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上条「お名前教えてください」ふぃあんま「うほうのふぃあんま、ななさいです!」 -
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1 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/06(日) 17:39:25.69 ID:xJNzxSgAO
・右方のふぃあんま(7)くんと上条当麻くん(15)が暮らすお話
・ホモスレ、もといおにショタスレ
・時間軸不明、とある平行世界のお話
・一部再構成
・キャラ崩壊注意
※注意※
エログロ・ホモ描写が入る可能性があります。
所謂おにショタ。
小ネタを単発で投下するかもしれません。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1357461565
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
[
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コナン「博士からメールが来たぞ」 @ 2025/07/23(水) 00:53:42.50 ID:QmEFnDwEO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1753199622/
4日も埋まらないということは @ 2025/07/22(火) 00:48:35.91 ID:b9MtQNrio
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1753112915/
クリスタ「かわいいだけじゃだめですか?」 @ 2025/07/19(土) 08:45:13.17 ID:AK1WfFLxO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1752882313/
八幡「新はまち劇場」【俺ガイル】Part1 @ 2025/07/19(土) 06:35:32.67 ID:BGCulupRO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1752874532/
【安価・コンマ】力と魔法が支配した世界で【二次創作】 @ 2025/07/18(金) 23:44:57.84 ID:Xc8IdKRvO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1752849897/
どかーんと一発 @ 2025/07/18(金) 21:10:10.35 ID:CEsRuBor0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1752840609/
冒険者育成学校 @ 2025/07/18(金) 01:36:01.28 ID:PkrtUMnv0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1752770160/
たてづらい部!! @ 2025/07/17(木) 23:24:46.15 ID:o3A0TqwG0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1752762285/
2 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/06(日) 17:41:08.62 ID:1bxkfJPh0
学生の朝は早い。
ただしそれは平日の話であって、上条当麻の朝はそんなに早くない。
…筈だったのだが、補習という儀式を受けるべく、結局のところはちょっぴり早起きする羽目になってしまった。
補習連絡(ラブコール)を適当にいなし、上条はさて朝昼兼用の食事は何にしようかと悩む。
ひとまず、何かを食べなければ勉強には耐えられまい。
その前に、布団を干してしまおう。梅雨も明けてくれたことだし。
そう結論付けて布団を畳抱え、上条は行儀悪く足で窓を開ける。
?????「…うにゃ…」
上条「……え?」
思わず、上条は窓を閉めかける。
どうにか、布団を落とさずに堪えた。
何か、変なのがいる。
小さい。子供だと思われる。
何故だかは知らないか、ベランダの手すりに引っかかっている。
絶妙なバランスで引っかかっている子供は、四歳程だろうか。
細くて小さい。よく引っかかっていて、落ちてしまわないものだ、と上条は感心する。
その子供は、のろのろと顔を上げ、自分の顔を見るなり、ほっとした笑みを浮かべた。
上条「それで、何でベランダに引っかかってるんだ?」
?????「んと、」
上条「…」
?????「えっと」
上条「…」
?????「わかんない」
上条「」ずこー
思わずずっこけかける上条。
対して、その子供は上条をしげしげと見つめて思い出したらしい。
?????「はっ みつけたぞ、おれさまのいまじんぶれいかー!」
上条「上条さんは誰の物でもないしお前みたいなちっちゃい子から恨みを買った覚えも無いんですけど!」
パニックを堪えてノリツッコミをした上条だったが、どうやらこの幼子はマイペースらしい。
へくち、と愛らしいくしゃみをしたかと思えば、うー、と唸った。
上条「…とりあえず布団干せないし、退いてもらっても良いか?」
?????「ん」
のそのそ、と手すりを超えて、子供はベランダに入ってくる。
上条は手すり部分に丁寧に布団を干し、洗濯バサミで止める。
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/06(日) 17:41:12.93 ID:xJNzxSgAO
+
4 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/06(日) 17:41:49.72 ID:1bxkfJPh0
何だかんだで流れによって、迎え入れてしまった。
頼むから面倒事ではありませんように、と思いながら、上条は話しかけた。
上条「…名前は、…えーと、…お名前教えてください」
ふぃあんま「うほうのふぃあんま、ななさいです!」
上条「そっかー、ふぃあんまくんかー」
ウホウノ、というのは苗字か何かだろう、と適当に考え。
上条は目の前の子供をしげしげと眺める。
七歳には見えない。発育が悪いのだろう。
ちょこん、と座っているが、先程『俺様の幻想殺し』と言っていた。
生憎、この子供に接触をした覚えはない。
とりあえず、質問を重ねて素性を知ろうと考えた上条は、問いかける。
上条「迷子なのか?」
ふぃあんま「まいごじゃない」
上条「何しに来たんだ?」
ふぃあんま「いまじんぶれいかーもらいにきたの」
上条「そっかー、幻想殺しもらいに…もらいに!?」
幻想殺しとは即ち、上条の右手首から先のことである。
超能力・魔術問わず、あらゆる異能の力を打ち消す力。
原理は今もって不明。
天然素材、生まれた時から持っていた力。
学園都市では一応『原石』のカテゴリに入る…らしい。
それを貰うということはつまり、右手を切断するということ。
上条「…幻想殺しはお菓子じゃないんだぞ?」
ふぃあんま「たべるんじゃない」
上条「何に使うんだ?」
ふぃあんま「せかいをすくうために」
上条「……えっと、…」
ふぃあんま「……」じー
上条「あげない」
ふぃあんま「えー」
上条「えー、じゃないの!」
ぷく、と頬をふくらませて拗ねる様は可愛いというか和やかだが、果たしてこの子は自分で言っていることの内容がわかっているんだろうか。
一抹の不安に駆られながらも、上条は誤魔化す様に提案する。
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/06(日) 17:41:50.68 ID:xJNzxSgAO
+
6 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/06(日) 17:42:13.74 ID:1bxkfJPh0
上条「よしわかった、とりあえず御飯食べよう。な?」
ふぃあんま「…ごあん?」
上条「ごはん。えーっと…何が食べたい?」
ふぃあんま「……んー…とまと」
上条「トマトかー…プチトマトで良いか?」
ふぃあんま「ちいさいのか」
上条「小さいな」
ふぃあんま「たべるー!」
食べる食べる食べる、と猛反応を示すふぃあんまに苦笑して、上条は用意を始める。
元々食事をしようと思っていたし、子供は嫌いではない。
どちらかというと、好きな部類に入る(※ただしショタコンではない…と信じたい)。
本日の朝昼兼用の食事。
オムライスとプチトマト。
with、唐突に現れた謎の子供。
上「お家はどこにあるんだ?」
ふぃあんま「ばちかん」
上条「…バチカン、ってイタリアだっけか…」
ふぃあんま「んー」もぐもぐ
上条「日本語上手だな」
ふぃあんま「いまじんぶれいかーとはなせないとこまるから、べんきょうした」
上条「そっか、えらいな。よしよし」なでなで
ふぃあんま「んー」ふにゃ
よしよしー、と撫でながら、だから何故幻想殺しについて知っているのか、と上条は眉を潜める。
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/06(日) 17:42:14.58 ID:xJNzxSgAO
+
8 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/06(日) 17:42:54.40 ID:1bxkfJPh0
食事を終え。
プチトマトが余程美味しかったのか、フィアンマは上機嫌でベッドに座っている。
上条はそんな彼の隣に座り、この子供の性別はどちらだろうとどうでも良い事を思いながら質問を投げかける。
補習に行かねばならない時間には、まだまだ時間がある。
上条「保護者ー…って言ってもわからないか。お母さんとかお父さんは?」
問いかけた途端、明るい色合いの瞳が淀む。
ふぃあんま「…いない」
上条(う、…『置き去り』みたいな感じか…話題を変えよう)
上条「……イタリアからはどうやって来たんだ?」
ふぃあんま「せいなるみぎつかってきたの」
上条「聖なる…何だって?」
ふぃあんま「せいなるみぎつかってきたのー!」
聖なる右ー、と言いながらぺちぺちと叩かれる。
小さい手でぺちぺちされても痛くはないのだが、痛い痛いと言っておくことにする。
上条「さっき、世界を救うとか言ってたよな」
ふぃあんま「みとめる」
上条「どうして世界を救おうとしてるんだ?」
ふぃあんま「あのね、うりえるとらふぁえるがずれててね、みかえるとがぶりえるもずれてて、だからせかいのこんかんがぐにゃってしててね、おれさまにしかなおせないから」
上条「駄目ださっぱりわからん」
ふぃあんま「…ううう!」
ぺちぺち。
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/06(日) 17:42:56.50 ID:xJNzxSgAO
+
10 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/06(日) 17:43:25.77 ID:1bxkfJPh0
はいはいごめんね、と宥めつつ、上条は厄介そうな子供にため息を呑み込む。
上条「それで、俺の幻想殺しを貰うとどうなるんだ?」
ふぃあんま「せいなるみぎがつよくなる」
上条「そっか、強くなるのか」
ふぃあんま「うん」
よくわからないが、戦隊モノか何かの見すぎだろうか。
思いつつ、上条は首を傾げる。
上条「最終的にはどうなるんだ?」
ふぃあんま「かみじょうになってすくうの」
上条「…かみじょう?」
ふぃあんま「かみじょう」ふにゃん
子供は天使というが、そうかもしれない。
そう思う程に、その笑顔は柔らかで可愛らしかった。
上条「……上条さん家の子になってもいいぞ」
ふぃあんま「………う?」
上条「行く所って無いんだろ? 幼稚園とか、お家とか」
ふぃあんま「……よくよくかんがえれば、なかった」しょぼん
上条「じゃあ、とりあえず家に居ろよ。な?」
入院費用諸々で家計は火の車ではあったが、この食べる量ならどうにか。
頭の中で計算結果を叩き出した上条は、優しくそう誘う。
ふぃあんま「…ん、わかった」
こく、と頷いたフィアンマは、上条の右手をぐいぐいするのだった。
ふぃあんま「…あれ? はずれない」
上条「怖い事言うなよ、外れる訳ないだろ!!」
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/06(日) 17:43:26.83 ID:xJNzxSgAO
+
12 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/06(日) 17:43:53.14 ID:1bxkfJPh0
上条「じゃあちょっと補習行ってくるけど、ちゃんと留守番してるんだぞ。ピンポーン、って聞こえてもドア開けなくて良いし、ガスコンロは触っちゃ駄目だからな」
ふぃあんま「わかった」
上条「後、あんまり暴れちゃ駄目だぞ。寝てても良いから」
ふぃあんま「ん」
念入りに注意し、上条は外に出る。
面倒な事に首を突っ込んでしまったかもしれない。
しかし、まぁ、ひとまず、安らぎということで。
自分に謎の言い訳をしながら、上条はてくてくと歩いていく。
補習でこってり搾られる事三時間。
ぐったりとしながら、上条はのろのろと歩いて帰る。
上条「ただいまー」
ふぃあんま「む、おかえり」
上条「何やってたんだ?」
フィアンマはベッドの上で積み木のようなものを積んでいた。
上条は積み木遊びでもしていたのかとほんわかしたのだが。
ふぃあんま「おまえがどのほうがくにいるかしらべていた」
上条「!?」
一瞬びくつき、きっと魔法に憧れる年代なのだ、と無理やり納得する。
上条「そ、そっかそっか…これから買い物行くんだけど、一緒に来るか?」
ふぃあんま「いく」
頷き、いそいそと積み木を片付け、フィアンマは立ち上がる。
そして上条の右手を掴み、とたたた、と走り行くのだった。
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/06(日) 17:43:54.07 ID:xJNzxSgAO
+
14 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/06(日) 17:44:18.69 ID:1bxkfJPh0
上条「お店の中は走っちゃ駄目だからな」
ふぃあんま「それくらいのふんべつはわきまえているが」
ふんふん、と上機嫌で、フィアンマは上条の右手を握る。
お気に入りの玩具でも愛でるように、撫でた。
カートを押しながらゆっくりと歩き、上条はお菓子コーナーの前までやって来る。
上条「一つ、何でも買ってあげるぞ。ただし、この棚の中からな」
指差した棚には、良品特価の文字。
100円にしてはお得、という量のお菓子が詰まっている赤い袋だ。
上条もポテトチップスが食べたい時などによくお世話になっている。
ただしそこは学園都市、妙な味などもある。
むしろ、妙な味(新開発商品)でなければ安くない。
学費や文房具などが安い分、学生が好むこういったお菓子などの贅沢品にお金がかかるシステムなのだ。
要するに、慎ましく生きていれば差し引きゼロなのだが。
フィアンマは棚を眺めてきょろきょろと視線を彷徨わせ、手に取ろうとジャンプする。
ふぃあんま「ましまろ、ましまろー」ぴょんぴょん
上条「……」
ふぃあんま「んー…」ぐぐーっ
可愛いなあ、と思いながら、上条は見守る。
ちょっと意地悪でもあったりした。
フィアンマは背伸びし、ジャンプし、届かないとわかると、ため息を漏らして踏み台を捜す。
残念ながら見つからなかった。
ふぃあんま「……」
彼の右肩から、巨人の右腕のようなものが現出した。
小さな身体に見合わぬそれは、猛禽類のような鋭さを宿している。
これこそ、彼を右方のフィアンマたらしめる術式。
フィアンマは軽く右手を振り、カメレオンが舌で餌を巻き取るように、『第三の腕』でマシュマロの袋を掴む。
そして自分の手元まで持ってくると、『第三の腕』を消した。
驚いたのは上条である。思わず、言葉を喪った。
上条(…何だ、今の…?)
肉体変化とは、何か違う気がした。
幻覚の類かとも思うが、何か違う気がする。
上条「な、なんっ、…何だ、今の…?」
ふぃあんま「せいなるみぎ」
上条「…移動してくる時に使った、ってやつか?」
ふぃあんま「ん。……ましまろたべたい」
マイペースに、赤い袋が差し出される。
中身はチョコマシュマロだった。
上条「はいはい、ましま…マシュマロな」
思わず舌っ足らずな幼児言葉(?)につられそうになりながら、上条は受け取ってカゴに入れる。
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/06(日) 17:44:19.68 ID:xJNzxSgAO
+
16 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/06(日) 17:44:44.58 ID:1bxkfJPh0
二人は真っ直ぐ家に帰って来た。
フィアンマは思い出したように、積み木を消す。
上条はその光景に眉を潜めたが、空間移動の一種だろうと自分を納得させた。
色々と疑問は残るものの、この子供の能力がどうあれ、自分には関係の無い事だ。
上条「晩御飯はハンバーグな」
ふぃあんま「はんばーぐか」
上条「嫌いなのか?」
上条としては、小さい子供が好きそうなメニューを採択したつもり、だったのだが。
フィアンマはふるふると首を横に振る。
ふぃあんま「たべたことがないだけだ」
上条「…一回も?」
ふぃあんま「いちども」
上条「…じゃあ、フィアンマにとってのご馳走って何なんだ?」
ふぃあんま「……りんご…ぱん…?」
上条「…普段、どんなもの食べてたんだ?」
ふぃあんま「…ぱんと、…みずと……ぶどうじゅーすと…塩?」
上条「何ですかその歴史の教科書に出てきそうなメニューは…」
ふぃあんま「やさいもたべたぞ。だいたいがすーぷだったが」
上条「…………」
上条は、何だかとっても、この子供が可哀想になってきた。
バチカン、と言っていたし、教会育ちなのかもしれない。
とりあえず、何かいいものを食べさせてあげよう、と考えることにした。
上条「…お前がちっちゃいのっていいご飯食べてなかったからだろうな」
ふぃあんま「ち…!? ち、ちっちゃくない!」
七歳なのに四歳に見える辺りちっちゃいのだが、認めたくないらしい。
ふぃあんま「お、おお、おれさまはちっちゃくない! ちっちゃくないんだ!!」
上条「いた、痛い痛い、ごめんごめん、」
ふぃあんま「だれがわいしょうだ!」
上条「矮小? って言ってねえよ痛い痛い、ごめん、ごーめーん、って」
どうやら余程響いたらしく、目に涙を溜めて叩いてくる。
やっぱり痛くは無いのだが、上条は謝りつつフィアンマの頭を撫でる。
ムキになるということは発育不良を気にしているのだろう、しまいにはぐすぐすと泣き出した。
上条はマズい事を言ったなあ、と思いながら、小さい身体を抱きしめて背中を摩ってあげるのだった。
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/06(日) 17:44:45.67 ID:xJNzxSgAO
+
18 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/06(日) 17:44:58.88 ID:1bxkfJPh0
初回投下分はここまで。
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/06(日) 18:05:46.46 ID:3bD9HHcao
ふぅ•••乙
20 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/06(日) 18:12:16.21 ID:ZYydRzHFo
ホモ以外は帰ったほうが良いですか!?
支援
21 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/06(日) 18:19:59.83 ID:oXiZukKco
このスレは座標移動に監視されています
22 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/06(日) 19:53:08.72 ID:LrSrFwSw0
ふぃあんまくん可愛いよぉおぉおお!!
23 :
小ネタ:左方さんのおやつ
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/06(日) 21:24:23.58 ID:zjCFje200
《
>>19
早いんだよなぁ…
>>20
お前初めてはここは? 力抜けよ
>>21
ひぃ
>>22
ぷにぷにしてて可愛いです》
ふぃあんま「……」うろうろ
テッラ「おや、どうかしましたか?」
ふぃあんま「いや、なにも」うろうろ
テッラ「?」
ふぃあんま「……」しゅん
テッラ「…おやつならクッキーがありますよ」
ふぃあんま「!」ぴくっ
テッラ「どうぞ」っ袋
ふぃあんま「…きがきくな」ばっ
テッラ「……」ほのぼの
ふぃあんま「……」もぐもご
テッラ「……」よしよし
ふぃあんま「…んー…」
テッラ「どうかしましたか?」
ふぃあんま「ねこがたりったいくっきーはそんざいしえないものか」
テッラ「難しいですねー」
ふぃあんま「むー」
24 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/06(日) 21:27:29.37 ID:AsEa53v40
またおまえかーーーい!!
25 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/06(日) 23:13:31.56 ID:GLV4Znwa0
いつになったら僕のヴェントちゃんは出てきますか?
26 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 07:39:52.83 ID:yJ95IUYL0
おにショタイイネ・
乙
27 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 20:31:52.74 ID:R8Sfahu20
>>24
だって他にフィアンマスレ立ててくれる人が居ないから…仕方ないです
>>25
その内出す予定です!
投下。
28 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 20:32:18.17 ID:te+YTXaAO
+
29 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 20:32:32.25 ID:R8Sfahu20
フィアンマ少年、泣き疲れにノックアウト。
そんな訳で、眠ってしまった子供をベッドに寝かせ、上条は食事の準備に取り掛かることにした。
あれだけ身長・体格に固執するということはやはり男の子かな、と思いながら。
ハンバーグを作るのは、そんなに難しくない。
ましてや、二人分であれば簡単なことである。
上条「…これ位でいいかな」
少食と普通の合間位の量を食べるフィアンマに配慮し、やや小さめのハンバーグを作る。
足りないようであれば何か別の物を用意してあげればいいか、と結論付けて。
つなぎであるパン粉、炒めたみじん切り玉ねぎと、よく練り混ぜる。
ぱんぱん、と叩いて空気を抜きながら成形していき、平べったくして、親指で表面一部を押す。
後はフライパンで焼いていくだけなのだが、その前に付け合せも作っておいた。
自分一人ではまず作らないのだが、一応、今日はご馳走にしようと決めている。
そんな訳で、上条は鍋に少し水を入れ、砂糖を入れ、人参をカットする。
そして僅かに料理酒を入れ、ぐつぐつと煮込んだ。じっくり甘く煮込めば、人参のグラッセの出来上がり。
甘そうだな、と思いながら一本だけ食べることに決め、フィアンマの分に多く取る。
一口サイズに切って皿によそった後、手を念入りに洗ってハンバーグを焼く作業へと移った。
上条「んー…」
計画性は無い。
いつまであの子を養うつもりかも、考えていない。
だが、ひとまず出来る限り、いいかな、と。
上条は、思う。何だか、あの子と居ると、楽しい。
30 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 20:32:33.13 ID:te+YTXaAO
+
31 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 20:32:53.07 ID:R8Sfahu20
良い匂いがする。
嗅いだ事のない匂いだ。
後、甘い匂いもする。
そんな単純な思考で、感覚で、フィアンマは目を覚ました。
もふもふとした柔らかい毛布から、頭を出す。
みょん、と飛び出た所謂アホ毛を指先で正し、彼はのそのそと起き上がった。
上条「ん、起きたのか。夜ご飯ですよー」
ふぃあんま「よるごはん…」
ぐしぐし、と目元を小さな手で擦り、彼はベッドから降りた。
てくてくと上条に近寄り、食卓に並べられていく料理に気がついた。
何だか黒くて丸っぽいが、これは日本料理のオハギだろうか。
否、眠る前にハンバーグと言っていた筈だ。
つまり、これがハンバーグという食べ物らしい。
ケチャップがかかっているのは子供向けのものなのだろうか。
食べたことはないが、知識によるとデミグラスソースがかかっているものらしいのだが。
まあいいか、と流して、フィアンマはちょこんと座った。
上条も食器を配膳して、フィアンマと同じように席に着く。
上条「いただきます」
ふぃあんま「てんにましますわれらが…ふぁふ」
上条「…食前のお祈りか何かか?」
ふぃあんま「そうだよ。ろーませいきょうしきだ」
ローマセイキョウって何の宗教? と思いながら、上条はフィアンマが祈り終えるのを待って、食べ始める。
産まれて初めて食べるハンバーグを気に入ったのか、フィアンマは口いっぱいにもごもごと頬張っていた。
上条「あんまり勢いづいて食べると噎せるぞ」
ふぃあんま「むー」
そんなにがっついてないもん、とばかりの表情。
上条は苦笑して、食べ進めるよう促した。
32 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 20:32:54.30 ID:te+YTXaAO
+
33 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 20:33:22.55 ID:R8Sfahu20
食事を終えて。
歯ブラシについては、間違って購入した上に処理に困っていた子供用歯ブラシを使うことにして(上条はひっそりと、自分の不幸が子供このにとっての幸運へ繋がったことを嬉しがった)。
皿洗いをかちゃかちゃと行っていると、上条の足元にフィアンマが近づいてきた。
上条「んー? ちゃっちゃと終わらせるから、何かするなら後に…」
ふぃあんま「…しょくじ、うまかった」
上条「…そっか、ありがとな」
ふぃあんま「? れいをいうのはおれさまのほうだが」
上条「一生懸命作ったご飯を美味しいって言ってもらえるのは嬉しいものなのですよ。って訳で、ありがとうは俺からも言えるんだ」
ふぃあんま「…そうなのか」
上条「そうだよ」よしよし
親が居ないから、ふとしたやりとりに疑問を覚えるのだろうか。
そんなことを思いつつ、さっさと皿洗いを終え、上条は手を拭く。
上条「そういえば、歯磨きって自分で出来るのか?」
ふぃあんま「みくびるな」
どうにも見目が四歳児相当なもので心配してしまう上条。
そんな心配をよそに、フィアンマは洗面所へ移動し、子供用歯ブラシでしゃかしゃかと歯を磨く。
……が、何だかちょっと足りていない。
何というか、手つきが拙い。
上条「…はい、仕上げは上条さんがやるから、お口開けて」
ふぃあんま「じぶんれれきる……」むう
むすくれながらも歯ブラシを渡してくる辺り、素直な良い子のようだ。
上条は開けられた小さい口の中、的確に歯を擦っていく。
34 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 20:33:23.53 ID:te+YTXaAO
+
35 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga !桜_res]:2013/01/07(月) 20:33:48.48 ID:R8Sfahu20
白いものが唾液と混ざり、白い粘液へと変わる。
えづきそうになりながらも、フィアンマは懸命に堪える。
男はうっすらと笑みながら、そんな少年の口の中を蹂躙した。
とろとろと溢れる白濁液が、フィアンマの口端を伝った。
上条は少しずつ、念入りに出し入れを繰り返した。
「ふぁ、…ぁ、…」
「ちゃんと綺麗になるまでやらないと、な?」
優しい口調とは裏腹に、硬い棒は奥の方まで突っ込まれた。
敏感な粘膜をくすぐるように擦って、時にやや乱暴に摩擦して。
小さなピンク色の舌が、苦しさに震えた。
「ごっくんしちゃ駄目だぞ」
囁きながら、上条は片手でフィアンマの顎を固定し。
もう片手で、白い粘液を塗りつけるように、棒を動かす。
溢れていく唾液が白く泡立ち、くちゅくちゅと卑猥な音を立てた。
「ふ…ひゃふ……、…ふ、……ぅ…」
「苦しいかもしれないけど、もうちょっとだから」
上条は棒の先端を、ぐりぐりと押し付ける。
息苦しさに涙目になり、ぎゅっと目を瞑って。
僅かに震えて耐え忍ぶ細い身体の背中を摩って、上条は棒を動かした。
「あ、っ、あう、ぅ」
ぐちゅぐちゅと、乱暴に。
36 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 20:33:49.43 ID:te+YTXaAO
+
37 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 20:34:10.75 ID:R8Sfahu20
上条「はい、ぐちゅぐちゅぺー」
ふぃあんま「ん、ん」くちゅくちゅ ぺっ
上条「ちゃんとゆすいだら口の周り拭いて終わり」
ふぃあんま「ん…」ふきふき
上条「お風呂ー…は、一人で大丈夫か?」
ふぃあんま「…もんだいな、い……」
うろうろと視線を彷徨わせているのは、迷っているからだ。
一人で入れない訳ではないのだが、上条に甘えるかどうかの瀬戸際なのだ。
上条「…あれだな、二人で入っちゃった方が省エネだから一緒に入るか」
ふぃあんま「? そうか」
上条が話を纏めてしまった為、フィアンマはこくりと頷く。
洗面所と浴室は繋がっているようなものなので、上条はお湯を張りに行く。
きゅっきゅ、と小気味良い捻りの音を聞きながら、フィアンマは大人しく待つ。
上条「ただいま」
ふぃあんま「ああ」
上条はひょいとフィアンマを抱き上げ、てくてくと一旦部屋に戻る。
お湯が溜まるまで、約二十分。
その間に、タオルや着替えの用意をしておかなければならない…のだが。
上条「…子供服買わないとキツいよな」
何しろ体格が四歳児だ。
上条の服では、だぼだぼどころか脱げてしまう。
上条「…ワイシャツならワンピースみたいに何とかなるかな?」
期待しながら、準備していく。
幸いにも、今日は暖かい。
下着については洗濯せねばならないし、裸ワイシャツで寝てもらうことになるだろうが、仕方ない。
38 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 20:34:11.62 ID:te+YTXaAO
+
39 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 20:34:40.28 ID:R8Sfahu20
ふぃあんま「…うー」
上条「…シャワー嫌いなのか?」
ふぃあんま「…なんだこいつは」
上条「…シャワーヘッド?」
ふぃあんま「……」
じとー、とシャワーヘッドを睨んでいる。
どうやらシャワーにいまいち慣れないらしい。
もしくは、学園都市と『外』では形状が違うのか、と上条は疑問に思う。
温度を温めに調節して、スポンジタオルを濡らし、ボディシャンプーを3プッシュ。
もこもこと泡立ったそれを丸め、先にフィアンマの身体を洗ってあげることにした。
ふぃあんま「んん、ん…」
上条「くすぐったい?」
ふぃあんま「たしょうはな」
真っ白だな、と彼の肌を眺めながら、上条はスポンジタオルで擦っていく。
こそばゆいのか、フィアンマはそわそわとしながら我慢している。
退屈なのか、フィアンマは上条の股間に目を移した。
やっぱり同性だと気になるものだよな、と思いながら、上条は洗っていく。
ふぃあんま「…なんかちがう」
上条「…あー、うん」
宗教上、割礼を済ませているフィアンマのそれと上条のモノでは違う。
説明するのも億劫で(加えて気恥ずかしい)、上条は苦笑しながら湯船へ追い立てることにしたのだった。
40 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 20:34:41.11 ID:te+YTXaAO
+
41 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 20:34:58.50 ID:R8Sfahu20
上条も身体を洗い、湯船に使って三分。
フィアンマは早くもぐだっていた。
こうして湯船に浸かる習慣が無いのだから、不可抗力といえよう。
上条「はい、百数えて」
ふぃあんま「うー…うーの、でゅーえ、とぅれ、くあっとろ…」
イタリア語でカウントしているので、上条にはさっぱりだった。
しかし止めずに、上条はのんびりと見守る。
何となく、父親に似た気分だった。
上条には兄弟が居ないので、弟が出来た気分でも、ある。
ふぃあんま「の、ばんたにーぇ、ちぇんと。…かぞえたぞ」
上条「お疲れ様」
ひょい、と抱き上げて風呂場から出、上条は身体を拭いてやる。
ワイシャツを着せ(だぼっだぼのワンピース状態になった)、終わり。
上条もさっさと着替え、フィアンマを寝かせるべくベッドへ向かった。
上条「明日は服買いに行こうな」
ふぃあんま「んー」
間延びした返事をするフィアンマはちょっと眠そうで。
上条はフィアンマの下着だけひとまず洗濯に回してしまうと、ベッドへ彼を寝かせた。
ぽん、ぽん、と一定のリズムで優しくその小さな身体を叩く。
心地よかったのか、数秒程で眠りに就いた。
42 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 20:34:59.45 ID:te+YTXaAO
+
43 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 20:35:17.94 ID:R8Sfahu20
今日は補習も無ければ用事も無い。
そんなフリーまっしぐらな上条は、フィアンマの服を購入すべく、第一五学区へ来ていた。
上条「やっぱり赤い服が良いのか?」
ふぃあんま「かみにあわんだろう、あかくないと」
上条「…白でもいけるような気がするけどな」
うーん、と首を傾げ、上条はのんびりとフィアンマの身体に合わせ、買っていく。
小さな子供服は量産しているのか、割と安かった。
思っていたよりも沢山買ってあげられそうだ、と思いつつ、上条はカゴに服を入れていく。
ある程度サイズに幅を持たせたものばかりなので、多少身体が大きくなっても問題無いだろう。
上条「これ位でいいかな…作るの面倒臭いし、外で食べるか?」
ふぃあんま「がいしょくか」
上条「そうそう」
ところで君、『幻想殺し』を貰うだの何だのはいいのかね。
そう考えながらも口には出さず、上条は会計を始める。
服はかさばる。
そして、布は地味に重い。
そう感じつつも手放す訳にはいかず、上条は買い物袋片手にてくてくと歩いていた。
入ったのはファーストフード店。
ふぃあんま「…はんばーぐか?」
上条「いや、安いからフィッシュバーガーでお願いしますのことよ」
その曜日によって安いバーガーセットが違うようだ。
そして、本日最も最安値はフィッシュバーガーだった。
白身魚のフライに刻んだキャベツとタルタルソースが挟まれた一般的なもの。
上条(…成長には良くないかな)
明日からちゃんと作れば…。
誰かにそう言い訳をして、上条は購入の後、席取りを開始する。
44 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 20:35:18.91 ID:te+YTXaAO
+
45 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 20:35:40.72 ID:R8Sfahu20
もごもご、と口一杯にフィッシュバーガーを突っ込んでいるフィアンマは、上条の飲み物に興味を示していた。
ふぃあんま「…みどり? ……、…えきたいひりょう、」
上条「…あほの子なのか頭良いのかはっきりしろよ」
上条の頭に視線を向け、なるほどこれは黒いポトスかと納得するフィアンマ。
そんな失礼な子供に、だからといって怒鳴る程怒る訳でもない上条はぐったりと項垂れた。
ちなみにこの緑の液体はメロンソーダであって、液体肥料ではない。
上条「ちょっと飲んでも良いぞ。ただ、ピリピリするけど」
ふぃあんま「えきたいひりょうだからか? あいにくおれさまはしょくぶつでは、」
上条「俺だって植物じゃないから! …炭酸ジュースだよ、炭酸ジュース」
ふぃあんま「ん」ちゅー
上条「…」じー
ふぃあんま「…う」けほけほ
上条「やっぱり駄目だったか」
子供舌には炭酸はキツいか、と苦く笑う上条。
フィアンマはメロンソーダに敵意を抱いたらしく、むすくれている。
自分のオレンジジュースを飲みなさい、と促して、上条は食事を進めるのだった。
46 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 20:35:41.94 ID:te+YTXaAO
+
47 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 20:36:01.81 ID:R8Sfahu20
今回の投下はここまで。
48 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 20:37:36.00 ID:e1wahEV10
いつになったら上条さんはふぃあんまを掘りますか
49 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 21:28:04.55 ID:Baam513Zo
おつ
50 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 21:48:22.05 ID:7Bpy7DyHo
>>48
ふぃあんまが掘る側かもしれないだろ
51 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 21:49:00.69 ID:xKKQc97Lo
歯磨きがエロいwwww
いいぞ、もっとやってください
52 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 22:00:47.50 ID:DMa/wO7Bo
途中で描写がおかしかった気がするが気のせいだな
53 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 22:08:46.79 ID:nVcgRRIN0
乙
途中でエロいシーンが有った気がしたが気のせいだろうな
54 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 22:47:27.56 ID:R8Sfahu20
>>48
何でふぃあんまくんが受けって決まってるんですかねえ…(困惑)
>>51-53
えっちいのは素敵だと思います><
まだ先の話ですが、学園都市第一位が健全なショタコンで学園都市第二位が不健全なショタコンです。お知らせ。
投下。
55 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 22:47:29.41 ID:te+YTXaAO
+
56 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 22:47:55.33 ID:R8Sfahu20
本日、七月十九日。
実を言うと、明日から夏休みなのであった。
上条が財布を軽くしても尚、上機嫌継続中な理由の一つだった。
そんな彼は、路地裏で細身の女の子がスキルアウトに囲まれているのを発見した。
上条はフィアンマと路地裏を見比べて、悩む。
上条「…この前の腕使って、荷物持てるか?」
ふぃあんま「もんだいない」
上条「そっか。ちょっと用事が出来たから、荷物持って先に帰っててくれ」
言いながら、上条は寮の鍵と荷物をフィアンマに渡す。
幼く小さな体躯に見合わず力持ちなのか、フィアンマは素直に受け取っててくてくと歩き始める。
上条は彼の姿が遠くなるまで見守った後、路地裏へ向かった。
常盤台中学の制服を着ているかわいそうな女の子を、助ける為である。
57 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 22:47:56.25 ID:te+YTXaAO
+
58 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 22:48:15.02 ID:R8Sfahu20
酷い目に遭った。
ぐすん、と鼻を鳴らしてとぼとぼと帰りながら、上条は口癖を口にする。
上条「…不幸だ」
自分が何をした。
ただ、あの子をスキルアウトから助けようとしただけなのに。
感謝しろとは言わない。
だが、『無能力者の調理法位わかってるわよ。邪魔しないで』なんて理論で電撃をぶつけられるだなんて。
あんまりだ、あんまりにも酷い。
今日は概ね幸運だったし楽しかったのに、と思いながら、上条は家に戻る。
フィアンマに渡したものとは別に合鍵を持っていたので、普通に開けて中に入った。
上条「ただいまー…」
ふぃあんま「む」
上条が居ない間にタンスの中身を整理してスペースを作ったらしい。
自分の段は一番低い三段目と決めておいたのか、テキパキと詰めている。
上条「おお」
ふぃあんま「もうすぐおわる」
上条「…自立してるな」
まだまだ甘えたい年頃だろうに、と感心しつつ、上条はフィアンマの頭を撫で。
時々整理整頓を手伝い、ゆっくりと休憩するのだった。
59 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 22:48:15.95 ID:te+YTXaAO
+
60 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 22:48:36.39 ID:R8Sfahu20
楽しい夏休み初日。
フィアンマを何処かへ連れて出かけようかと思った上条は、しかし素敵なラブコールによって中断させられた。
例の如く補習である。仕方が無い。馬鹿なのだから。勉強しなければならない。
上条「はー…」
ふぃあんま「また"ほしゅう"か」
