85:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:10:05.83 ID:8Bqh101l0
そこに、トレイの上にパンと水が入ったコップ、そして美味しそうなにおいを発しているスープが入ったお椀が乗ったトレイを、別の男が運んできた。
そのにおいを嗅いで、アリスのお腹がグゥと鳴る。
喉がカラカラで、お腹も空いている。
体がとてもダルかった。
86:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:10:50.39 ID:8Bqh101l0
ジャックにそう言われ、アリスは自分の肩を見た。
包帯が綺麗に巻かれている。
もう痛くない。
足にも包帯が巻きつけてあった。
87:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:14:01.66 ID:8Bqh101l0
◇
のろのろとパンとスープを食べ終わり、アリスは倦怠感の中、やっと息をついた。
歩き続けたことで、体力は限界に差し掛かっていた。
ニコニコした優しそうな顔の壮年の女性にトレイを渡し、アリスは静かな笑顔でこちらを見ているジャックと、数人の男性達を見上げた。
88:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:14:53.76 ID:8Bqh101l0
少女の様子を見て、ジャックが近くの椅子に腰掛けた。
そして周りに目配せをする。
男性達は頷いて、ガラス張りの部屋を出ていった。
ジャックに任せるということらしい。
89:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:15:55.80 ID:8Bqh101l0
「あの……お食事と、傷の手当、ありがとうございます……」
頭を下げたアリスに、ジャックは手を振って答えた。
「そんなにかしこまらなくてもいい。所詮私達は、ドームの中でしか生きられない出来損ないだ。君達エンジェルとは違う」
90:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:16:35.99 ID:8Bqh101l0
「……どこから来たんだい? その様子だと随分歩いていたようだ。何かに襲われたようでもある」
アリスの脳裏に、けたたましい笑い声と、凶器を振り回す兎の顔がフラッシュバックする。
震えて肩を抱き、彼女は小さな声で答えた。
91:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:17:32.13 ID:8Bqh101l0
「……『遺跡』から? どうしてまたそんなところに、君みたいなエンジェルが……」
戸惑ったような声でそう返したジャックに、アリスは何度も首を振ってから言った。
「分からない……何も分からないんです。気づいたら建物の中の部屋にいて。目が覚めたら……」
92:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:18:13.42 ID:8Bqh101l0
視線を下にやると、ラフィが赤い瞳を爛々と輝かせてこちらを見上げていた。
「ナイトメアの感覚は、人間には分からない。理解を促すだけ無駄だと思う」
でも、と言いかけたアリスの視線を追って床を見て、ジャックは問いかけた。
93:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:19:32.06 ID:8Bqh101l0
ジャックは考え込んでから手を伸ばし、アリスの頭を優しく撫でた。
「もう大丈夫だ。遺跡に行く前にはどこにいたんだい?」
「それが……どうしても思い出せなくて……」
94:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:21:33.06 ID:8Bqh101l0
ジャックは息をついて、立ち上がってからアリスの隣に腰を下ろした。
そして彼女の小さな頭を抱き寄せて胸に引き寄せる。
びっくりしたような顔をした少女に、ジャックは言った。
「少しこのままでいるといい。安心するまで」
95:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:22:43.17 ID:8Bqh101l0
「ここは『ハッター』の領地だよ。その中でも、十五番目のシェルターに当たる」
「ハッター……?」
「私達が『ナイトメア』と呼んでいる悪魔のことだ」
その単語を聞いて、アリスは息を呑んだ。
104Res/39.95 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20