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神父服「………」
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568 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/03(水) 23:39:23.65 ID:CGn7MwDO
モリヒト「……」
(めずらしいな…お嬢様が他人を、それも男性を家に入れようと思うなんて…。
……今夜は雨かもしれないなぁ)
569 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/03(水) 23:44:20.20 ID:CGn7MwDO
お嬢様「コジツキには、二階の客間を使ってもらいましょう。
モリヒト、お部屋は綺麗?」
モリヒト「え、あ、はい。いつでもだれでもすぐに寝れるようにしています」
お嬢様「そう」
コジツキ「ベッド、というか部屋で寝るの久しぶり」
モリヒト「……」
570 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/03(水) 23:49:24.24 ID:CGn7MwDO
お嬢様「今、お茶をしているところだったの。よかったら、貴方もどうぞ」
コジツキ「ありがとうございます」
お嬢様「モリヒト。コジツキにお茶をお願い。……お菓子は…」
コジツキ「あ」
お嬢様「……そうそう、ミートパイがあったわね。それを切って差し上げて」
コジツキ「わぁ、ありがとうございます」
モリヒト「?」
(なんでわざわざミートパイ…? 確かにあるけど、お嬢様と同じものでもよくないか…?)
571 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/03(水) 23:52:36.15 ID:CGn7MwDO
モリヒト「―――わかりました。それでは、ミートパイを取りにいってきます」
お嬢様「よろしく」
コジツキ「すみませんー」
ガチャ
バタン
お嬢様「…………」
コジツキ「………」
お嬢様「覚えていてくれたのね、嬉しいわ」
コジツキ「僕もです。まさか、待ってくれているとは思いませんでした」
572 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/03(水) 23:55:46.25 ID:CGn7MwDO
お嬢様「あら、私はそんな薄情じゃないわ。それに、提案したのは私よ」
コジツキ「そうでした、そうでした。あの日も、今日みたいに天気のいい日でしたっけ」
お嬢様「そうそう。空が青すぎて、気味悪いくらいだったわ」
573 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/04(木) 00:02:46.92 ID:6vEQqwDO
コジツキ「……まだ、想いは変わりませんか?」
お嬢様「ええ、もちろん」
コジツキ「そうですか」
お嬢様「だって、私、幼い頃から憧れていたんだもの。
小指と小指を赤い紐で結ぶよりも、互いの胸を貫くよりも、ずっといい。
首に歯を立てられることなんて、我慢できるわ」
コジツキ「実際はもっと痛いですよ、多分」
お嬢様「いいの。我慢するのは、慣れているもの」
574 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/04(木) 00:07:10.21 ID:6vEQqwDO
コジツキ「僕は若くて活きのいい人が食べられるので、万々歳ですけど」
お嬢様「ふふふ。……私は活きのいい人間とは言えないけど、彼は言えるわね」
コジツキ「確かに。男の人の肉は割りと固くて体力いるけど、スタミナつきそうで、好きです」
お嬢様「そうなの?」
コジツキ「はい。………でも、本当にいいんですか?
貴方と、護衛さんを、食べてしまっても。」
575 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/04(木) 00:09:36.21 ID:6vEQqwDO
お嬢様「いいの。だって、約束したでしょう?」
コジツキ「けど、彼はいませんでしたよ」
お嬢様「いいの。……モリヒトと一緒になるには、それしかないし、これ以外は考えられない」
コジツキ「もっといろんな方法があると思うけどなぁ」
576 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/04(木) 00:13:41.47 ID:6vEQqwDO
お嬢様「駆け落ちとか、心中とか、ありきたりなのはつまらないわ。奇抜で、狂っていた方が、私たちにはお似合いよ。そういうものなの」
コジツキ「そういうものですか」
お嬢様「そうよ」
コジツキ「ふーん…。愛って、難しいですね」
お嬢様「私は単純だと思うけど」
コジツキ「人それぞれってやつですかね?」
お嬢様「きっとそうね」
577 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/04(木) 00:18:17.51 ID:6vEQqwDO
コジツキ「いやぁ、約束っていいものですね」
お嬢様「ええ、まったくもってその通りだわ」
コンコン
ガチャ
モリヒト「ミートパイとお茶をお持ちしました、……どうかしました?」
578 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/04(木) 00:21:08.73 ID:6vEQqwDO
お嬢様「いいえ、なにも?」
コジツキ「そうそう。 わぁ、ミートパイ美味しそう」
モリヒト「……?」
お嬢様「疲れたでしょう?モリヒトもどうぞ。私が注いであげるわ」
モリヒト「あ、そんな、………すみません」
579 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/04(木) 00:23:52.40 ID:6vEQqwDO
お嬢様「いいの、これくらいはさせてちょうだい。」
モリヒト「ですが、」
お嬢様「モリヒトは私の護衛である前に、
……私の、たった一人の血の繋がった肉親なんだから。
たまには、………妹らしく、お兄様にお茶を入れてもいいでしょう?」
580 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/04(木) 00:28:41.94 ID:6vEQqwDO
モリヒト「……」
コジツキ「……」 もぐもぐもぐもぐ
お嬢様「はい、お兄様。温かい内にどうぞ」