上条「好きでやってる訳じゃないんだけどな」
何せ、テストでヤマを張れば必ず外れるのだから。
しかたない 不幸体質だもの とうま
どこぞの詩の読み手のようにぼやいて、上条は布団を干しにかかる。
こうした晴れた日は天気予報を念入りにチェックした後、布団を干すに限る。
上条は布団を抱え、窓を開けた。そして、デジャヴに立ちくらみを覚える。
上条「…えー…?」
??????「…んん…」
何と今度は、自分よりちょっと年下の真っ白な少女が、手すりに引っかかっていたのだ。
上条「……ベランダに引っかかるのって流行ってんの? 上条さん家も流石に二人は無理ですよ?」
ふぃあんま「はやっているかどうかはしらんよ」
??????「…おなかへった」
喋った。
上条は白い少女を見つめる。
少女は顔を上げ、上条を見るなり、はにかんだ。
??????「おなかいっぱいごはんを食べさせてくれると、うれしいな」
61 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 22:48:37.28 ID:te+YTXaAO
+
62 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 22:49:11.71 ID:R8Sfahu20
上条家の冷蔵庫を空っぽにした少女は、満腹の様子だった。
??????「お腹いっぱいなんだよ。いい人だね!」
上条「…そりゃどうも」
インデックス「あ、自己紹介がまだだったかも。私はイギリス清教『必要悪の教会』所属の魔術師なんだよ。魔道図書館としての正式名称は『Index-Librorum-Prohibitorum』…通称『禁書目録』。だから、インデックスって呼んで欲しいな!」
上条「インデックス、ねえ。…目次?」
インデックス「!? 禁書目録!」
上条「うーん。…お前のお友達?」
ふぃあんま「ゆうじんではないが、よくしっているよ」
インデックス「そこの子供さんはあなたの弟さんか何かなの?」
似ていないね、と首を傾げるインデックス。
上条はゆるく首を横に振った。
上条「いや、居候」
ふぃあんま「む」
上条「フィアンマっていうんだ」
ふぃあんま「じこしょうかいくらいじぶんでさせてくれよ」
上条「したいならさっさとすれば良かっただろ」
インデックス「フィアンマだね、覚えたんだよ! イタリア人にありがちな苗字だね。見た感じイタリア系だけど。あなたは?」
上条「上条当麻。…これといって目立ったところは「いまじんぶれいかー」はいはい」
インデックス「イマジンブレイカー?」
上条「俺の右手。原理不明だけど、ありとあらゆる異能…神様の奇跡ですら打ち消せるってウワサ」
インデックス「…神様の奇跡を? ぷぷ、それはないかも」
敬虔であるインデックスは、上条の、ともすれば獰猛な発言にぷぷ、と笑う。
この野郎、と思う上条だったが、怒ったのは彼ではなかった。
ふぃあんま「なんだときさま」
インデックス「…どうしてフィアンマが怒るの?」
ふぃあんま「いまじんぶれいかーはおれさまのものだ。しぶつをばかにされればはらがたつ」
上条「だからお前のじゃないって」
インデックス「フィアンマ、ごめんね? …うーん。それにしても神様の奇跡を打ち消せるー、なんてのはちょっと冗談キツいんだよ」
上条「俺には謝らねえのかおい。…証明しようにも、異能の力が此処に無いしな」
インデックス「私の着ている服が証明になるんだよ」
ふぃあんま「『歩く教会』か」
インデックス「な、なんで知ってるの!?」
動揺するインデックス。
フィアンマは少しだけ考える素振りを見せた後、魔術師だということを、明かした。
63 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 22:49:12.87 ID:te+YTXaAO
+
64 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 22:49:47.07 ID:R8Sfahu20
魔術師とは。
魔術を使う者の総称。
『まっとうな手段では叶わない願い』を持つが故に、魔術という異常な手段に頼った者達である。
その成り立ち故に、魔術師の行動原理にはまず『個人的な願い』がある。
そのため特に近代魔術師(アドバンスドウィザード)は、個人を重要視する傾向にあり、その願いを魔法名という主観的な目標として自らに刻んでいる。
魔術師にとっては、組織に属するのも『個人的な願い』を達成するための手段でしかなく、利用できる間は忠誠を誓っても、邪魔になれば容赦なく裏切る。
組織側もこの個人主義的な傾向を放置しているわけではなく、『集団で無ければ使えない魔術』や『裏切り者に対する制裁』などの『飴と鞭』で統制を計っているが、それでも決定的な束縛にはならず『やるやつはやる』らしい。
起源としては十九世紀末ごろに確立されている。
彼らは基本的に集団行動を嫌う者たちであり、
『黄金』を作る目的で掲げられた錬金術師という天才集団も、
大抵は人格的な問題からそりが合わずに内部分裂を起こしているという。
インデックス曰く、学ぶだけでなくオリジナルアレンジを加えて新魔術を生み出してこその魔術師だとか。
上条「はー」
インデックス「…真面目に聞いてたの?」
上条「それなりには。で、フィアンマもインデックスも魔術師なのか」
ふぃあんま「そうだよ」
上条「ふむふむ?」
インデックス「…あ。魔術の観点で説明すると、とうまの右手が幸運を打ち消しているから不幸なのかも。幸運って即ち、神様の奇跡だからね」
上条「え」
インデックス「あくまで推測だけど…。……そろそろ行くね! 美味しいご飯ありがとう!」
上条「行くって、何処に?」
魔術師についての説明途中、インデックスは追われていると言っていた。
上条はふと心配になり、そう聞き返す。
インデックス「とりあえず、イギリス清教管轄の教会に助けを求めるつもり。心配無いよ」
上条「いやでも、」
食い下がる上条。
彼は、困っている相手を見過ごせない。
インデックスは少し困って、首をかしげて微笑む。
優しい微笑みを浮かべたまま、最後通牒を突きつけた。
インデックス「なら、地獄の底まで一緒についてきてくれる?」
悪意無き強い拒絶に、上条は黙り込む。
寂しそうに、それでも満足そうに微笑んだインデックスの服袖を、上条とは違う少年が掴んだ。
ふぃあんま「まて」
インデックス「…え?」
ふぃあんま「おまえにはなしがある」
65 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 22:49:48.02 ID:te+YTXaAO
+
66 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 22:50:18.03 ID:R8Sfahu20
上条が聞いている横で、何やら謎の言葉が飛び交った。
どうやら魔術関連の単語らしいが、横文字過ぎて理解出来ない。
フィアンマの説得に応じたのか、インデックスは座り直している。
ふぃあんま「…そういえばいまじんぶれいかー、"ほしゅう"はいいのか?」
上条「あ。…いや、でもお前達残していくのすっごい不安なんだけど」
ふぃあんま「おおぶねにのったきもちでいけ」
上条「えー?」
四歳児、もとい虚弱七歳児に胸を張られても。
上条はしばし迷った後、フィアンマに携帯電話を渡した。
上条「危ない人が来たら通報するんだぞ。その魔術師ってのがどんだけ危険かはわからないけど」
ふぃあんま「もんだいない」
インデックス「いざという時は私が盾になるから大丈夫かも」
ふぃあんま「されるまでもない」
上条「どっちもグロい未来しか見えないんだけど…」
大丈夫かな。
酷い不安に駆られながらも、上条は補習へ向かう事にした。
67 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 22:50:18.83 ID:te+YTXaAO
+
68 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 22:50:41.57 ID:R8Sfahu20
上条「ただいまー」
ふぃあんま「おかえり」
上条「………」ばたん
ふぃあんま「う?」
上条はドアを開けて爽やかに挨拶し、そのまま閉めた。
きょとんとするフィアンマだったが、上条はびっくりしただけなのだ。
出る時にはインデックスとフィアンマだけだったのに、何故か人が増えていた。
上条「…ただいま」
ふぃあんま「どうした」
上条「どうしたもこうしたも、誰だよ」
ふぃあんま「あかがみはすている=まぐぬす、くろかみがかんざきかおり、だ」
上条「友達作るの早くないか?」
ふぃあんま「ゆうじんではない」
中に居たのは、神裂の膝上にちょこんと座っているフィアンマである。
インデックスは医療箱の中身を拝借して、ステイルの手当をしている。
上条「…何があったんだ? えーっと、コイツ等が追手…だったのか?」
インデックス「うん」
神裂「…我々にも事情が、ありまして」
ステイル「………」
神裂もステイルもボロボロだったが、上条は敢えて突っ込まないでおいた。
もしかすると、フィアンマの、あの肩から生える恐ろしい腕でぶん殴られたのかも、と思ったからだ。
そしてその予想は、ある意味当たっていたりする。
69 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 22:50:42.50 ID:te+YTXaAO
+
70 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 22:51:03.92 ID:R8Sfahu20
曰く、インデックスは絶対記憶能力者、故に魔道書図書館な訳で。
知識によって脳が圧迫されている為、一年周期で記憶を消さないと、死んでしまう。
その為、神裂もステイルも、親友である彼女を大事に思うが故、涙を呑んで記憶を消してきた。
酷い話だなあ、と思う上条だったが、それ以前に突っ込まずにはいられなかった。
上条「それ、無いと思うぞ」
ステイル「…は?」
上条「記憶ってのはカテゴリー別になってて、知識のせいでエピソード…つまり、思い出を消さないと死ぬなんて、脳の構造上ありえないんだよ」
神裂「ですが、事実彼女は苦しんで本当に死んでしまいそうに、」
ふぃあんま「いぎりすせいようのあーくびしょっぷがぜんにんとおもっているのなら、おめでたいな」
ステイル「…何?」
ふぃあんま「じゅうようなまどうしょとしょかんに、ほけんのひとつもかけないとおもうのか?」
上条の言葉を支援する形で、フィアンマは予測を口にする。
曰く、インデックスの身体に霊装が組み込まれていて。
その霊装によって、脳を圧迫しているのだと。
つまり、ステイル達がやって来たことは、ある種無駄だった。
信じられずに神裂達は取り乱す。
上条が宥めてとりなし、まだまだその『期日』まで日数があることを理由に、その異物<霊装>を取り除くことにした。
上条の右手―――幻想殺しで、インデックスの身体に触っていく。
頭、ほっぺた、そして、口の中。
喉の奥に何かがある、と判断して、上条は指を伸ばした。
パキィン、という甲高い音が響く。
そして、戦いが始まった。
71 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 22:51:04.89 ID:te+YTXaAO
+
72 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 22:51:29.23 ID:R8Sfahu20
上条はだるそうにベッドへ座っていた。
戦いといっても、参加したのはフィアンマだけだ。
彼が右手を振って即終了してしまった為、現在はインデックスの目覚めを待っている。
ステイルはインデックスをじっと見つめているし、神裂は不安げだ。
『首輪』の損傷による、『自動書記』起動。
本来であれば、激戦になるはずだった。
しかし、『自動書記』がロクに働いていないそこを突いて、『聖なる右』の一撃。
一撃必倒の攻撃は、一度防がれた。
何やら白いビームのようなものの軌道が変化し、上空へ向かった。
そして二回目の攻撃が、彼女に届いた。
白い羽が舞ったが、それも『第三の腕』がぶんぶんと埃の様に払い。
何の悲劇も無い空間で、白い少女は、のろのろと目を覚ました。
インデックス「…あ、れ…?」
ふぃあんま「きがついたか」
インデックス「…やく、そく。…守って、くれたん、だね」
ふぃあんま「…やくそくというよりもけいやくだが」
上条達は知らないことだったが、この二人は取引をしていた。
インデックスが追われる状況を軽減する為、フィアンマに『聖なる右』を安定化させるだけの充分量の知識を与えるというものだ。
事前に報酬を受け取っていたフィアンマは、普通に働いただけである。
ふぃあんま「がんばっていたのはこいつだぞ」
言って、フィアンマはステイルを指差す。
目を覚ましたインデックスに近寄るべきか迷っていたステイルは、びくりと固まる。
ステイル「な、何を、」
上条が三割、フィアンマが七割。
彼女を救った力の割合に自分は1%も入っていない、とステイルは反論しかける。
フィアンマはただ、首を横に振った。
右方のフィアンマは、余計な悲劇を好まない。
73 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 22:51:30.49 ID:te+YTXaAO
+
74 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 22:51:57.62 ID:R8Sfahu20
魔術師三人にお帰りいただいて。
上条はごろんごろん、とベッド上で転がっていた。
フィアンマはというと、そんな上条の右手を見つめていた。
上条「……」
ふぃあんま「…うー」
上条「…ステイルってやつ、絶対あのインデックスっていう子の事好きだったよな」
ふぃあんま「おそらくな」
ふふふ、と顔を見合わせて笑い。
上条は思い出したように立ち上がって、台所へ消える。
そして、チューペットアイスを手に戻って来た。
ふぃあんま「? なんだそれは」
上条「チューペット」
ふぃあんま「…ちゅー?」
上条「吸って食べるタイプ。ほら」ぱきんっ
言うなり、キンキンガチガチに凍っているチューペットを二つに綺麗に折り。
握りやすい方を、上条はフィアンマへと差し出した。
フィアンマはじっとチューペットを見つめて悩んだ後、ぱくり、と口に咥える。
75 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 22:51:58.50 ID:te+YTXaAO
+
76 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga !桜_res]:2013/01/07(月) 22:52:24.70 ID:R8Sfahu20
硬いソレに、フィアンマはそっと舌を這わせる。
口の中から溢れだす唾液が、滲む白い液体と混ざった。
じゅる、と音を立てて啜り、ごくんと呑み込む。
初めて口にする味に、フィアンマは目を細めた。
「…もっと吸わないと、出ないぞ」
「ぅん、…っん……は、ぁ……」
ちゅ、ちゅ、と可愛らしい音が部屋に残る。
もっと欲しい、もっと飲みたい。
欲求のままに、フィアンマはぴちゃぴちゃと舐めていく。
滴る白い雫を、飲み下す。
喉が、灼ける。そして、潤されていく。
思っていたよりも濃厚で、思わずフィアンマはけほけほと噎せた。
「けほっ、えほ…ふ…」
「がっつかないで、ゆっくり食べないと」
「ん、…む……」
上条に言われるまま、ゆっくり。
小さな指で、太くて硬いそれを握った。
にぎにぎと握って、ほんの少し、イタズラに歯を立てた。
段々と溢れてくる白い液体。
「ちょっと、ゆっくり過ぎたかもな」
「ん…いまじんぶれい、か…っあ」
びゅく、と白い液体が吐き出された。
当然、フィアンマの幼い顔は汚される。
べたべたとした白い液体に、フィアンマは困惑のまま、眉を下げた。
77 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 22:52:27.28 ID:te+YTXaAO
+
78 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 22:52:45.41 ID:R8Sfahu20
上条「あーあー…」
苦笑しながら、上条はフィアンマを見やり、チューペットを口に銜えてキッチンへ。
そしてタオルを濡らすと、濡れタオルでフィアンマの顔を拭ってやった。
チューペットの溶けかけた中身に気づかず、強く握りすぎてしまったようだ。
当然、飛び出した液体は顔にかかってしまう。
べたつく不快感にむすくれながら、フィアンマは大人しくした。
上条「フィアンマの場合、凍らせないでストローで飲む方が良かったかもしれないな」
ふぃあんま「…」むー
上条「……」よしよし
ふぃあんま「…でも、おいしかった」
上条「ん、そっか。良かった」
ほのぼのとしながら、上条はフィアンマの頭を優しく撫でた。
何だか今日は激動の一日だった………気が、する。
79 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 22:52:46.44 ID:te+YTXaAO
+
80 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/07(月) 22:53:02.40 ID:R8Sfahu20
今回はここまで。
81 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 22:54:46.10 ID:xKKQc97Lo
乙!
ふぃあんまかわいいなぁー!
そしてエロいね、GJ
82 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 23:37:54.59 ID:DMa/wO7Bo
乙!
やっぱり描写が・・・?
疲れてるのかな?
83 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/08(火) 00:21:39.80 ID:27xBf/2io
ふぃあまん君のチューペットペロペロしたいお
84 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/08(火) 01:07:14.14 ID:Ml0BAF/P0
乙
第一位も第二位もどっちにしろショタコンなのか……
85 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/08(火) 13:59:07.64 ID:rO3vG9lf0
\ / .::::::::::::::::::::::::;;:;;::,ッ、:::::: ) く ホ す
\ l ,ッィrj,rf'"'"'" lミ::::::: く れ モ ま
Y ,!ミ::::::: ヽ な 以 な
`ヽ、 | くミ:::::::: ノ い 外 い
|、__ ャー--_ニゞ `i::::,rく か は
``''ー- ゝ、'l  ゙̄´彑,ヾ }::;! ,ヘ.) ! 帰
゙ソ """"´` 〉 L_ っ
/ i , /| て r
≡=- 〈´ ,,.._ i 't-'゙ | ,へ ,r┘
,、yx=''" `ー{゙ _, -、 ; l レ' ヽr、⌒ヽ'
゙、`--─゙ /! `、
_,,、- ゙、 ー'' / ; `、
-''"_,,、-''" ゙、 /;;' ,' / 、\
-''" / `ー─''ぐ;;;;' ,' ノ
// / ヾ_、=ニ゙
86 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/08(火) 14:07:07.58 ID:rO3vG9lf0
, __ _,
, __,/;≦三乙_
/し'マ /〈'´∠二二≧=−
jvく/{ / .′  ̄ミ 、__
,リ′ { \、__、\__
{{ 、\ ヽ. `辷≧;=-
ivi 、 { {へ \ \ 、 \({ __
j八 、__{v爻メv'^ヘ 、\ \ヽ. \ `^マ
{、( __`マ;^″ 、 j 》へjヘV\\ \ \(` ) く ホ す
`辷彡,i{ ___\j{〔__,;z≦;弍ィ 、 \\\、} く れ モ ま
、_{_彡小仁,弐≧; `!'弌`'^' ″ \ \`'マ ヽ な 以 な
`ア/ ハ`弌` '7^i U ` jハ丶 \} ノ い 外 い
{ iVi/{ / ! \ 'イ^}v!\{ ` く で は
Wい ′ {ー' r_、 丶. }メ八`v ` ) あ 帰
jメイヘ ; ` ーr;!代い{ L_ る っ
'^介ー、 ;辷' 三≧=- ,リi∨V^` | か て
ノイハ ` -‐…‥ 〃 !、い\ | !
'^V/iヘ. // j⌒`メく` | ,へ ,r┘
、_j v;__ }i亅、\__ _ イ/′ ′ r_ レ' ヽr⌒ヽ'
\ 、 ̄] `ト- -− / , /{ _厶、
\ \〕 . / , / / ̄`^メヘ,
_jしヘ {ヘ / / / /i
;vi「 i 、 } . 、 / / __/__j /: |
, __/ i j_,厶{--へ.__}V∠二二)'´ /: : l
;_j イ!「 , __j仁 二》, ii'^({ ,く /: : : :!
h! !i  ̄  ̄ ̄`{ !! ) 〉 ,ハ 〈: : : : :
87 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/08(火) 19:19:30.33 ID:MQUV2PCb0
>>81
ありがとうございます!
>>82
モルダー(仮)…あなた疲れてるのよ
>>83
ふぃあまんチューペット(意味深)ですか
>>85-86
| ! ト、 VNハ Y マ.} }
V ! ト、/ /〉 |i | V ハ
ト、\\_ 《fv' |ト、 | V| !
|小、\L_ ` | ヽ. | !| では歓迎しようか
/∧ `ヽ「`| j ,.ィV | | | 俺様の城、
. // ∧ヽ L__ // | ! ! | | 『ベツレヘムの星』へ
//| | V i `ヽ`´ノ ト、 | ト、! !
.// |! ! | |! i `ヽ | |ト、ヽ ヽ \
// | | | | | | i `T「| | \\\_ >
. | | ! ! | | |! | | | | | | | 〉\「ヽ
. | | | | | ! i| | | | | | ヽ!/冫/  ̄
..| ! | | |\ | | | | ト、! / .// ‐-
|| ! ! ト、_> | | ト、 乂フ//` ー
. i! ヽト、ゝ乂ゝ.! i| \! ヽーァ/ .| ―-/
ト、 \__` ` ヽト、_ `ー ,.| ! |\ / /
ヽ「` ,イ { |ヽ/ /
{ { V | / /: : :
ト、\V /|: : : :
投下。
88 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/08(火) 19:19:39.42 ID:rYsWf7hAO
+
89 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/08(火) 19:20:18.77 ID:MQUV2PCb0
どうしてそうなってしまったのか、まるでわからないまま。
夕暮れ時、右方のフィアンマは一人ぼっちなのだった。
ついさっきまで上条当麻と一緒に居たのだが、気付けばはぐれていた。
だからといって、普通の子供のように泣き喚きはしない。
彼が泣くのは、耐え難い激痛と堪えきれぬ屈辱を相手にしたときだけ…(と信じたいの)だ。
ふぃあんま「…まったく、いまじんぶれいかーのやつめ。まさか、あのとしごろのにんげんがまいごになるとはな」
情けない。
ふん、と鼻を鳴らす彼に、ツッコミを入れたい人間はさぞかし多いだろう。
自分が迷子になったのではなく上条が迷子になったのだと結論付け、フィアンマはてくてくと歩き出す。
行く宛は無いが、帰ろうと思えば即座に家には帰れる。
しばらく学園都市を歩き回ってみよう。
観光気分な幼子は、ちょっと楽しい気分で歩いていくのだった。
90 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/08(火) 19:20:21.65 ID:rYsWf7hAO
+
91 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/08(火) 19:20:44.48 ID:MQUV2PCb0
俺は、ショタを愛している。
愛らしいショタ
小生意気なショタ
素直なショタ
ロリショタ
老けショタ
数え切れない程のショタを。
ショタと言い切るには、多少語弊があるかもしれない。
俺が愛しているのは、ショタに秘められた果てしない未来への可能性だ。 そんな可能性を秘めた脆く愛らしい存在を、俺は愛でたい。
一応、理想はある。
奇抜な色合いの綺麗なつやっつやの髪
金色の瞳
色白
細い
庇護欲をそそる見目
それでいて生意気な口調
しかし思いやりに溢れた素直な子供
アニメキャラクターにしか存在し得ない、完璧なバランスを保ったショタ。
しかしながら、そんな最高の幼子は、同次元に存在しない。
一方「…死にてェ」
死ンだら、幼くして逝った愛らしいショタと戯れられるかもしれない。
そんな事を考えている一方通行に生きる気力など、湧く筈も無かった。
一方(絶対能力者進化実験も延期延期ドタキャンで通してるしな…)
まぁ、そちらには罪悪感は無いのだが。
スキルアウトや恨みを持つ人間に襲われ(反射す)る日々。
もう、疲れてしまった。極めつけには、には研究者から『20000人殺してみない?』などと打診を受け。
一方(…本格的に死ぬかな…)
生きていたって、極上のショタと出会える訳でもなし。
せめて楽しそうなショタBLゲーで幸せエンドを見てから死ぬかな、と思う一方通行は、ようやっと、自分が呼び止められていた事に気がついた。
92 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/08(火) 19:20:45.48 ID:rYsWf7hAO
+
93 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/08(火) 19:21:09.12 ID:MQUV2PCb0
一方「…あン?」
立ち止まり、振り返る。 小さな両手で缶コーヒーを持っている人物が居た。
自分が大量買いして、袋に入っている銘柄だ、と一方通行は思う。
どうやら気付かない間に、袋から溢れ、一本落ちてしまっていたようだ。 だが、一方通行が注目しているのは、缶コーヒーなどではない。
それを持っている、幼子の方だ。
ふぃあんま「いちどよびとめられたじてんでたちどまったらどうだ」
赤く、綺麗なつやっつやの髪
金色の瞳
色白
細い
庇護欲をそそる見目
それでいて生意気な口調
しかし思いやりに溢れた素直な子供
中性的で、ともすればロリ。
だが、ショタだ。紛れもない、理想極上の。
一方「……、」
生きていたって、極上のショタと出会える訳でもなし。
偶には弱気になってみるものだ、神様は本当に居るのかもしれない、と一方通行は思う。
けれど。
自分は、このマジかわいい天使<理想のショタ>に関わっても、良いのだろうか?
自分は学園都市第一位、破壊ばかりに特化した一方通行。
そして、スキルアウトなどから常に狙われ続ける存在。
孤独にして孤高の王、冷酷な殺人者一歩手前の、自分が。
だが。
一方「―――童貞を貫けない者に、信念は貫けない」
そして。
一方「―――その気になれば学園都市を守れる怪物は、その気になればショタを守れる」
そして自分は。
絶対に、絶対に……ショタだけは傷つけないと、決めている。
なら。
むしろ、ここで手を伸ばさねば、幸福な状況をセットアップしてくれた神様とやらに申し訳無い。 一方通行は無理やり納得して、久方振りに笑みを浮かべた。
一方「ありがとなァ、お礼したいンだけど時間あるか?」
ふぃあんま「じかんはある」
94 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/08(火) 19:21:10.09 ID:rYsWf7hAO
+
95 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/08(火) 19:21:35.46 ID:MQUV2PCb0
缶コーヒーが目の前に転がってきた。
それは眼前の人物の手にしている白い袋から飛び出たものだった。
善行を愛するフィアンマは缶コーヒーを拾い上げ、届けた。
届けた相手が白い悪魔―――学園都市第一位『一方通行』ということも知らずに。
しかし、無遠慮に、挑戦的に言葉を放ったフィアンマが攻撃されることは無かった。
何故なら、ショタだったからだ。
愛らしく可愛らしい、ショタだったからだ。
完璧な『聖なる右』等なくとも、ショタはその愛いさでもって世界を救えるのである。
そんな訳で、フィアンマは一方通行と共にファミレスへ来ていた。
ちょこん、とソファーに座り、フィアンマは興味深そうにメニューを眺める。
ふぃあんま「……」うーん
一方「…ファミレスは来た事ねェのか?」
ふぃあんま「ないわけではないが…」
一方「…見た所、イタリア系か」
ふぃあんま「いかにも」
ぱたぱたと小さな足をぱたつかせ、フィアンマはメニューを眺める。
お子様ランチ(食事)か、チョコレートパフェ(おやつ)かで迷っているのだった。
容赦なく両方注文してしまっても良いのだが、食べきれない。
一方(可愛いなァ…可愛い…イイねェ…ああ…)
此処が天国か、と一方通行は思う。
実際、右方のフィアンマが本気になればこの場を天国に変えられるのだが。
ふぃあんま「……んー」
一方「……」にこにこ
一方通行、満面の笑み。
フィアンマは首を傾げ、メニューを見せる。
ふぃあんま「こーひーぷりんとやらはうまいのか」
一方「まァまァだな。俺としては本物のコーヒーの方が好みだ」
ふぃあんま「ふむ」
結局、コーヒーパフェにしたらしい。
大人ぶりたい年頃というやつか、と。
一方通行はときめきを堪えて、笑みを崩さずにいた。
96 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/08(火) 19:21:36.30 ID:rYsWf7hAO
+
97 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/08(火) 19:22:11.03 ID:MQUV2PCb0
おなかいっぱい。
コーヒープリンの乗ったパフェを食べきったフィアンマはご満悦だった。
その小さな体躯に見合った小さな胃袋は、ぱんぱんになっている。
生クリームがほっぺたについていたことに気がついて、紙ナプキンにて拭いた。
一方「もう暗いからなァ、送ってやるよ」
ふぃあんま「しんぱいむようだ」
一方「ンー…恩人に恩返しさせてくれ」
嘘である。
この好みドストライクなショタと一緒に居たいだけである。
ふぃあんま(…そういえば、いまじんぶれいかーはかえれたのか?)
うーん、と首を傾げるフィアンマ。
ちなみに上条当麻はというと、ちょいと不幸にも事件に巻き込まれ、巫女服少女の為に奮闘している。
一方通行はこの日初めて、絶対能力者進化実験に手を出していなくて良かったなあ、と思う。
汚れた手では、きっとこの天使と同じ空間に居る事すら、自責の念で耐えられなかっただろう。
98 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/08(火) 19:22:11.94 ID:rYsWf7hAO
+
99 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/08(火) 19:22:35.66 ID:MQUV2PCb0
ゆったりのんびり、帰り道。
勇気を振り絞り、手が冷えて辛いと述べた一方通行の為、フィアンマは手を繋いであげていた。
小さく、ちまっとしていて、ふにふにのおてて。
一方(…幸せ…ン、)
ふと、思う。
学園都市が誇る最高の頭脳は、高速思考を行う。
このまま家まで送って親御さンに会う→好青年アピール→俺をあまり知らないヤツなら好青年と思ってくれる→好青年→近所のお兄さンポジション→「じゃあこれからも時々遊んでやってください」→移動託児所的扱い→このショタと一緒に過ごせる←思考地点今ココ!
一方(……よし)
正直、人と話すのは好かない。
だが、このショタと共に居る為ならば、どのような地獄にでも足を踏み入れよう。
そんな覚悟を重く固める一方通行。
フィアンマはというと、マイペースにてくてくと歩いていた。
そして、到着したのは学生寮。
家主たる上条当麻は―――居なかった。
彼は現在、三沢塾で受けた傷の為に病院に居る。
そんなことを知る訳もない二人は、どうしようかと首を傾げた。
一方「鍵はあンのか?」
ふぃあんま「ない」
一方「そっかァ…ンー」
自分の家は危ない。
スキルアウトが平気で特攻してくるのだ。
自分はともかく、この天使に万が一、億が一の事態が起こってはならない。
一方「ン、ネカフェだな」
ふぃあんま「ふぇ?」
一方「……かわ、…まァ安心しろ、ついて来い」
100 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/08(火) 19:22:36.55 ID:rYsWf7hAO
+
101 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/08(火) 19:22:51.17 ID:MQUV2PCb0
二人がけのソファー席。
一方通行の膝上のちょこんと座り、フィアンマは本を読んでいた。
学生が住人のほとんどである学園都市のネカフェともなると、子供向けのものばかり。
成人向け雑誌コーナーになるべき空き区間に絵本が入っていた。
一方通行はそれを見逃さず、現在、フィアンマに絵本を読ませていた。
一方通行は小説を読むフリをしてフィアンマの様子を眺めている。
ドリンクバーコーナーから持ってきたのはココアとコーヒーだった。
ふぃあんま「……む」
一方「読めない字でもあったのか?」
ふぃあんま「そうではない」
『くまさんのだいぼうけん』と銘打たれたその絵本。
熊が少女に恋をするシーンが理解出来なかったのだろうか。
恋だなんて全然わからない歳だものな、と一方通行は思う。
ちなみに彼は、フィアンマの見目に惑わされず、七歳だと見抜いていた。
ショタに限って強く多大に発揮される審美眼である。
ふぃあんま「くまがひとにこいをしてもむくわれんだろう」
一方「…恋はな、報われるからするンじゃねェんだヨ」
しんみりと語る一方通行。
だがしかし、彼もまだまだ尻の青い十代の少年なのだが。
102 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/08(火) 19:22:51.97 ID:rYsWf7hAO
+
103 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/08(火) 19:23:02.99 ID:MQUV2PCb0
今回はここまで。
104 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 00:58:38.31 ID:hngfa3mL0
乙
一方さんも報われない恋に生きてるもんな……どうしてそんなベクトルになったって状態だが
ふと思ったが、ショタンマくんはひょっとして原作のフィアンマより最強なんじゃないだろうか
聖なる右は不安定だったり幻想殺しに負けたりするけど、ショタという現実は上条さんにだって殺せない…!
105 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 18:09:45.76 ID:vzmyv1A80
>>104
彼にも複雑な過去が…あるんでしょうか
流石に可愛いショタは上条さんも殴れないと思うので最強ですね!
投下。
106 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 18:09:50.75 ID:yIhkX+lAO
+
107 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 18:10:27.31 ID:vzmyv1A80
恋は理解出来ない。
首を傾げ、フィアンマは絵本を読み終わってココアを啜る。
市販品のそれに似た味わい。要するに、砂糖がどっさり。
そんな甘ったるい味は舌に合ったのか、フィアンマは上機嫌な笑みを浮かべる。
一方通行はほのぼのとしながら彼の頭を優しく撫で、しばし時間を過ごした。
一方「…結構時間経ったな。もう帰ってるとイイが」
ふぃあんま「いちどかえればわかる」
ココアと絵本で幸せらしい。
フィアンマは一方通行をじっと見上げる。
一方通行は少し悩み、先程の寮の表札を思い浮かべた。
警備員や風紀委員に頼めば、動いてくれるだろう。
こんなに小さい子供が困っているのだ、家主の現在地を捜してくれるはず。
健全なショタコンである一方通行は、フィアンマを攫おうとは思わない。
虐待をされているのならばまだしも、それ以外の幼児は保護者と一緒に居るのが一番だからだ。
そこに成り代わろうとは思わない。それは下衆のやることだ。
ふぃあんま「…しかし、こうげきされるかいすうがおおいな」
一方「…色々あってなァ」
一方通行は素早く庇っているが、先程から数度、外で歩いている途中に攻撃を受けている。
一方通行にとってはいつものことなのだが、フィアンマの目には哀れに映ったらしい。
ふぃあんま「ん」なでなで
頭に届かなかったらしく、腰へのなでなで。
一方通行はお礼を言いつつ、歩くのだった。
108 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 18:10:28.16 ID:yIhkX+lAO
+
109 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 18:11:02.21 ID:vzmyv1A80
やっぱり上条が居ないので、警備員に頼み。
『書庫』等から検索した結果、上条は入院中だとわかり。
一方通行は自分が居る事でフィアンマが怪我をしないか心配しつつも、やっぱり送るのであった。
到着した病院。
名医『冥土帰し』の在籍している、大きな病院だ。
一方通行は情報を思い返しながら、フィアンマの手を引いて病室へ向かう。
個室だった。となると、病状が重いのだろうか。
ガラガラ。
上条「あ、フィアンマ…ごめんな」
ふぃあんま「まいごのうえにけがか。しまつにおえんな」
むぅ、とむすくれているフィアンマは、一方通行の手を離す。
そして、ててて、と上条に近寄って、くっついた。
抱きつかれて苦笑しながら優しく宥め、上条は一方通行を見る。
上条「えっと、フィアンマの面倒を看ててくれたんですか?」
どなたかは存じ上げませんけど、と頭をフル回転させて敬語を使う上条。
対して一方通行も、慣れない敬語で返した。
一方「落し物拾ってもらったンで、おあいこって感じですかね。…ァー、保護者さン、ですか?」
上条「…ま、ぁ、そういうことになりますね」
楽しいながらも遊び疲れたのか、フィアンマは上条に抱っこされたまま眠っている。
上条はそんな子供の寝顔に柔らかな笑顔を浮かべ、一方通行を見つめる。
上条「色々あって、はぐれちゃったんです。わざわざありがとうございました。すみません」
一方「いや、イインです」
正直言えば"目を離してンじゃねェよタコ"といったところではあるのだが。
上条の笑顔があまりにも穏やかで、思わず言葉を呑んだ。
一方通行は一度だけフィアンマの寝顔を見やり、軽く頭を下げて病室を出て行った。
110 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 18:11:03.17 ID:yIhkX+lAO
+
111 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 18:11:31.54 ID:vzmyv1A80
フィアンマからは、ココアのような甘い匂いがする。
幸せそうに寝ているということは、お腹がいっぱいなのかもしれない。
良かった、と思いながら、上条は優しくフィアンマをあやす。
上条「…ごめんな」
フィアンマとはぐれた後、上条はフィアンマのことを捜していたのだ。
途中、ステイルに出会い、申し訳なさそうに頼まれて。
三沢塾というところへ潜入し、錬金術師と戦った。
その結果がこの怪我で、入院である。
ふぃあんま「むー……」
上条「……」
フィアンマは上条の肩に頭を摺り寄せる。
落ち着くようだ。慣れ、なのかもしれない。
ふぃあんま「ぱぁぱ…」すやー
上条「……、…」
ぽんぽん、と一定のリズムで背中を叩く。
一刻も早く退院しよう、と上条は思った。
112 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 18:11:32.53 ID:yIhkX+lAO
+
113 :
小ネタ:お見舞い
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 18:12:03.00 ID:vzmyv1A80
ふぃあんま「…」ひょこっ
上条「お、来てくれたのか。ちゃんと鍵閉めてきたか?」
ふぃあんま「むろんだ」
上条「? 何か手に持って、」
ふぃあんま「みまいひんだ。うけとれ」っ箱
上条「ありがとな。…何だこれ、」ぱかっ
\ひよこまんじゅう/
上条「ヒヨコ饅頭か。…って、買ってきたのか?」
ふぃあんま「ぬすむとおもうのか?」
上条「いや、思ってないけど…よくお金あったな」
ふぃあんま「んー」
上条「いただきます」もぐもぐ
ふぃあんま「……」じー
上条「ん? んぐ、…美味いよ」へら
ふぃあんま「…そうか」どや
上条「……」もぐもぐ なでなで
114 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 18:12:04.12 ID:yIhkX+lAO
+
115 :
小ネタ:後方さんのお見送り
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 18:12:35.64 ID:vzmyv1A80
ふぃあんま「もういくのか」
アックア「む」
ふぃあんま「……」じー
アックア「……」
ふぃあんま「……」じいー
アックア「…無事戻るのである」
ふぃあんま「ほんとうだろうな」じとー
アックア「嘘は吐かん」こく
ふぃあんま「…けがをするな」
アックア「無論である」
ふぃあんま「……」じわっ
アックア「!?」
ふぃあんま「……」ぐす
アックア「…案ずるな」ひょい
ふぃあんま「ぅ…」ぐすっ
アックア「…迅速、無傷で戻るのである」
ふぃあんま「うー」ぺちぺち
アックア「……うー、ではないのである」どうどう
116 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 18:12:36.50 ID:yIhkX+lAO
+
117 :
小ネタ:前方さんといっしょ!
