「あなた……が、喋っているの?」
恐る恐る問いかけると、ラフィは頷いて前足で頭を掻いた。
「うん。うん、そうだよ。僕のことがわからないかな、アリス」
40:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 19:46:06.46 ID:8Bqh101l0
……名前……?
私は、何という名前なのだろう。
思い出せない。
それ以前に、今はいつで……。
41:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 19:47:02.58 ID:8Bqh101l0
「あ……あれ……?」
混乱している風なアリスを目を細めて見て、ラフィは大きく欠伸をした。
「今度の君は、いろいろと障害が起こってそうだね。ラビリンスのシステムも、いい加減ガタが来てるから仕方ないのかな」
42:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 19:47:45.75 ID:8Bqh101l0
ラフィはそう言って、血溜まりの中にパシャ、と着地した。
そしてそれを踏みしめながらアリスに近づく。
「その様子だと、まだ混乱してそうだね。だったらここをすぐに離れた方がいい」
「お……教えて猫さん! ここはどこ?」
43:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 19:48:44.54 ID:8Bqh101l0
「『ここがどこか?』……凄く面白い問いかけをするね。答えてあげたいけど、それは僕も知りたい永遠の命題だよ。でも、ここが『どこ』で、『何』なのかっていうのは、答えたり考えたりしても仕方がないことなんだ。どうせアポカリクファの終焉が訪れたら、みんな暗闇に還ってしまうからね」
「え……え?」
突如訳のわからないことを言い出した猫に、アリスが困惑しながら何度か瞬きをする。
44:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 19:49:29.34 ID:8Bqh101l0
「それと、僕は猫じゃない。ラフィと呼んでほしいな」
どう見ても猫なのだが、口元を歪めてそう言うと、ラフィは足元の血溜まりをペロペロと舐めた。
吐き気を抑えたアリスに向けて、しかしラフィは弾かれたように顔を上げてから続けた。
45:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 19:50:14.81 ID:8Bqh101l0
「……Oh,Happy....day.....」
「Oh...Ha...pyy....day......」
「.......Oh......Happy........」
複数の声がする。
46:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 19:51:05.85 ID:8Bqh101l0
「今の君に、もう一度セブンスを使えと言っても無理だろうね。だったら逃げるが勝ちさ。ナイトメアには、なるべく接触しないほうがいい。来て、『外』まで案内しよう」
「この……兎みたいなの、一つじゃないの……?」
「聞こえるとおりさ。ラビットは、ナイトメアの中でも働き蜂だからね。相手をしていたらきりがない。それに、君は今怪我をしている」
「…………」
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