【可愛そうにね、元気くん】「進まない」【SS】
↓ 1- 覧 板 20
35:名無しNIPPER
2021/08/14(土) 02:51:41.90 ID:JzXNw/sm0
「あなた、守ちゃんの彼氏?」
とか思ってたら爆弾を投げられた。本人に聞かれたらヤバいと思って、慌てて否定した。
36:名無しNIPPER
2021/08/14(土) 02:53:21.23 ID:JzXNw/sm0
驚いて一瞬言葉を失った俺に、店主さんはクスクスと笑いかける。微笑ましいものを見守るような慈しみの笑顔だった。
「それだけ気を許してるって事でしょう? ……きっとあなたに会えて嬉しかったのね」
37:名無しNIPPER
2021/08/14(土) 02:54:06.89 ID:JzXNw/sm0
理解できないモノを見た時、人は困惑する。そこから生じる不安は、言葉では表せないような曖昧な苦しみを与える。
その結果が、学園祭の終わり――励一くんが現れたあの時の教室であり、俺の退学だ。
38:名無しNIPPER
2021/08/14(土) 02:54:33.49 ID:JzXNw/sm0
-逃げられない-
39:名無しNIPPER
2021/08/14(土) 02:55:03.15 ID:JzXNw/sm0
……結局食事の料金は俺が払い、ついでに店主さんにタクシーを呼んでもらった。
潰れた鷺沢に肩を貸しながら地上に出る。ちょうど人肌くらいの生温い風が鷺沢の髪を揺らし、俺の顔をくすぐった。
40:名無しNIPPER
2021/08/14(土) 02:56:39.65 ID:JzXNw/sm0
「……すみません、そこまでお願いします」
「はいよー」
41:名無しNIPPER
2021/08/14(土) 02:58:34.50 ID:JzXNw/sm0
「ん……」
不意に、右肩で髪がこすれる音がした。鷺沢が俺の肩を本格的に枕にしようとして姿勢を変えたようだ。結果として、肩と腕がぴったりと密着する。
42:名無しNIPPER
2021/08/14(土) 02:59:38.23 ID:JzXNw/sm0
ここで――心の中で首をもたげ始めた欲望に屈して、二十七歳のいい大人なのに情けなく鷺沢にすがりついて、気持ち悪くて弱いマゾヒストの俺を破滅するまで可愛がってもらうのは、きっと簡単な事だ。
だけど、それはしないと決めたんじゃないか。
43:名無しNIPPER
2021/08/14(土) 03:00:21.41 ID:JzXNw/sm0
「…………っ、と……」
鷺沢の手を上から握って、その動きを止める。
44:名無しNIPPER
2021/08/14(土) 03:00:57.17 ID:JzXNw/sm0
「…………んふふ」
「おい」
45:名無しNIPPER
2021/08/14(土) 03:01:35.29 ID:JzXNw/sm0
「――お客さん、着いたよ」
駅前でタクシーが停まり、運転手が車内灯を点ける。その寸前に、俺たちの手はするりと解けた。
102Res/52.71 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20