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 18:13:39.06 ID:vzmyv1A80
テッラ「今日から前方の位置に所属した前方のヴェントです」
ふぃあんま「ん」
テッラ「ようやくの『中身』交代ですよ」やれやれ
ふぃあんま「おとこか?」
テッラ「いいえ、女性ですよ」
ふぃあんま「そうか」
ドア<ガチャッ
ヴェント「……」
ふぃあんま「……」じー
ヴェント「…何、このガキは」
テッラ「我らを統括出来る程の立場、即ち"右方"のフィアンマですねー」
ふぃあんま「……」
ヴェント(…、…かわいい)
ふぃあんま「ぜんぽうのヴぇんとだったな」
ヴェント「そうよ」
ふぃあんま「ゆうしゅうなはたらきをきたいしているぞ」
ヴェント「ハッ、言われなくても「へっくちゅ」ちょっと、大丈夫? ハンカチは無いの? っていうかここ寒いんじゃないの?」
ふぃあんま「も、もんだいない」ふるる
ヴェント(……持って帰りたい…ちょっとあの子に似てるし…)
ヴェント「…おねーちゃんって呼んでもいいわよ?」
ふぃあんま「よばん」むむ
ヴェント「……」ぐぬう
118 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 18:13:40.23 ID:yIhkX+lAO
+
119 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 18:14:20.98 ID:vzmyv1A80
フィアンマを通じて超能力者の友人が出来るとはな、と上条はぼんやり思う。
彼の名前(もとい能力名)は一方通行(アクセラレータ)。
真っ白な髪に赤い瞳を持つ、鋭い眼光の少年だ。
自分は本名を名乗ろうとしたのだが、フィアンマの妨害(介入?)によって能力名(?)が伝わってしまった。
『幻想殺し(イマジンブレイカー)』。
一方通行は、フィアンマを送りに家まで来てくれた、加えて病室の名前を見たことから本名は知っていたようだが、現在は『幻想殺しさん』と呼ぶ。
ちなみに彼は上条の右手が自分の『反射膜』を突き抜けて(正確には無効化して)自分に触れるということで驚いていた。
『…あれだなァ、幻想殺しさンだけは敵に回したくねェな』
『ふん。だろう。おまえのばあい、げんりてきになぐられてしまうぞ』
『何でフィアンマが誇らしげなの?』
夏休みということで、上条はフィアンマと一方通行と共に遊ぶことにしていた。
一方通行は学校に通っていないらしい。
超能力者ともなると、一人ぼっちの特別クラスがあてがわれた上、通わなくても問題無いのだと。
故に、友人は上条とフィアンマしか居ないのだ、と一方通行は笑っていた。
上条には、想像がつかない。
教室でたった一人、ハブられるという感覚なら、経験があるから理解出来る。
しかし、教室自体にそもそも一人ぼっちというのは、寂しいだろう。
努力したところで、友人など作りようがない。周囲は大人ばかりなのだから。
『じゃあさ、俺が休みの日には遊びに行こうぜ。メアド教えてくれよ』
『……おォ』
縁結び(Not恋愛)をして満足なのか、フィアンマは上機嫌だった。
120 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 18:14:22.14 ID:yIhkX+lAO
+
121 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 18:14:39.97 ID:vzmyv1A80
上条当麻、ようやくの退院。
本日、八月十八日。
何の変哲も無い、暑くてだるい日である。
荷物は既に片付けた。
遊園地は暑いので、今日一方通行とフィアンマと行くのは水族館だ。
館内ともなれば冷房が効いているだろう、そう判断したのである。
ふぃあんま「あつい」
上条「上条さんも暑いですよ…一方通行は何か涼しそうだな?」
一方「余計な熱は反射してるからな」
上条「羨ましや…俺の右手も余計な熱をぶち壊せたらいいのに…」
ふぃあんま「おれさまにあけわたすならまいにちをすずしくしてや「だめ」…む」
一方「フィアンマくンは幻想殺しさンの右手が好きなのか」
ふぃあんま「すきというよりも、おれさまのしぶつになるうんめいをもっている」
上条「持ってません」
一方(羨ましい)
正直、このショタに執着されるなら万年不幸でもいい。
だが、上条は上条で自分の能力が羨ましいと言う。
嗚呼、交換したい。
無い物強請りとはこのことか、と一方通行は密かに歯噛みした。
122 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 18:14:41.03 ID:yIhkX+lAO
+
123 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 18:15:02.24 ID:vzmyv1A80
研究者、天井亜雄は焦っていた。
学園都市第一位の超能力者、一方通行が絶対能力者進化実験に対してあまりにも非協力的過ぎる。
このままではロクな研究結果も出せない無能という烙印が押されてしまう。
ましてや、『樹形図の設計者』は何故か壊れてしまった。
光線による攻撃を受けた影響で、ほとんどが破損状態。
つまり、再演算をさせることは出来ない。現状の計画を押し通すしかない。
天井「くそっ……!」
たかがクローン二万体を壊すだけ。
学園都市第一位のあの化け物なら、受け入れると思っていた。
スキルアウト達から狙われ、恋人や守るものはおろか友人一人居ないあの孤独な子供なら。
言葉巧みに誘えど、煮えきらない返事ばかり。
明確に断らないのは、既に生産されてしまったクローン体を慮ってか。
天井「…化け物のクセに、」
息をしている人形を壊されたくないから。
そんな理由での、延期。
馬鹿馬鹿しい、と天井亜雄は思う。
それは人間としてではなく、冷酷な研究者としての価値観。
Q.絶対能力者進化実験を一方通行に承諾させるにはどうすべきか
A.計画内容を一部取り替えて、クローンに一方通行を襲撃させる
結果は、出た。
天井亜雄の脳内で、そんな結果が、たたき出されてしまった。
天井は口元を歪ませ、パソコンへ向かう。
生ける『入力装置』―――20001号へ、データをインプットする為に。
124 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 18:15:03.12 ID:yIhkX+lAO
+
125 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 18:15:21.15 ID:vzmyv1A80
水族館に到着。
どちらかとはぐれても、どちらかとは一緒に居られるよう、フィアンマは一方通行・上条と手を繋いでいた。
ちなみにフィアンマは現在、じーっとダイオウイカとマンボウを見つめている。
ふぃあんま「……」じー
上条(…やっぱりデカいやつが気になるのかな?)
一方(可愛いなァ…)
ふぃあんま「……まんぼうはしゃべれんのか」
上条「…無理だと思うぞ」
一方「喋りてェのか?」
ふぃあんま「いや、はなせそうなかおをしているとおもったんだ」
言っているフィアンマの向けている視線の先。
話題の中心となっているマンボウは、のろのろと進んでいた。
126 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 18:15:22.12 ID:yIhkX+lAO
+
127 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 18:16:02.38 ID:vzmyv1A80
「……実を言うとな、オマエに出会うまで死のうと思ってたンだ」
学園都市第一位の『超能力者』―――― 一方通行(アクセラレータ)
「第00001次実験を開始します、とミサカは拳銃を構えます」
量産能力者(レディオノイズ)計画にて開発されたクローン――― ミサカ00001号
「……ほら、俺って『偽善使い(フォックスワード)』だから」
学園都市『無能力者(レベル0)』・『幻想殺し』―――― 上条当麻(かみじょうとうま)
「…にゃあ…にゃー……にゃん…」
ローマ正教最暗部『神の右席』――――右方のフィアンマ
128 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 18:16:16.57 ID:yIhkX+lAO
+
129 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 18:16:48.83 ID:vzmyv1A80
今回はここまで。
当スレは、シリアスを装ったおにショタほのぼのSSです。
130 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 18:29:18.89 ID:zAS+DhT90
乙
天使のようなロリ(フレメア)かと思ったら天使を上回るショタ(フィアンマ)だった
上三つだけだと真面目な禁書再構成物に見えるね!
上一が友達として仲良いとなぜか嬉しい
131 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 20:16:50.78 ID:RMmIHLmr0
乙
次回予告が天使同盟と全く同じ形だと期待してしまうぞ?
132 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 21:05:53.49 ID:vzmyv1A80
>>130
大天使系ショタです(真顔)
全然真面目再構成じゃないんですけどね!不思議
>>131
ひぃ><
>>1
にあの方のような文章・構成力は無いですごめんなさい><
投下。
133 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 21:06:04.93 ID:yIhkX+lAO
+
134 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 21:06:21.37 ID:vzmyv1A80
水族館とはいっても、ショーなどの目立ったものは無い。
そもそも、どちらかというと、海洋産物への勉強向けの場所だ。
学園都市らしい学術的色合いである。
それでも、こういった施設には初めて来たらしく、フィアンマは逐一目を輝かせた。
上条「ウチに来る前は何してたんだ?」
ふぃあんま「…すうねんまえにはどくしょがおもで、…さいきんまではずっとべんきょうだったな」
一方「勤勉なンだな」
いいこいいこ、と頭を撫でられ。
子供扱いをされること自体は不快ではないらしい、フィアンマは首を傾げる。
ふぃあんま「きんべんはびとくだぞ? あたりまえだろう」
一方「わかってても中々進まないモンだ」
ふぃあんま「もくてきいしきがあればできるはずだ」
上条(ぐ、グサグサ刺さる…)
勉強大嫌いな上条の胸に、勢い良くその実直さが突き刺さる。
一方通行は和やかにフィアンマの意見へ同意していた。
子供好きなのかなあ、と上条は思う。
135 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 21:06:26.54 ID:yIhkX+lAO
+
136 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 21:06:43.07 ID:vzmyv1A80
水族館を出た頃には、夕方だった。
お腹空いた、と主張するフィアンマを連れて行く形で、スーパーへ。
買い出しをして、家で晩御飯を摂ろうという話である。
一方「ンじゃ俺は、」
上条「あ、待てよ。良かったらさ、家で飯食っていってくれよ」
一方「あン?」
本当はファミレスに行こうとしたところを、上条が金欠だからと制止し。
奢ると言っても断られた為、一方通行としてはここで解散と思っていた。
だが、思いがけない提案に一方通行は困惑する。
一方「…いや、でも」
自分が居ると、二人の住居が特定されて襲われるかもしれない。
だから、彼らの家へ長居する訳には。
そう考えて、一方通行は押し黙った。
上条は一方通行の提案を別の意味に受け取ったらしい。
上条「あ、気にかかるなら材料費半分持ってくれればいいぜ?」
一方「そうじゃねェ、」
上条「二人も三人もさほど変わらないし」
一方「…だからそうじゃなく、」
上条「フィアンマも三人の方が良いよな?」
ふぃあんま「んー。なんでもいいからはやくきめろ。いっしょのほうがいいが」
一方「……」
ショタは。
ショタを、使うのは、卑怯だ。
一方通行はもごつき、上条に言う。
一方「そうじゃねェンだ。俺と一緒に居ると、オマエらが狙われるかもしれねェ」
上条「狙われる?」
一方「スキルアウトとか。…俺は第一位だからな。襲って、万が一にでも倒せば名誉だろ」
アイツらン中では、と。
悲しげに笑って、一方通行は視線を落とす。
彼には、普通の日常というものが、許されない。
何故なら、化け物だから。
どんな研究所でも手に負えない、どうしようもない怪物だから。
化け物が人間様の生活へ紛れようなど――――
137 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 21:06:43.97 ID:yIhkX+lAO
+
138 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 21:06:59.54 ID:vzmyv1A80
上条とフィアンマは目を合わせてひそひそ話をしていた。
ふぃあんま「なんだ、なんかきゅうにしりあすなはなしがはじまったのだが」
上条「スキルアウトに恨み買ってるのって俺も一緒なんだよな」
ふぃあんま「あんしんしろ、おまえはおれさまがまもってやる」
上条「…右手だけ?」
ふぃあんま「みぎてだけ」
上条「ちくしょう!」
ふぃあんま「じょうだんだ。…すきるあうとはふりょうしゅうだんだったか?」
上条「そうそう。前に説明したよな」
ふぃあんま「そんな、ぼんようかつうぞうむぞうのやからがなんじゅうにんいようとかわらん」
上条「あの腕でバーンッてやれば大丈夫か?」
『聖なる右』についてフィアンマから説明を受けた上条は、信頼している。
ふぃあんま「だいじょうぶだ」
上条「そっかそっか、よし」
特別な右手を持った両者は、不幸に慣れている。
ある意味においては、この二人も化物と言える。
しかし、だからといって日常生活を捨てようとは思わない。
そして、一方通行の気持ちも、わかる。
この二人の共通点は、『強大な力を持ちながらも自己に忠実で他を省みず、結果として取った行動が善行になる』なのだった。
139 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 21:07:00.52 ID:yIhkX+lAO
+
140 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 21:07:20.51 ID:vzmyv1A80
上条「俺も手遅れだから大丈夫」
一方「……あン? 何がだよ」
上条「多分、俺もスキルアウトにはすごい嫌われてるから」
女の子がナンパされているところを助けた回数は数え切れない。
それ以外にも、スキルアウトに対して上条は嫌なことばかりしている。
スキルアウトに狙われるとしても、今更のことだった。
上条が幼少期に過ごしていた環境よりは、余程マシ。
一方「…だが、」
上条「一方通行自身が嫌な訳じゃないんだろ?」
ならいいじゃねえか、と上条は笑う。
一方通行はしばし沈黙し、頷いた。
一方「後悔するかもしれねェぞ」
上条「……ほら、俺って『偽善使い(フォックスワード)』だから」
偽善者。
それを自覚した上で、上条は手を伸ばす。
独りぼっちの不幸な少年へ、何度だって手を差し伸べる。
今日一日を楽しく過ごした"友人"のせいで事件に巻き込まれたとしても、面倒だとは―――思わないから。
141 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 21:07:21.41 ID:yIhkX+lAO
+
142 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 21:07:36.12 ID:vzmyv1A80
三人でスーパーに入ると、店内を通行する妨げになる。
だからといって一人待ちぼうけというのはつまらない。
そもそも一緒に一日居た時点で、狙われる時は狙われる。
そして、狙われるのであれば、不良相手に勝てない上条よりは、一方通行の方が、組む相手としては良い。
逃げ足が早い、加えて買い物上手な上条は一人でスーパーへ。
一方通行はその間、フィアンマと手を繋いで暇そうに上条を待っていた。
ふぃあんま「……む」
一方「…ン? どうかしたか?」
ふぃあんま「…じょうくうからさついがむけられているぞ」
一方「………」
一方通行は、視線を動かす。
確かに、何者かからの殺意を感じなくもない。
スキルアウトのように、大勢のそれではない。
一方「……、」
やっぱりな、と一方通行は、思う。
やっぱり自分が、幸せな思いを噛み締めては、いけないのだ。
一方「…は」
思わず、笑いそうになる。
馬鹿馬鹿しい。
やっぱり、自分は誰かに関わってはいけない。
一方「…ごめンな」
一方通行は、フィアンマの頭を撫でて謝った。
自分のような人間の不幸に、巻き込んでしまったことを。
対して、フィアンマは首を横に振る。
ふぃあんま「ひとりをすくうきかいにめぐりあえたおれさまはこううんだ」
一方「…オマエは此処に残った方が」
ふぃあんま「だいじょうぶだ。いっしょにいく」ふにゃ
にへら、と笑って、フィアンマは一方通行の手を引く。
日常から遠ざかることで、決着をつけねばならない。
上条当麻という、本当の一般人へ危害が及ばぬように。
143 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 21:07:37.18 ID:yIhkX+lAO
+
144 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 21:07:59.83 ID:vzmyv1A80
路地裏。
暗闇がぽっかりと口を開けるそこには、血液の臭いが漂う。
暴力を振るい、振るわれても、基本的には誰にも救われない場所。
人っ子一人居ない広めの路地裏に、一方通行とフィアンマは立っていた。
小さな身体を庇う様に、一方通行は前に立つ。
目の前には、一人の少女が居た。
身長161cm・体重45kg。
化粧がいらない程度に整った綺麗な顔立ち。
肩まで届く、短めの茶髪。
額には、ややゴツい軍用ゴーグル。
学園都市『超能力者』第三位の『超電磁砲』の御坂美琴―――ではない。
その御坂美琴の体細胞を用いて製造されたクローン、ミサカ00001号だ。
彼女は細い指を引き金に引っ掛け、拳銃を一方通行へ向けている。
空虚な瞳は、自らが果たすべき目的だけを見据えていた。
「……実を言うとな、オマエに出会うまで死のうと思ってたンだ」
「第00001次実験を開始します、とミサカは拳銃を構えます」
「おれさまにであうまで?」
一方通行は、既に反射設定を変えてある。
予定としては、彼女の脚を反射によって撃ち抜いて、病院へかつぎ込むつもりだ。
一方通行は、そう語って、フィアンマの手をきゅっと握った。
「本当はな、俺はこの女を、…二万人、殺さなきゃいけなかったンだ。それで、…それで。……即断するとコイツが研究所側で勝手に殺されちまうから、延期するって誤魔化し続けてきた。多分、それに研究所側が痺れを切らしたンだろうな」
「…そうなのか」
「あァ。……もう俺は、誰も傷つけたくなかった。だから、一人で居ようとしていた。それが一番イイと思ってた。俺の能力は、イラッとしただけで人を殺しちまう」
可能性の向かう先。
彼の持つ破壊の力―――『一方通行』は、彼の未来を袋小路にした。
何をどうしても、誰かを傷つける。
そして、最悪殺してしまう。
彼の力は、守ることには向いていない。
スキルアウトや、一方的に恨みを持つ人間に襲われる日々。
極めつけには、研究者から『20000人殺してみない?』などと打診を受けて。
それを断れば、今回のように実力行使。
145 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 21:08:00.87 ID:yIhkX+lAO
+
146 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 21:08:18.76 ID:vzmyv1A80
「俺が死ねば、もう苦しまなくてイイと思ってた。何一つ楽しい事なンて無かったから、死のうと思ってた。でも、オマエに出会った」
そして、今は幸せな時間を過ごせている。
フィアンマを通じて、一人の友人も出来た。
それも、自分の能力が一部通用しない、信用の置ける友人だ。
自分もあんな風になりたい、と一方通行は、思う。
「幻想殺しさンにも、出会った。やっぱり人と話す方が楽しいな」
「……」
「…俺の力は、守ることには向いてねェ。だがな、」
区切って、一方通行は冷静にミサカ00001号を見据える。
冷酷な目ではなく。冷静な目で。
「守る事が出来ない訳じゃねェ。それを証明させる為に、神様とやらは―――俺をオマエに出会わせたンだ」
そう、思う。
パンッ、という破裂音が聞こえた。
銃声だった。
そしてその銃弾は一方通行の『反射膜』に触れ、方向を変えて00001号の太ももに突き刺さる。
「あ、っぐ」
「死ぬか、殺すか。その瀬戸際で、オマエに出会えた事は幸運だった」
ありがとよ、と彼は言う。
そしてフィアンマの手を一瞬だけ離し、00001号の方へ跳んだ。
手で押さえつけ、能力を応用した上で、意識を確実に絶つ。
一方通行は細腕に見合わぬ(演算に補強された)腕力で00001号を抱え、フィアンマを手招く。
そしてそのまま、病院へ向かおうと、して。
147 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 21:08:19.76 ID:yIhkX+lAO
+
148 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga !red_res]:2013/01/09(水) 21:09:28.64 ID:vzmyv1A80
小型自動車が走っていた。
否、走ってきた。
運転しているのは、一人の研究者。
一方通行が大切にしているものの存在を知ったのだろう。
それを奪えば、実験へ足を踏み入れると考えたのかもしれない。
「な、…ッ」
天井亜雄。
一方通行は00001号を抱えたまま、向かおうとする。
間に合うか。間に合わせられるか。
如何に小型自動車とはいえ、あのスピードで撥ねられれば、幼い子供などあっという間に壁の染み。
フィアンマはというと、実にマイペースなことに寄って来た野良猫を撫でていた。
嗚呼、手を離すべきではなかった。
しくじった。自分の、せいだ。
「…にゃあ…にゃー……にゃん…」
「にゃー」
逃げろと叫んでも届かない。
距離を離し過ぎてしまった自分の、完全なる落ち度。
天井の悪どい笑みが、見えた。
死なせる訳にはいかない。
何があっても、この子供を傷つけさせる訳にはいかない。
この子は自分の為に一緒に居てくれたのだ。
何も悪く無いこの子が、何故自分や天井のようなクズの為に殺されねばならないのか。
(間、に合ええエエエエェェエエエエエエッ!!!)
(隠蔽工作の準備は既に済んでいる。この子供に恨みは無いが―――死ね!)
思惑が、交錯する。
フィアンマは、ちらりと一度、自動車を見やった。
149 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 21:09:29.86 ID:yIhkX+lAO
+
150 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/09(水) 21:09:47.51 ID:vzmyv1A80
今回はここまで。
151 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 21:15:32.01 ID:RMmIHLmr0
乙
続きが気になるううう
152 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 22:55:53.86 ID:RGMJWBg0o
天井くんしんだな
153 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 22:59:45.95 ID:sftk18Wso
乙
天使ってさフタナリじゃん?
つまりふぃあんま君は•••
154 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 23:03:00.61 ID:fekT7/yeo
そういえばあわきんが清く正しいショタコンだった覚えがない
155 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 00:12:20.31 ID:nxhMZrKL0
>>153
でもショタなんだよなぁ…(困惑)
>>154
Oh...
投下。
156 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 00:12:32.46 ID:InYURkoAO
+
157 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 00:12:53.93 ID:nxhMZrKL0
結果として。
右方のフィアンマは、自動車に撥ね飛ばされた。
尋常ではない速度で跳んでいった。
路地裏に煙が舞う。
人一人が壁に叩きつけられたのだ、それも車に撥ねられて。
当然の事ながら、壁は壊れ、煙が出る。
漂う粉塵の中。
一方通行は、絶望に思考が妙に冴えていくのを感じた。
『守る事が出来ない訳じゃねェ。それを証明させる為に、神様とやらは―――俺をオマエに出会わせたンだ』
自分がつい先程言ったばかりの言葉を、思い出す。
嘲笑した。自嘲した。
何が守る、だ。守った気がしていただけじゃないか。
この事態を想定出来ずに、手を離したクセに。
『ひとりをすくうきかいにめぐりあえたおれさまはこううんだ』
『だいじょうぶだ。いっしょにいく』
「……は、…はは」
自分は、守る力に向いていない。
そして、誰かを救う力も、無い。
あの子は、死んでしまった。
自分のせいで。
この目の前のクズの、せいで。
158 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 00:12:55.02 ID:InYURkoAO
+
159 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 00:13:10.39 ID:nxhMZrKL0
一方通行は、00001号を抱えたまま、天井を見る。
天井は車のエンジンはまだかけたままに、下劣な笑みを浮かべた。
「お前がさっさと承諾していればこんな事態には発展しなかった」
そして、と付け加える。
「絶対能力者は、死者すらも蘇らせられる可能性がある」
「…あァ、……時間に架空ベクトルを設定して操作出来る説が…あったか」
一方通行は、天井の乗っている自動車を見つめたまま。
00001号を、壁に寄りかからせた。
彼女は、後数時間は目を覚まさない。
銃弾を引き抜いていないので、出血多量で死ぬこともないだろう。
嗚呼、もう全て壊してしまおう。
あの子が大切にしていた、友人であるアイツだけを残して。
「俺の、せいだ」
自分なんて、さっさと死んでしまえば良かったのだ。
こうやって他人を巻き込んで、傷つけるだけなのだから。
「俺の、」
一方通行はそうして初めて、自分の瞳から透明な液体が溢れていた事を知る。
学園都市第一位の能力者。
破壊に特化した力。
核爆弾を向けられても死なない自分は。
何も守れない、庇えない。
「………」
クズはクズ同士、心中がお似合いだ。
一方通行は、赤い瞳を天井亜雄に向ける。
天井は、一方通行の心の機徴に気がついたらしい。
実験に頷く程度の絶望では済まなかった。
そう判断した時には、既に遅く。
一方通行は、天井を残酷に殺す方法の実行に取り掛かる。
160 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 00:13:11.39 ID:InYURkoAO
+
161 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 00:13:24.80 ID:nxhMZrKL0
「ごめンな、フィアンマ」
涙声で、呟く。
白い少年は、どうして自分はヒーローじゃないんだろうと、思った。
漫画に出てくるようなヒーローなら。
きっと、あの子を喪うようなヘマはしなかっただろう。
「ひぃっ!」
男が鳴く。
車から出て、走って逃げ出そうとしている。
「ごめン……ごめンなァ…」
上条さンも、ごめン。
呟いて、一方通行は毒手を、構える。
グチャグチャのひき肉にして天井を殺し。
そして、自分の息の根を止めれば、せめてあの子に詫びる事が、出来る。
「にゃーん」
猫の声が、聞こえた。
162 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 00:13:26.05 ID:InYURkoAO
+
163 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 00:13:44.87 ID:nxhMZrKL0
ふぃあんま「……あぶないな。ころすぞ、きさま」
野良猫を守りきったフィアンマは、『聖なる右』に守られていた。
服へアクセサリーを一瞬で貼り付けることによって、防御霊装も完備。
そんなフィアンマは野良猫を解放して、一歩踏み出して。
走り去って逃げようとしていた天井の足首を掴む。そのまま折った。
天井は前のめりに倒れ、地面へ手をつく。
まさか。
一方通行に、追いつかれたのか。
そう思い、天井は無駄だろうと思いつつもポケットから拳銃を引き抜いて後ろを振り返る。
四歳児程度の、愛らしい子供が居た。
そして、にっこりと笑っていた。
天井「な、…に?」
ふぃあんま「おれさまにたたかいをいどむとはよいどきょうだ。いいだろう」
フィアンマはそのまま、ポケットからチョークを取り出す。
そして、空中へ何かを記して、息を吐きだした。
誕生日ケーキに刺さった蝋燭の火を吹き消すかのように。
天井は動揺に動けないまま、得体の知れない恐怖に震える。
ふぃあんま「だが、じゃくしゃといえどてかげんはむようだ。ぞんぶんにやらせてもらうぞ」
天井「ぎ、ッ」
空から、黄金の剣が降ってきた。
フィアンマが指定した数だけ降ってきたそれは、天井の持っている拳銃に二本。
他五本は、全て天井の四肢と背中に突き刺さった。
フィアンマは天井の脚から手を離し、むくりと起き上がる。
そして、服についた汚れを手で払い、天井を見下す。
ふぃあんま「たんしんでうごく、そのどきょうはみとめてやるが、あいてをまちがえたな」
164 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 00:13:45.96 ID:InYURkoAO
+
165 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 00:14:03.26 ID:nxhMZrKL0
一方通行が野良猫に一瞬気を取られ。
あの子と一緒に死んだのではと思い、前を向いた瞬間、既に勝負は終わっていた。
天井は地面に倒れたまま、血液で地面を汚していた。
フィアンマは太陽の出る方角を計算して、剣を既に仕舞っていた。
一方「……………あ?」
思わず、首を捻る。
そんな天井の頭をぐりぐりと踏んでいるのは、あの子ではないか。
自分の過失によって殺されてしまった、あの子なのでは。
一方「……フィアンマくン?」
ふぃあんま「む」
天井の頭を踏むのをやめ、フィアンマはとてて、と一方通行に近寄った。
周囲を見渡し、野良猫は何処かへ行ってしまったと判断し、ちょっぴり残念そうな顔をする。
ふぃあんま「……いってしまったか」
一方「…車に撥ねられた、よなァ?」
ふぃあんま「そうだな。おもいきりはねられた」
一方「…えー、と…壁の方吹っ飛ンだよなァ?」
ふぃあんま「いかにも」
一方「…………?」
ふぃあんま「…きゅうきゅうしゃをよばんと、あれがしぬぞ」
言いながら、フィアンマは死にかけている天井を指差す。
一方通行は少し悩み、ひとまず救急車を呼んだ。
冥土帰しに担当させないよう、うまく手配する。
しかし。
フィアンマが殺されていないのなら、天井を直接殺す理由も存在しない。
そして00001号を再び抱き上げ、涙を拭った後、フィアンマの手を握る。
釈然としない。どうにも、釈然としない。
とりあえず00001号を秘密裏に運ばねば、と一方通行は移動を始めた。
166 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 00:14:04.28 ID:InYURkoAO
+
167 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 00:14:35.00 ID:nxhMZrKL0
上条は買い出しを終え、スーパーから出てきた。
しかし、一方通行もフィアンマも見当たらない。
襲撃されたのだろうか、と焦る上条。
ひとまず、携帯電話をチェックする。
--------------------
From:アクセラレータ
Title:少し
--------------------
色々あったのですが、
片付きました。
二時間以内には上条さ
んの家に行きます。
フィアンマ君は俺と
一緒に居るので安心し
てください。
--------------------
上条「…うーん?」
とりあえず、二時間以内には家に来るらしい。
物騒な事でなければいいなあ、と思いながら、上条はひとまず帰宅する。
二人が何をしているのかはさっぱりだが。
上条「……まあ、フィアンマだしなー…」
魔術師二人。
それも一方はものすごく強いらしい人間(=聖人)を倒したのだ。
あの大きな謎腕―――もとい、『聖なる右』があるフィアンマなら大丈夫だろう。
それに、メールが打てるということは一方通行も無事のようだし。
終わった問題に首を突っ込んでは、かえって問題になるかもしれない、と上条は、思う。
168 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 00:14:36.04 ID:InYURkoAO
+
169 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 00:14:54.81 ID:nxhMZrKL0
00001号が手当されている最中。
この後どうするかを思考をしながら、一方通行はフィアンマと話していた。
フィアンマは一方通行の隣にちょこんと座り、脚をパタつかせる。
ふぃあんま「よかったな」
一方「…ン?」
ふぃあんま「だれもころさずにすんで」
一方「……あのクローンは傷つけちまったけどな…」
ふぃあんま「だが、それでもちめいしょうではない」
一方「………」
ふぃあんま「…おまえはがんばった。そして、それはしょうさんにあたいする」
一方「……、」
ふぃあんま「ひとをきずつけるのをためらうのは、まにんげんだけだ」
一方「…フィアンマくン、」
だから、お前は化け物じゃない。
言外に。
今までコンプレックスに抱いていたことを承認され、一方通行はフィアンマを見やる。
フィアンマはいつの間にか、ソファーに膝をついて乗っていた。
柔らかく笑み、小さな手でぽふぽふと一方通行の頭を撫でる。
ふぃあんま「いいこいいこー」なでなで
一方通行が、フィアンマを『勤勉』と褒めた様に。
子供扱いで、フィアンマは一方通行の頭を撫でた。
優しく。丁寧に。慈しむ様に。或いは、慰め。
一方「…っ、」
一方通行は、先程フィアンマが死んだと思い込んだ時に流したものとは違う意図で、泣きそうになった。
170 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 00:14:56.00 ID:InYURkoAO
+
171 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 00:15:13.31 ID:nxhMZrKL0
00001号は手当を受け、個室をあてがわれた。
一方「オマエに頼みがある」
冥土帰し「何だね?」
一方「アイツを病院に置いてくれ」
手伝いでも何でもいい、と彼は言う。
この後、一方通行は研究所の方へ赴き、芳川桔梗を洗脳してでも問題を片付けるつもりだった。
冥土帰しはしばらく悩み、頷いた。
調度、病院に人手が欲しかったというのもある。
一方「後、このガキの面倒を看ててくれ。俺は研究所に行って、すぐ戻る」
冥土帰し「任せてくれていいね?」
ふぃあんま「…すぐもどるか?」
一方「ン、すぐ戻る」
安心させるように笑みを見せ、一方通行は病院から出て行く。
何体のクローンが既に製造済みだったとしても。
どうにか、処理しきってやる。
そしてその結果が、悲劇でないように。
戻って来て、あの子に胸を張って接する事が出来るように。
フィアンマは、自分を真人間だと言ってくれた。
良い子良い子、と頭を撫でてくれた。
ならば、その想いに報いろう。
"良い子"のまま、戻って来よう。
172 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 00:15:14.32 ID:InYURkoAO
+
173 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 00:15:36.15 ID:nxhMZrKL0
メールが来てから、一時間半。
既に食事を終えた上条は静かに待っていると、インターフォンが鳴った。
ガチャリ、と開けると。
一方通行とフィアンマが手を繋いで立っていた。
上条「…何というか、…フィアンマ、お帰り。一方通行、いらっしゃい」
一方「どォも」
ふぃあんま「ゆうはんは」
上条「もう出来てるぞ」
上条は笑顔で二人を出迎え、中に通す。
一方通行は、上条の料理の腕に目を瞬いて。
フィアンマは上条の隣、一方通行の向かいに座り、食事に目を輝かせる。
一方通行は口元を緩ませ、幸せそうに笑むのだった。
174 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 00:15:37.23 ID:InYURkoAO
+
175 :
小ネタ:むかしのはなし
◆2/3UkhVg4u1D
[saga !蒼_res]:2013/01/10(木) 00:16:43.56 ID:nxhMZrKL0
「砂のお城か。上手だね、―――。いいこいいこー」なでなで
「ん、『べつれへむのほし』というんだ。おれさまのしろだぞ」にへら
「―――は、大きくなったら何になりたいんだ?」
「…まじん?」
「ふふ、魔神は俺がなるからだめ」
「むー」
「……」
「お家帰ったらおやつ食べて勉強しようか」
「ん!」
「……おやつ、何がいい?」
「おやつ……」うーん
「何でもいいよ。お店も近いからね」
「ぱぱがすきなのでいい」
「俺は…うーん。チョコマシュマロかな」
「ましまろたべたい」
「そっか。じゃあ、そろそろ帰ろうか」
「かえるー」
「……―――は、パパと暮らしていて、楽しい?」
「うん! おれさまは、ぱぱがだいすきだよ」
「…そっか。……パパも、パパもね。……―――のことが、大好きだよ」
「………どうかしたのか?」
「いいや、何でもない。帰ろう」
176 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 00:16:44.85 ID:InYURkoAO
+
177 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 00:17:26.54 ID:nxhMZrKL0
ペドフィリア
「ムカついたかよ、幼児性愛者」
ショタコン
「これが子供好きだ」
学園都市第一位の『超能力者』―――― 一方通行
「スゲェな……。スゲェ愛情だ。これなら俺が第二位ってのも頷ける」
「……怖い思いさせて、ごめんな」
学園都市第二位の『超能力者』・『未元物質』――― 垣根帝督(かきねていとく)
「その怖い歌を今すぐやめなさい。めっ」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「どー、はどーれいーのーどー、れー、はれいぞくのれー」
ローマ正教最暗部『神の右席』――――右方のフィアンマ
178 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 00:17:28.02 ID:InYURkoAO
+
179 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 00:17:58.50 ID:nxhMZrKL0
絶対能力者進化実験編終了。
今回はここまで。
180 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 00:39:15.87 ID:UwE3Tgy70
乙!
垣根がロリコンwww
181 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 00:39:54.07 ID:5Ypj6pEP0
乙
既に次回予告から漂う残念臭…!
182 :
◆2/3UkhVg4u1D
[sage]:2013/01/10(木) 00:44:49.75 ID:InYURkoAO
>>173
×食事
○食事の準備
展開予想・質問はお気軽にどうぞ。
183 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 01:12:06.81 ID:UTytQhHYo
>>182
受けは誰なんですか?