モリヒト「……どうしたんです、今日は」
お嬢様「え?」
581 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/04(木) 00:31:29.74 ID:6vEQqwDO
モリヒト「いや、お嬢様らしくないな、と思って。
どんなときでも当主らしく振る舞うのに」
お嬢様「……いいじゃないですか。
今日は、記念日なんですから」
モリヒト「……そうですか」
お嬢様「そうよ。ほら、早く飲んでくださいな、お兄様」
582 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/04(木) 00:34:03.11 ID:6vEQqwDO
モリヒト「はいはい…まったく、お茶は逃げないのに」
こくこくこく、こくり。
モリヒト「ふぅ。……ところで、コジツキさん」
コジツキ「むぐむぐ、……あ、ふぁい」
モリヒト「今夜は、何が食べたいですか?
よくわかりませんけど、記念日みたいですし、腕を奮いますよ」
コジツキ「うーん、そうですねぇ………
やっぱり、お肉ですかね?」
583 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/04(木) 00:36:23.96 ID:6vEQqwDO
あいしあうのが、いっしょになるのが、こんなんならば。
とけあって、ひとつになって、いきましょう。
おしまい
584 :
金目鯛
◆KINMEGsDV2
[sage_saga]:2010/03/04(木) 00:36:42.89 ID:GQwy3iAo
乙
585 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/04(木) 00:41:14.09 ID:6vEQqwDO
おお、金目さんではないですかww
いつもありがとう
586 :
金目鯛
◆KINMEGsDV2
[sage_saga]:2010/03/04(木) 00:46:40.16 ID:GQwy3iAo
いやいやこちらこそいつも読ませてくれてありがとう
ここも10月1日に見つけてからからもう5ヶ月になるのか
587 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/04(木) 00:47:43.72 ID:6vEQqwDO
さてさて次回は
【カミサマと本の話】
【鬼と子供の話】
のどちらかをお送りします
588 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/04(木) 00:49:17.27 ID:6vEQqwDO
>>586
マジですかそんなになるのか…
随分長いこと書いてたんだな自分wwww
589 :
金目鯛
◆KINMEGsDV2
[sage_saga]:2010/03/04(木) 00:53:10.80 ID:GQwy3iAo
投下始めたのは9月28日からだけどな
次回も期待してる
590 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/04(木) 00:57:49.99 ID:6vEQqwDO
もったいないお言葉ありがとうございますww
次回もよろしくー
それでは(・∀・)ノシ
591 :
1
◆I5XeDg9wrc
[sage]:2010/03/13(土) 14:07:42.96 ID:siagyADO
ぼーっとしていたらいつの間にか土曜日だったでござる
今日投下しようと思う
【かみさまと本の話】を投下予定です
592 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 22:42:57.01 ID:g7dN.ADO
ぼーっとするレベルが半端ないっすね
593 :
1
◆I5XeDg9wrc
[sage]:2010/03/13(土) 23:08:17.14 ID:siagyADO
>>592
水曜日はここのコト覚えてたんだけどなww
今から投下するわ
594 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 23:14:19.43 ID:siagyADO
【カミサマと本の話】
幼女「ううーむ、困ったのう、困ったのう」チラッ
男「………」
幼女「どうしようかのう、困ったのう、助けてほしいのう」チラチラッ
男「………」(こっちみんな)
595 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 23:21:15.17 ID:siagyADO
幼女「〜〜〜ッええい!やってられっか! おいそこの若造!!」
男「………」(おまえの方が若造だろ…)
幼女「こう見えて齢五千年越えです」
男「!! なん…だと……?!」
幼女「ふっふっふ やっと目をあわせたな?」
男「あ」
596 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 23:26:00.59 ID:siagyADO
幼女「お主実はロリババァ萌えだな?」
男「まぁ好きだけど二次元にかg、……じゃなくて。
ええと、俺に何か用ですか?」
幼女「うむ 突然で済まぬが、お主みたいないかにも本の虫っぽいメガネ男子にやってほしい事があるのじゃ」
男「ねぇ頼み事しようとしてるんだよね?」
597 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 23:31:13.07 ID:siagyADO
幼女「本を探しておるのじゃ」
男「本、………絵本ですか?」
幼女「見た目で判断するでない! ……そうじゃな、ジャンル的には『歴史書』かのう」
男「歴史書………えっ 読めるの?」
幼女「だから見た目で判断するでないと言っておろうが!」
598 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 23:36:08.75 ID:siagyADO
幼女「おそらくこの街に落ちているはずなのじゃが、
あまり外に出ないのでどこに何があるのかわからんのだ。
本は本のある場所に集まるであろう?」
男「まぁ、そうだね。 本だし」
(………落ちている? 言い間違いかな)
599 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 23:43:04.88 ID:siagyADO
幼女「そこで、お前に本の集まる場所へ案内してもらおうと思ったのじゃ」
男「はぁ……」
(つまり本探しってことでいいのか?