184 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 18:17:25.43 ID:brGk+Kud0
>>180
ショタコンです><
>>183
それが、まだ明確に決めてないんですよ。
なので、読者の皆様方の多数決(?)というか、ご意見の流れによるかもしれないです。
アックアさんは受けです。
投下。
185 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 18:17:30.05 ID:InYURkoAO
+
186 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 18:17:46.92 ID:brGk+Kud0
一方通行は、しばらく忙しい。
だから、連絡が取れなくなる。
落ち着いたら、また連絡する。
本人から端的に伝えられ、上条は深く考えずに相槌を打った。
別に一方通行と同居している訳ではないので、困らない。
しばらく通話やメールは控えるから、という話なのであった。
フィアンマは一方通行が何に奔走しているのを知りながら、何も口にせず。
ただ一人日常からまったくもって乖離していない上条はというと。
上条「うだー」
ふぃあんま「うだるな」
上条「ちくしょう、一方通行に頼っておくべきだったかもしれねえ…」
宿題に追われていた。
どっさりと積み上げられた課題。
フィアンマは暇なのか、上条の所有する問題集を眺めていた。
図形問題を魔法陣へ書き換えようとして、止められる。
上条「駄目!」
ふぃあんま「……うー」
不満そうな声を出し、フィアンマは上条の脚の間に座った。
じー、と上条の手元を眺め、退屈が蔓延していく。
ふぃあんま「どー、はどーれいーのーどー、れー、はれいぞくのれー」
上条「その怖い歌を今すぐやめなさい。めっ」
集中出来ねえし、と頭を抱える上条。
けれど、そんなに苛立っている訳ではないのだ。
実を言うと上条はずっと一人っ子だった為、弟が欲しかったのである。
歌も駄目、落書きも駄目。
駄目駄目と禁じられてばかりでは、子供のストレスゲージが満杯になってしまうもので。
フィアンマは上条の問題集にまたもや手を出そうとして……やめた。
ふぃあんま(……いいこに、…しないと。いいこに…いいことを、しないと…)
目を伏せた子供の様子に、上条は気がつかなかった。
187 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 18:17:47.80 ID:InYURkoAO
+
188 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 18:18:32.76 ID:brGk+Kud0
シンプルな写真立ての中。
幸せそうな写真が、静かに納められていた。
一つ目。
金髪の父親に抱っこされた赤い髪の幼児がはにかんでいる。
二つ目。
お腹の大きな―――妊娠している身重の、赤髪の女性。
そして、その女性と手を繋いで笑んでいる男性。
一つ目の写真に写っている父親でもあり、また、二つ目の写真に写っている男性でもある青年は、写真を見つめていた。
彼は現在、"まだ"魔神に至らない為、便宜上『オッレルス』を名乗っている。
オッレルス「……」
指先で、写真に触れる。
身重の女性は、お腹の子を出産した際に、亡くなった。
その女性と彼の間に成された子が、赤い髪の子だった。
母親似だった。そして、愛らしい子だった。
どちらに似たのか頭が良く、少々甘えん坊であり。
本の中身に影響されたのか、母親からの遺伝―――と呼んでも良いのだろうか。
一人称が『おれさま』という、ちょっぴり特殊なものを使う子だった。
尊大口調とはいえ、幼児言葉も混ざり、なかなかに可愛らしくて。
親の贔屓目を抜きにしても、愛される子供だったな、とオッレルスは思う。
思いが全て過去形なのは、彼がその子供を教会へ捨てたからだ。
色々な事情があり、過程があり、よくよく考え、涙を呑んで手放したにしても。
あの子を手放したことには変わり無く。
自分は最低の父親だ、とオッレルスは自覚している。
『? どこにいくんだ』
『少し、用事を片付けてくる』
『そうか。ん、まっている』
『……、』
『……すぐ、もどってくる、だろう?』
『……うん。すぐに、…すぐに、戻るよ』
『………』
『…だから、いい子にしていてくれ』
『…ん。…おれさま、…いいこにする』
いいこにしてるから、はやくむかえにきてね。
そんなお願いに無理やりな笑みを浮かべて頷き、そのまま。
そのまま―――あの子を迎えに行く事は、無かった。
情報は仕入れてある。
かつて『彼女』が就くべきだった職業に、任ぜられていることも。
オッレルス「…右方のフィアンマ、か」
オッレルスは、写真立てを見つめた。
そして、ごめんね、と謝罪の言葉をこぼす。
あの時はあれが最善だと思った。
だけれど、自分は一生後悔して、こうやって泣くんだろう。
ごめん、…ごめんね、…ごめんな…。
止処もない謝罪の言葉が、響く。
189 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 18:18:33.81 ID:InYURkoAO
+
190 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 18:18:47.99 ID:brGk+Kud0
一方「大概は外部組織に移せた…か」
非常に非常に申し訳ないとは思いつつも、上条の名前を使わせてもらった。
『幻想殺し』―――原理不明の無能力者に反射を突破された、故に実験は中止。
そんな無理をゴリ押しして、時々脅迫しながらも。
どうにか一方通行は、誰を殺すことも無く、手を汚さずに手配を終えた。
終えた、とはいっても、今しばらくは上条に接触出来ない。
とてつもなく申し訳無いが、上条は一方通行を破った相手として、しばらく学園都市から出てもらうことになるだろう。
恨まれたなら恨まれたで仕方が無い。
その時は、本当にごめんなさいでした、と頭を下げよう。
何度でも人生はやり直しが利くということを、一方通行は大天使系ショタから学んだ。
一方「……ンー…」
ちなみに現在、ちょっぴりマズいことになっていた。
どのルートを通ってか、実験用個体に出会ってしまったのか。
始まっていない実験が始まってしまったのだと、学園都市第三位が勘違いしているのである。
191 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 18:18:48.85 ID:InYURkoAO
+
192 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 18:19:16.82 ID:brGk+Kud0
そんな裏事情に自分の名前が使われているとも知らないで。
課題は片付かないし、もう夜も遅いから。
そういった甘ったれた理由で、上条は眠っていた。
フィアンマを抱っこしたまま眠ると、少し寝苦しくて、心地よい。
子供って不思議だよな、と。
意識が浮上した上条が、思っていると。
不意に、フィアンマが静かに静かに、上条の腕の中から抜けた。
喉が渇いたのかな、と思い、上条は寝たフリを続けておく。
自分が起きたせいで人を起こしてしまうというのは、決まりが悪いものだから。
上条(…台所行ったな。…ん? かちゃかちゃいってる)
台所へ移動したフィアンマは、調理道具をいじっているらしい。
目玉焼き程度なら作れるだろうが、それにしても。
上条(包丁とか危ないしな…)
やはり、止めに行くべきか。
思ったところで、音が止んだ。
ぺた、ひた、という足音が近づいてくる。
やっぱり夜食の準備をやめて寝ることにしたのだろうか。
それとも、ただ単に調理道具の掃除がしたくなっただけなのか。
何にせよ、こんな夜中にやることではない。
ここは保護者として叱っておくか、と上条は目を開けて。
振り上げられた包丁が目の前にあり、思わず回避する。
上条「ッ!?」
横にローリング回避。
先程まで上条の右肩があった場所へ、包丁が突き刺さる。
それを握っているのは、小さな手だった。
暗い部屋の中、金色の瞳は猫の様に光っている。
上条「な、何っ、」
ふぃあんま「……」
小柄なフィアンマは、身軽だ。
『天使の力』を取り入れる事によって、異常な身体能力を取得することも出来る。
上条は喉が干上がるのを感じながら、フィアンマを見た。
上条「ふぃ、…フィアンマ…?」
何か、悪い夢を見ているのか。
或いは、悪夢を見たフィアンマが、とんでもない行動に出ているのか。
現実と幻想の境目もわからないまま、上条は問いかける。
上条「何、を……?」
抽象的な問いかけに。
右方のフィアンマは、具体的<シンプル>に答えた。
ふぃあんま「おまえのみぎうでをせつだんして、おれさまのせいなるみぎかんせいのためにいただくだけだ」
ぐい、と包丁がベッドから引き抜かれる。
据わった瞳が、輝いていた。
上条当麻は、右拳を、握る。
193 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 18:19:17.68 ID:InYURkoAO
+
194 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 18:19:33.31 ID:brGk+Kud0
宵闇は、怪物と犯罪の時間。
大体そう決まっているものだ。
洒落た言い方をしたところで、結局は暗殺等なのだが。
内心で吐き捨て、少年―――垣根帝督は、街中を歩いていた。
最終下校時刻をとうに過ぎた現在。
学園都市の街中には、あまり人が居ない。
あまり、というよりも、ほとんどと言っていいだろう。
垣根「……」
退屈だ。
家に帰って最新作のショタゲーでもやるか、と思い。
垣根帝督は視線を動かし…ふと、幼い男の子の存在に気がついた。
こんな時間に。一人で。暗がりに、しゃがんでいる。
垣根「…あん?」
近づいてみた。
血のついた包丁を持っている。
しかし、振り返ったその瞳は、存外濁っていなかった。
というよりも、澄み過ぎていて、かえって不気味だ。
純粋故の狂気、というやつだろうか。
自分とは真逆だな、と垣根は思って。
そして猫を被ると、しゃがんで視線を合わせた。
垣根「…どうかしたのか?」
ふぃあんま「……ん、…」
垣根は柔和な笑顔を浮かべ、フィアンマから包丁を取り上げる。
そして、そんな物騒で不要なものは、能力の応用で潰し、消した。
垣根「…お兄さん、今から家に帰る所なんだけど…」
言いかけた、垣根はフィアンマの顔を、きちんと見る。
そして、その整った顔立ちに息を呑んだ。
これは上物だ。
三次元で実現出来る最高のショタではないだろうか。
端的に言えば。
垣根帝督は、こう思っていた。
垣根(やべえ、ぺろぺろしてえ)
ついでに言うと、弱みに漬け込んでヤりてえ。
そんな事を思いながらも、柔和な笑みは崩さない。
垣根「一緒においで。暗いと危ないから、な?」
ちなみにいうと、垣根の方がスキルアウトよりも危ない。
ふぃあんま「……」
フィアンマは迷って、差し出された垣根の手を握る。
そして、『赤い靴』の少女の如く―――連れられて、いった。
195 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 18:19:34.62 ID:InYURkoAO
+
196 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 18:19:53.98 ID:brGk+Kud0
右手を僅かに包丁で浅く切られ。
上条は医療箱の中身で適当に手当した後、携帯電話を見た。
携帯電話には、一方通行からのメール。
『大体問題が済みました』、そんな内容。
上条は少し迷って、一方通行に電話をかける。
上条「ッ、もしもし!」
一方「ン、何かあったのか?」
上条「フィアンマが出て行っちまったんだ。俺はこれから捜してくるけど、お前も捜してくれ! 頼む!」
一方「出て行って…喧嘩か何かかァ?」
上条「…、…えっと、…まあ、…とにかく、頼む。人手は多い方が良い。それに、…アイツ、正式なID無いんだよ。色々と事情があって。だから、警備員とかに頼む訳にもいかなくて、」
一方「わかった」
返事をしながらも、一方通行は既に動いていた。
人は少ない。夜更けなのだから当たり前だ。
一方(酷い目に遭ってねェとイイが……)
もし、変態に攫われてしまっていたら。
本気で焦りながら、超能力者は街中を跳び回る。
197 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 18:19:54.79 ID:InYURkoAO
+
198 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 18:20:21.26 ID:brGk+Kud0
右方のフィアンマは、とあるマンションの一室に居た。
所謂ショタゲー、BLゲーで埋め尽くされている部屋―――ではない。
ソファーや照明など、最低限の物がある対外的な部屋、だ。
垣根はソファーに座り、にこにことフィアンマを見つめている。
垣根「眠いなら寝ても良いし、何か食べたいなら作るぞ」
ふぃあんま「…いらん」
ふるふる、と首を横に振り。
フィアンマは、ソファーに腰掛けたまま、脚をパタパタと動かす。
垣根は情欲を堪え、のんびりとした態度で接した。
垣根「……好きなだけ、家に居て良いからな」
上機嫌に言う垣根。
手を伸ばし、フィアンマの頭を撫でる。
大人しく撫でられながら、フィアンマは脚をパタつかせた。
良い事をしなければ。
世界を救わなければ。
焦るままに、上条の右腕を切ろうとした。
そして、そんな自分は。
そんな自分はもう、嫌われてしまっただろう。
こうなってしまっては、ローマ正教を動かすしか無い。
直接奪うということに、そもそも無理があったのだ。
しょんぼりとするフィアンマは、不意に垣根に抱きしめられたことに気がついた。
頭を優しく撫で、背中を伝ったその手は―――ズボンのベルトへ。
ふぃあんま「…、にゃ、」
垣根「……大丈夫大丈夫」
甘く囁いて、垣根はベルトを緩めていこうとする。
訳もわからないままに震え、フィアンマはビクついた。
何をされるのか、予測出来ない。
199 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 18:20:22.06 ID:InYURkoAO
+
200 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 18:20:39.90 ID:brGk+Kud0
一方通行は、包丁の残骸を発見した。
上条と通話しながら解析し、把握する。
情報を把握した上で、犯人を探した。
彼の嗅覚は、ショタ相手にこそ強い効果を発揮する。
一方「…コッチか」
直感。
神がかり的なそれで、一方通行は進んでいく。
そうしてようやく、辿りついた。
ベクトル操作によって集音してみれば、フィアンマの声。
『ん、ん…や、…』
『…くすぐったい?』
そして、欲に塗れた男の声。
一方通行は何を躊躇することもなく、ドアをベリッとめくった。
そのまま、放り捨てる。
まるで、コピー用紙か何かのように。
一方「…安心しろ。俺が何とかする」
言って、一方通行は通話を終えた。
上条はまだ走り回っていることだろう。
垣根「…あ?」
フィアンマの鎖骨から口を離し。
不愉快そうに、垣根は玄関を見やる。
学園都市最強、白き悪魔が―――怒気を纏って立っていた。
垣根「…オーケー、ムカついた。人の恋路を邪魔する野郎はミンチにするしかねえよ」
一方「ほざけ、変態野郎」
フィアンマは一方通行を見、ほっとした表情を浮かべる。
一方通行が動く理由など、それだけで充分だった。
一方「本当のショタコンがどンなモンか、教えてやるよ」
201 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 18:20:40.71 ID:InYURkoAO
+
202 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 18:21:01.06 ID:brGk+Kud0
マンションでは、一般住民を巻き込む。
そう判断した一方通行は、挑発する形で垣根を外へ連れ出した。
開けた場所、本来は絶対能力者進化実験に使われるべきだった、場所で。
二人の超能力者<ショタコン>は、対峙していた。
垣根「ハッ、学園都市第一位が、ガキ一人の為に奔走…ね。お涙頂戴もイイトコだ」
一方「無駄口叩かねェとブルっちまうのか? あァ?」
垣根「お喋りを楽しむ余裕もねえのかよ。つまんねえな」
垣根はフィアンマを抱えたまま、背に翼を顕現させた。
このショタとお楽しみをするためには、目の前の邪魔な敵を消さねばならない。
垣根「何、お前もコイツにご執心なの?」
笑って、垣根はフィアンマを見やる。
フィアンマは眠いのか、マイペースだった。
つまり、眠ってしまっている。
一方「あァ」
認める。
認めて、その上で。
彼は、言葉を紡いだ。
203 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 18:21:01.96 ID:InYURkoAO
+
204 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 18:22:19.50 ID:brGk+Kud0
「そのショタはな、誰に穢されてもいけない最高の、最上級のショタなンだよ。容姿もさることながら、その精神性も素晴らしい。大人染みた思考能力、強大な力。それらを持っていながらも、幼児言葉を混ぜて喋ったりもする。これ程愛らしいショタは、この世界にはもう存在しねェ。神様とやらは、たった一人だけ作ったンだろう。なら、俺達はそれを汚しちゃならねェ。例えその可愛い顔にどれだけぶっかけちまいたいと思っても、ソイツは想像の中で抑えなければならない。何故かわかるか? たった一つしか存在しないからだ。処女性ってのは大事だよな。処女じゃねェショタは、何も知らない初物ショタに劣る。この辺りは常識として、」
一方通行の背後で、建物がいびつに組まれていく。
「そンな、二次元から顕現したかのような存在を。下劣な俺達が踏みにじるなンてことは、万が一にもあっちゃならねえ。なってもイイのは、そのショタの面倒を看ていて、そのショタが成長しても良好な関係を築けたヤツだけだ。横から割入って盗むなンてのは、下衆のすることだ。オマエには、その覚悟があるとは思えねェ。だから俺はオマエの行為を容認しねェ。ショタに性的な行為をしてイイのはショタだけだ。或いは、その保護者がラッキースケベを起こす位だ。そこンところの認識を謝る野郎は、ショタコンとして最低最悪の道を辿るンだよ!!」
穢すべきではない。
温かな可能性を秘めた、愛らしい存在を。
下劣な欲望と精液<スペルマ>で、汚してはいけないのだと。
自戒と共に、彼は言う。
垣根帝督は、嘲笑した。
「スゲェな……。スゲェ愛情だ。これなら俺が第二位ってのも頷ける」
肯定をした上で。
垣根は、否定する。
徹底的に絶望的に完膚なきまでに。
「だがな、」
そんなものは。
「ショタコンじゃねえ」
「…なン、だと?」
「ショタは穢すべき存在じゃねえ。なるほど、一理ある。だがな、お前の提示するそれはハッピーエンド派の言う事なんだよ。……教えてやる。俺の専攻ショタゲーはな、寝盗りモノだ。或いは、陵辱。怖がって泣き叫んで嫌がる綺麗過ぎるショタのケツにローションぶっかけてチンコ突っ込んで何が悪いってんだ。法律で決まってるから? 肛門裂傷が可哀想? 違うな。罪悪感という曖昧な概念で、自らを無理やり制御しているだけだ。お前だって本当は思っただろ? このショタの口にぶっかけたい、髪コキしたい、ふにふにのほっぺたは女の胸なんざ比じゃないに違い無い。まだ青みのある尻を撫でたい、尻穴に舌を突っ込んで丹念に皺を舐め回してやりたい。大きく口を開けずとも口内へすっぽり収まっちまうショタチンコをしゃぶって鳴かせてみたいって。そこにショタの意思はあったか? 自分の思う理想の反応だろ? つまり、ショタコンである限り、このこれらの衝動から逃れる事は難しい。俺はお前とは違う。テメェと違って、実行する度胸がある。お前は羨ましい訳だ。吹っ切れている、この俺が」
一方通行は、否定出来なかった。
ギリ、と歯ぎしりをする。
「来いよ、第一位。戦え。俺が証明してやる。結局の所、ショタコンってのは"邪悪な性欲から逃れられない"ってことを!」
205 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 18:22:20.72 ID:InYURkoAO
+
206 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 18:22:50.89 ID:brGk+Kud0
勝負は一瞬―――とは、いかなかった。
フィアンマを壁に寄りかからせ、垣根帝督が架空ベクトルを把握する為に攻撃し。
一方通行は一度その変質した月光を受け、吐血した。
頭脳をフル回転させ、演算を重ねていく。
垣根「ほらほらどうした第一位いッ、こんなもんか!? あぁ!?」
一方「ッ、く」
負ける訳にはいかない。
あの子の為にも、自分の正しさを証明するためにも。
必死に解析する。
初めて、攻撃を受けた。
反射出来ない訳が無い。
自分は、この男を序列で上回っている。
一方「……は、」
読んだ。
三発もの攻撃を受け、ボロボロの状態で。
痛みに耐えながら、反射設定を改める。
一方「弱いンだよ」
垣根「……あ?」
脳が沸騰しそうな。
そんな衝動に駆られ、喧嘩腰に聞き返す。
一方通行は、笑う。
嘲笑、冷笑、憐憫。
一方「底が浅いって、言ってンだ。この俺を誰だと思ってやがる、格下」
垣根「…まさか、お前…もう、解析…を…?」
一方「……殺るなら、一発で決めるべきだったな」
ふぅ、とわざとらしい、溜息。
ペドフィリア
一方「ムカついたかよ、幼児性愛者」
挑発の、一言。
垣根は、挑発に、乗った。
持てる力の限りを、注ぎ込む。
垣根「……行くぞ、日和野郎」
一方「来いよ、リョナニー野郎」
207 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 18:22:51.82 ID:InYURkoAO
+
208 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 18:23:13.66 ID:brGk+Kud0
そして。
激しい一撃がぶつかり、跳ね返り。
垣根帝督は、地面に倒れふした。
げほげほと噎せる彼の口からは、溢れる赤黒い血液。
一方通行は、自分の口端から垂れている血を、手の甲で乱暴に拭う。
完全に、垣根帝督の敗北だった。
後何回攻撃したとしても、勝利することは、恐らく無いだろう。
ショタコン
一方「これが子供好きだ」
誇る様に、述べる。
垣根は一方通行を見上げ、笑った。
垣根「は、……クソッタレ…」
そして、フィアンマを見やる。
目を覚ましたフィアンマは、ぐしぐしと目元を擦って垣根を見た。
掠れた声で、彼は謝罪の言葉を紡ぐ。
垣根「……怖い思いさせて、ごめんな」
ふぃあんま「…こそばゆかっただけだ」
目元を擦り、立ち上がって。
フィアンマは一方通行に近寄り、手を繋ぐ。
垣根「……なぁ、」
一方「…あン?」
垣根「……、…二次元における…いちゃらぶおにショタセックスは…?」
合言葉のようなもの。
一方通行は、常識的に、笑みすら浮かべて応える。
一方「セーフだ」
垣根「…そうかよ」
交わす言葉は、それで充分だった。
209 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 18:23:14.61 ID:InYURkoAO
+
210 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 18:23:28.68 ID:brGk+Kud0
上条当麻は一方通行と待ち合わせている公園に居た。
一方通行の後ろにやや隠れる形で、フィアンマは帰って来た。
一方通行は、自分はやることは済んだから、と踵を返した。
何かがあったのだろう、ボロボロだった彼に、上条は言葉をかける。
一方通行はただクールに、ひらひらと手を振った。
上条は次に、フィアンマを見下ろす。
隠れる場所が無くなり、彼は所在無さげに視線を彷徨わせていた。
上条は苦く笑って、ぽんぽんとフィアンマの頭を撫で。
そして、ぎゅっと…抱きしめた。
「…夜中に出て行くなよ。びっくりするだろ」
「……、おこって…ない、のか…?」
「怒ってるけど、怒鳴ったって仕方ないし。…心配したんだからな?」
「………」
「…お帰り、フィアンマ」
「……、…ふぇ…、…」
嫌われてなかった。良かった。
感情は入り混じり、透明な雫として抽出される。
じわじわと目に涙を溜め、フィアンマはぎゅうぎゅうと抱きついた。
上条は苦笑して、安堵して、髪を撫でてやった。
211 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 18:23:29.68 ID:InYURkoAO
+
212 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 18:24:25.57 ID:brGk+Kud0
今回はここまで。
これから先の展開は考え中です。
組み込めるかどうかは不明ですが、要望等ありましたらお願いします。
213 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 18:45:05.06 ID:InYURkoAO
>>204
×謝る
○誤る
重要な場面で…すみませんでした
214 :
小ネタ:ないない
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 20:43:41.92 ID:mxdUeLs90
ふぃあんま「…」ごそごそ
上条「うわっ、ちょ、何してんだお前」
ふぃあんま「…」もぞもぞ
上条「…上条さんのTシャツは寝袋じゃありませんよー?」
ふぃあんま「ないないー」
上条「…無い?」
ふぃあんま「…うー」
上条「うー、じゃありません…。…まったく」
ふぃあんま「……ないない」ぎゅう
上条(……母親については一回も呟いた事ないし、…父子家庭だったのかな。…俺が似てる、とか…?)
ふぃあんま「ないー」ぎゅー
上条「…はいはい、ないないないない」なでなで
215 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 20:43:43.31 ID:InYURkoAO
+
216 :
小ネタ:お弁当
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 20:44:35.62 ID:mxdUeLs90
上条「今日の補習は夕方までかかるから、大人しく留守番しててくれよ?」
ふぃあんま「…かならずもどるか?」
上条「当たり前だろ。あ、お弁当作るから希望のおかず言ってくれよ」
ふぃあんま「ぷちとまと」
上条「そんな気はしてた」めもめも
ふぃあんま「…んー」
上条「他には無いのか? 抽象的なのでもいいぞ」
ふぃあんま「…しろい…かりこりしてるやつだ」
上条「…カリフラワーか?」
ふぃあんま「おそらくは」こくん
上条「じゃあ軽く塩ゆでして入れておくな。んー…ウインナーとか…卵焼き…いや、オムレツ…?」
ふぃあんま「……あと、」
上条「ん?」
ふぃあんま「…なんでもない。きにするな」ふるる
上条「?」
上条(子供用となると見目が楽しくないとな。お弁当箱買うか…。ま、フィアンマが好き嫌いしたことないけど)
ふぃあんま(…つつましいほうがにほんでは"いいこ"のはずだ)
上条(それにしてもリクエスト内容が野菜ばっかりっていいこだよな…)
217 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 20:44:36.89 ID:InYURkoAO
+
218 :
小ネタ:ヴィシソワーズ
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/10(木) 20:45:03.34 ID:mxdUeLs90
ふぃあんま「…びしそわーずか」
上条「ネットでレシピ見つけて、いいなって思ってさ」
ふぃあんま「ふむ」
上条「冷製だから夏でもイケるし。食べるだろ?」
ふぃあんま「たべるー」そわそわ
上条「もうちょっと待っててな」ことこと
上条「ん、よく冷えてるな。とと…召し上がれ」
ふぃあんま「ん」ずるるー
上条「……」ほのぼの
ふぃあんま「おいしい」ふにゃ
上条「ん、良かった良かった」よしよし
ふぃあんま「…いっかげつとおしてのめんものか」
上条「それはちょっと厳しいかな…」
ふぃあんま「じゃがいもはいちねんじゅうあるじゃないか」
上条「生クリームが高いんですのことよ」しんみり
219 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 20:58:18.54 ID:UwE3Tgy70
乙
ふぃあんまくんが可愛ければそれでいいです
220 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 22:14:40.71 ID:t+09rFWno
みんなまるい
221 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/10(木) 22:44:45.02 ID:UTytQhHYo
イイハナシダナー(棒)
222 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 00:07:56.47 ID:FhooUU4Z0
>>219
了解しました
>>220
悲劇なんて無かった
>>221
泣ける話だったー(棒)
投下。
223 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 00:08:20.12 ID:fUzy4FUAO
+
224 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 00:08:56.76 ID:FhooUU4Z0
帰宅して。
且つ、落ち着いた状態で。
上条はベッドに座り、フィアンマを隣に座らせる。
そして、どうしてあんな凶行に及んだのか、問い詰めた。
常の悪戯ならば、見逃しても良い。
だが、今回は絶対に違う。
自分は恐怖を感じたし、フィアンマも本気だったのだろう。
上条「……ちょっと難しい言葉を使っても良いから、さ。…どうして世界を救いたいのか、教えてくれ」
ふぃあんま「……、」
フィアンマは、少し黙り。
視線を落として、ぽつりぽつりと語りだす。
初対面の時のような抽象的な表現ではなく。
やりたいことを、なるべく科学的に噛み砕いて。
上条は真剣に聞き、しかし、賛同はしない。
上条「…そっか」
フィアンマは、過去、父親に捨てられた。
その時に言い残された『いい子にしていてくれ』が、一種強迫観念となっている。
そして、自分に宿されている力に、怯えた。
子供としては当然の反応だろう。上条が、人を不幸にするのだと自分を恐れたように。
上条「……確かに、世界は終わっちまうのかもしれないな」
ふぃあんま「……おれさまには、」
救う義務がある。
救わねば、罪悪感が蟠る。
良いことをしなければならない。
上条「…でも、さ。…そのやり方だと、悲劇的じゃないか?」
ふぃあんま「………」
上条「…戦争なんて、俺は知らない年代だけど。沢山の人が傷つく。フィアンマは、それを最後の戦争にするって言うのかもしれないけど。……俺は、それが正しいとは思えない。良い事だとも、思えない」
上条は右手を伸ばし、ぽんぽんとフィアンマの頭を撫でる。
優しく数度撫でて、微笑みかけた。
上条「……目の前の人に手を差し伸べるんじゃ、駄目なのか? 世界を救える程の力があってもなくても、無理やりやるなら意味なんて無いんだぞ」
自分がしたいと思った人助けにしか、意味は宿らない。
やらなければならないから、そう思ってやったことでは、駄目だ。
ふぃあんま「……、」
上条「…もうちょっとだけ、世界を勉強してから、な?」
悲しい世界や、出来事ではなく。
今の、それなりに優しい日常をもっと知ってから、決めてくれればいい。
そう願って、上条は、微笑む。
225 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 00:08:57.79 ID:fUzy4FUAO
+
226 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 00:09:14.74 ID:FhooUU4Z0
一方通行にダシにされた。
結果として、上条は一時的に学園都市から出て行く事になった。
しかし、上条は一方通行を恨んではいない。
友人が誰も傷つけたくなくて自分の名義を使ったのなら、仕方が無い。
理由は聞いた。そして、納得した。
出て行くといっても永久追放ではないのだから、恨むまい。
まだ夏休みなので、上条は両親と久々に会う事に。
問題はフィアンマの身柄をどうするか、であった。
上条「んー。一方通行は色々忙しいみたいだし…かといって土御門に頼むってのも…」
ふぃあんま「……」じー
上条「…一緒に行くのは厳しいし、」
ふぃあんま「いく」
上条「いや、でもですね? セキュリティーが厳しい訳なんですよ」
ふぃあんま「いくったらいくんだ」
上条「……んー」
フィアンマは小さい。
これを言うと怒るのは確実だが、正直言うと、本当に小柄で細身だ。
人形です…で通すのは厳しいが、荷物に隠れられるかもしれない。
上条「…とりあえず荷物詰めよう。そうしませう」
ふぃあんま「てつだってやる」
いそいそと課題を詰め、準備万端。
連絡はしてあるので、海の家にほど近い宿泊地へ向かって両親を待てばそれで良い。
上条「くれぐれも騒ぐなよ?」
ふぃあんま「みくびるな」
ふふん、と薄い胸を張るフィアンマ。
大丈夫かな、と思いつつも、上条は準備をするのだった。
227 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 00:09:15.56 ID:fUzy4FUAO
+
228 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 00:09:32.58 ID:FhooUU4Z0
結果として、見事にバレた。
しかし、認証してみたところ、何故かフィアンマにゲストIDが発行されていたことが判明し。
無痛注射を行った後、上条とフィアンマはスムーズに『外』へ出た。
上条の実家近くの海の家へ向かい最中、退屈な二人はしりとりをしていた。
包丁持ち出し事件の事は、上条は既に水に流している。
昔に刺されたのと違って、フィアンマには甘い傾向にあるからだ。
或いは、フィアンマに情が移った以外に、同情したからかもしれない。
上条「…んー…りんご」
ふぃあんま「ごま」
上条「まー…魔法」
ふぃあんま「うま」
上条「マラカス」
ふぃあんま「すいま」
上条「また『ま』かよ! …ま…ママ」
ふぃあんま「まくま」
上条「ぐ…ぐぬ…」
それはズルい、と思いながら。
二人はのんびりと向かっていくのだった。
229 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 00:09:33.60 ID:fUzy4FUAO
+
230 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 00:09:53.90 ID:FhooUU4Z0
朝に出発したので、到着したのは午後のことだった。
上条はフィアンマに手伝われつつ課題を半分程終え。
フィアンマに強請られるまま、海まで出てきた。
ちなみに、この
上条「よく晴れてるな。あんまり人居ないけど」
ふぃあんま「あんまり、というよりもほとんどみあたらんが」
上条「何だっけ、クラゲ大量発生…だったような」
夏休み終盤なので人が居ない、というのも理由の一つではある。
まあいいか、と可愛い女の子が居ない事に残念がりながら、上条はフィアンマと遊んでやることにした。
適当に泳ぎ、ばちゃばちゃと海水に濡れた後、砂浜に座る。
上条が見ている間に、フィアンマはスコップも何も無いにも関わらず、綺麗に城を作っていった。
上条「砂のお城か。上手だな」
ふぃあんま「ん、『べつれへむのほし』というんだ。おれさまのしろだぞ」
にこりともせずに、彼は言う。
海水で落ち着かせ、砂を足していく。
ほどなくして、大きめの砂の城が完成した。
上条「あれだな、写メ撮りたい」
ふぃあんま「けいたいでんわー、はないのか」
上条「水に濡れたらマズいから置いてきちゃったんだよ」
苦笑して、上条は城を眺める。
砂上の楼閣。
潮が満ちてしまえば、脆く崩れ去ってしまう。
何だか寂しいな、と上条は思う。
上条「そろそろ旅館戻るか」
ふぃあんま「ん」
立ち上がり、フィアンマは手で砂を払う。
そして、上条が立ち上がるのを待ってから、共に進んだ。
231 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 00:09:54.87 ID:fUzy4FUAO
+
232 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 00:10:13.60 ID:FhooUU4Z0
上条の両親が到着するまで、後一日ある。
海で遊び、課題をこなしていれば、もう夕方になってしまい。
夕飯を食べて入浴すれば、もう眠くなってしまうもので。
タクシーに揺られて来たものの、旅疲れもあったようだ。
上条も珍しく眠気に囚われ、寝ようと誘う。
上条「今日はベッドじゃなくてお布団だぞ」
ふぃあんま「…なれん」
上条「やっぱそうか…」
むー、と唸るフィアンマをあやし、上条は目を閉じる。
背中を優しくとんとんと一定のリズムで叩きあやされ、フィアンマも目を瞑った。
上条(……明日、父さんと母さんに…会ったら…何て…説明しようかな…)
空から降ってきた、と素直に伝えるのはあまりにもおかしい。
フィアンマには、実の親が居ないそうだから。
せめて、自分の親で疑似体験が出来たらいいな、と上条は思う。
上条「ん…おや…すみ」
ふぃあんま「…すみ…」
すりすりと上条の胸元に甘え。
フィアンマは、優しく夢の世界へと誘われた。
233 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 00:10:14.48 ID:fUzy4FUAO
+
234 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 00:11:15.78 ID:FhooUU4Z0
「あー、俺はもう心に決めたショタが居るンで」
学園都市第一位の『超能力者』―――― 一方通行
「…私の妹を、…助けたっていうの?」
学園都市第三位の『超能力者』・『超電磁砲(レールガン)』――― 御坂美琴(みさかみこと)
「……俺の知ってるフィアンマはお前みたいな美"青年"じゃないんだけど」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「………おれさまのしっている、いまじんぶれいかーでは…ない?」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 右方のフィアンマ
235 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 00:11:17.06 ID:fUzy4FUAO
+
236 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 00:12:36.87 ID:FhooUU4Z0
今回はここまで。
次回から『異界反転(ファントムハウンド)』編に入ります。
フィアンマくんはどんな子かっていうとこんな子です
237 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 00:27:42.11 ID:YSK0zt1SO
乙……と、言いたい所だが
なんだその画像は?俺を萌死させたいのかクソッタレ
乙
238 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 00:30:23.20 ID:YFnuqZSv0
乙かわいい
239 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 01:34:02.55 ID:CJ5XS9EVo
ショタセラレータの出番はまだですか?
240 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 02:16:43.39 ID:mUVahVKm0
乙
電磁通行の可能性が微レ存
入れ替わった世界は原作? いやフィアンマと会ってるなら違うのか……?