自分のことロリババァって言ったりあまり外に出たことないとか…変な子だなぁ)
幼女「……本当に困っておるのじゃ、助けてくれ」
男「…う」
(――なんかマジっぼいな。………まぁ、暇だし)
600 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 23:51:06.54 ID:siagyADO
男「……いいよ、暇だし。俺でよければ」
幼女「そ、そうか! かたじけないのう!」
男「いえいえ、構わんよ」
幼女「よろしくたのむぞ!……えっと」
男「ああ、タカムラでいいよ」
幼女「そうか、うむ、よい名前じゃのう! ――我はヤマヤミじゃ
…………して、タカムラ。」
タカムラ「ん?」
ヤマヤミ「この、"うるとらみらくるまうんてんぱふぇ"とはなんじゃ?」
タカムラ「………」
(ちょうどお昼だし、
まずは腹ごしらえでもするか)
601 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 23:56:09.49 ID:siagyADO
ヤマヤミ「うう……ひどいめにあったわ…」
タカムラ「だから残しなさいって言ったじゃないか」
ヤマヤミ「だってケーキじゃぞ?!ケーキが刺さっておるのじゃぞ?!」
タカムラ「もうそれ百回聞いた」
ヤマヤミ「まだ十回しか言っておらぬが?」
タカムラ「………あ、ついたー」
ヤマヤミ「これ逃げるな」
602 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:06:01.62 ID:OyndbIDO
ヤマヤミ「おおー、すごいのう、大きいのう! ここは何じゃ?」
タカムラ「…本屋だよ」(本屋知らないのか…?)
ヤマヤミ「本屋か!聞いたことあるぞ! 人間が手で筆で書いた本を製本して売っておるのじゃろ?」
タカムラ「………うん、まぁ、間違ってはないかな」
(なんか解釈が某即売会みたいでイヤだ)
603 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:10:50.50 ID:OyndbIDO
タカムラ「えーと、歴史書は……三階か」
ヤマヤミ「すごいのうすごいのう! 色とりどりだのう!目移りしてしまうのう!!」
タカムラ(すごいはしゃぎっぷりだ)
ヤマヤミ「我が読まされる本もこうカラフルだといいのにのう…」
タカムラ(読まされる?………勉強?)
604 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:17:02.03 ID:OyndbIDO
チーン
タカムラ「着いたよ、三階…どしたの」
ヤマヤミ「………この匣はダメじゃ、気持ち悪い」
タカムラ「エレベーターで酔っちゃったのか…」
ヤマヤミ「案ずるな、すぐに、治る…うぅ………」フラフラ
タカムラ「酔いやすい人って大変だな」
ヤマヤミ「噂は聞いておったがまさかこれほどとは……もう二度と乗らぬ!」
タカムラ「えっ はじめて乗ったの?」
(どんだけ箱入りなんだよ)
605 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:21:45.25 ID:OyndbIDO
タカムラ「歴史書って言っても結構あるもんだなぁ………
て、もしかしてこれ全部調べるつもり?」
ヤマヤミ「………」
タカムラ「…ヤマヤミ?」
ヤマヤミ「………ぬ、」
タカムラ「どうした、吐きそう?」
ヤマヤミ「――タカムラ、次の場所へ行こう」
タカムラ「え?」
606 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:23:54.16 ID:OyndbIDO
ヤマヤミ「ここにはない」
タカムラ「…いやないもなにもまだ探してもないk」
ヤマヤミ「行くぞ」
タカムラ「はいっ」
(なんか妙な威圧感が)
607 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:30:49.42 ID:OyndbIDO
ヤマヤミ「本屋というものはここだけなのか?」
タカムラ「いや、小さいけどあと三軒あるよ。
……でもここにないなら小さい書店には置いてないかな」
ヤマヤミ「ふむ。 そうか…」
タカムラ「あと本がある場所は、図書館かな」
ヤマヤミ「としょかん?」
608 :
1
◆I5XeDg9wrc
[sage]:2010/03/14(日) 00:38:29.56 ID:OyndbIDO
さて本日はこの辺で!
次回は多分木曜日
またボーッとしたらごめんねww
(´・ω・`)おやすみさよなら
609 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:39:22.44 ID:ZhCG0sDO
おやすみ
610 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 23:08:45.13 ID:L0fZzADO
復活した!
明日書きに来るよ
611 :
◆I5XeDg9wrc
[sage]:2010/03/20(土) 19:56:47.95 ID:U6kmEQDO
頭痛治った!でもなんか気持ちわりぃ!
くきわかめたべてげんきだす!!
投下致します
612 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 20:13:25.79 ID:U6kmEQDO
≫【カミサマと本の話】
タカムラ「てなわけでここが図書館ですが」
ヤマヤミ「おお……! 先程の建物より大きいのう」
タカムラ「国立だからね」
ヤマヤミ「こくりつ?」
タカムラ「国が運営してるんだよ、………多分」
ヤマヤミ「いい加減だのう」
タカムラ「悪かったな。 ―――とにかく、ここなら歴史書いっぱいあると思うよ」
613 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 20:21:39.96 ID:U6kmEQDO
ギイィ…バタン
ヤマヤミ「おお…おおおお! これはすごいのう!書物がたっっくs「しー!」
ヤマヤミ「?!」
タカムラ(騒いじゃ駄目だろ)
ヤマヤミ(な、なぜじゃ?)
タカムラ(―――なんでって…ここ図書館だし、うるさくしたら怒られるだろ)
ヤマヤミ(し、叱られるのはイヤじゃ)
タカムラ(なら声は抑えて)
ヤマヤミ(うむ、わかった)
タカムラ(さ、行こう)
614 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 20:36:54.67 ID:U6kmEQDO
タカムラ「………と言っても、俺図書館はあまり行かないから場所の把握とか出来てないなぁ」
ヤマヤミ「ぬ、そうなのか? 本の虫なのに?」
タカムラ「頼むから虫扱いしないでくれ。
―――図書館ってレンタルしか出来ないからなぁ。
俺、本はきちんと買う派なんだ」
ヤマヤミ「ほほう―――ここは貸し出ししかしておらぬのか、なるほど」
タカムラ「そ。だからもしここで見つかったら借りなきゃ読めないよ。
……そうだ。歴史書の場所聞くついでにカード作ろっか」
615 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 20:37:04.02 ID:U6kmEQDO
ヤマヤミ「それがあれば借りれるのか?」
タカムラ「うん。 さ、カウンターに行こう」
ヤマヤミ「うむ、カード作るぞ!」
タカムラ「しっ!」
ヤマヤミ「あぅ…」
616 :
修正
[sage]:2010/03/20(土) 20:40:39.69 ID:U6kmEQDO
ヤマヤミ「それがあれば借りられるのか?」
タカムラ「うん。 さ、カウンターに行こう」
ヤマヤミ「うむ、カード作るぞ!」
タカムラ「しっ!」
ヤマヤミ「あぅ…」
617 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 20:51:06.21 ID:U6kmEQDO
??「―――えっ 本当ですか? ……はぁ、わかりました。発見次第捕獲致します。 それでは」
タカムラ「――あの、すみません」
??「はいこんにちは。 ……あら? 今日はお休みなんですか?」
タカムラ「はい、姉が店番してるので」
??「そうですか。 ……ん?」
ヤマヤミ「…………」
618 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 21:04:25.30 ID:U6kmEQDO
タカムラ「あ、そうそう。すみませんこの娘のカードを」
ヤマヤミ「い、いいいっ」
タカムラ「胃?」
ヤマヤミ「いいいいばらき! お主ななななぜここにおおおおるのじゃ?!」
イバラキ「―――これはこれはヤマヤミ様。 こんな所で逢うとは珍しいこともあるものですねぇ。 それも、就業時間真っ只中に」
タカムラ(知り合いだったのか)
619 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 21:05:32.73 ID:U6kmEQDO
ヤマヤミ「お!お主こそなぜ下界におるのだ?!」
イバラキ「月に一度の下界視察ですよ。 今回の当番が私だっただけです
―――私より、貴方です。
先程上司より連絡がありましたよ、早く戻ってください」
タカムラ(……げかい…?)