今までの
>>1
のスレとかだったりすると色々と大変なことになりそうだがww
241 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 10:02:45.51 ID:fUzy4FUAO
>>230
×ちなみに、この
○
242 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 18:57:12.38 ID:EL5vRJsb0
>>237-238
本気出してみました ロリっぽさもありますかわいい
>>239
一方通行さんはショタではなくショタコンなので…><
>>240
素レ存…
色々考えたんですけどどちらもやめておきました
投下。
243 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 18:57:15.34 ID:fUzy4FUAO
+
244 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 18:57:40.97 ID:EL5vRJsb0
御坂美琴は、探していた。捜して、いた。
とある『超能力者』を。
きっと自分が知る中でも最も酷い、どうしようもない極悪人を。
美琴(一方通行…ッ)
勝てるとは、思っていない。
だが、"自分が死ぬ"というその一石を投じることで。
おぞましい実験を止める事が出来るのなら。
そんな彼女は、街中で誰かにぶつかった。
本来実験に使用され、死ぬべきだった、一人の個体。
00001号。彼女は、そう呼ばれる。
美琴「あ…、アンタ、」
00001号「お姉様<オリジナル>ですか、とミサカは状況を把握しました」
美琴「……、…どこか、怪我してない?」
00001号「脚であれば銃弾によって負傷していましたが、現在は治療を終えてリハビリ中です。と、ミサカは回答します」
御坂美琴は、自分のクローンのことを不気味に思った。
しかし、彼女達が造られたのは、元を正せば自分のせい。
それに、何より。
自分と同じ細胞を持った妹達<シスターズ>が殺される実験が行われているのだという情報で、気持ちが変わった。
美琴は心配そうに00001号を見つめる。
対して、00001号は不思議そうに首を傾げた。とはいえ、無表情だが。
美琴「第何次実験まで進んだかはわからないけど、…アンタは、私が助けるから。ところで、アンタはその、…"何番目"?」
00001号「この個体のナンバーは00001です、とミサカ00001号は簡潔に回答しました」
美琴「……、…00001?」
00001号「第00001次実験のみ実施されましたが、被験者一方通行の拒否、及び複数理由・事由により絶対能力者進化実験は中止されました、とミサカは事実のみを述べます」
美琴「……え?」
読み取った電磁上のデータと違う。
美琴は、研究者などにそう言わされているのだろうか、と疑う。
00001号「どうかしましたか、とミサカは問いかけます」
美琴「……いや、…えっと…?」
言葉に詰まる美琴。
そこへ、一人の少年が通りかかった。
学園都市最強のショタコン――― 一方通行が。
一方「オマエ、もう病院から出ても良かったンかヨ。…あン?」
美琴「……」
一方「何号だ? 学園都市内に何人残したかは覚えてねェが…」
さてどうだったか、と一方通行は首を傾げる。
垣根帝督と語り合い、全ての道はショタに通ずるという結論に達した彼だったが、それでもロリに興味は薄い。
美琴「…何号も何も、…オリジナル、よ」
245 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 18:57:41.84 ID:fUzy4FUAO
+
246 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 18:58:16.46 ID:EL5vRJsb0
諸悪の根源だと思っていた一方通行。
そして、その一方通行が絶対能力者となるべく殺される筈だったクローン。
その両者と共に、現在地、ファミレス。
御坂美琴の前には、チョコレートパフェが置いてある。
00001号は初めて見るピザに興味を示していた。
一方通行は何を言う事も無く、コーヒーを啜っている。
美琴「…とりあえず、確認させて」
一方「……」
美琴「アンタ、妹達に手は出してないのね?」
美琴の発言に、一方通行はあからさまに渋い顔をした。
一方「あー、俺はもう心に決めたショタが居るンで。実質0歳児とはいえ、女子中学生にそういう衝動は湧かねェな」
美琴「そうじゃない」
一方「あ?」
御坂美琴は、深呼吸をして、問いかける。
00001号は、一方通行に勧められ、マヨたらこピザを口にした。
革新的で美味しい。00001号は、僅かに反応する。
美琴「……一人も、殺してないの?」
一方「殺す理由がねェしな」
肩を竦め、そう述べた一方通行は、コーヒーを啜る。
余計な事は語らない彼の代わりに、00001号が口を開いた。
00001号「この個体が拳銃の銃口を向けた結果、被験者一方通行はミサカ00001号の動きを制止し、その後、生産されている20000体の個体の活用場所を手配しました、とミサカは捕捉します。具体的には病院や外部機関です」
一方「俺がすげェイイヤツみてェだろォが、やめろ。……20001号の行き先はまだ決めてねェし」
美琴「……、」
その一言で、掛け合いで、全てわかった。
一方通行は実験の為に銃で撃たれ、反射した。
しかし、それは00001号の動きを止める為。
そして、妹達全員の居場所を確保してくれた。
美琴「…私の妹を、…助けたっていうの?」
どうして。
掠れた声で、彼女は疑問を口にする。
一方通行は、うーん、と内心で思う。
『…おまえはがんばった。そして、それはしょうさんにあたいする』
一方(…フィアンマくンに褒められる為、かねェ……?)うーん
守るものが出来た。
真人間と認めてもらえた。
だから彼は、死のうとも、これから先も何かを犠牲にして高みを望もうとは、思わない。
汚れた手では、あの子の手を握ってあげられないから。
247 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 18:58:17.35 ID:fUzy4FUAO
+
248 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga !美鳥_res]:2013/01/11(金) 18:58:58.48 ID:EL5vRJsb0
『国境の長いトンネルを抜けると、そこは雪国であった』。
ならぬ。
『暖かいお布団を除けると、そこは異世界であった』。
249 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 18:58:59.76 ID:fUzy4FUAO
+
250 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 18:59:20.57 ID:EL5vRJsb0
上条当麻は、朝になって目を覚ました。
何だか良い匂いが漂っている。
旅館の朝ごはんだし、味噌汁だろうか。
そんなことを思いながら、上条はむくりと身体を起こした。
上条「んん…」
ぐぐ、と伸びをする。
そして、自分が学生寮によく似たアパートのベッドで寝ていた事に、気がついた。
上条「…あれ…?」
昨日、自分は確かに旅館の布団で寝た筈だ。
横を見たが、フィアンマは居ない。
上条「フィアンマー?」
?????「んー?」
返事をした声は、低い。
声変わりを済ませた青年のものだ。
首を傾げる上条の前に、一人の青年が姿を現す。
赤い髪。
オレンジとも金ともつかない色合いの瞳。
細い身体に、白い肌。
長袖の服の右腕は、空っぽ。
上条「…誰?」
フィアンマ「…誰、…寝ぼけているのか? フィアンマだよ」
今さっき呼んだじゃないか、と彼は首を傾げる。
上条は、じろじろと彼の身体を上から下まで眺めて。
フィアンマが順当に成長したらこんな感じなのかな、と思った。
上条「……フィアンマ?」
フィアンマ「…だからそうだと言っているだろう。眠いのならもう少し寝ていても良いんだぞ」
上条「………ゆ、…夢だ…」
これは、夢に違い無い。
だって、自分の知っているフィアンマとはまったくもって違う。
頭を抱えて混乱する上条に、フィアンマは不思議そうな表情を浮かべた。
フィアンマ「当麻、疲れているんじゃないのか」
上条「……俺の知ってるフィアンマはお前みたいな美"青年"じゃないんだけど」
フィアンマ「…び、…青…年……? お、…俺様が…?」
聞き返し、フィアンマは顔を赤くして固まった。
唯一彼に残された左手を動かし、ふるふると首を横に振る。
対して。
上条は、何かがおかしい、と眉を潜めた。
251 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 18:59:21.37 ID:fUzy4FUAO
+
252 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 18:59:45.35 ID:EL5vRJsb0
右方のフィアンマは、目を覚ました。
ベッドと違い、布団は慣れない。
だが、幸いにも身体を痛める事は無く。
もぞもぞ、と起き上がったフィアンマは、上条を見やる。
何となく、少し身長が伸びていて。
何となく、少し肩幅が広くて。
何となく、……匂いが違う。
ふぃあんま「…む?」
首を傾げ、フィアンマはじーっと上条を見つめた。
上条当麻は、目を覚まし。
フィアンマを見るなり、がばっと起き上がって混乱した。
上条「え、な、何? ……も、もしかしてフィアンマの隠し子…!?」
勝手に何かを自己完結したらしい。
上条はフィアンマを見つめ、愕然として落ち込む。
上条「嘘だろ…いや、でもアイツ女の子にはウケるもんな…。……そっちの方が良かったのかも…? 未だに告白してねえし…大方苗字呼びのまんまだし…でもな…一緒に居てえな……」
ふぃあんま「……うー」
やっぱり何かが違う。
何が起きているかはわからない。
だが、目の前の上条当麻が、昨日までの彼とは別人だと、感覚で把握する。
ふぃあんま「………おれさまのしっている、いまじんぶれいかーでは…ない?」
上条「イマジンブレイカー? 何それ。何かの必殺技?」
マイナス思考を振り切り、上条はフィアンマを見て聞き返す。
今度こそ、フィアンマはこの男が自分の知らない誰かであることを理解した。
253 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 18:59:47.37 ID:fUzy4FUAO
+
254 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 19:00:34.89 ID:EL5vRJsb0
「なるほど。『異界反転(ファントムハウンド)』 、か」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 右方のフィアンマ
「そういえばちっちゃい頃のフェルもそんな感じだったな。うんうん」
何の変哲も無い男子高校生―――― 上条当麻
「……そんな訳、ねえだろ」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「……ありがとう」
ハンディキャップのある平凡な男子高校生――― フェルモ・アルベールト・フィアンマ
255 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 19:00:36.09 ID:fUzy4FUAO
+
256 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 19:00:51.02 ID:EL5vRJsb0
今回はここまで。
257 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 21:22:57.69 ID:CJ5XS9EVo
木原がショタコンの可能性が微レ存?
258 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 21:47:08.38 ID:HjUwftXj0
乙
とある日常の幻想右方? 濃厚なBL臭
上条さんは幻想殺しがなくても不幸貧乏(&フラグ建築士)っぽい気がするのはなぜだろうか
この綺麗(?)な一方通行ならみこっちゃんときっと友達に……
というか「心に決めたショタ」発言はスルーしていいのかよwwww
そういえば原作と違って上条さんが妹達にフラグ立ててないから、一方通行は2万人ハーレムの可能性が?(ショタコンには無意味だが)
259 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 23:28:34.16 ID:fUzy4FUAO
+
260 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 23:28:38.38 ID:OTvrSVop0
>>257
はい
>>258
ホモスレなので><
多分みこっちゃん混乱してて話あんまり聞いて無かった感じです。
ショタ二万人なら…良かったのにね…。
当スレセラさん、二万回ショタを愛でる実験なら受けたかもしれません。
投下。
261 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 23:28:39.31 ID:fUzy4FUAO
+
262 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 23:29:02.39 ID:OTvrSVop0
顔を真っ赤にしたフィアンマに追い立てられるまま。
釈然としない上条は、食卓に着いた。
少し悩みながらも、食事を口にする。
塩さば。
甘い卵焼き。
味噌汁。
白米。
かまぼこ。
どれもこれも、上条の味覚を考慮して作られたかのようだ。
上条「ん、すげえ美味しい」
フィアンマ「…そうか」
良かった、とはにかんで、フィアンマは食事を進める。
左手で箸をきちんと持ち、淀みなく食べている。
元々欠損していたのだろうか、と上条は思った。
上条「…ごちそうさま。……あのさ、」
フィアンマ「ん?」
フィアンマは上条が寝ぼけておかしくなっていたのだと、思っている。
だが、そうではない。
上条は寝起きでない頭で、考える。
この状況はおかしいし、昨日までの全てが夢であるはずもない。
自分がおかしくなっていると思いたい、流されてしまいたい。
しかし、安易な道に逸れる訳にはいかない。
『…もうちょっとだけ、世界を勉強してから、な?』
そう言ったから。
あの子と一緒に、居なければならない。
目の前の『フィアンマ』では、なく。
あの子と、一緒に居たい。
まるで記憶喪失になったかのような気分で、上条当麻は口を開いた。
上条「俺と、フィアンマ<お前>の関係について教えて欲しい」
フィアンマ「…関係…?」
上条「こんな事言うとファンタジーだけど。…俺は、この世界に居るべき上条当麻じゃ、ない」
263 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 23:29:03.19 ID:fUzy4FUAO
+
264 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 23:29:29.93 ID:OTvrSVop0
何故この旅館に居るのか。
上条当麻とはどんな人間か。
世界がどうなっているのか。
よくよく説明しきらない内に、呼ばれてしまった。
誰に呼ばれたかというと、上条の両親である。
『設定』の変わった世界とはいえ、両親は変わらなかった。
上条はさほど戸惑うことなく、フィアンマと共に両親に合った。
彼はパニックに陥りながらも、携帯電話を見て状況を確認していたらしい。
舌先三寸で話を合わせながら、上条は両親とフィアンマと食事を摂り。
課題がまだ終わってないから、と適当に言い訳をして、部屋へ戻った。
上条「えっと…『幻想殺し』、だっけ?」
ふぃあんま「そうだ」
上条「で、魔術…。…何かぶっ飛び過ぎててよくわかんないな」
ふぃあんま「…む」
上条「それで、お前の予測によると、『この世界の俺』を残して、世界がまるごと交換されたってことなのか?」
ふぃあんま「まんがでいうところの、せかいかんこうかんといったところか」
状況が飲み込めないながらも、フィアンマは予測を立てていた。
自分がおかしいのではなく、この世界がおかしいのだと。
説明を続けようとした刹那、襖が開いた。
土御門「いやー、カミやん大丈夫かにゃー?」
上条「土御門?」
『あちらの世界』でも、土御門元春は上条当麻の友人である。
その為、上条はきょとんとしながら土御門を見た。
土御門の隣には、一人の女性。
世界に二○人も居ない、『聖人』。
神裂「…お久しぶりです、お二人共」
上条「…は、…はぁ。えっと、…家賃は更新しましたけど…」
神裂「はい?」
土御門「…やっぱりにゃー…」
上条にとって、『あちらの世界』において、神裂火織は料理上手な大家さんだ。
当然、そんな人が奇抜なファッションで日本刀を所持しているのだから、戸惑う。
そんな反応を見て、土御門元春は残念そうにため息を漏らした。
265 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 23:29:30.77 ID:fUzy4FUAO
+
266 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 23:31:05.91 ID:OTvrSVop0
曰く、世界規模の大魔術が展開されている。
それは上条当麻を中心として起こっている。
『あちらの世界』は、『こちらの世界』にとっての"理想"。
つまり、術者にとって理想の"世界設定"が、この世界に適用されている。
「なるほど。『異界反転(ファントムハウンド)』 、か」
納得したように言うフィアンマ。
「『設定』と『関係性』は違うが、カミやんの知り合いはこっちでもカミやんの知り合いって訳だな」
「…ってことは、この子は?」
「こっちの世界のカミやんが大事に大事にしてる"フィアンマ"ですたい。"そっち"ではどんな関係は知らんけどにゃー」
「そういえばちっちゃい頃のフェルもそんな感じだったな。うんうん、こんな感じ」
そして。
土御門は『この世界の自分は』魔術師であると明かした上で。
この魔術がどのようなものか、説明を始めた。
「今のカミやんは、『この世界』のカミやんじゃない。自覚はしているだろうが」
「……神裂さんが魔術師だしな」
「とりあえず、説明しよう。カミやんは、イデア論って知ってるか?」
「えーっと…プラトンが提唱した説だった、よな? "魂というのは不滅であって輪廻転生を繰り返しており、もともとは霊界にいてそこでイデアを見ていたのであって、こちらの世界へと来る時にそれを忘れてしまったが、こちらの世界で肉体を使い不完全な像を見ることによりイデアを思い出している"…だったかな。教科書丸覚えだけど」あっちのカミやんは頭良いのか…と、それはどうでもいいか。イデア、即ち『真実在』というのは、永遠に存在する事実だ。勿論、それは神様や天使と同じで、可視範囲には存在しない」
「……なるほど?」
「だが、それでも反応は起こされる。赤外線を当てられて、水の霧が虹色になる様に」
「………」
「『異界反転』は、その辺りの知識を元にしている魔術だ。術者が望む『理想』―――小説で言えば設定。それを抜き出して、自分の世界にインプットする。パソコンの中にある出来上がった文章データに好きな語句付け足して上書き保存、或いは原作を再構成する二次創作小説って感じか。『こうだったらいいな』『自分や大切な人の現実はこんなものじゃない』『もっと良い世界に違い無い。例えば、こんな世界』……それを現実化する」
「良い事じゃないのか? それって」
「誰かにとっての理想は、誰かにとっての絶望ぜよ、カミやん。小説じゃないから笑えないんだぜい。世界地図を修正テープで隙間なく覆った上で、クレヨンで落書きしちまって『これが国』とぽんぽん決めてしまう。術者にとっての理想…思想の形だけある『真実在(コピー元)』は、いくらでも用意される。……『この世界』のカミやんは、『幻想殺し』の影響で取り残されたんだ」
「取り残された? でも、どっちかっていうと俺と入れ替わったに近いけど…」
「んん、…言うなれば、テーブルクロス引き。カミやんが移動するんじゃなくて、カミやんを包む世界が移動したんだ。ああ、俺やねーちんは魔術に精通している上、術式が実行された時に寝ないで起きていたから、記憶を保持する術式をかけることが出来た。そうでなければ、その内この世界がおかしいってことを忘れちまう。或いは、『今までの人生は夢だったんだ』って納得する。……術式が完全に成立してしまえば、この記憶保持も効果を喪う」
「……待てよ。じゃあ、俺はもう『元の世界』に帰れないってのか?」
青ざめた顔で、上条はそう問いかける。
それは、困る。
まだ好きな子に告白していないし、やり残したことも沢山ある。
こちらの世界には、自分の知る人が『設定は違っても』居るのだろう。
だけど、そんなのってあんまりだ。
遊園地<いせかい>は、遊びに行くのには向いていても。
住むことには、絶対に向いていない。
「それを解決する為に、我々はやって来たのです」
267 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 23:31:08.70 ID:fUzy4FUAO
+
268 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 23:31:32.51 ID:OTvrSVop0
フィアンマは。
フェルモ・アルベールト・フィアンマという少年は。
昔から、幼馴染である上条当麻に、甘えてきた。
きっかけは、上条の両親と、フィアンマの両親が大学生時代に友人だったことだ。
当然、親の交友関係は子供の交友関係へシフトすることが多い。
両親が忙しい間は、二人で過ごすことが主だった。
お互いの家に行き、親が用意しておいたおやつを食べて、遊ぶ。
口調こそ傲慢ながら、気弱だったフィアンマは、いじめの対象となった。
その見目が中性的だったことや、容姿端麗であったことも理由の一つだろう。
石を投げられ、罵倒され、理不尽な扱いに泣きそうになった時。
上条は複数人相手にも関わらず、フィアンマの前に立って、庇った。
『おまえらがそんなくだらないりゆうでふぃあんまをいじめるっていうなら。それがまちがっててもいいっていうなら。まずは、そのくだらないげんそうをぶちころす!』
『うわっ』
『いってえ!』
『くっそ、このやろう!』
体格が良い訳ではない。
腕っ節だって、そんなに強い訳ではない。
特別な力など持っていないし、武術の心得も無い。
しかし、何度となく、何度でも、上条はフィアンマを庇った。
フィアンマ以外の人間の事も守りはしたが、フィアンマを最優先していた。
それは幼馴染だったからだろう、とフィアンマは思う。
『ふぃあんま、だいじょうぶか? けがしてないか?』
『ん、…ん…だいじょうぶ…』
『よかった』
ボロボロになって、それでもフィアンマに傷が無ければそれで良いと、上条は笑ってくれて。
そんな優しい幼馴染のことが、昔から大好きだった。
そうして暮らしている内に。
フィアンマの両親は、事故で死んでしまった。
交通事故だった。即死だった。
唯一の身内である祖父に引き取られ、住居を変える事なく、フィアンマは暮らしていた。
上条は、踏み込むか踏み込むまいか迷って。
それでも、傷ついたフィアンマが八つ当たりをしても、受け入れた。
269 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 23:31:33.32 ID:fUzy4FUAO
+
270 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 23:31:53.46 ID:OTvrSVop0
ようやく、フィアンマの心の傷が癒え。
上条とも良好な関係に戻って、数ヶ月。
上条とフィアンマが、中学一年生の時だった。
あきらかにスピード違反だった車が、歩道へ突っ込んだ。
運の悪いことに、ガードレールの無い場所だった。
本来、車道側を歩いていた上条が撥ねられるところだったのだが。
『あ、』
フィアンマが、上条を突き飛ばして飛び出た。
瞬時の判断だった。
何も考えず、ただ、上条が死ぬ位なら自分が死のうと思った。
突き飛ばされた上条は、電柱にこそ身体がぶつかったものの、膝をすりむく程度の軽傷で済み。
対して、上条を庇ったフィアンマは、派手に撥ね飛ばされた。
普通乗用車とはいえ、スピードを出していた。
即死かと思われたが、幸いにも一命を取り留める事には、成功した。
警察官が言うには、上条がそのまま撥ねられていれば即死は避けられなかったという。
『………?』
目が覚めて。
フィアンマはまず初めに、うつらうつらとしながら、自分の看病をしている上条と。
如何にも病院らしい、白い天井を見た。
『……と、ま…怪我…して、…ない、か…?』
『……ぁ、…いき、…生きて、た…よか、った…』
『……、…ん…』
泣きそうな顔をした上条に、首を横に振って。
そして。
自分の右腕が存在していないことを、知った。
『………あ……ぁ…?』
『………、ッ…』
『…なん、…俺様の…右腕、…は…?』
一命を取り留めた代わりに、右腕がひしゃげてぐちゃぐちゃになった。
そんな腕を繋げておけば腐敗してしまう為、必然として肩から切除することになり。
そうして、現在に至った。
271 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 23:31:54.36 ID:fUzy4FUAO
+
272 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 23:32:09.50 ID:OTvrSVop0
元はといえば運転していた人間が悪いのだが、上条は酷く悔やんだ。
当事者たるフィアンマ以上に落ち込み、悲しみ、何度も謝った。
フィアンマも勿論、利き腕が無くなった事は悲しいし、辛かった。
しかし、上条が生きていればそれで良いとも、思った。
上条は重く重く受け止めて。
リハビリの手伝いや、日常生活における介助をしてくれた。
『ごめんな、』
『……当麻のせいではない』
そして、ようやく左腕で物を掴むのに慣れた頃。
祖父が死んだ。
とうとう身寄り一つ存在しなくなったフィアンマを、上条当麻が引き取った。
正確には、上条の両親だ。
俺のせいで右腕を喪ったのだから、と説得したのだろう。
それからずっと、一緒に暮らしている。
幸せながらも、自分という存在に上条を縛り付けている事を、毎日反省している。
273 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 23:32:10.48 ID:fUzy4FUAO
+
274 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 23:32:40.13 ID:OTvrSVop0
上条「…そう、なのか」
上条は黙って、フィアンマの話を聞き終えた。
そうして、この世界の自分がとても恵まれている事を知る。
そして、どの世界でも自分という人間は変わらないのだなぁ、とも。
フィアンマ「……お前は、俺様の知る、…当麻ではないんだな」
上条「…ああ。…残念だけど、お前とは会った事も無い」
フィアンマ「……そうか」
残念そうに、相槌を打って。
それから、フィアンマは少しだけ、笑った。
フィアンマ「…なら、当麻は"お前の世界"に居るんだな」
上条「…多分、だけどな」
フィアンマ「……それが、良いのかもしれない」
彼は、右肩を撫でる。
何も無い、喪われた右腕を。
フィアンマ「当麻を問いただしたところで、善意だと言うだろうが。結局の所、俺様は罪悪感によって当麻を俺様に縛り付けている。そのせいで、当麻はまともに恋愛も出来ない。いや、出来なかったという方が、正しいか。…同年代の女子からデートに誘われても、断って真っ直ぐに帰って来る。俺様がまともに生活出来ないからだ。そして、それを支えなければならないと思わせてしまっているから。当麻に甘えてしまっているからだ。俺様が居なければ、…右腕を喪わなければ、きっと、一緒に住む事は無かった。そして、当麻が俺様に縛られることも無かった。それを自覚しているクセに、俺様は自分の好意を一番に設定して、離れようとしない。どうしようもない下郎だ。わかっていた。当麻だってきっと、俺様から離れてせいせいしているに決まっている。……好きだった。愛していた。だから、このまま当麻が罪悪感に駆られて一生一緒に居てくれれば良いと、願った。その代償が、きっとこれなんだ。神様からの天罰というヤツなんだろう。巻き込んでしまってすまなかったな」
上条「………」
劣等感。
或いは、罪悪感。
好意に裏打ちされた痛々しい打算。
今にも泣きそうな顔をして、フィアンマは笑ってみせた。
上条「……そんな訳、ねえだろ」
単純否定の言葉に、フィアンマは首を傾げる。
右腕を喪ったエピソード辺りにでも同情してくれたのだろうと、思ったのだ。
フィアンマ「……ありがとう」
上条「そうじゃない」
275 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 23:32:41.00 ID:fUzy4FUAO
+
276 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 23:33:49.00 ID:OTvrSVop0
牽制の言葉に、フィアンマは不思議そうな顔をする。
上条は、まるでこの世界の上条の様に、真っ直ぐな瞳で彼を見据えた。
「罪悪感だけで、そんな生活が出来る訳ないだろ」
「……、…」
「俺は、この世界の俺のことは知らない。会えないしな。でも、これだけはわかる。"上条当麻"は、単なる罪悪感だけでお前と一緒に居る訳じゃない。お前と一緒にいられなくなって、せいせいしてる訳もない。そんな男じゃない」
「……」
「きっと、この世界の俺は、お前の事が好きなんだよ。自分の為に命を張ってくれて、右腕を無くしても自分のせいじゃないって、笑ってくれて。美味しい飯を作ってくれて。八つ当たりされたって、女の子とデート出来なくたって、お前をいじめっ子から庇ったのだって、お前が好きだったからに決まってんだろ」
「……俺様は、」
「右腕を無くしていなくたって、俺はお前と暮らしてるよ。別の世界の話だけど。俺は、…フィアンマが大好きだよ。お前じゃなくて、元の世界の、な。だから、俺は元の世界に戻りたい。一緒に居たい。守ってやりたい。そしてそれは、別の俺だって、きっとそうなんだ」
「………一緒、…に…?」
「お前は上条当麻が居なくなって良かったみたいな言い方するけど、今の状況は、全然楽になんてなってないだろ。心配なら、何度だって問いただしてみろよ。自分が好意を持っていても、一緒に暮らしてくれるか。自分の事を億劫に思っていないかどうか。確かめもしないで、勝手に人の考えを決めつけんな。お前を守りたいと思って、庇って、傷ついて、それでも立ち上がって、一生懸命支えようとする男の顔に、泥を塗るのかよ。勝手な思い込みで、疑いながら、これからも生きていくのか。違うだろ。お前だって本当は、俺じゃなくて"自分が好きな上条当麻"に会いたい筈だ。俺に好きだって言えたなら、その上条当麻にも言える筈だぞ」
言い切って、上条はフィアンマを見つめたまま、問いかける。
「お前は、どうしたいんだよ。本当は俺の役目じゃないんだろうけど、"上条当麻"は居ないから。……代わりに、俺が救ってやる」
「………俺様は」
277 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 23:33:50.20 ID:fUzy4FUAO
+
278 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 23:34:54.46 ID:OTvrSVop0
「……このおれさまにせんりょくがいつうこくだと、きさまら…?」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 右方のフィアンマ
「俺は、この世界の俺のことは知らない。『幻想殺し』も持ってない。でも、やる事は変わらない」
何の変哲も無い男子高校生―――― 上条当麻
「まずはこの世界に存在する魔術師捜しから…って、うわああああああ!!!!??」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「誰でも良いのであれば、此処に一人居るよ」
『異界反転』からほぼ完全に逃れた非常に数少ない魔術師――― オッレルス
279 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 23:34:55.60 ID:fUzy4FUAO
+
280 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/11(金) 23:36:01.83 ID:OTvrSVop0
今回はここまで。
公式でオッレルスさんがキチヤンデレでフィアンマさん溺愛ストーカーってどういうことなの…。
281 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 23:45:21.56 ID:fUzy4FUAO
>>266
×赤外線
○紫外線
282 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/12(土) 00:09:58.11 ID:5ROOc4R0o
乙
上条さんはホモなのか?ごくりっ•••
283 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/12(土) 01:25:08.93 ID:GsQeP0Km0
乙
ねーちんが大家とか上条さんの好みのタイプなのになぁ
ショタやホモを語ることに一切のツッコミがなされない世界観
まさか既に世界は一度『異界反転』された後なんじゃ……しかもフィアンマが中心となっているなら術者は間違いなく
>>1
……!