ヤマヤミ「い、イヤじゃ!帰らぬぞ!」
イバラキ「何故です?」
ヤマヤミ「探し物をしておるのじゃ! しまった!」
タカムラ「………」
620 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 21:16:44.08 ID:U6kmEQDO
イバラキ「探し物?」
ヤマヤミ「いっいやなんでもないなにもさがしてなどおらぬぞ?!」
タカムラ「え、本探してるんだよね」
ヤマヤミ「バッ! タカムラ空気を読まぬか!」
621 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 21:17:02.77 ID:U6kmEQDO
イバラキ「本? ……!!ま、まさかヤマヤミ様、あれを下界に落とされたのですか?!」
ヤマヤミ「ちがうそんなことは…そんなことはしておらぬぞ? ちょっと手が滑っただけで」
イバラキ「詳しく話を聞く必要がありますね…。
さぁ、私と一緒に帰りますよ!」
ヤマヤミ「タカムラ、逃げるぞ!」
タカムラ「え、え?」
622 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 21:27:05.33 ID:U6kmEQDO
イバラキ「逃がしはしません!」
タカムラ「わぁイバラキさん超足速い」
ヤマヤミ「くぅ! これでも食らうがいい!」
ブンッ
タカムラ「ちょっヤマヤミ何投げて―――にんにく!?」
イバラキ「当たるか!!」
バッ
623 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 21:31:54.55 ID:U6kmEQDO
タカムラ「……避けちゃったぞ」
ヤマヤミ「ぬうぅ、やはり鬼は素早いのう」
タカムラ「あははイバラキさんは美人で全く鬼って感じじゃ、
…………おかしいな後ろから追いかけて来る人の頭に角が見えるんだけど」
624 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 21:35:50.78 ID:U6kmEQDO
ヤマヤミ「イバラキー角が出てきておるぞー隠さなくてよいのかー」
イバラキ「今は貴方の捕獲が優先です! 止まりなさい!!」
ヤマヤミ「仕方ないのう…これだけは使いたくなかったが…」
ごそごそ
タカムラ「?」
ヤマヤミ「はい。タカムラも一緒にの。あの角で待ち伏せるぞ!」
タカムラ「―――!! こっこれは…!」
625 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 21:43:57.53 ID:U6kmEQDO
イバラキ「ふふふ…そこにいるのはわかっていますよ、観念して出てきてください!」
ヤマヤミ「………」
ザッ
イバラキ「観念したようですね。 さぁ、私と一緒にえ」
ヤマヤミ「鬼はー外!」
バラバラバラ
イバラキ「!!」
626 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 21:44:40.60 ID:U6kmEQDO
タカムラ「お、おにはーそとー」
バラバラバラッ
イバラキ「ひっ ひいぃ!節分でもないのに豆をぶつけないでえぇっ!!」
ヤマヤミ「鬼は外鬼は外おにはそとおおおぉ!!」
ビシバシベシベシッ
イバラキ「きゃうぅっ や、やめてくださいぃ!!ひぇーん!」
タカムラ「…………」
627 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 21:55:50.76 ID:U6kmEQDO
* * * 数分後 * * *
イバラキ「うう…ひ、ひどいですぅ…あんまりですよぅヤマヤミさまぁ…!」
タカムラ「…幼女が大人を泣かした……」
ヤマヤミ「はぁ、はぁ、……どうじゃ、……ぜぇ、思い知ったか、……はぁ、我の、力を、……ゲホッ」
タカムラ「すんごい疲れてるじゃないか」
628 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 21:56:04.06 ID:U6kmEQDO
イバラキ「うぅ…わかりました捕獲しません……ですが!
アレはきちんとご自身で探してくださいよ?!
私は一切関わりませんからね?!」
ヤマヤミ「わかっておるわい!まったく、口煩い奴じゃのう!!
行くぞタカムラ!」
タカムラ「え? まだ図書館探してないけど」
ヤマヤミ「ここにもない。次へ行くぞっ」
タカムラ「……うん」
(どういう仕組みでわかるんだろう)
629 :
◆I5XeDg9wrc
[sage]:2010/03/20(土) 22:00:09.60 ID:U6kmEQDO
はい、本日はここまで
次回は月曜にしようかなと思ってる
オチは見えたぜ
おやすみさよなら!
630 :
◆I5XeDg9wrc
[sage]:2010/03/22(月) 20:28:31.19 ID:0a5FusDO
月曜日だね
投下しますよ
≫現在【カミサマと本の話】投下中
631 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 20:36:28.44 ID:0a5FusDO
ヤマヤミ「まったく…イバラキのせいでとんでもない目にあったわ!」
タカムラ「二人はどういう関係なんだ?」
ヤマヤミ「ん? ……ああ、あやつは我の秘書じゃ。 まぁ、数人の内の一人じゃがの」
タカムラ「え? …………ひ、秘書?」
632 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 20:42:49.05 ID:0a5FusDO
ヤマヤミ「ハッ! い、言い換えると世話役じゃ!せわやく!ワッハッハッ!
さぁタカムラ次は何処に行くのじゃ?!」
タカムラ「あ、うん、そうだね…本屋にも図書館にもなかったから、あとは…」
??「姉さんだよ 姉さんだよ」
ヤマヤミ「?!」 びくっ キョロキョロ
タカムラ「あ、姉さんから電話だ」
ヤマヤミ「?! それ着信音?!」
633 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 20:47:42.83 ID:0a5FusDO
タカムラ「もしもし」
姉『あ、タカムラ。 あのさ、夕飯なにがいい?特に希望ないならオムライスにするけど』
タカムラ「夕飯? うーん……今から帰るから、待っててー」
姉『は?』
ピッ
タカムラ「ヤマヤミ、次に行こうか」
ヤマヤミ「? う、うむ」
634 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 20:51:54.07 ID:0a5FusDO
* * * * * *
タカムラ「ついたよ」
ヤマヤミ「……"小野古書店"? 古書?」
タカムラ「古本屋だよ。人が読み終わった本やいらなくなった本を買い取って売ってるんだ」
ヤマヤミ「ふむ、りさいくるというやつじゃな?」
タカムラ「んー…ちょっと違うかな」
635 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 20:54:54.06 ID:0a5FusDO
タカムラ「ま、とにかく入って入って」
ヤマヤミ「な、なんじゃなんじゃ。まるで自分の家みたいに…」
タカムラ「そうだよ」
ヤマヤミ「ぬ?」
カランカラン
タカムラ「ただいま姉さん」
姉「おかえりーホントに早かったな」
636 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 21:27:27.65 ID:0a5FusDO
ヤマヤミ「!!」
タカムラ「丁度家に用があったから」
姉「ふーん? ―――ん、誰?」
タカムラ「ヤマヤミ。 なんか本を探してるみたいなんだけど、見つからないんだ」
姉「本屋と図書館は?」
タカムラ「なかった」
姉「ふーん」
637 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 21:31:06.82 ID:0a5FusDO
姉「ジャンルは? 絵本?」
ヤマヤミ「………」
タカムラ「歴史書らしいよ」
姉「ふーん……えーと、ヤマヤミ? どんな本を探してるの?」
ヤマヤミ「―――それじゃ」
姉「え?」
ヤマヤミ「おぬしが……今、持っておるものじゃ」
タカムラ「……え?」
638 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 21:34:18.13 ID:0a5FusDO
タカムラ「え、え? 歴史書だよね?」
ヤマヤミ「そうじゃ」
姉「ホントにこれなの?」
ヤマヤミ「うむ」
タカムラ「でも、これ……
……って、ナニコレ。」
姉「……じいちゃんの、日記?」
タカムラ「姉さんなんで疑問系なの」
639 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 21:42:48.59 ID:0a5FusDO
姉「今日倉庫に行ったら落ちてたの。
面白そうだから店番しながら読んでたんだー」
ヤマヤミ「! よ、読んでしもうたのか?」
姉「え、うん……けど日記というより年表みたいで読んでてあまり面白くなかった」
ヤマヤミ「そうか…」
タカムラ「……ヤマヤミ、なんでじいちゃんの日記探してたの?」
ヤマヤミ「!」
640 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 21:48:04.27 ID:0a5FusDO
タカムラ「ヤマヤミ」
ヤマヤミ「う……。 ………は、話せぬ……」
タカムラ「……」
姉「え? え? 何これどういう状況?」
タカムラ「姉さん、ちょっとそれ貸して」
姉「え、ああ、はい」
タカムラ「ありがと」
641 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 21:53:09.39 ID:0a5FusDO
ヤマヤミ「……」
(やはり黙っているのは不味いかのう、散々つきおうてもらったしのう…しかし、でも、ううん、………)
タカムラ「ヤマヤミ」
ヤマヤミ「! ……な、なんじゃタカムラ」
タカムラ「はい」
ヤマヤミ「…………へ?」
642 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 21:56:38.74 ID:0a5FusDO
タカムラ「どうぞ」
ヤマヤミ「………」
タカムラ「見つかってよかったな」
ヤマヤミ「………。
…………………う、うぅ」
タカムラ「え、ちょ、ヤマヤミ」
ヤマヤミ「うっ、うぇ、た、タカムラぁ〜〜〜ッ!