284 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/12(土) 14:58:51.98 ID:0BkWHjjV0
>>282
ごくり… こっちの世界の上条さんはホモでもショタコンでも無い(はずと思い込みたい人)です
>>283
あっちの世界の上条さんのタイプは違うようです
……バレてしまっては仕方無い…
投下。
285 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/12(土) 14:58:54.26 ID:iRavnM3AO
+
286 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/12(土) 14:59:22.55 ID:0BkWHjjV0
この事態を解決する為に、土御門と神裂はやって来た。
彼等の具体案によれば、まったく影響を受けていない人間を捜せば良いとのこと。
とはいえ、『こちらの世界』は変わっていない訳で。
また、上条当麻も別物。
そんな訳で、儀式場を探さなければならないのだった。
土御門「カミやんただ一人の為に起こされたって感じだしにゃー…カミやんを大事に思ってる魔術師…」
うーん、と考え。
土御門は神裂とフィアンマを見やる。
神裂は困惑した表情を浮かべ、フィアンマはふるふると首を横に振った。
土御門「手がかり無いにゃー…」
上条「……」
土御門「どちらかといえば『あちらの世界』に行ってしまったカミやんが解決するしか…いやでも、努力は出来る。ん? カミやん、今のカミやんは『幻想殺し』って持ってるのか?」
上条「その『幻想殺し』ってやつのことはこの子から聞いたけど、俺は持ってない」
何かの必殺技かと思った、と首を傾げる上条。
あー、と神裂や土御門は苦笑して顔を見合わせる。
土御門「ならカミやんに協力を頼むのは酷だにゃー」
神裂「まったくの一般人を巻き込む訳にはいきませんから」
上条「でも、俺に出来る事はあるんだろ?」
土御門「……、」
上条「俺は、この世界の俺のことは知らない。『幻想殺し』も持ってない。でも、やる事は変わらない」
だから、この世界の上条当麻がやるべき事を行う。
そう述べる上条の瞳は、美しく真っ直ぐだった。
土御門「なら、まずは儀式場について探ろう。ねーちん、頼むぜい」
神裂「時間がありません。…気が引けますが、早々に始めましょう」
287 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/12(土) 14:59:23.52 ID:iRavnM3AO
+
288 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/12(土) 14:59:49.19 ID:0BkWHjjV0
『俺様は、当麻に帰って来て欲しい』
その言葉を聞き、上条は頷いて、外へ出た。
話を聞く限り、『こちらの世界に居るべき上条当麻』は幻想殺しを持っていない。
ということは、魔術を解除するには自分が動かなければならない。
例えば、世界を揺るがすような大きい範囲の魔術だった場合。
どこかに儀式場があるはずなのだ。フィアンマと魔術について話したから、知っている。
上条「…って言ってもな」
自分が持つのは、異能を消し去るだけの右手。
直感で動いても闇雲に体力を消費してしまうだけ。
誰か、この状況を異常だと感じている魔術師と協力するしかない。
上条「まずはこの世界に存在する魔術師捜しから…「誰でも良いのであれば、此処に一人居るよ」 って、うわああああああ!!!!??」
歩くのをやめて公園前で立ち止まっていた上条。
呟きと共に真後ろから声が聞こえ、思わず驚愕に叫んだ。
ばっ、と振り返れば、そこには一人の青年が佇んでいた。
金髪。
青とも緑ともつかない瞳。
人畜無害そうで、かえって底が掴めない。
上条「ど、っどど、どなたですか」
オッレルス「…私の名はオッレルス。とはいえ、便宜上の名前だが。魔神になるはずの、…第四次主神座位奪取闘争の片側だ」
上条「…シュシン?」
オッレルス「とりあえず、それなりに知識がある魔術師ということでいい」
上条は警戒しかけながらも、オッレルスに協力を求めてみることにした。
上条「世界がおかしくなってる。『元の世界』に帰りたい。…今の状況を説明してもらえないか?」
オッレルス「『異界反転(ファントムハウンド)』。具体的に説明しようか」
289 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/12(土) 14:59:50.09 ID:iRavnM3AO
+
290 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/12(土) 15:00:14.11 ID:0BkWHjjV0
ふぃあんま「……このおれさまにせんりょくがいつうこくだと、きさまら…?」
わなわなわな、と拳を握り締める七歳児、右方のフィアンマ。
上条は苦笑しながらぽむぽむと彼の頭を撫でる。
上条「だってほら、危ないし」
ふぃあんま「……」
儀式場を魔術師が管理している場合、攻撃を受ける可能性がある。
この上条当麻は、フィアンマの力を知らない。
知らないからこそ、信頼出来ない。
この程度の困難ならば大丈夫だろう、と任せられない。
傷つけないように、何度でも前に立って、守る。
それは、こちらの世界とあちらの世界のフィアンマの違いに基づくものだ。
『世界を救える程の力があってもなくても、無理やりやるなら意味なんて無いんだぞ』
『俺は、この世界の俺のことは知らない。『幻想殺し』も持ってない。でも、やる事は変わらない』
発言や姿勢は、同じようなもの。
右手があってもなくても、やることはやる。
やるべきことは、彼の中に内包されている。
だが、こういった場面で信頼してくれない。
不満にむすくれたフィアンマの頭を優しく撫で、上条は苦笑しつつ探索を開始した。
291 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/12(土) 15:00:14.96 ID:iRavnM3AO
+
292 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/12(土) 15:00:32.34 ID:0BkWHjjV0
『異界反転』についてわかりやすい説明を受け。
上条は、オッレルスと共に行動していた。
上条「…そういえば、何であんたは影響を受けてないんだ?」
オッレルス「多少なりとも受けているよ。御蔭で記憶が曖昧だ」
上条「そうは見えないけど」
オッレルス「そう見えないようにしているんだ」
オッレルス曰く、地脈を辿れば儀式場にたどり着ける。
儀式場の様子を見て、壊せるようであれば上条の右手を使う。
地脈エネルギーが術者を通し、現実世界に影響を与えているのだから。
術者を特定して殺してしまった方が早いのだが、彼はそうしない。
上条「……さっきの話だと、こっちの世界はあんたにとっても優しい世界なんじゃ?」
ふと思った事を、問いかける。
オッレルスは、ゆるく首を横に振った。
オッレルス「あの子が居ない世界で生きていても仕方がない」
上条「…あの子?」
オッレルス「右方のフィアンマ。こちらの世界でいうところの、フェルモ・アルベールト・フィアンマ」
上条「……」
つまり、上条が同居しているあの少年のことだ。
余程強い関係があるのか。
そう思い、上条はそのまま疑問を口にする。
上条「…あの子の、何なんだ?」
オッレルス「……父親だよ。名乗る事さえおこがましい立場の、ね」
293 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/12(土) 15:00:33.24 ID:iRavnM3AO
+
294 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/12(土) 15:01:05.42 ID:0BkWHjjV0
上条は、どこか世捨て人染みた彼の様子を眺め。
ところどころ、確かに似ているな、と思って。
思い出したように、眉を寄せた。
上条「……何で、」
オッレルス「……」
上条「…何で、あの子を捨てたんだ」
オッレルス「…あの時は、それが一番良いと思ったんだ」
上条「あの子は、教会でずっとあんたを待ってたんだ。半分諦めて、あんたが言い残した『いい子にしていてくれ』って言葉だけ信じ続けて、守ろうとして、俺の右手を切り取ろうとする位追い詰められてた。『すぐ戻って来るか』って、口癖みたいに不安がって聞く。あんまり多くは語らないようにしてるみたいだけど、あの子はあんたを待ってるんだぞ。期待しないフリをしながら、いい子であり続けて、ずっと」
オッレルス「……今更、あわせる顔もなければ、今会う訳にもいかない」
『あちらの世界』と『こちらの世界』を繋ぐ地点。
即ち、上条刀夜と上条詩菜の家。
その前で立ち止まり、オッレルスは上条を見やる。
先程まで優しく空虚であった瞳には、どろどろとした感情の色が渦巻いていた。
上条は、思わず一歩下がる。
オッレルス「……俺も、あの子とずっと一緒に居たかった。この世で最も愛した女の忘れ形見だという部分を除いても、俺はあの子を愛している。だが、ダメなんだ。一緒に居れば、"また"あの子を傷つけてしまう。不幸にしてしまう。それを避ける為にローマ正教へ預けたのは、失敗だったと思う。まだ一介の高校生である君にはわからないとは思うが、一緒に居ない方が良い場合だってあるんだ。俺には、あの子を守るだけの力が無い。だから、あの子を包む世界を守ることにしている」
上条「……」
オッレルス「……私は、一人の無力な父親として。……ただ、あの子に」
295 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/12(土) 15:01:06.30 ID:iRavnM3AO
+
296 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/12(土) 15:01:39.16 ID:0BkWHjjV0
刀夜「幸せになって欲しかっただけなんだ」
夕暮れの浜辺。
とある不幸な少年の父親は。
自分の息子に限りなくよく似た違う少年に、そう言った。
刀夜「…当麻。お前はね、…『疫病神』などと呼ばれていたんだよ」
上条「……、…」
刀夜「子供の悪ふざけだけではなく、大人たちまでもがそう呼んで。お前と一緒に不幸がやって来るなどといって、石を投げて追い払った。それでお前がどれだけ傷ついても、何故もっと傷つけないのかと皆笑うばかり。私はそれが恐ろしかった。覚えているかい、当麻。お前は一度、霊能番組に勝手に撮影されて、化け物扱いをされたんだ。そして、借金を負った男に刺された事もあるんだよ。……もう、耐えられなかった。怖かった。当麻の不幸ではなく、当麻を疫病神扱いする空気、人々、それ自体が」
だから、学園都市へ上条当麻を預けた。
"この上条当麻"は、記憶喪失した別人のようなものだ。
故に、刀夜の言う記憶は存在しない。
この上条当麻は幼い頃から順風満帆に普通の生活を送ってきた。
しかし、それでも思う。間違ってる。
この世界の上条当麻だって、こんな状況は望んでいないだろう。
世界をまるごと取り替えてしまえば。
自分の息子は、見目の同じ別人になってしまう。
そして、自分の息子は"理想の世界"で幸せに生きていく。
もう二度と、家族として笑いあえなくなっても。
もう二度と、会う事が無くなっても。
息子が幸せになってくれるなら、何を犠牲にしても良い。
そんな思いで、術式を執行したのか。
刀夜「学園都市から来る手紙で、未だ当麻の不幸が解明されていないことを知ったよ。友達が出来た事は、嬉しかったが…」
上条「……ふざけんな」
刀夜「…当麻?」
上条「確かに、俺は不幸だったかもしれない。でも、不幸でなければ出会えなかった人も居る。助けられなかった人だって居る。人の幸不幸を勝手に決めんな! 俺は、不幸で幸せなんだ!! そんな俺から、不幸を奪うんじゃねえ!」
携帯電話を見た。
この世界のフィアンマと話した。
そして、思った。
この世界に存在する上条当麻は、他人が思う程不幸なんかじゃない。
刀夜「……、…何だ。…当麻、…最初から、幸せだったのか」
ほっとした表情を浮かべて、刀夜は言う。
刀夜「…そうだな。なら、もう民芸品<おみやげ>を買って来るのはやめよう。菓子の方が母さんもまだ喜ぶ」
上条「……? えっと、…父さんが、『異界反転』を行った犯人なんじゃ…?」
刀夜「ファントムハウンド? 何だそれは。何かのアイドルのグループ名か?」
不可解そうに、聞き返す。
その表情を見、上条は困惑した。
297 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/12(土) 15:01:40.00 ID:iRavnM3AO
+
298 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/12(土) 15:02:25.20 ID:0BkWHjjV0
オッレルス「……魔神になれば、或いは。あの子と会う資格が得られるのかもしれない」
呟いて、彼はドアを開ける。
鍵を無視しているかのようだったが、密かに壊していたらしい。
魔術には下準備が要るのでは、と上条は密かに疑問に思った。
両親は居ないらしく、上条の両親の家は空っぽだった。
上条「………、…あんたがあの子を捨てた理由は、わかった。多分、俺もそうしたと思う。…でも、…魔神になった時だなんて言わないで、一回でも会ってやってくれよ。ずっと、待ってるんだ。ずっと、いい子にしなきゃいけないって、無理してる」
オッレルス「………無理だよ」
オッレルスは風呂場等を見て回り、少し迷った後、上条へ外へ出ているよう言った。
どうやらおみやげによって構成されている魔法陣が複雑らしく、中途半端に動かしたり、壊すと別の魔術が発動してしまうらしい。
上条は、家の前で目を伏せる。
『あの子は、俺のせいで攻撃を受けたことがある。腹部を貫かれて、痛かっただろうに、あの子はそれでも言ったんだ。"パパが無傷で良かった"って。耐えられなかった。激痛に血を吐きながらそんなことを言える優しい子が、これ以上傷つけられることは、どうにも耐え難かった。俺が我慢してあの子と離れれば、二度とそんなことは起こらない。……だから頼むよ、幻想殺し―――上条当麻。俺の代わりに、…あの子を守ってあげて欲しい』
『……、』
上条「……、…フィアンマは、どうするのが一番なんだろうな」
弟の様に思っている。
大事だと思うし、好きだと思っている。
家族のようなものだと、思いたい。
それでも、やっぱり本当の家族と過ごすのが一番なのでは。
上条はそう思いながら、目を閉じた。
299 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/12(土) 15:02:26.28 ID:iRavnM3AO
+
300 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/12(土) 15:02:44.79 ID:0BkWHjjV0
程なくして。
ぐらり、と世界が揺れた。
気付けば、上条当麻は誰も居ない浜辺に立っていた。
まるで先程までの出来事が全て夢だったかのように、彼は一人だった。
上条「…『あっちの世界』の俺が、どうにかしたのかな」
思いながら、上条は浜辺から公道の歩道へ戻る。
向かい側から、一人の女性が歩いてきた。
モデル顔負けのスタイル。
長い髪をポニーテールに括っている彼女は、いたって一般的な服装だ。
左右非対称の服装ではない。
神裂「おや、奇遇ですね。海で遊んでいたんですか?」
上条「…まぁ、そんな感じですかね」
神裂「アルベールトくんが捜していましたよ?」
上条「ありがとうございます」
頷いて、上条は神裂とすれ違う。
戻って来た。自分の居場所へ。
二人で住んでいるマンションの一室の前に。
迷子の様な表情で、フィアンマが立っていた。
フィアンマ「…当麻?」
上条「フェル!」
呼んで、上条は走り寄った。
フィアンマは泣きそうな顔をして、上条に抱きついた。
フィアンマ「…おか、……お帰り…」
上条「ん、…ただいま……お前に、話があるんだ」
301 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/12(土) 15:02:45.68 ID:iRavnM3AO
+
302 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/12(土) 15:03:03.47 ID:0BkWHjjV0
気がつけば、上条の両親の家の前に居た。
何も変わっていないように思いながら、上条は後ろを見やる。
ドアに手をかけてみるが、鍵は開いていない。
あのオッレルスという魔術師がどうしたかは知らないが、恐らく片付いたのだろう。
ありがとう、とだけ呟いて、上条はてくてくと歩いていく。
海の家のある海辺近くまで歩けば、父親である刀夜が見えた。
上条「あ、父さん」
刀夜「当麻!!」
まるで神隠しに遭った息子を心配するように、刀夜は駆け寄ってきた。
心配そうに上条の様子を見る。
刀夜「大丈夫か? 怪我はしていないのか?」
上条「…大丈夫だよ」
苦笑して、上条は頷く。
―――帰って来た。自分の、居場所<せかい>に。
303 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/12(土) 15:03:04.31 ID:iRavnM3AO
+
304 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/12(土) 15:03:22.94 ID:0BkWHjjV0
何だかよくわからないままに事が片付いてしまった。
そう思いながら、上条は両親と共に旅館へ戻った。
フィアンマはというと、上条詩菜―――つまり上条の母親に愛でられている。
詩菜「うん、かわいいわ」
ふぃあんま「……」むむ
髪の毛がセミロングと長さがあるからか、髪を結ばれていた。
結ばれたつやつやの髪は、兎の耳の様にたれている。
フィアンマはむすくれながら顔を上げ、上条を見上げた。
ふぃあんま「…かたづいたのか」
上条「ああ。ただいま」
ただ一人、話がわかっていない詩菜は首を傾げ。
上条はしゃがみ、フィアンマの髪を撫でる。
フィアンマは大人しく撫でられ、ほっぺたを膨らませるのだった。
305 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/12(土) 15:03:23.81 ID:iRavnM3AO
+
306 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/12(土) 15:04:00.11 ID:0BkWHjjV0
「やだー! やだやだやだー! おれさまかえらないー!! やー!」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 右方のフィアンマ
「……って事で、御坂さンよろしく」
学園都市第一位の『超能力者』―――― 一方通行
「……めっ、である」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 後方のアックア
「ロリコンに転向したの? ぶっ殺すぞ」
学園都市第二位の『超能力者・『未元物質』―――― 垣根帝督
307 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/12(土) 15:04:01.15 ID:iRavnM3AO
+
308 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/12(土) 15:04:33.29 ID:0BkWHjjV0
今回はここまで。
『異界反転』編は終了です。
309 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/12(土) 16:07:18.43 ID:i/+QQnoKo
おつ
310 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/12(土) 16:41:01.77 ID:fgOBOB0W0
乙
あ、家ぶっ壊れたりはしなかったのか、さすがオッさん
そういえば垣根どうなったんだろうなーと思ってたら意外と再登場早かったな
311 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/12(土) 16:55:54.68 ID:5ROOc4R0o
乙
最近描写がおかしくならないな•••(困惑)
312 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 00:02:46.36 ID:WK3Iv9Xpo
ああ^〜
313 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 13:36:00.80 ID:IbX16Blq0
>>310
おみやげのみ全て破壊されました
垣根くんは準レギュラー(?)予定です
>>311
必ずおかしくなるもんでもないんだよなぁ…(困惑)
投下。
314 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 13:36:11.55 ID:Jj+0OEyAO
+
315 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga !桜_res]:2013/01/13(日) 13:36:37.42 ID:IbX16Blq0
「…ん、…」
フィアンマの細く小さな指。
それが男性器にかかり、そのままぎこちなくしごいた。
潤滑油の代わりに垂らされるのは、小さな口から溢れる唾液だ。
ぬるついたそれは、カウパーと入り混じって白く染まる。
指の動きと同じように、ぎこちない舌の動きが、尿道口を刺激した。
「は、…ぁ…」
男が荒い息を漏らし、フィアンマは首を傾げる。
「いたいのか」
「いや、痛くない」
気持ちいい。
ともすれば下劣な表情で素直に言う男の様子に、フィアンマははにかんだ。
口いっぱいに男性器の先端を頬張り、アイスキャンディーにそうするかのように舐める。
ちゅ、と時折吸い付く動きは、誰から仕込まれたものなのだろうか。
「あ、やべえ出る、」
「ん、…うー」
不満そうな唸り。
腰や尻が痙攣して、どうしようもない。
こんな幼い子供に、こんなことをさせている。
罪悪感に基づく背徳の感情が、身体中を支配した。
ぶちまけた精液が、フィアンマの顔を汚した。
赤い髪は一部白に染められ、けほけほと噎せる度、その小さい口から精子が溢れ出す。
ぞくぞくとした快楽に身を震わせながら、男は手を伸ばした。
優しく撫でられ、フィアンマは嬉しそうにはにかんでみせて。
316 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 13:36:38.42 ID:Jj+0OEyAO
+
317 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 13:37:09.08 ID:IbX16Blq0
垣根「夢かよ。死ね」
起きてすぐにそう呟き、垣根は自分の下肢を見やる。
残念ながら精液で汚されていた。
穢したのはフィアンマでなく、布団だったという訳だ。
垣根「…はぁ」
そういえば最近仕事が詰まっていてヌいていなかった。
憂鬱に思い返しながら、垣根は洗濯を開始する。
垣根「…にしても」
『…こそばゆかっただけだ』
垣根「……、」
容姿もさることながら、性的いたずらをした際の反応。
そして、一方通行に見せていた笑顔の愛らしさ。
きゅん。
垣根(…あれ? 本格的に恋じゃねえの、これ)
衝撃を受けながらも、垣根はテキパキとシーツを干していく。
垣根「……、…ま、いいか」
別に、ショタを好きになることに抵抗は無い。
性欲の対象だけでなく、恋慕も伴うのであれば人間としてもまともである。
垣根「散歩すっかな…」
シーツが乾くには、時間が必要だ。
318 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 13:37:09.85 ID:Jj+0OEyAO
+
319 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 13:37:38.83 ID:IbX16Blq0
ミサカ20001号。
通称、最終信号。
或いは、打ち止め。
そのどちらにせよ、ニュアンスが違うだけで『ラストオーダー』と呼称される。
妹達の上位個体だ。
故に。
上位個体としてミサカネットワークに直接命令を下す事ができ、反乱防止用の安全装置として、肉体的に未完成のまま培養機で保管されていた。
外見年齢は10歳前後で、肩まである茶色の髪と同色の瞳、立派なアホ毛を持つ。
未完成のためか他の個体より感情表現が豊かな面がある。
天井亜雄の手を離れ、培養基から出された彼女は。
現在、学園都市第一位『一方通行』少年の隣で、クレープを食べていた。
ちなみにこの甘ったるいクレープは、打ち止めの戦利品なのであった。
打ち止め「うーん、とっても美味しいってミサカはミサカは大満足!」
一方「…そりゃ良かったな」
彼の相槌はどこまでも淡白だった。
何しろ、ロリには興味が無いのだ。
彼女にキャミソール等衣服一式を買ってあげた時も、クレープを買ってあげた時も実に作業的なのであった。
彼はというと、学園都市第三位、御坂美琴を待っている。
彼女は普通に学校へ通っているので、来るまでに時間がかかるのだ。
ぼんやりと暇を持て余していた一方通行に、誰かが声をかけた。
凶悪なる幼児性愛者…だった、垣根帝督である。
垣根「ロリコンに転向したの? ぶっ殺すぞ」
物騒な事を言う彼は無表情だった。
ちなみに彼は、ロリコンを心から嫌っている。
一方「ンな訳あるか。俺はフィアンマくン一筋ですゥ」
打ち止め「? この人はあなたのお友達? ってミサカはミサカは問いかけてみたり」
一方「友達…? …同じ趣味を持ってるっていう点では友人か…?」
悪友、といった感じではある。
一度刃を交えた分、わかりあっている部分が多い。
垣根「……あ? よく見たらこの子アレか。第三位の」
一方「ン」
『裏』繋がりで、垣根は推測する。
一方通行は何故知っているのだと思いながら、頷いた。
学園都市第三位が知っているのだ、第二位が知っていてもおかしくはない。
320 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 13:37:39.74 ID:Jj+0OEyAO
+
321 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 13:38:12.83 ID:IbX16Blq0
程なくして、御坂美琴はやって来た。
走って来たのだろう、息が切れている。
美琴「お、おく、遅れて、ごめ、っはぁ、なさ、」
一方「俺は暇だし、別に」
垣根「常盤台の電撃姫も、意外に普通の女子中学生だな」
美琴「はぁ…ふぅ。……?」
垣根「ああ、俺は垣根帝督。一方通行の友人(笑)とでも思っていてくれればいい」
美琴「…はぁ」
首を傾げながらも、御坂美琴は頷いて。
そういえば用件は、と問いかけようとして、ミサカ20001号を見た。
美琴「…えっと、」
打ち止め「ミサカ20001号、通称打ち止め<ラストオーダー>、初めましてお姉様ってミサカはミサカはぺこりと頭を下げてみる」
美琴「打ち止め、ね。よろしく」
本当の妹へ、そうするように。
御坂美琴は、打ち止めへ優しく微笑みかける。
一方通行は、そんな二人を見て、立ち上がった。
一方「……って事で、御坂さンよろしく」
美琴「は?!」
一方「いや、俺の住居は安全じゃねェし、御坂さンなら適当にツテもあンだろ。俺の持ってる繋がりに安全そうなのは見当たらないンで、後はよろしく頼むわ」
言うなり、彼はベクトル操作でひとっ飛び。
残された御坂美琴は、困惑しながらも、打ち止めの頭を撫でる。
気付けば、あの垣根帝督という新人ホスト染みたイケメンも居なかった。
美琴「……うん。まあ、…そうね。寮監に言えば…『あすなろ園』とのツテってことでいけるかしら…?」
戸籍とかどうしよう、と思う美琴。
見た目10歳児の0歳児は、首を傾げた。
打ち止め「ところでお姉様、あそこの優男風イケメンさんが声をかけるタイミングを窺ってるよ、ってミサカはミサカは報告してみたり」
322 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 13:38:13.70 ID:Jj+0OEyAO
+
323 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 13:38:43.59 ID:IbX16Blq0
上条当麻、今日も今日とて楽しい補習。
夏休み中にどうにか課題を終わらせたは良いものの。
悪友と三人で長々補習を終えた後、だらだらとゲーセンへ。
本当は早く帰るべきなのかもしれないが、フィアンマ曰く『たまにはゆっくりしてこい』らしい。
上条(ま、何でもいいか…)
幼く見えても、一人の時間が欲しい時だってあるのだろう。
そんなことを思いながら、上条は歩き進む。
青ピ「それでカミやんの家に来たんはロリやったっけ? ええなー、ボクんところにも降って来ぃへんかなぁ」
上条「ロリじゃねえよ」
土御門「ショタだよにゃー」
青ピ「ボクはショタも網羅してるんやけど、譲る気無い?」
上条「ある訳ねえだろ!」
ちょろっとー、ねえ、等と声が聞こえる。
その女の子はやがて、『待ってよ、ねえってば』などと言っている。
どこぞのカップルが待ち合わせでもしていたのか、と思い。
爆発しろ、などと内心で罵倒しながら、三人は歩いていた。
青ピ「神様は不公平やな、カミやんに寄越す女の子をもう少しボク等にも「待ってって言ってんでしょうが無視すんなやゴラァーッ!」」
土御門「にゃー?」
話の途中で。
上条は後ろからタックルしてきた女子中学生に、前のめりに押し倒された。
咄嗟に両手をつくが、正直言って痛い。
上条「は、はぁ…??」
美琴「ちょっとこっち来なさい」
言いながら、美琴は上条の手を引っ張って走る。
上左右から注がれる視線が痛くて、一生懸命に、彼女は走る。
324 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 13:38:44.40 ID:Jj+0OEyAO
+
325 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 13:39:08.94 ID:IbX16Blq0
美琴にアイスクリームを買ってもらい。
本来は、彼女と談笑する筈だった打ち止め。
海原と名乗る少年に追われるまま(というよりも逃げ出して)、美琴が走って行ってしまった。
大人しく待っていれば、恐らく彼女はぐるぐると回って戻ってくるだろう。
打ち止め「んー、これも美味しいってミサカはミサカは悦に浸ってみる」
小さな脚をぱたぱたと動かし。
彼女は、幸せそうにアイスを食べる。
そんな彼女は、ふと、困っている人を発見した。
打ち止め「何やらお困りですか、とミサカはミサカは問いかけてみる」
????「…道に迷っているのである」
打ち止め「慣れないと迷うものねー、ってミサカはミサカは…えっと、此処に行きたいの?」
????「そうなるな」
打ち止め「ルート的にはここから右に曲がって、真っ直ぐ進んで三番目の信号を左です、ってミサカはミサカは説明してみたり!」
ふふん、と得意げに薄い胸を張る打ち止め。
彼女から道案内を受けた男。
青系の長袖シャツを中心に、ゴルフウェアを連想させるスポーティな格好の茶髪白人は、静かな雰囲気のままに頷く。
????「助かった。礼を言うのである」
打ち止め「いえいえ、ってミサカはミサカは初めての人助けのドヤ顔を披露してみる」
326 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 13:39:09.93 ID:Jj+0OEyAO
+
327 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 13:39:28.97 ID:IbX16Blq0
右方のフィアンマは、外へ出ていた。
家事をやる気にはなれなかった。
というよりも、上条が片付けていってしまった。
その為、退屈を持て余していたのだ。
そんな彼は、ふと、周囲に人気が無くなった事に気がついた。
まるで用意されたかのように。人気が、無い。
眉を潜めるフィアンマの身体を、誰かがひょいと抱え上げる。
青系の長袖シャツ。
ゴルフウェアを連想させる、スポーティな格好。
茶色の髪。
白人。
静かな雰囲気。
ありとあらゆる面でフィアンマと対極に存在する、一人の傭兵。
後方のアックア。
彼はフィアンマを抱え、米袋のように背負っている。
フィアンマはじたばたと両手両足をばたつかせた。
アックア「帰還の時間だ」
ふぃあんま「やだー! やだやだやだー! おれさまかえらないー!! やー!」
アックア「……めっ、である」
呆れた様に叱り、彼は歩こうとして―――足を止めた。
ふぃあんま「……、…だれにやとわれたかはしらんが、まさかおれさまにかてるとはおもっていまい?」
空気が、変わる。
『人払い』の敷かれた空間の中、幼さに彩られた冷淡な声音が問いかけた。
ピリピリとした戦場らしい雰囲気<くうき>を感じ取りながら、アックアはフィアンマを見やる。
金色の瞳に、感情の色は無い。通行の邪魔をする害虫を見る様な、殺意。敵意ではない。
アックア「……私は仕事をしに来たのである」
ふぃあんま「そうか」
ならば、仕方ない。
『神の右席』に所属する魔術師同士の、苛烈な戦いが始まった。
328 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 13:39:29.84 ID:Jj+0OEyAO
+
329 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 13:39:46.01 ID:IbX16Blq0
御坂美琴の偽装デート(つまり、偽恋人役)。
報酬は美味しい高級ホットドッグ。
何だかなぁ、と思いながら、上条は今日も今日とてそこはかとなく不幸だった。
ホットドッグを食べ終え、御坂美琴が本を買っている間。
外に立たされていた上条当麻は、海原と名乗る少年から襲撃を受けた。
ひとまず人通りの少ない場所へ逃げ出し、上条は走る。
目的はわからない。ただ一つ、自分を殺そうとしていることは理解出来た。
上条「ッ、何なんだよ…!」
海原「諸事情ありましてね。貴方には死んでいただく必要が生じてしまったんです」
光が飛ぶ。
上条の近くにあった自動車が、バラバラに解体された。
上条(な、何だ…? 能力、じゃないっぽいな。ということは魔術…)
走る内に、何かの建設予定地へ迷い込んだ。
鉄骨の張り巡らされた場所で、言葉が交わされる。
上条「お前、ビリビリに声かけてた奴だろ? 見たら大体わかるけど、お前ビリビリが好きなんじゃないのか」
海原「…好きですよ。任務だとわかっていても、無闇に話しかけたくなるほどに」
上条「……、…何で、俺を殺そうとする」
海原「貴方を殺せば、繋がりが絶たれるからです。勢力を破壊しなければいけませんからね」
上条「…繋がり?」
海原「ええ。あの少年は、貴方が居るからこそ学園都市に居る。であるならば、貴方を消せば万事済みます」
上条「あの、少年。…フィアンマの、ことか」
330 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 13:39:46.83 ID:Jj+0OEyAO
+
331 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 13:40:13.89 ID:IbX16Blq0
後方のアックアを倒し。
バチカンへ戻れる程度の体力を残すだけ(即ち最低限)のダメージを与えたフィアンマは、悠々と歩いていた。
途中不意打ちで膝を擦りむいてしまったが、治療する気力がない。
そんな彼は、二人の超能力者を発見して声をかけた。
ふぃあんま「おい」
一方「あン? おォ、フィアンマくンか」
垣根「ああ、お前か。…あ? 膝擦りむいてるな」
垣根はしゃがみ、フィアンマと視点を合わせる。
不意にひょいと抱えると、休憩用ベンチに座った。
一方通行も当然ながら、垣根の隣に座る。
そして、心配そうにフィアンマの膝を見た。
一方「ァー…コケちまったのか?」
ふぃあんま「そんなようなものだ」
実際には回避行動の最中に失敗したのだが。
垣根は考える素振りを見せ、フィアンマの膝にぺたりと触る。
垣根が次に手を離した時、そこにはもう傷は無かった。
ふぃあんま「む」
垣根「問題ねえな」
一方「…オマエの能力ってそォいう使い方出来ンのか」
垣根「やったことはなかったけどな。可能性の獲得って訳だ」
肩を竦め、垣根は息を吐き出す。
彼の『未元物質』は、人体の再生・生成にも応用出来るようになったようだ。
愛する者を獲得したかどうか、それが過去の垣根帝督との違い。
ふぃあんま「れいをいう」
垣根「どういたしまして。ついでにデートする?」でれでれ
ふぃあんま「やー」
垣根「ちくしょう」でれでれ
一方(野郎……)
一人の少年、及び同じ趣味で繋がれた一方通行と垣根は、やはり、友人の定義からやや外れる。
332 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 13:40:14.71 ID:Jj+0OEyAO
+
333 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 13:40:39.04 ID:IbX16Blq0
鉄骨降り注ぐ中。
海原を庇った上条はしかし、運の良い事にたったの一本も鉄骨がその身体に突き刺さることは無かった。
全て、奇跡的に上条の身体を避けて地面に突き刺さったのだ。
否、違う。
常に不運である上条が幸運にも免れるなどということは、ありえない。
上条(ビリビリ中学生が…どうにかしたの、か…?)
海原「……貴方自身も、強力です、ね」
上条「…別に、俺の力だけじゃねえよ」
のろのろと起き上がり、立ち上がった上条は、自分の服に付着した汚れを手で払う。
海原「あなたに…お願いが、あります」
上条「…何だよ」
海原「偽物の、自分では。彼女を、守ってあげられません。……自分の代わりに、…御坂さんを、守ってくれませんか。御坂さんと、…御坂さんを取り巻く世界を」
海原光貴の偽物。
フィアンマと、上条を取り巻く勢力を壊す為に送られてきた刺客。
御坂美琴を心から大切に思う、一人の男。
彼の瞳は、上条の知る『誰かさん』と同じだった。
頼まれ過ぎだな、と思いながら、上条は笑んでみせる。
上条「頼まれるまでもなく、俺は御坂美琴を守るよ。勿論、その周囲の世界だってな。当たり前のことだろうが」
海原「は、…最低の…返事だ…」
二人の会話を聞いていた一人の女子中学生は、口ごもって本を胸に抱えた。
美琴(ち、違う…きっとアイツは誰にでもそういう事を言うヤツなんだから…! な、何よ、普段はビリビリとか呼んでるクセに…)
334 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 13:40:39.96 ID:Jj+0OEyAO
+
335 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 13:40:56.05 ID:IbX16Blq0
今回はここまで。
336 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 15:06:10.17 ID:aqsGOBF00
乙
なんというぞんざいな通行止め
>ロリコンを心から嫌ってる
男のショタコンの方が業が深いんじゃないでせうか……
337 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 16:38:03.66 ID:T26JW7XCo
ふぅ•••けしからん実にけしからん乙
338 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 16:57:10.56 ID:WLMffTpd0
乙
ここにロリの居場所はないんだな・・・
339 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 22:01:12.57 ID:snX2WcY5o
錬金術師「ろりこんはしぬ」
340 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 22:47:38.23 ID:Z5eUt/f30
>>336
一方さん誰も殺してないので負い目が無いんですよね…
垣根くん曰く幼女は未成熟な女だから手を出すべきではないそうです
>>338
ショタ及びフィアンマさんが主人公の世界。これが
>>1
のスレ。
ここは原作の知る空間じゃねえんだよ
>>339
ブーメランだよ死んじゃうよー><
投下。
341 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 22:47:49.67 ID:Jj+0OEyAO
+
342 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 22:48:02.64 ID:Z5eUt/f30
九月一日。
上条は、始業式を終えて学校から出た。
歩いて向かうのは、公園だった。
てくてくと歩いて進むと、フィアンマは誰かと会話をしていた。
長いストレートヘア。
一房だけ束ねられた髪。
知的な眼鏡(ややずり落ち気味)。
かなりの巨乳。
そして、制服を着用している。
上条「おーい」
声をかけると、二人共振り向いた。
??「……」
ふぃあんま「おそかったな」
上条「そうか? そういえば、そっちの子は?」
風斬「ぁ…風斬…氷華、です…」
上条「風斬か、よろしくな」
ふぃあんま「くうふくだ」
上条「はいはい、ご飯ね。あ、風斬も一緒に来いよ」
風斬「……」
良いのか、といった様子で彼女は首を傾げる。
上条は勿論、と笑みを浮かべて、進んでいく。
月始めということで、奨学金が手に入った。
なので、上条は風斬に食事を奢ってもまったくもって腹が痛く無いのである。
343 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 22:48:03.53 ID:Jj+0OEyAO
+
344 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 22:48:17.07 ID:Z5eUt/f30
そんな訳で、三人はとある食堂へやって来た。
正確には食堂レストランである。
提供されている料理は、各学校の給食。
チケット制で、チケットは機械で購入する。
その際にカロリーや食品を指定すれば、ローカロリーのものやアレルギー症状の出ないものが提供される。
また、学校名を入力して、その学校の給食を食べる事も出来る。
メニューを見るだけでもまあまあ楽しめるので、そこそこに混んでいた。
普通の給食よりもお高めなのは、大量生産出来ないことによるデメリットらしい。
上条「んー、いっぱいあるな」
ふぃあんま「うー」
上条「あ、手が届かないのか。よいせ」
上条はふぃあんまを抱え、パネルを押させる。
そして思い出したように風斬を見た。
上条「風斬はどうするんだ? あ、出来れば1000円以下でお願いしたいけど」
風斬「私は…えっと…」
彼女は手を伸ばし、入力していく。
ランキング一位の座にあるそのメニューは、きわめて一般的な内容だった。
牛乳、コッペパン、ヨーグルト、ジャム、マーガリン、コーンスープ、アジフライ。
一般的すぎてつまらないのでは、と思う上条。
だが、風斬はそれで満足らしい。
上条「フィアンマは?」
ふぃあんま「む…」
トマトパスタとコーンスープ、牛乳、ヨーグルトサラダ。
洋風であることに納得しながら、上条も適当に選ぶ。
345 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 22:48:28.65 ID:Jj+0OEyAO
+
346 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 22:48:40.52 ID:Z5eUt/f30
ふぃあんま「あー」あーん
上条「当然の様に…まあいいか…」
小さく開けられた口にカツ丼を押し込んでやり。
咳き込むなよー、と簡単に注意しながら、上条は食事を進めていく。
上条「風斬はヨーグルトが好きなのか?」
風斬「…ううん…食べたの…初めてで…」
上条「そっかそっか」
適当に選んだんだろうな、と思いながら上条は食べていく。
給食用のカツ丼というだけあって、ボリュームは足りない。
サイドメニューで補っているらしいのだが、このコールスローサラダは上条の口に合わなかった。
上条「…コールスロー食べるか?」
ふぃあんま「ん、」あーん
上条「はい、あーん」
風斬「…仲良し…なんだね…」
上条「そうか?」
ふぃあんま「…いまじんぶれいかー」あーん
上条「はいはい」
兄弟の様な二人の様子を眺め、風斬はのんびりと微笑んだ。