ごめんなさい〜〜!」
姉「……弟が幼女を泣かせた……!!」
タカムラ「誤解だ!」
643 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 22:05:45.72 ID:0a5FusDO
* * * * * *
タカムラ「ホントに一人で帰るの?」
ヤマヤミ「じゃから子供扱いするなと言うとるじゃろ!
………一人で大丈夫じゃ、心配するな」
タカムラ「そっか」
姉「遠慮しないでいいんだよ? タカムラじゃ頼りないけどないよりはマシだよ?」
タカムラ「姉さん酷い」
644 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 22:15:43.60 ID:0a5FusDO
ヤマヤミ「姉上殿。 おむらいすというもの、すっごく美味じゃった!」
姉「いーえー。 また来てね、ヤマヤミちゃん」
ヤマヤミ「………」 チラッ
タカムラ「……またな、ヤマヤミ」
ヤマヤミ「……! うむ!
我に任せておけ!
見たところ目立った罪状はないから、大丈夫じゃ!」
タカムラ「? うん、よろしく」
(何が?)
645 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 22:21:57.06 ID:0a5FusDO
ヤマヤミ「じゃあの!」
カランカラン
姉「ありがとうございましたー」
タカムラ「………」
姉「? どうしたタカムラ」
タカムラ「いや、変な一日だったなぁと思って。
自分のことロリババァって言う幼女に会ったり、
その子が書店見るの初めてだったり、
その子が散々探してた本がうちのじいさんの日記だったり…」
姉「―――あ、あれ多分日記じゃないよ」
タカムラ「え?」
646 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 22:28:58.80 ID:0a5FusDO
姉「中身読んだけど、活字だった。
あとじいさんが死んだの一昨年だったでしょ?
本の最後に"××××年、自宅の寝室で死亡"って書いてあったけど、日記だったら死ぬ時はさすがに書けないし」
タカムラ「………」
姉「もしかしてじいさん以外が書いたのかなーって思ったけど、本人以外には書けないようなことも書いてあったよ」
タカムラ「………つまり、どういうこと?」
647 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 22:35:40.88 ID:0a5FusDO
姉「あの子が言った通り、あの本は"じいちゃんの歴史書"だよ」
タカムラ「……」
姉「あの子は、神様だったのかもね」
タカムラ「?」
姉「有名でもなんでもない人の"歴史書"を探してたし。
そんなもの集めるの、神様くらいしかいないでしょ」
タカムラ「………」
タカムラ「なるほど」
648 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 22:39:54.62 ID:0a5FusDO
人の一生は一冊の本。
つまり世界は、無数の本で溢れているのです。
おしまい
649 :
金目鯛
◆KINMEGsDV2
[sage_saga]:2010/03/22(月) 22:40:27.74 ID:OOEfy.oo
乙
650 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 22:41:44.02 ID:0a5FusDO
読んでくださりありがとうございます
お疲れ様でした
651 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 22:52:54.21 ID:0a5FusDO
あと350か まだまだだなー
次回は今のところ未定です
ええ、ネタがないんです
何か浮かんだら書きに来るよ!
あとちょっとだからもうしばらくお付き合いください
おやすみさよなら
652 :
◆I5XeDg9wrc
[sage]:2010/03/25(木) 21:01:57.33 ID:MyFwRwDO
Thursdayです
木曜日です
何か出来たので置いていきますね
653 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/25(木) 21:03:30.32 ID:MyFwRwDO
私の世界はいつだって私の目の前にあった。
小さな画面に熱い視線を送りながら、手元のスイッチを押すだけで広がっていく線路。
行き着く先などなく、駅から駅また駅更に駅……といったように、道は繋がり果てなどない。
そこには現実と違って限界なんてない。
だから私は頭を下げて小さな液晶画面を見つめて、遠く離れた何処かの誰かにメッセージを送った。
我ながら、私の世界はとても小規模だと思う。
654 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/25(木) 21:04:15.24 ID:MyFwRwDO
【世界と私と友人の話】
655 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/25(木) 21:08:43.33 ID:MyFwRwDO
「すごいね」
急に暗くなったと思えば、頭上から声が聞こえた。
少し低めの、けれどよく通る音。
……他校に通っている友人だ。
「よくそんな早く打てるね、現代っ子みたい」
「……現代っ子だよ。 ちなみに、アンタもね」
656 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/25(木) 21:10:05.02 ID:MyFwRwDO
「私、年齢詐称してるらしいから。本当は三十路過ぎらしいよ」
「らしいって何よ、らしいって」
「懐メロ歌ってたら男子に言われた。
"お前ホントは三十路過ぎてるだろ"
……だって。 失礼しちゃうよね、リンゴの唄をフルで歌ってただけなのに」
そう文句を言いながら、友人は私の隣に腰掛ける。
赤いベンチに、紺のセーラー服を着た女学生と、緑色のブレザーを着た女子高生が仲良く並んだ。
657 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/25(木) 21:11:48.56 ID:MyFwRwDO
「……しいなりんごの?」
「違う、もっと古い」
「………。 ……選曲が渋すぎたんだよ」
「そうかなぁ」
「そうだよ」
658 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/25(木) 21:14:50.82 ID:MyFwRwDO
適当に言葉を返しつつも視線は携帯電話から逸らさず、文字列を形成していく私の隣で、友人は足をぷらぷらと揺らしながら、目の前の池を見つめる。
しばらくそのまま微動だにしなかったが、人差し指を動かしながら、ひーふーみー…と、公園の池に棲んでいる鯉を数えだした。
またその数え方が今時ではなく、もしかしたら本当に年齢詐称しているのかも、と疑ってしまう。
だが私は、ひーふーみー以上の数え方がわからないので、その先を言える友人がちょっとすごいと思った。
659 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/25(木) 21:15:35.76 ID:MyFwRwDO
「――ねぇ、公園の鯉減った?」
「さぁ……気のせいじゃないの?」
携帯の画面に映る『ログインしますか?』という文字を押す。
今日は何かイベントあったっけ?
660 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/25(木) 21:15:58.45 ID:MyFwRwDO
「いや、絶対減ったよ。赤が六匹黒が七匹だったのに、赤が四匹になってる」
「岩陰に隠れてるんじゃないの?」
掲示板をチェックする。
特に気になる話題は、……『お菓子の工場で働いてる河童だけど何か質問ある?』が少し気になる。
元ネタが懐かしいな、と思っていると同じことが案の定スレッドに書き込まれていた。
661 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/25(木) 21:16:24.09 ID:MyFwRwDO
「岩陰に? ……あー、一匹隠れてた。あと一匹足りない」
「………」
ブログを覗く。
相変わらずこの俳優のブログは面白い。
画像はどこから拾ってきているのだろう?
662 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/25(木) 21:19:00.81 ID:MyFwRwDO
「……ねぇ」
「………」
「ねーねー」
「………」
「にゃおーんわんわんどるるるる」
「〜〜〜っあああもうっ うるさい!何なの!!」
663 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/25(木) 21:20:47.38 ID:MyFwRwDO
私は携帯から目を離した。
「―――やっと顔上げた」
「え」
664 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/25(木) 21:21:21.85 ID:MyFwRwDO
友人が笑う。
紺のセーラー服の襟と赤いスカーフと、真っ黒な髪が風でひらひらと踊っていた。
「たまには顔をあげて周りを見ないと。
―――本当の世界は、もっとずっと広いんだから」
「………」
「あと私が寂しい」
「何言ってるの」
665 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/25(木) 21:22:54.93 ID:MyFwRwDO
友人は立ち上がり、背伸びをしながら振り返った。
「ね、明日か明後日デートしようよ」
「デート……って、ただ遊びに行くだけでしょ」
666 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/25(木) 21:23:30.29 ID:MyFwRwDO
「デートだよ。私、あなたの私服姿がみたいなぁ」
「何度も見てるじゃない…。
……ま、いっか。何処にいくの?」
私もベンチから離れて、彼女の背中についていく。
携帯に視線を落とそうとしたけれど、なんだか面倒になってしまい、閉じてしまった。
そのまま携帯を鞄の隙間へ滑り込ませた。
667 :
以下、名無しに変わりましてゴミがお送りします
[sage]:2010/03/25(木) 21:25:47.06 ID:MyFwRwDO
私の世界はとても小さい。
だけど明日は、ほんの少し大きくなっているかもしれない。
世界はきっと、小さな世界の積み重ねで大きくなるのだろう。
……子供たちから餌をもらって、育っていく公園の鯉みたいに。
おしまい
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