347 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 22:48:41.34 ID:Jj+0OEyAO
+
348 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 22:49:01.90 ID:Z5eUt/f30
三人は食事を終え、地下街へとやって来た。
何をしに来たのかというと、ゲームセンターへ遊びに来たのである。
ふぃあんま「む、」
上条「いやいや待て待てダメだってこんなところで『あの腕』出すんじゃありません!」
ふぃあんま「うー!」
上条「うー、じゃないの!」
パンチングマシーンで『第三の腕』の実力を試そうとするフィアンマを必死に牽制する上条。
風斬はそんな二人の様子にくすくすと笑った。
上条「あ、風斬は何かやりたいゲームあるか?」
風斬「初めて来たから…えっと…うーん…」
彼女が指差したのは、パズルゲーム。
落ちモノパズルも、やるのは初めてらしい。
ゲームセンター一周。
流石に調子に乗りすぎた影響で、上条の財布はいやに軽かった。
上条「…うん…まぁ、…いいか…いいよ…」
フィアンマも風斬も楽しんでたし、と項垂れる上条。
風斬は言葉をかけようと、して。
ぐらり、と地面が揺れた。
警備員の怒号が響く。避難勧告のようだ。
上条「フィアンマ、」
上条は、携帯電話を投げる。
フィアンマは大人しくそれを受け取った。
上条「俺はちょっと話聞いてくる。フィアンマは先に地上に行ってくれ」
ふぃあんま「…すぐくるか?」
上条「すぐ行くよ」
困った人は助けずにいられない習性。
それこそが、上条当麻の本質の一つ。
彼が走っていく中、風斬も上条を追っていった。
ただ一人、携帯電話を預けられたフィアンマは、少しだけ迷って、地上へ出るのだった。
349 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 22:49:02.77 ID:Jj+0OEyAO
+
350 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 22:49:22.81 ID:Z5eUt/f30
九月一日。
バックの組織を完全に喪ったとはいえ、一方通行は自由人だった。
籍を置いているだけの学校に行くつもりはないし、家に居ても襲撃されるだけ。
それならば日中は外に出て暇を潰そう。
そんな訳で、一方通行は退屈を持て余して、クレープ屋のワゴン前、椅子に腰掛けていた。
ふぃあんま「にゃー」
一方「ン、」
てとてと、と近寄ってきたフィアンマに、一方通行は自然な笑みを浮かべる。
小さな手には、携帯電話が握られていた。上条の物だ。
一方「幻想殺しさンはどうしたンだ」
ふぃあんま「そのことでたのみがある」
一方「頼み?」
ふぃあんま「いまじんぶれいかーがきけんちたいへあしをふみいれている。たすけてくれ」
一方「…わかった」
赤い瞳が据わる。
彼は立ち上がり、フィアンマの身体を抱え上げた。
そんなフィアンマの手にしている携帯電話に、電話がかかってきた。
ふぃあんま「いまじんぶれいかーか」
上条『ああ。ビリビリ…って言ってもわかんないよな。友達の携帯を借りてる。フィアンマ、無事逃げ切れたか?』
ふぃあんま「もんだいない」
言いながら、フィアンマは一方通行へ指で道案内をする。
向かう先は、地下街。
逆戻りするのは、上条を助ける為だ。
上条『多分能力じゃないと思う…から、襲撃者が使ってる魔術について聞きたいんだけど、大丈夫か?』
ふぃあんま「はなせ。かいせきしてやる」
351 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 22:49:23.86 ID:Jj+0OEyAO
+
352 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 22:50:20.61 ID:Z5eUt/f30
「……そういって、ぱぱもいなくなったんだ」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 右方のフィアンマ
「この俺が後方支援、ねェ…」
学園都市第一位の『超能力者』―――― 一方通行
「わ、たし…バケモノ、なんですよ…?」
虚数学区の一部―――― 風斬氷華(かざきりひょうか)
「戦争の火種が必要なのよ」
『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属の魔術師―――― シェリー=クロムウェル
「俺は、フィアンマに傷ついて欲しくなかったんだよ」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
353 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 22:50:22.11 ID:Jj+0OEyAO
+
354 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/13(日) 22:50:45.02 ID:Z5eUt/f30
今回はここまで。
エロネタお待ちしてます。
355 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 23:07:35.98 ID:T26JW7XCo
乙
アクセラをショタ化させて3P•••ふぅ•••
356 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/13(日) 23:15:17.10 ID:4d01G2UC0
今見つけたが、ま た お ま え か
フィアンマ愛しすぎだろ……
357 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 00:52:17.76 ID:vDYghZzV0
乙
幻想殺しと一方通行がタッグで迎撃、さらには聖なる右も控えてるとか
この学園都市に襲撃かけるのは無理ゲーすぎるな…
358 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 10:43:41.24 ID:Aqpxgg9s0
>>355
うっ…ふぅ…
>>356
フィアンマSSが無いのが原因なんです…
原作でモテモテ♂なんです、仕方ないですよ
>>357
繋がりを勢力と見ればアレイスター倒せそうですよね
投下。
359 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 10:43:42.62 ID:aUQhxr1AO
+
360 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 10:44:06.35 ID:Aqpxgg9s0
襲撃者は、魔術師だ。
何故完全にわかったかというと、相手方が名乗ったからだ。
彼女の名は、シェリー=クロムウェル。
魔法名は、『我が身の全ては亡き友のために(Intimus115)』。
荒れた金色の髪と、別の国の血を引いたような褐色の肌。
擦り切れたゴシックロリータを着用している。
年齢は二十代後半だろう。
状況をやや早口で伝える上条に対し、フィアンマによる解析結果が伝えられた。
禁書目録程までとはいかずとも、彼にはそれなりの知識がある。
曰く、ゴーレム(人の形を模した土人形)。
人間ではなく天使を模すことでより強化されている。
高い防御力と怪力を誇り、壊しても周囲の物体(生物含む)を吸収して再生。
完全消滅させても術者がいくらでも作り直せると言う極悪な魔術。
目だけを大量に作り偵察に使うといった応用もある。遠隔操作・視聴覚共有も可能。
弱点は内部に隠された"シェム"という安全装置で、これを軽く指で拭っただけで機能を停止してしまう。
全身形態を2体以上作ると崩壊してしまうが、それを逆手にとって地盤崩落を引き起こしたり、人体を溶かしたりといった応用も可能。
上条『わかった! 俺の右手で触れば壊れるか?』
ふぃあんま「こわれはするが、あまりすすめはせんぞ。のみこまれればさいごだ」
右手を残して人体を溶かされては元も子もない。
そんな注意勧告にぞっとしながらも、上条は走っていく。
途中、御坂美琴や、その後輩である白井黒子という少女に出会ったのだが、はぐれてしまった。
御坂美琴は超能力者なので白井という少女は問題無いだろうが、心配なのは風斬だ。
『幻想殺し、風斬…かぜ? ま、どっちでもいいわ。殺せればいいんだしよ。どちらにしようかしら?』
あの女は、そう言っていた。
風斬の能力は知らないが、襲われればひとたまりもないだろう。
何しろ、武装済の警備員が怪我をする程なのだから。
上条は一度通話を保留にし、ポケットへ突っ込む。
ようやく、風斬を見つけた。
上条「風斬ッ!!」
風斬「あ、」
上条を見るなり、風斬は泣きそうな顔をした。
まるで、迷子が親を見つけたかのような表情だった。
ひとまず、まだどこも怪我をしていない。
良かった、と駆け寄る上条の視界に。
―――腕を振り上げる、土人形(ゴーレム)が、見えた。
361 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 10:44:07.46 ID:aUQhxr1AO
+
362 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 10:44:24.01 ID:Aqpxgg9s0
一方通行は、地下街へ到着した。
完全に封鎖されている。
警備員数人に引き止められたが、その程度で留まる第一位ではない。
学園都市内で彼の歩みを止められる者等、物理的にはほぼ存在しない。
一方「幻想殺しさンは何処に居るンだ…?」
ふぃあんま「わからん。じょうきょうをきくかぎり、おとのはんきょうぐあいからみてだいぶおくのほうではあるだろうが」
一方「現状より封鎖されている方か」
地面を一度蹴り、ベクトル操作によって莫大な移動力を得る。
相手が一方通行だという予測はしているのだろうが、声がかけられる。
危ないから此処から退避しろ、という言葉だった。
一方通行は億劫そうにその女警備員を見やり、ため息を漏らす。
フィアンマはというと、応急処置に追われる警備員を見た。
ふぃあんま「あくせられーた」
一方「あン?」
ふぃあんま「こうほうしえんをたのめるか。もくてきちにはとうちゃくした」
彼の視線は、真っ暗な奥の方へ向けられている。
そこに上条が居るのか、或いは手がかりを発見したのか。
一方通行は迷うも、フィアンマの強い意思を宿した瞳に頷いた。
一方(タクシー代わりだなァ)
思いながら、一方通行は警備員の言葉を無視して応急処置を手伝った。
一方「この俺が後方支援、ねェ…」
昔の自分が見たら卒倒モノだ。
そう思いながら、一方通行はテキパキと処置を手伝い。
フィアンマが走っていくのを追いかけようとする警備員に対しては、制止する。
彼の能力は守る事には向いていないものの、防衛"戦"ともなれば話は別だ。
363 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 10:44:25.09 ID:aUQhxr1AO
+
364 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 10:44:42.18 ID:Aqpxgg9s0
間に合わなかった。
上条が間に立つまでもなく、腕は非情にも振り下ろされた。
その腕は風斬の頭に直撃し、風斬は何処までも吹っ飛ばされる。
「あ……か、ざ…風斬いいいいいいいい!!!」
思わず、絶叫した。
まだ自分は直撃させられたことが無いから、上条にはその痛みはわからない。
その威力は、正確にはわからない。
だが、細い身体が紙切れの様に吹っ飛ばされる一撃だ。
死の一文字が頭に過ぎり、上条は風斬へ走り寄る。
だが、そこには上条の思っていた惨状など、存在しなかった。
彼女の側頭部、抉れているそこは、出血や脳の露出ではなく。
ただ、空虚。
まるで、3DCGのキャラクターか何かのように。
上条は安堵すれば良いのか、困惑すれば良いのか、迷った。
風斬は、自分の頭を触り、次にガラスを見る。
普段は喫茶店の壁として機能するそれは、残酷な鏡だった。
「え……?」
風斬は、ガラスを見つめた。
出血していない。
頭蓋の中身も、こぼれていない。
無傷という訳でもない。
ただ、そこにある、謎の空虚。
少なくともそれは、彼女が人間ではないことを表していた。
「あ、あああ、………ああああああああああああ! いやああああああああ!!」
パニックを起こし、彼女は這いずる様に立ち上がる。
そして、恐慌状態のまま走って行ってしまった。
「…何だ、……今の…?」
疑問と心配を同居させて思う上条は、ゴーレムと対峙する。
まずはこれを倒さないことには、風斬を助けに行く事が出来ない。
ゴーレムを操る本人、シェリーのくすくすという笑い声が聞こえた。
『何だ、バケモノだったのか』
「……撤回しろ」
『あん?』
「風斬は、バケモノじゃない。撤回しろ」
上条は拳を握り締め、挑戦的に言い放つ。
365 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 10:44:42.94 ID:aUQhxr1AO
+
366 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 10:45:00.52 ID:Aqpxgg9s0
思えば、全てがおかしかった。
一度も食事をしたことなんて、無かった。
それなのに、どうしてチケットの購入方法に戸惑わなかったのか。
初めてゲームセンターへ行った。
ロクに説明も受けていない状態で、戸惑わなかった。
思い出す。今まで、自分はどうやって生きていたのか。
風斬氷華がジュースを買えば。
そのジュースを購入する為の自販機が稼働する。
自販機に搬入する為に業者が動く。
その取引によって、周囲へ影響する。
風斬が何もしなければ、何も起こらない。
それはまるで、彼女が世界の支配者のようで。
彼女が何をしてもしなくても、世界が変わっていってしまうから。
風斬は、怖くなった。
自分の居た『陽炎の街』が恐ろしくなって、逃げ出した。
そうして無意味に彷徨っていたら、一人の男の子から声をかけられた。
『……まいごか?』
自分は、迷子だったのかもしれない。
帰る場所も、向かう場所もわからないままに。
ああ、そうか。
自分は、人間ではなかったのだ。
人間のフリをした、怪物だった。
そのことに、ようやく気づいただけなのだ。
風斬は、誰からの説明を受けることなく、悟る。
自分は、何かの集合体によって造られたもの。
例えばそれは、AIM拡散力場。
体温は、炎使いが。
生体電気は、雷使いが。
感情は、心理系能力者が。
エトセトラ。
それぞれを担当して、きっとあの街の本質は造られた。
だとするならば、自分もきっとそうだと考えた方が妥当だろう。
『風斬はどうするんだ? あ、出来れば1000円以下でお願いしたいけど』
『かざきりひょうか、だったか。ふむ、ぱずるがうまいな』
『風斬はヨーグルトが好きなのか?』
『おれさまとおまえはすでにゆうじんとこしょうされるべきあいだがらだとおもっていたが』
『友達なんてそんなに気難しく考えるモンじゃないんですのことよ』
友達だと、言ってくれたのに。
笑ってくれて、一緒に遊んでくれたのに。
彼らを裏切る様な事態に、陥ってしまった。
頭が抉れた時、上条はどう思っただろう。
怖かっただろうか。気持ち悪いと、思っただろうか。
ぽたぽた。
涙が零れていくのを自覚しながら、風斬は立ち止まる。
バケモノでも。
むしろ、バケモノなら。
彼らを守らなければ。
殴られても死なない自分は、殴られたら死んでしまう彼らの前に立つべきなのだ。
怖がられても気持ち悪がられても拒絶されたとしても。
一度、お前は友達だよと笑ってくれた、少年達のために。
367 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 10:45:01.45 ID:aUQhxr1AO
+
368 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 10:45:28.96 ID:Aqpxgg9s0
「戦争の火種が必要なのよ」
女の声が、響く。
ゴーレムに殴り掛かられ、上条は咄嗟に右拳を突き出した。
一時的にゴーレムが泥となって弾け、その間に後退する。
「わざわざ戦争を起こす必要なんざねえだろ」
「あるわ」
オイルパステルで、空中に何かが綴られた。
上条は自分を転ばせる様に、倒れる。
そのまま右に転がって攻撃を避けながら、息を切らした。
「20年ほど、昔にね。学園都市とイギリス清教のそれぞれ一部で起こった、『新たな能力者を作り出す』実験があったんだよ」
乾いた声。
それはむしろ、激情を抑え込んでいる様に思えた。
「私の友達は、…エリスはね。その実験の被験者だったんだ」
「……、」
「魔術と超能力を、共に使いこなす者を作り出そうとしたの。愚かなことにね」
「…超能力者は魔術を使えない…」
呟いて、上条ははたと気がつく。
そもそも、その事実がわかったのは何故か。
「私はイギリス清教から派遣されて、エリスに魔術を教えた」
「………」
「その教えた術式のせいで、エリスは血反吐を吐いて苦しんだ」
言うまでもなく、拒絶反応だ。
上条は魔術を行使した超能力者について心当たりは無いが、フィアンマと話している最中に悲惨な死に方をすると教えられた。
「……『騎士団』が乱入にしてきて、被験者は私を除いて全滅したんだ。エリスは、私を逃がそうと魔術を行使した。でもね、それで拒絶反応を起こしたの。そうやってもたついている間に、騎士のメイスで殴打されて…殴り殺された」
「………」
「私たちは住み分けするべきなのよ」
いがみ合っていたから生まれるのが、悲劇ではない。
仲良くしている中から、悲劇が生まれる事だってある。
故に、戦争を起こす。
或いは、戦争が起きてしまいそうな程に関係を悪化させたい。
「これ以上悲劇を起こさない為にも、もう二度と馴れ合いたいなんて思わない様に!」
彼女は、"友を失いたくなかった"という考えを根幹に無数の信念を持つ。
だから、上条の気持ちがわからない訳ではない。
魔術と科学がそれなりに仲の良い世界でも良いじゃないか、と。
かつて、エリスと仲の良かったシェリーは、事実そう思っていたから。
「ッ、お前は、間違ってる!」
「わかってる! でももう、どうしようもないんだよ!」
地面がぐらつく。
バランスを崩した上条は、右手を突き出した。
このままでは、ゴーレムに殺されてしまう。
飲み込まれる、と目を見開く上条の前に、誰かが立った。
先程逃げ出した、風斬氷華だった。
「……大丈夫?」
彼女は、細腕でゴーレムを食い止めている。
泣いていたのだろう、涙にやや濡れた声で、風斬はそう言った。
ゴーレムの攻撃を受け止められる時点で、まともではない。
そう自覚する度、そしてこの状況を上条に見られていると思う度、泣きそうになった。
369 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 10:45:29.97 ID:aUQhxr1AO
+
370 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 10:45:50.07 ID:Aqpxgg9s0
「風斬、ありがとう」
危ないから、退いてくれ。
そう言う上条の目には、迷いが無い。
風斬は、上条の様子に泣きそうなまま、首を傾げた。
「わ、たし…バケモノ、なんですよ…?」
だから、ここは自分に押し付けて逃げて欲しい。
そんなことを思っていた風斬に、上条は首を横に振る。
そして、どうにか立ち上がると、ゴーレムを見据えた。
「バケモノなんかじゃねえよ」
上条の知り合いには、バケモノと呼称されそうな人間が沢山居る。
手が触れただけで、血液を逆流させることの出来る能力者だとか。
両の腕とはまた別に、猛禽類の様な腕を生やす少年だとか。
何より、上条自身も異能の力を消し去る妙な右腕を持っている。
「飯を食べて美味しいって笑えて、ゲームして難しいって悩んで、友達を守ろうとする女の子が、バケモノな訳ねえだろ。お前は、俺とフィアンマの友達だよ。それは、何があったって変わらないし、変えられないんだ」
迷い無くそう言い切って、上条は後ろを見やる。
十数人の警備員が居た。
彼等は、上条達以上に覚悟がある。
死ぬ気でゴーレムを止めるのではなく、死んでも止めるという、覚悟。
これ以上学生を傷つけさせる訳にはいかないという、優しい勇気。
「だから風斬、お前は警備員に庇ってもらってくれ」
自分は、大丈夫だから。
言って、彼は風斬と立ち位置を変わる。
呆然とする風斬を、警備員が自分達の方へ迎え入れた。
上条のことも迎え入れようとした彼等を突っぱねて、上条は走っていく。
標的は、上条と風斬。故に、ゴーレムは上条を追った。
371 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 10:45:50.87 ID:aUQhxr1AO
+
372 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 10:46:33.35 ID:Aqpxgg9s0
上条『っ、もしもし!』
ふぃあんま「にげているのか」
上条『ああ。ゴーレムに追われ、げほっ、追われてる! 魔術師は見当たらない』
ふぃあんま「じどうせいぎょにきりかえたのか…?」
会話しながら、フィアンマは迷い無く進んでいく。
電話の向こう側の音を聞き取りながら、上条の現在地を探る。
ゴーレムが自動制御ならば、術者はフリー。
となれば、オイルパステルの類で記号を刻んでいる事だろう。
術者は地上に居る。
そちらを倒した方が良いかとも思うも、上条がその間に殺される恐れがある。
走って、ようやく見つかった。
壁際まで追い詰められた上条は、どう逃げるか悩んでいる。
対して、ゴーレムは鈍重ながらも重い一撃を加えようとしていた。
魔力の流れを観測した上で、完全自立ではないと判断する。
そそて、フィアンマはひとまず突発的に言葉を発した。
C R B B F T T N A T W I T O D
ふぃあんま「右方へ変更。両足を交差、首と腰を逆方向へ回転」
ゴーレムは拳を右側の壁へぶつけ、両足を不気味に交差した。
その状態で、首や腰が正反対方向へ向く。
当然、まともに動ける訳もなく、ゴーレムはもぞもぞと動いた。
上条はその間にゴーレムの攻撃範囲から逃げ出し、フィアンマに駆け寄る。
373 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 10:46:34.52 ID:aUQhxr1AO
+
374 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 10:46:44.61 ID:Aqpxgg9s0
上条「お前、…何で戻って来たんだよ!」
思わず、怒鳴った。
だが、瞳には怒りよりも心配の色が濃い。
上条「俺は、…俺は、フィアンマに傷ついて欲しくなかったんだよ」
だからこそ、危険地帯から逃亡させたのに。
フィアンマは視線を不安定に彷徨わせる。
右方のフィアンマとしてではなく、一人の子供としての顔だった。
ふぃあんま「……そういって、ぱぱもいなくなったんだ」
上条「…、……」
上条は、思わず沈黙する。
傷ついて欲しくないから、遠ざける。
フィアンマの父親と同じ手法だ。
なるほど、さぞ不安になったに違い無い。
上条は手を伸ばし、フィアンマを一度強めに抱きしめた。
上条「……ごめんな。助けに来てくれて、ありがとう」
ふぃあんま「……」
うー、と唸って、フィアンマは上条の肩に顔を埋めた。
上条はそのままフィアンマの頭を撫で、階段を見やる。
誰かが、降りてきた。
シェリー「また面倒なことを。…ま、いいか」
彼女は、魔法陣の上に立っていた。
シェリー「地は私の味方。しからば地に囲われし闇の底は我が領域」
消え失せろ。
呟く様に歌って、彼女はオイルパステルを振る。
対して、上条は身構えた。
フィアンマは上条の肩に顔を埋めたまま、右手を振った。
シェリーを守るゴーレム、魔法陣、一切合切を含めて吹き飛ばされた。
上条「…フィアンマ…?」
ふぃあんま「………」
誰かの為に、『第三の腕』を使った。
右方のフィアンマにとって、初めてのことだった。
上条が殺されるという考えが緊張を呼び起こしたのか、フィアンマの手は僅かに震えていた。
ふぃあんま「…これいじょううしなうわけにはいかない」
上条「……ありがとな。後、ごめん」
375 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 10:46:45.56 ID:aUQhxr1AO
+
376 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 10:47:08.53 ID:Aqpxgg9s0
シェリー=クロムウェルはイギリス清教所属。
その為、警備員に引っ捕えられた後、彼女はイギリス清教へと明け渡された。
上条はフィアンマを抱えたまま、地下街出口までやって来た。
上条「あれ? 一方通行?」
ぽんぽん、とフィアンマを抱っこしたままあやし、上条は首を傾げる。
対して、白い超能力者は退屈そうに応えた。
一方「後方支援は終いだ」
ふぃあんま「ごくろう」
上条「…?」
首を傾げる上条に甘えつつ、フィアンマはそう傲慢に言い放って。
一人の少女に視線を移した。
ふぃあんま「かざきりひょうか」
彼女の本質について。
科学産の天使だということについて、気づきながらも。
敢えて名前としての呼称で呼び、フィアンマは手招いた。
風斬はおっかなびっくりといった様子で、三人に近寄る。
風斬「……、…わ、…私…」
上条「怪我、してないか?」
普通の女の子へ、そうする様に。
上条は心配の色のこもった言葉を、優しく投げかける。
風斬は視線を彷徨わせ、また泣きそうになって、一度だけ、頷いた。
377 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 10:47:09.43 ID:aUQhxr1AO
+
378 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 10:47:27.94 ID:Aqpxgg9s0
風斬と別れ。
うつらうつらとするフィアンマをあやしながら、上条は一方通行から話を聞いた。
素直に逃げたのは、一方通行へ助けを要請する為。
しかし、警備員が困っているのを見、そちらの方を頼んだ。
故に、後方支援。
上条「何か、巻き込んでごめんな」
一方「暇だったしなァ」
肩を竦め、一方通行はフィアンマを見やる。
上条に抱っこされて落ち着いているのか、眠いらしい。
一方「問題は片付いたのか?」
上条「完全に、な」
出来る事なら、シェリーとゆっくり話すべきだった。
思いながら、上条はフィアンマの背中を摩る。
上条「今日は疲れちゃったな」
ふぃあんま「…む…」
上条「寝ても良いんだぞ」
柔らかな頬を撫で、上条はのんびりと笑む。
フィアンマは小さく頬をふくらませ、ふるふると首を横に振った。
379 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 10:47:28.91 ID:aUQhxr1AO
+
380 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 10:47:45.14 ID:Aqpxgg9s0
上条とフィアンマと別れ。
家に帰るのも億劫で、一方通行は退屈そうに歩いていた。
ホワイトリスト形式で『反射』している彼には、入浴などの必要性が無い。
また、地面で寝ても不潔ではない。正直、家は落ち着くという概念があまり無いのだ。
一方(暇だな)
そして、退屈だ。
思いながらてくてくと歩いていると、声をかけられる。
垣根「よお」
一方「オマエかよ」
垣根「あ? 誰なら良かったんだよ」
一方「別に誰でも」
肩を竦め、一方通行は欠伸を呑み込む。
一方「ンで、何か用か?」
垣根「ショタゲー作ったから家に来いよ」
一方「ショタゲー?」
垣根「ああ」
一方「わざわざプログラミングしたのか?」
垣根「おう」
一方「才能の生かし所が間違ってンだろ、それ」
垣根「馬鹿だなお前、現実がダメなら二次でどうにかするしかねえだろ」
381 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 10:47:46.05 ID:aUQhxr1AO
+
382 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga !桜_res]:2013/01/14(月) 10:48:10.72 ID:Aqpxgg9s0
一本の男性器に、小さな手が四本かかる。
ぎゅ、と握って、そのままのろのろと扱いた。
「きもちィ?」
「ん、…こう、か…?」
幼くあどけない瞳。
二つは、透き通った金。
もう二つは、赤。
垣根は手を伸ばし、二人の頭を撫でた。
小さな口が、慣れない様子で男性器へくっつけられる。
ピンク色の舌が、ちろちろと裏筋を舐めた。
「上手だな、」
「ん、ん…」
「は…、…ン、ゥ」
先走りが溢れ、彼らの顔と手を汚す。
・
・
・
383 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 10:48:11.75 ID:aUQhxr1AO
+
384 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 10:48:42.31 ID:Aqpxgg9s0
グシャアッ
垣根「あっ」
一方「ぶち殺されてェのか、オマエェ…?」
垣根「何だよ、ちょっとした遊び心だろうが。あーあー…」
パソコンのモニターは、一方通行の一撃を受けて半壊した。
やれやれ、と肩を竦める垣根帝督。
モニターなど、いくらでも買い換えれば良いので、困らない。
困らないからこそ、そこに怒りは無い。
一方「フィアンマくンモデルはともかくまァ気持ちはわかるにしても、何をどうしたら俺をショタ化してヒロインに出来るンだ…? 頭診てもらえよ、イイ医者知ってるからさァ」
垣根「だーから、遊び心だっての。怒んなよ」
一方「これで喜ぶ方が異常者だわ」
垣根「まぁ、待て。今人工知能プログラムを応用してフィアンマくんを作ろうと思っててだな、」
一方「ほォ…? 詳しく聞かせてもらおうじゃねェか」
385 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 10:48:43.19 ID:aUQhxr1AO
+
386 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 10:49:31.20 ID:Aqpxgg9s0
「………いくな。こんなおんななどほうって、おれさまのそばにいろ」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 右方のフィアンマ
「お久しぶりだね、とうま。……っていうか、あれ? 何でとうまが?」
『必要悪の教会』所属の魔術師にして魔道図書館―――― 禁書目録
「……追われているのでございます」
元ローマ正教のシスター―――― オルソラ=アクィナス
「フィアンマ、ごめん。本当に、ごめん」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
387 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 10:49:32.31 ID:aUQhxr1AO
+
388 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 10:49:54.56 ID:Aqpxgg9s0
今回は以上です。
小ネタネタお待ちしてます。
389 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 11:17:31.70 ID:Cq3QBWsYo
乙
ヤンデレふぃあんま君はまだですか(困惑)
390 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 11:46:36.38 ID:C903T26J0
乙
しゅらばらば?
垣一楽しそうだなおいww
そういえば
>>1
の書いたスレの中に垣根ショタあったけど、あの状態の垣根はここの一方さん的にはどうなんだろうか
391 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 14:06:33.29 ID:Nrwgr2tn0
乙
みんながショタふぃあんまくんにデレデレしている間にショタセラは貰っていくぜ
392 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 14:52:11.77 ID:MXnavAC50
>>389
ヤンデレ決定してる訳じゃないんだよなあ…(困惑)
>>390
修羅場でした!
多分かわいいなあ、という感じだと思います 理想でなくてもショタはショタなので優しくすると思われます
>>391
はいはいゲンコロゲンコロ
投下。
393 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 14:52:27.51 ID:aUQhxr1AO
+
394 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 14:52:46.57 ID:MXnavAC50
九月八日。
上条当麻は、スキルアウトに絡まれた。
いつもの不幸だった。
なので、彼は一生懸命走ってカツアゲから逃げ出した。
そもそも上条だってお金が無いのである。
上条「だぁああっ、もう! 不幸だあああああ!」
叫びながら走り、どうにか撒く。
もう嫌だ、と息を切らしていた上条は、ふと一人の少女に気がついた。
どうやら困っているらしい。きょろきょろと辺りを見回している。
その視線と表情は、何かに怯えているようにも思えた。
上条「…あのー」
????「は、はい?」
上条「何かお困りですか?」
夕暮れ、辺りは段々と暗くなってきている。
そんな中、修道服を着た胸の豊かな少女が一人。
このまま放っておけば、何らかの犯罪被害に遭うことは見えている。
なので、上条は『偽善使い』らしく声をかけたのだった。
????「……追われているのでございます」
上条「追われて?」
上条の心配そうな表情に、オルソラは迷って、申し訳なさそうに、自己紹介をした。
オルソラ「私は、オルソラ=アクィナスと申します。よろしければ、逃亡の手助けをしていただけると幸いでございます」
395 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 14:52:47.64 ID:aUQhxr1AO
+
396 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 14:53:05.80 ID:MXnavAC50
街中で出会ったシスターさんを匿うべく家に迎え入れてから、フィアンマの様子がおかしい。
上条はそうは思いながらも、ひとまず夕飯を作る。
今日の晩御飯はチャーハンである。
上条「はいどうぞ。後、詳しく聞かせてくれよ」
オルソラ「わざわざお夕飯まで用意していただいて、ありがたいことでございます。何からお話すればよろしいのでございましょう」
うーん、と考えて。
オルソラは、自分の状況を話し始めた。
上条が学園都市の人間だから、かえって安心出来るという。
曰く、彼女はローマ正教所属の修道女(シスター)で。
とある重要機密の解読法を知ったが故に、追われている。
どうにか学園都市に潜り込んだはいいものの、ローマ正教から追手が来ている。
天草式十字凄教という宗教の人間と合流出来れば、そのまま逃亡出来る筈である。
上条「っていうことは『外』に出ないとダメなのか…」
一応、上条は外出用書類を持ち合わせている。
今は大覇星祭準備期間中の為、それなりに容易に出られることは出られるのだろうが。
オルソラ「…いえ、やはり巻き込んでしまう訳にはいきませんね」
ごめんなさい、と彼女は頭を下げる。
食事を終えた彼女は、立ち上がる。
上条は口ごもり、問いかけた。
上条「…あの、さ。もし、捕まったら、どうなるんだ?」
オルソラ「…日をかけて神明裁判を行った後、処刑でございますね」
恐らくではございますが、などという彼女の顔色は、当然悪い。
処刑、という単語に、上条は思わず立ち上がる。
上条「手伝ってやるよ」
ふぃあんま「いまじんぶれいかー」
鋭い声。
上条は、フィアンマを見やる。
金色の瞳には、敵意に似た何かが宿っていた。
ふぃあんま「………いくな。こんなおんななどほうって、おれさまのそばにいろ」
小さな手が、上条のズボンを掴む。
じと、と睨まれ。上条は、フィアンマを不安にさせてしまうとわかっていても、首を横に振った。
上条「フィアンマ、ごめん。本当に、ごめん。すぐ帰るから」
真面目に謝って、彼はオルソラと共に出て行く。
家に一人取り残され、フィアンマは目を伏せた。
ふぃあんま「……いまじんぶれいかーの、………」
397 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 14:53:06.71 ID:aUQhxr1AO
+
398 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 14:53:24.54 ID:MXnavAC50
オルソラ「…本当によろしかったのでございますか?」
上条「大丈夫大丈夫。後で謝ればわかってくれるヤツだし」
言いながら、上条はオルソラを連れて歩いていく。
書類は手に持った。中身を確認。問題なし。
手続きをして、『外』に出る。
オルソラによると、天草式十字凄教の人間はこの近くに居るらしい。
上条「ん、と…」
オルソラの手を引いて、てくてくと歩いていく。
程なくして見えてきたのは。
一人の赤髪の神父と、二人の少女。
インデックス「お久しぶりだね、とうま。……っていうか、あれ? 何でとうまが?」
ステイル「君は…」
アニェーゼ「お知り合いですか?」
上条は、背後でオルソラが固まった事に気がついた。
ステイルやインデックスは、イギリス清教。
つまり、彼女が怯えているのは、あの黒いシスター服の女の子だ。
上条「……話を、先にさせてくれ」
399 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 14:53:25.52 ID:aUQhxr1AO
+
400 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 14:53:39.60 ID:MXnavAC50
良い子にしていれば、きっといつか、迎えに来てくれると思った。
良い子にしていれば、きっと沢山の人間と良い関係を築けると思った。
良い子にしていれば、もう二度と誰も失わないと思った。
「………、」
良い子にすれば、する程。
大切に思う人は、自分を置いて何処かへ行ってしまう。
魔術を学んだ。自衛の力を身につけた。
なのに、その力を誇示して尚、守る対象として見られるだけ。
わかっている。理由はきっと、年齢や体格なのだ。
例えばこれが、既に成人している、それなりに年齢を重ねた男なら。
きっと、上条当麻は、自分を連れて行ってくれる。
「……、…」
『フィアンマ、ごめん。本当に、ごめん。すぐ帰るから』
『……うん。すぐに、…すぐに、戻るよ』
知識はある。
力はある。
でも、誰も彼もが、自分に傷ついて欲しく無いと言って、どこかに行ってしまう。
そうして、自分が手を伸ばしても。
もう、何処にも見当たらない事を、知っている。
「…ひっく…、…っ…」
泣いてみる。落ち込んでみる。
やっぱり、上条は帰ってこなかった。
401 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 14:53:40.36 ID:aUQhxr1AO
+
402 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 14:53:55.25 ID:MXnavAC50
事情を説明して、ステイルとインデックスが納得した途端。
アニェーゼという少女は態度を変え、部下を使って攻撃を仕掛けてきた。
すんでの所で天草式十字凄教の人間が現れたものの、逃げる間もなく泥仕合。
上条も当然巻き込まれ、拳一つで戦うことになった。
フィアンマが止めたのは、こうして戦いになることを予期していたからだろうか、と上条は思う。
一度逃亡し、ステイルと天草式十字凄教が『魔女狩りの王』を形作る為の『下準備』を行っている最中。
上条とオルソラは、インデックスと共に居た。
女の子二人は、男が一人でも居た方が良いという判断結果である。
上条「…結局、『法の書』ってやつの解き方はダミーだったのか」
オルソラ「………」
インデックス「うん。…でも、今更ダミーの解法でした、だなんて言っても、通用しないと思うんだよ」
オルソラは落ち込んでいる。
彼女が『法の書』を解読したかったのは、力が欲しかったからではない。
魔道書を自爆させることで、もう争いが起きないようにしたかったのだ。
上条はオルソラの背中を摩り、先程ステイルが投げられた十字架のネックレスを取り出す。
そして、誰に教えられることもないまま、オルソラの首にかけた。
上条「……難しいことはよくわかんねえけど、……助けるよ」
オルソラ「……、」
上条「だから、ステイル達を待とう」
オルソラ「……はい、でございます…」
少しだけ笑みを零し。
オルソラは、十字架を握った。
インデックスは、ふと視線を移す。
そこには、ステイルと天草式十字凄教の面々が居た。
ステイル「どうにか、設置し終わったよ。後は倒してしまうだけだ」
インデックス「とうま、とうまは帰っても問題無かったんだよ?」
上条「一回首突っ込んだものはやりきるって決めてるんだ」
やって来たシスターの軍勢。
その中央に立つアニェーゼは、杖を握っていた。
『蓮の杖』。
エーテル(第五物質)の象徴武器。
エーテルを扱うと同時に、他の四大元素全ての武器としても使用できる、という特色がある。
座標攻撃のそれは、上条の苦手とするところだった。
403 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 14:53:56.23 ID:aUQhxr1AO
+
404 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 14:54:14.73 ID:MXnavAC50
上条当麻は、携帯電話を忘れていった。
フィアンマはぐしぐしと目元を擦り、携帯電話を手にしてみる。
ふぃあんま「…んー」
通話代がどうこう、と言っていた記憶がある。
首を傾げ、フィアンマは携帯をいじる。
アドレス帳画面を眺めてみる。
一部業務的な(制服の仕立て店など)ものだったが、ほとんどが個人。
つまり、上条には友達が多いということだ。
ふぃあんま「……」かちかち
暇なので、ベッドに座って弄る。
どうやら、日記をつけていたらしい。
日時入力が面倒臭かったからだろうか。
スケジュール欄を日記として使用していたようだ。
----------------------------------
七月十六日
今日は何だか変な子がベランダに引っ
かかっていた。
フィアンマ君というらしい。
七歳らしいが、どう見ても…いや、も
う言わないでおいてあげよう。
ハンバーグを初めて食べたらしい。
----------------------------------
・
・
・
----------------------------------
七月十九日
魔術について何やら長々と説明を受け
た。
もしかしてフィアンマ、滅茶苦茶強い
んだろうか。
それにしても、やっぱり頼りない部分
はあるけど。それはそれで可愛いって
ことで。
----------------------------------
ふぃあんま「…む」
むすくれながら、フィアンマは眺めていく。
怒ったからといって、携帯を折ったりはしない。
405 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 14:54:16.74 ID:aUQhxr1AO
+
406 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 14:54:38.16 ID:MXnavAC50
----------------------------------
八月八日
姫神、という子を助けに行った。
あのアウレオルスって野郎はすごく強
かった。
フィアンマの面倒を看てくれていた優
しい人が居てくれて幸いだった。
フィアンマ、やっぱり寂しいのかな
----------------------------------
・
・
・
----------------------------------
八月十五日
あの優しい人と友達になった。という
か、メアドとケー番を交換した。
幻想殺しさんっていうのはちょっと恥
ずかしいような。
でも、アクセラレータさんも能力名ら
しいし、そっちの方が慣れてんのかな
?
----------------------------------
・
・
・
----------------------------------
八月二十八日
酷い目に遭った。
どうにか戻ってこられたし、結果オー
ライというやつだと思う。
とはいっても、俺はほぼ何もしてない
んだけど。
オッレルスさんがほぼ全部片付けたよ
うなものだよな。
あっちの世界の俺達は仲良くやってる
と良いんだけど。
フィアンマは、本当の父親の方が、や
っぱり俺よりも良いの…かな。
----------------------------------
・
・
・
----------------------------------
九月一日
死ぬかと思った。
魔術と科学の共存は良くない、ってい
うのは……わからない訳でもない。
でも、俺はフィアンマと仲良くやれて
いると思う。思いたい。
……心配させちゃったな…
----------------------------------
・
・
・
----------------------------------
九月七日
最近はそこそこに落ち着いたものだと
思う(生活!)。
俺が『幻想殺し』で不運みたいに、フ
ィアンマの『聖なる右』は幸運なのか
な? だとしたら、相殺されてるのか
もしれない。
最近日記の内容がフィアンマのことば
っかりになってる気がする(笑)
可愛い女の子との出会いが欲しい…
----------------------------------
407 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 14:54:39.07 ID:aUQhxr1AO
+
408 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 14:54:55.74 ID:MXnavAC50
携帯電話を片付ける。
上条は、まだ帰ってこない。
ずっと待っているのに、どうしてだか、帰ってこない。
すぐに帰ると言ったのに。
また、捨てられたんだろうか。
思って、フィアンマはもう涙すら出ないまま、小さく笑った。
409 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 14:54:56.61 ID:aUQhxr1AO
+
410 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 14:55:14.54 ID:MXnavAC50
結果として、アニェーゼを倒す事には成功した。
ただし、それは上条当麻の犠牲があってこそ、だった。
アニェーゼは卑怯な手を使う事を厭わなかった。
故に、『蓮の杖』で、直接上条の頭を叩き、脳を揺さぶった。
当然、脳は傷つけられることになる。
脳が傷つけられた人間がどうなるかなど、一目瞭然だった。
全てが順調に進む世界なら、悲劇など起こる筈もなく。
それでも彼は、人を助ける為に右拳を振るった。
そして、倒れる。倒しきってから、バタリと。
(フィアンマ…、ごめん。本当に…、…ごめ…ん…。すぐ帰る、って……言った…の、に…)
それは音声<つぶやき>という形でさえ、出力されることもなく。
上条当麻は、死んだ。
411 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 14:55:15.80 ID:aUQhxr1AO
+
412 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 14:55:57.57 ID:MXnavAC50
「……えっと、…病室、間違えてないか?」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「おれ、さまは……かみじょうのことが、だいすきだったんだ」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 右方のフィアンマ
「とりあえずオマエの家に定住する」
学園都市第一位の『超能力者』―――― 一方通行
「家庭的一方通行(笑)のお手並み拝見といこうか」
学園都市第二位の『超能力者』・『未元物質』―――― 垣根帝督
413 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 14:55:58.73 ID:aUQhxr1AO
+
414 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 14:56:25.04 ID:MXnavAC50
今回はここまで。
駆け足すみません。
小ネタネタお待ちしてます。
415 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 15:51:37.88 ID:KgCkJLNt0
乙
このSSはほんと続きが気になるな・・・
416 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 16:38:06.14 ID:Cq3QBWsYo
乙
愛の告白きたーー
417 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 17:52:07.54 ID:oQQwaZ9vo
家庭的な一方通行()
418 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 21:58:22.00 ID:KfiO3p2x0
乙
このタイミングでこの展開とは予想外
419 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 22:09:56.94 ID:8BnMXvA20
迷走している。まるで魔神のなり損ない状態。
投下。
420 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 22:10:03.78 ID:aUQhxr1AO
+
421 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 22:10:33.82 ID:8BnMXvA20
朝方。
一睡も出来ないまま、静かに待っていたフィアンマに、連絡が入った。
上条の携帯電話に、電話がかかってきた訳では、ない。
ステイル=マグヌスという魔術師による、通信術式によるものだ。
内容としては、上条が何らかの事件解決に協力したこと。
そして、それによって負傷したこと。
負傷甚だしかったので、病院へ担ぎ込まれたこと。
病室の番号。現在、意識不明であるということ。
ステイル『プロの魔術師がついていながら…本当に、すまない』
ふぃあんま「おまえひとりにせきにんをとうのもこくだろう」
言いながら、フィアンマはいそいそと準備をする。
合鍵を手に掴み、外に出て、鍵を閉めて。
通信を絶った後、仮眠を摂ってから病院へ向かった。
422 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 22:10:34.82 ID:aUQhxr1AO
+
423 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 22:10:57.98 ID:8BnMXvA20
存外仮眠を貪ってしまった。
病院に到着したのは、昼過ぎの事だった。
個室のベッド。
頭に包帯を巻かれ、上条はすやすやと眠っている。
人工呼吸器をつけていない辺り、だいぶ回復したのだろう。
もしかすると、一度目を覚ましたのかもしれない。
ふぃあんま「………」
見舞い客ようのパイプ椅子を組み立てる。
ちょこん、と腰掛けて大人しく待った。
一時間程経過してから、上条当麻は、目を覚ます。
そして、フィアンマを見た。
上条「……」
ふぃあんま「…めが、さめたのか」
眠い目をごしごしと手の甲で擦り、フィアンマは曖昧な笑みを浮かべる。
対して、上条は首を傾げた。
424 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 22:10:58.87 ID:aUQhxr1AO
+
425 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 22:11:14.58 ID:8BnMXvA20
「……えっと、…病室、間違えてないか?」
病室の中。
時間が、止まる。
実際に止まったかどうかはともかく、フィアンマはそんな錯覚を覚えた。
上条は、まったく知らない他人を見るかの様に、フィアンマを見つめている。
そこに親しみと呼ばれる類の色合いは、一切感じられない。
「……、…おれさまは、…うほうのふぃあんまというのだが…おぼえて、いないのか」
「……フィアンマ? えーっと…あれ? 俺って日本人だよ、な…?」
的違いの返答。
それが、かえってフィアンマのことを覚えていないということの証明。
「……おまえと、…いっしょに、くらしていたんだ。おぼえていないのか?」
「………」
「…ほんとうに、…なにも、おぼえていないのか」
「………」
「おれ、さまは……かみじょうのことが、だいすきだったんだ」
優しくしてくれる上条のことが。
何気ないことで気遣ってくれる上条のことが。
手が震える。
視線が、自然と床へ落ちる。
喉が渇いた。嫌な渇き方だ。
そんなフィアンマの頭に、上条は手を伸ばす。
そして、優しく撫でながら、笑ってみせた。
「冗談だよ、冗談」
「…じょう、…だん?」
「ほら、意識不明の大怪我といったら記憶喪失がつきものだろ?」
だからドラマっぽくしてみたんだ、と上条は笑ってみせる。
フィアンマは不機嫌一色で、ぺちん、と上条の頬を叩いた。
そして、飲み物を買って来ると言いながら、病室を出て行ってしまう。
残された上条は、打たれた頬を手のひらで撫でて、目を伏せた。
426 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 22:11:15.49 ID:aUQhxr1AO
+
427 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 22:11:34.64 ID:8BnMXvA20
「…めが、さめたのか」
起きた時。
ほっとした様な声が、聞こえた。
視線を向けてみると、そこには一人の子供が居て。
まったく知らないその子は、俺の顔を見て、ほっとしていた。
どうやら俺は、大怪我をしていたらしい。
といっても、見てわかる事実がそれというだけで。
何も思い出せない。どうしてここに居るのか。
記憶喪失、という単語だけが、頭の中を蠢いていた。
「……えっと、…病室、間違えてないか?」
問いかけてみた。
その子は、愕然としていた。
「……、…おれさまは、…うほうのふぃあんまというのだが…おぼえて、いないのか」
「……フィアンマ? えーっと…あれ? 俺って日本人だよ、な…?」
ウホウノフィアンマ。
聞き覚えの無い単語だった。
弟か何かかと思って鏡を見てみたはいいものの、あまりにも似ていない。
「……おまえと、…いっしょに、くらしていたんだ。おぼえていないのか?」
「………」
「…ほんとうに、…なにも、おぼえていないのか」
「………」
「おれ、さまは……かみじょうのことが、だいすきだったんだ」
「………」
「ま、いにち…おなじ、ばしょでせいかつしていたんだ」
「……、」
何も、覚えてなどいない。
どうやら俺の名前(?)はカミジョウというらしい。字は不明。
ショックを受けた表情は、段々と泣きそうな顔に、変わる。
どうしてだろう。
何も、覚えていないのに。
この子には泣いて欲しくない、と。
そう、思った。
「冗談だよ、冗談」
「…じょう、…だん?」
「ほら、意識不明の大怪我といったら記憶喪失がつきものだろ?」
頭を撫でて、冗談めかした。
フィアンマという名前の子は、不機嫌そうにむくれて。
小さい手で、思いっきり俺の頬を打った。結構痛い。
「のみものをかってくる、」
反省しろ、と言って、あの子は出て行った。
良かった、騙せたみたいだ。
428 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 22:11:35.50 ID:aUQhxr1AO
+
429 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 22:12:00.02 ID:8BnMXvA20
不意に、上条の病室のドアが開いた。
入ってきたのは、医者だった。
説明はされなかったものの、何となくわかる。
「良かったのかね? 君、本当は何も覚えていないんだろう?」
確かに、上条は何も覚えていない。
フィアンマのことどころか、自分の名前さえ。
「良いんです」
それでも、思う。
「俺、どうしてもあの子にだけは、泣いて欲しくなかったから」
「泣いて欲しく無い、か。…そう思えるのは、どうしてだろうね? 君の脳は滅茶苦茶にダメージを受けていて、記憶はもう復旧出来ない様な状態にあるのに」
「多分、俺は覚えてるんです。……頭<ここ>じゃなくて、胸<ここ>に。きっと俺は、記憶を喪うその最後の瞬間まで、あの子のことを考えていたんだと、思うんです。関係も、名前も、全然わからないけど……」
上条は、深呼吸をする。
頬はずきずきと痛んだまま。
きっと自分は、この痛みを一生引きずる事になるんだろう、と思った。
それでも、フィアンマを悲しませない為なら。
上条当麻は、何度でも、嘘をつく。
430 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 22:12:00.88 ID:aUQhxr1AO
+
431 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 22:13:05.07 ID:8BnMXvA20
一方「とりあえずオマエの家に定住する事にした」
垣根「あ?」
学園都市第一位が、とうとう狂った。
学園都市第二位たる垣根帝督がそう思ったのは、九月九日のことだった。
理由は、遊びに来ていた彼が素っ頓狂な事を言い出したからである。
垣根「何がとりあえずなのかさっぱりわからないんだけど、ちゃんとマトモな神経してるヤツにもわかるように説明してくんねーかな? 第一位さん?」
一方「言外に俺がキチってるって言うンならぶち殺すぞ。……俺の住居は襲撃されてばっかりで、そもそも住居の役割を果たしてねェ。ンで、オマエの家は襲撃されている様子が見当たらない。ついでに言えば、ショタゲーを落ち着いてやれる場所でもある。ネカフェよりも広い」
垣根「俺が同居するメリットねえんだけど」
一方「金なら出してやる」
垣根「要らねえし」
一方「何か別の条件で手を打ってやる」
垣根「何でお前が上から目線なの?」
一方「序列が上ですしィ」
垣根「ぶっ殺すぞ。……あれだ、飯作ってくれれば」
一方「あ? 飯?」
垣根「外食もコンビニ弁当もそろそろ飽きたんでな」
一方「料理、ね…」
悩んで、一方通行は冷蔵庫を開ける。
そして、適当に材料を取り出した。
垣根「家庭的一方通行(笑)のお手並み拝見といこうか」
一方「誰が家庭的だ」
垣根「あーあー、お前がショタだったらなー」
一方「俺がショタだったらオマエとだけは暮らさねェわ」
本日の垣根家の食卓。
お昼ご飯はオムライスである。
432 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 22:13:06.36 ID:aUQhxr1AO
+
433 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 22:15:17.33 ID:8BnMXvA20
「北イタリア五泊七日のペア旅行……?」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「かみじょう、だっこだっこ」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 右方のフィアンマ
「競技の獲得点数で勝負よ! 敗者はバツゲームだからね?」
学園都市第三位の『超能力者』・『超電磁砲』―――― 御坂美琴
「……日常に居るべき野郎は、"こっち"に来るな」
学園都市第二位の『超能力者』・『未元物質』―――― 垣根帝督
434 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 22:15:19.91 ID:aUQhxr1AO
+
435 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/14(月) 22:16:24.40 ID:8BnMXvA20
今回はここまで。
次から駆け足『大覇星祭』編です。
だんだん再構成っぽくなってますが、真面目な再構成ではないので常に駆け足です。ご了承ください。
前条さんがログアウトしました。
436 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 22:28:56.43 ID:Cq3QBWsYo
乙
アクセラさんが上条家に住むのかと思った
437 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/14(月) 22:51:42.46 ID:VD0dEIO1o
とうとうこっちの上条さんも記憶消えちゃったか
438 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/15(火) 00:21:02.05 ID:XvXEDdQe0
乙
一方さんが住み始めたら結局垣根の家も襲撃されるようになるんじゃ…
というかオムライス、あの見た目でオムライス
なに、ケチャップでハートマークとか描いちゃうの? デフォルメふぃあんまくんのプリント付きエプロンでも着けてるの?
439 :
小ネタ:ゆきあそび!
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/15(火) 11:58:24.77 ID:yCdBdQ+AO
上条「はー…雪かき面倒臭いな…。夏に雪ってどういう…っていうか、そんな薄着で寒くないのか?」
ふぃあんま「あんずるな、じゅつしきをおうようしている」
上条「魔術って便利で良いな…」
ふぃあんま「めりっとばかりではないが。てきとうにやらかせばぺなるてぃーをうける」
上条「ペナルティー? 能力者の制御失敗による能力暴走みたいなものか」
ふぃあんま「そうだな」
上条「失敗したらどうなんの?」
ふぃあんま「やけどする」
上条(…科学も魔術も変わんないな…ホッカイロかよ…)
ふぃあんま「いまじんぶれいかー、ゆき、ゆきあそびする、」ぴょんぴょん
上条「はいはい、雪遊びな…何やるんだ?」
ふぃあんま「ゆきだるまつくる」
上条「じゃあボタンとか要るか?」
ふぃあんま「ひつようない」ごろごろ
上条「もう転がす段階かよ! 早ぇよ!」
ふぃあんま「できたー」どやー
上条「腕が木の枝じゃなくて黄金の剣って辺りが斬新過ぎていっそ物騒だよ。フィアンマはアーティスト向きだな」
ふぃあんま「かわいいだろう」
上条「……まぁまぁかな」うん
ふぃあんま「うー」じだんだ
440 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/15(火) 13:16:24.63 ID:CbORGVsSO
もしオムライスにケチャップでハートを描いて
「萌え、萌え、キュン♪」
とか一方通行が言いやがったら多分、俺の拳は奴の防御を突破出来る気がする
441 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/15(火) 14:07:16.72 ID:wIDuFhV2o
>>440
百合子さんだったらどうするんだよ
442 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/15(火) 14:44:37.78 ID:CbORGVsSO
>>441
デコピン
443 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/15(火) 16:31:51.08 ID:uctCUz7Do
これスレタイの元ネタはブッチッパ先輩ですかね
444 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/15(火) 21:53:06.27 ID:weLRz/Dm0
>>437
(合掌)
>>438
学園都市第二位なのであんまり危惧してないというところがあるようです。
なんですそのエプロン欲しい
ケチャップで『くたばれ』位は書いてるかもしれません
>>440
男の子が萌え萌えキュンしてくれたのに…?(困惑)
>>443
今さっきその言葉ググったんだよなあ…(困惑)
投下。
445 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/15(火) 21:53:26.52 ID:yCdBdQ+AO
+
446 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/15(火) 21:53:37.42 ID:weLRz/Dm0
上条当麻が退院したのは、九月十七日のことだった。
それからの彼は、必死だった。
誰にも記憶喪失であることを悟られまいと、努力していた。
自分の携帯電話の日記
メールや通話履歴
アドレス帳データ
クラスメートの会話
色々な出来事から、自分について学んだ。
上条当麻とは、どんな人間なのか。
そして、フィアンマというこの少年とは、どのような関係なのか。
ふぃあんま「むー」
上条「腹減ったのか?」
ふぃあんま「ちがう」
立体パズルをやっているらしい。
退院した日に上条が買ってあげたものだ。
牛乳パックを模したもので、綺麗に嵌められればクリア。
上条「難しいなコレ…」
ふぃあんま「かみじょうはとけるのか」
上条「んー…とりあえず洗濯片付けちゃいませう。話はそれからですのことよ」
言いながら、上条は片付けていく。
思い出など無いが、この子供と暮らす生活は、まあまあ楽しい。
447 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/15(火) 21:53:38.32 ID:yCdBdQ+AO
+
448 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/15(火) 21:53:52.12 ID:weLRz/Dm0
九月十四日。
垣根帝督は、『仕事』によく似た『趣味』を履行することにした。
一人の少年を通じて得た、たった一人の友人の為に。
『残骸』と呼ばれる、『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』の欠片を徹底的に壊す為。
垣根の居る場所とは少々違うが、暗部と呼ばれるべき事案だった。
だから、垣根は知っている。
そして、この件を本来片付けるべき友人には、何も伝えないでおいた。
一方「おい」
声をかけられ、垣根は振り返る。
一方通行は、『残骸』の件について知らない。
『残骸』が元に戻れば、彼がせっかく助けた妹達が何らかの形で被害に遭ってしまうことは確実で。
しかし、垣根は伝えない。
冷え切った瞳で、返事をする。
彼は一人で、一方通行の功績を守る覚悟を決めている。
垣根「何だよ」
一方「…オマエ、」
感づかれたか。
思いながら、垣根帝督はうっすらと笑った。
垣根「……日常に居るべき野郎は、"こっち"に来るな」
そうはっきりと境界線を引いて。
垣根帝督は、家から出て行った。
ヒロインよろしく残された一方通行は、少しだけ迷って。
敢えて垣根を追いかける事はせず、家に居るのだった。
449 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/15(火) 21:53:52.90 ID:yCdBdQ+AO
+
450 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/15(火) 21:54:11.91 ID:weLRz/Dm0
そうして、九月十九日。
本日、大覇星祭初日である。
大覇星祭とは、学園都市に所属する全学校が合同で行う超大規模な体育祭。
開催期間は9/19〜25の七日間。
要は、異能者が繰り広げる大運動会なのだ。
その為、燃える魔球や凍る魔球、消える魔球はザラであり、外部からの注目度も高い。
種目は学校単位のものから個人単位まで多岐に渡り、個人種目では上位三位内に入ると表彰される。
開会式。
15連続校長先生のお話コンボ+お喜び電報50連発。苦行だ。
終了時刻は午前10時30分なのだった。
上条「つっかれたー…」
土御門「無駄に長いぜよ」
青ピ「今日はいい汗かく女の子満載やね」
上条「お前さんの思考はそこにしか無いのか」
とりあえずツッコミを入れ、上条はてくてくと歩いていく。
彼は四校合同借り物競争に出るので、今は少し暇なのだ。
第一種目は今回お休みである。
上条「埋もれてまったくわかんなかったぞ」
ふぃあんま「うー」
上条はフィアンマと手を繋ぎ、ゆっくりと歩く。
吹奏楽部の複数校合同パレードを見る(及び聴く)為である。
上条「一方通行には会ったのか?」
ふぃあんま「さきほどそうぐうした。なんらしゅつじょうはしないそうだが」
上条「まぁ、学校にそもそも行ってないもんな」
交通整理が行われている為、適宜迂回しながら進む。
手を繋いだ状態では人ごみに流されそうになったのか、もぞもぞと身動いた。
ふぃあんま「かみじょう、だっこだっこ」
上条「ん? ん、」
疲れたのか、と判断し、上条はフィアンマを抱き上げる。
この頃まともなご飯を食べているので、ちょっぴり重くなったかもしれない。
だがしかし、上条がへこたれる程の重さでは無い。
451 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/15(火) 21:54:12.75 ID:yCdBdQ+AO
+
452 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/15(火) 21:54:31.44 ID:weLRz/Dm0
パレードを見てのんびりしている間に、気付けば種目開始時間が近づいていた。
上条「ここで大丈夫か?」
ふぃあんま「…かみじょうはみえるか?」
上条「見えると思う」
フィアンマを観客席に降ろし、上条は頷く。
この競技は第七学区・第八学区・第九学区全てを競技範囲内とする、難易度も高い競技だ。
上条<レベル0>には関係無いことだが、干渉数値の制限がある。
ルールとしては、至極簡単。
箱の中から一枚紙を引き抜き、その内容のものを持ってゴールを突破すれば良いだけ。
指定された物品が第三者の物である場合は、相手に許可を取り、相手と共にゴールに向かわなければならない。
また、物品とも限らないのである。
上条「…っていうか学年無視なのか」
御坂美琴<女子中学生>を目撃し、ぼやきながら、上条はスタート地点に待機。
位置について、よーい、ドン。
運営委員の声が響き、上条は走っていく。
箱の中に手を入れ、一枚取り出した。
内容は、『小さくて可愛いもの』。
上条「何て抽象的な?!」
不幸だ、と叫びながら、上条は辺りを見回す。
小さくて可愛いもの。平仮名ということは、物でも者でも良いということなのか。
あ、と上条は顔を上げる。
目が合ったフィアンマは、きょとんと首を傾げている。
上条「フィアンマ!」
両腕を広げ、上条は大きな声で呼びかける。
フィアンマはきょとんとしたままに、ひとまず立ち上がった。
フィアンマが居る観客席と、上条が立っている競技場には、高さがある。
飛び降りるには、それなりに勇気が必要な高さだった。
ふぃあんま「……、かみじょう、」
上条「大丈夫だ」
受け止めてやる。
真っ直ぐな瞳で両腕を広げたままの上条は、とても頼もしく見えた。
フィアンマは逡巡をやめ、手すりを蹴る形で、飛び降りる。
逃亡した姫を受け止める王子さながら、上条は無事彼の身体を抱きとめ、一歩後ずさって堪えた。
上条「これで一位だ」
微笑んで、上条はゴールへ走る。
幸いにも転ばずにテープを切り、結果として一位だった。
ふぃあんま「……ちなみにかりもののないようはなんだったんだ」
上条「えっと、『小さくて可愛いもの』」
ふぃあんま「…」ぺち
上条「いてて」
453 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/15(火) 21:54:32.36 ID:yCdBdQ+AO
+
454 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/15(火) 21:54:52.94 ID:weLRz/Dm0
大玉転がしが始まるまで、余裕がある。
上条はフィアンマを抱っこしたまま、ぺちゃくちゃと喋っていた。
そんな彼に、一人の女子中学生が声をかける。
常盤台中学の電撃姫、御坂美琴だった。
上条とは違い、借り物がなかなか見つからなかった為に二位だったらしい。
美琴「ちょ、ちょっと! さっきから何で無視すんのよ!」
上条「へ?」
今の上条当麻には、記憶が無い。
故に、御坂美琴から声をかけられても、知人のそれとは気づかない訳で。
知り合いだったのか、と焦りながら、上条は目についた特徴で応答する。
上条「あっ、あー、ごめんビリビリ。周り騒がしかったから」
美琴「何回呼ばせりゃ気が済むのよ…っていうか、私の名前はビリビリじゃなくて御坂美琴! いい加減覚えなさいよね」
上条「はいはい、ごめんね美琴さんよ。で、何か用?」
美琴「み、みみ、……別に、用っていうか…えっと、…あれよ、あれ。勝負しなさい」
上条「はぁ? 勝負?」
美琴「競技の獲得点数で勝負よ! 敗者はバツゲームだからね?」
上条「既に内容決まってる!? 獲得点数…って学校ごとのか? 言っておくけど、俺の学校なかなか強いぞ。バツゲームって何」
美琴「そうね…んー…負けた方が勝った方の言うことを何でも聞く、なんてどう?」
上条「セオリー通りだけど、負けたらお前が俺の言うこと聞くんだぞ?」
美琴「負けないから大丈夫」
ふふん、と胸を張って、彼女は駆けていく。
御坂美琴とは誰だろう、と上条は携帯電話を取り出して、アドレス帳を見てみた。
残念ながら、何の情報も無い。どうやら、メアドすら知らないようだ。
それでも、前の自分とそれなりに仲が良かったのだろうか、と上条は思う。
何一つ疑問を表情に出さないのは、近くにフィアンマが居るからだ。
この子にだけは、記憶喪失を感づかれてはならない。
455 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/15(火) 21:54:53.89 ID:yCdBdQ+AO
+
456 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/15(火) 21:55:14.80 ID:weLRz/Dm0
何の問題も無く、大覇星祭は終わった。
数々の競技をこなした結果、御坂美琴在籍の常盤台中学に、上条当麻在籍のとある高校は惨敗。
バツゲームとやらが確定してしまったなあ、と思いながら、上条はイベント確認へやって来ていた。
何のイベントかというと、『来場者数ナンバーズ』である。
これは、専用カードを購入し、大覇星祭の総来場者数を予想するイベントだ。
期間中であれば何時でも購入可能で、期間後半であるほど当てやすいが、早く提出した方が優先される。
上条はクラスメートに合わせて二枚購入し、適当に書いて応募した。
上条(どうせ当たらないだろうけどな…)
上条「すいません、確認お願いしまーす」
係員「はーい」
係員、もとい委員は上条からカードの半券を受け取って確認する。
そして、にこにこと笑んだ。
係員「おめでとうございまーす、ドンピシャ一等賞です!」
上条「ど…ドンピシャ?」
係員「えーっと、景品はですねー…あ、これだ、これ」
足元の箱の中から、委員は何かを取り出す。
そして、上条に笑顔で渡した。
上条はきょとつきながら受け取り、眺める。
上条「北イタリア五泊七日のペア旅行……?」
航空券、ホテル、食事、観光名所への入場券。
全てがセットとなっている、ペア旅行チケットだった。
457 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/15(火) 21:55:15.66 ID:yCdBdQ+AO
+
458 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/15(火) 21:55:36.12 ID:weLRz/Dm0
上条「フィアンマくん、今日はすごいぞ」
ふぃあんま「なんだ、そのくちょうは。らっきーでいか?」
上条「ラッキーもラッキーですのことよ。じゃじゃーん」
上条当麻には、恋人は居ない。
親友は居るが、それでさえも最早身近ではない。
記憶喪失となった上条に一番近しい人間は、フィアンマだった。
なので、当然のことながら、一緒に旅行へ行くのも、フィアンマ一択。
提示されたチケットセットを眺め、フィアンマはふむふむと頷く。
ふぃあんま「きたいたりあか。ほう」
上条「嫌か?」
ふぃあんま「べつにいやではない」
そもそも、イタリアはフィアンマの本国だ。
なので、嫌という感情は無い。
ただ一つ面倒なのは、右席メンバーに捕まった場合だけだ。
ふぃあんま「いたりあごはまかせろ」
上条「うん、頼むな」
よしよし、と撫でながら。
今までの記憶の積み重ねの無い上条は、何だか慌ただしいなあ、と客観的に思った。
459 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/15(火) 21:55:37.02 ID:yCdBdQ+AO
+
460 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/15(火) 21:56:00.01 ID:weLRz/Dm0
「フィアンマー? 参ったな……」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「―――なにを、たくらんでいる?」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 右方のフィアンマ
「いえいえ、何も企んでなどいませんよー?」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 左方のテッラ
「その節はお世話になりましたのでございます」
元ローマ正教のシスター―――― オルソラ=アクィナス
461 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/15(火) 21:56:00.98 ID:yCdBdQ+AO
+
462 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/15(火) 21:56:14.29 ID:weLRz/Dm0
今回はここまで。
463 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/15(火) 22:07:14.96 ID:bfYmiXoo0
ん?あれ、一方さんは垣根ルート突入した?
そういう目で見ちゃダメなのか?
何にしろ乙
464 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/15(火) 22:21:42.40 ID:hZL1e22So
垣根ルートですか!期待していいんですか!!待ってます!!
465 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/16(水) 01:34:58.58 ID:wtQrhVdo0
乙
前回の垣根の台詞、美琴とかあたりに言ってるのかと思ったら…
そうか、ここの一方さんは(ショタパワーによって)綺麗な一方さんだったな、暗部堕ちフラグとかないし
つーか何故魔球限定ww燃える魔球ってよくネタであるけど、多少燃えてるぐらいじゃわりと普通に打てたりするんじゃないだろうか
466 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/16(水) 16:49:53.35 ID:y9VlGV4I0
>>463
>>1
が迷走中なので多分ルート入ってます
どんな目でご覧いただいても問題無いです><
>>464
やっぱホモだよな(歓喜)
>>465
対綺麗通行さんでした ショタパワーってすごい 流石世界を救える程の力
燃えてる事にビビらなければ打てそうではある
投下。
467 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/16(水) 16:49:54.52 ID:/5SDbiSAO
+
468 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/16(水) 16:50:20.72 ID:y9VlGV4I0
飛行機には慣れているのか、単にマイペースであるだけなのか。
イタリアへ向かう飛行機の中、フィアンマはすやすやと眠っていた。
上条(寝顔は可愛いんだよな…)
口調だけが、飛び抜けている。
何故『俺様』なのか、上条にはわからない。
これに関しては、先代上条当麻にもわからなかったことである。
上条(ま、いいか……)
上条は、フィアンマのことを知らない。
日記を見るに、ベランダに引っかかっていたらしいということは知っている。
そこから仲良くなって、ずっと暮らしていたらしいことも。
『……おまえと、…いっしょに、くらしていたんだ。おぼえていないのか?』
『…ほんとうに、…なにも、おぼえていないのか』
『おれ、さまは……かみじょうのことが、だいすきだったんだ』
『ま、いにち…おなじ、ばしょでせいかつしていたんだ』
自分は、この子のことを何も知らないけれど。
でも、以前の自分の為にも、この子の為にも。
そして、何より今の自分が生きていく為にも、この子を守るべきだと、思う。
悲しませてはいけないとも、思う。
上条(……親御さんとかはどうしてるんだろ?)
うーん、と上条は首を傾げる。
469 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/16(水) 16:50:21.49 ID:/5SDbiSAO
+
470 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/16(水) 16:50:37.37 ID:y9VlGV4I0
九月二十七日。
上条当麻と右方のフィアンマは、無事空港に到着した。
本来であればガイドの人が現れる筈だったのだが…居ない。
待てど暮らせど、来ない。
九月のイタリアは、まだまだ残暑厳しい訳で。
上条はダラダラと汗を流し、ぐったりとしていた。
上条「あ、暑い…」
ふぃあんま「あついな」
上条「いや、お前ケロッとしてるじゃねえか!」
ふぃあんま「ねつかんりはとくいなものでな」
燃える赤<フィアンマ>だし、とドヤ顔を披露するフィアンマ。
魔術師であればその意味もわかるのだが、上条はわかるはずもなく。
何意味わかんない事言ってんの、と思いながらも、はいはいうらやましいなー、と流す。
上条「仕方ない、バスに乗って移動しよう…」
重い荷物を手に、のそのそと歩く上条。
ようやっとバス停へたどり着くも、上条はそうして気がついた。
上条「…あれ?」
フィアンマが居ない。
きょろきょろと辺りを見回しても、居ない。
上条「フィアンマー? 参ったな……」
迷子になってしまったか。
学園都市内であればともかく、外国ではぐれるというのは不味い。
誘拐されてしまうかもしれない、とゾッとする上条。
そんな上条に、誰かが声をかけた。
オルソラ「お困りでございますか?」
上条「え?」
聞き覚えの無い声に、上条は振り返る。
そこには、穏やかそうな修道服の少女が居た。
オルソラ「その節はお世話になりましたのでございます」
471 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/16(水) 16:50:38.25 ID:/5SDbiSAO
+
472 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/16(水) 16:50:54.13 ID:y9VlGV4I0
フィアンマはというと、迷子になどなっていなかった。
テッラに誘拐されてしまった、ただそれだけである。
誘拐とはいっても、フィアンマが抵抗しなかった為、実際には穏便な連行だ。
彼等は現在、聖ピエトロ大聖堂の『奥』に居た。
少し戻らない間に、魔道書の写本が増えているな、とフィアンマは思う。
テッラ「お久しぶりですねー」
ふぃあんま「…すこしみないあいだにようすがかわっているな」
テッラ「時折利用させていただいてますからねー」
異教の猿に酷い事をされていませんか、と頭を撫でられる。
されるように思うのか、と軽口を叩いて、フィアンマは頬を膨らませた。
世界最暗部の『神の右席』といっても、プライベートな時間はのどかなものだ。
それはどんな魔術結社にも言える事だろう。
ローマ教皇に限っては、庶民とも普通に接したい等と我が儘をその胸に湛えている訳だが。
フィアンマはぐるりと視線を巡らせ、眉を潜める。
ふぃあんま「―――なにを、たくらんでいる?」
魔道書の写本。
その内容について、フィアンマは知っている。
恐らく、テッラは術式を完成させようとしている。
それも、理由は不明ながら、早急に。
テッラ「いえいえ、何も企んでなどいませんよー?」
穏やかな声。
限りなく緑に近い碧い瞳には、平坦な感情の色。
テッラは優しくフィアンマの頭を撫で、にこりと微笑む。
テッラ「貴男の嫌がる様な事はしませんしねー」
それはつまり、フィアンマが嫌がる事でなければ、するのか。
そもそも、テッラの中でフィアンマが嫌がる事は現在のそれときちんと合致しているのか。
不穏な雰囲気に、フィアンマは眉を寄せる。
473 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/16(水) 16:50:55.02 ID:/5SDbiSAO
+
474 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/16(水) 16:51:07.66 ID:y9VlGV4I0
何となく、そんな気はしていた。
"不幸"にも氷で出来た船に巻き込まれ、上条はため息を呑み込む。
しっかりとオルソラの身体を支え、立ち上がった。
どうも自分は、不幸になる星の下に産まれているようだ。
上条は深呼吸を一度して、拳を握る。
オルソラ「この氷の船は…?」
上条「…俺の右手で壊せないってことは異能の力じゃないのか…?」
上条は日常生活の中で、数度、『幻想殺し』を使用している。
なので、自分の右手についてはうっすらと把握していた。
詳しいという訳ではないのだが。
上条「とりあえず、逃げ出す方法を考えよう」
オルソラ「まずは、警備などに引っかからないよう気をつけないといけないのでございます」
475 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/16(水) 16:51:08.56 ID:/5SDbiSAO
+
476 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/16(水) 16:51:33.53 ID:y9VlGV4I0
ふぃあんま「『聖霊十式』をもちだしたのか?」
『聖霊十式』。
ローマ正教の誇る十の高位霊装のことだ。
フィアンマは、水路をやや破壊した『女王艦隊』、それを率いる『アドリア海の女王』を観測し、問う。
テッラ「ええ。前方のヴェントが刻限のロザリオの調整を終えたので、後はビショップ・ビアージオが予定通り行えば」
ふぃあんま「がくえんとしをはかいできる、と」
テッラ「正確には、学園都市に関わる全てですねー」
ふぃあんま「……」
テッラ「ですから、調度良いタイミングで貴男がこちらへ戻って来てくれて安心しました」
万が一にも砲撃に巻き込まれては手を煩わせる、と肩を竦める左方のテッラ。
この聖職者の中では、ローマ正教徒以外は人間ではない。
人間ではないどころか、家畜にも劣る扱いだ。
それを知っているからこそ、フィアンマは顔にこそ出さないが、不安に思う。
ふぃあんま(……かみじょう…)
意図しないタイミングで、彼はトラブルに巻き込まれる。
そして、それは誰が止めようと構わずに進んでしまう。
それは結果として成功に繋がり、全ての成果は上条に収束する。
要するに、上条はいつも誰かの思惑に巻き込まれ、誰かを救おうと奔走する。
もし、この『女王艦隊』の事件に首を突っ込んでいるとしたら。
成功は、上条を危険人物とローマ正教に思わせ。
失敗は、上条を学園都市の文化の恩恵を受けているということで、死なせる。
もし首を突っ込んでいないのなら、上条は何にせよ死ぬ。
ふぃあんま「……、」
テッラ「…どうかしましたか?」
ふぃあんま「…いいや、なにもないよ」
左方のテッラは。
もしかすると、自分がしていたことを、しようとしているのかも、しれない。
そう感じながら、フィアンマは無言で視線を落とす。
それなら、止められない。
477 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/16(水) 16:51:34.39 ID:/5SDbiSAO
+
478 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/16(水) 16:51:56.63 ID:y9VlGV4I0
一方通行が荒んでいる。
垣根はショタゲー片手に彼の様子を見て、そう率直な感想を得た。
垣根「…お前何グレてんの?」
一方「フィアンマくンが旅行中なンだよ」
垣根「…だから?」
その情報は残念だ。
垣根はそう思うも、一方通行の態度には理解を示せない。
完全に不貞腐れているのだ。保護者でもないのに。
一方「同じ学園都市の敷地にすら居ねェンだぞ」
垣根「悲報には違いねえが、」
一方「やる気マイナスだわそンなモン」
垣根「いいから飯作れコラ」
一方「面倒臭せェ」
垣根「……フィアンマくんと付き合うかな」
一方「オマエみたいなチャラメルヘンにオとされる訳ねェだろ」
垣根「どうだかな。俺の本気をナメんじゃねえよ」
一方「垣根くンの本気って何でしたっけ。もふもふでしたっけェ?」
垣根「殺す」
何でコイツ、ショタじゃないんだろう。
垣根帝督は、しみじみとそう思う。
479 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/16(水) 16:51:57.45 ID:/5SDbiSAO
+
480 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/16(水) 16:52:31.60 ID:y9VlGV4I0
『法の書』事件というものがあって、自分はそれに巻き込まれた。
それで、アニェーゼという少女と戦って、オルソラという少女を守った。
天草式十字凄教という特別な面々とも
それは九月八日のことで。
きっと、その時の自分なら、アニェーゼを助けるだろう。
そう思って、動いた。戦った。守った。
気付けば、傷だらけになっていたが、どうにかうまくいった。
上条(……そっか)
自分は、人を助ける為に記憶喪失になったらしい。
緊急搬送されながら、上条はそう思った。
上条「…もしもし」
冥土帰し『重傷のところすまないね? 無能力者といっても、外部機関で能力者の身体を調べてもらう訳にはいかないから、戻ってきてもらうよ』
上条「え、…えっと、…イタリア旅行は?」
冥土帰し『当然、終わりだね?』
上条「ええええ! …って、ダメです、戻れません。フィアンマが迷子になっちゃって、」
冥土帰し『フィアンマくんなら、先に戻っているね?』
上条「………えええええ!?」
電話をしながら、上条は動揺する。
頭に思い浮かんだのは、『魔術による長距離移動』。
何だかなあ、と上条は一人項垂れ。
荷物と共に、超音速旅客機<あくまののりもの>へ、乗り込まされた。
481 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/16(水) 16:52:32.50 ID:/5SDbiSAO
+
482 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/16(水) 16:52:48.28 ID:y9VlGV4I0
学園都市の病院へ連れて行かれ。
上条当麻は手当を受けた上で、大部屋のベッドへ横たわっていた。
ぼんやりとしていると、誰かが近寄ってくる。
フィアンマだった。
愛らしい顔は、不安の色に染まっている。
まるで、怒られるのを予期している子供のようだった。
或いは、そのまんまなのかもしれない。
上条「…フィアンマ、」
ふぃあんま「う、」
上条「急に居なくなるなよ、びっくりするだろ」
ふぃあんま「……」
上条「学園都市ならまだしも、外国で…本気で心配したんだからな?」
上条はちょいちょいと手招き、フィアンマの頭を撫でる。
上条「何処に居たんだよ」
ふぃあんま「…、…まいごになっていただけだ」
上条「……」
ふぃあんま「……」
上条「何で学園都市に帰れたんだ?」
ふぃあんま「まじゅつをつかった」
上条「そっか」
上条はフィアンマの背中を撫で、ため息を吐き出す。
無事で良かった、という思いが渦巻いている。
フィアンマの表情が暗い事には、気づけないまま。
483 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/16(水) 16:52:49.15 ID:/5SDbiSAO
+
484 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/16(水) 16:53:49.33 ID:y9VlGV4I0
「大丈夫だ、風斬。俺が、助けてやる」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「……やつがおれさまのしらないかみじょうとうまであるのなら、しんでもかまわないはずだ」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 右方のフィアンマ
「ま、安心してイイよ。アンタをぶっ殺した後、フィアンマは私が連れて帰るから」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 前方のヴェント
「暗部の案件は暗部の人間が片付けるってのがセオリーだ」
学園都市第二位の『超能力者』・『未元物質』―――― 垣根帝督
「ホモかお前。正直引くわぁ」
『一方通行』を開発した『木原一族』の科学者――――木原数多(きはらあまた)
485 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/16(水) 16:53:50.64 ID:/5SDbiSAO
+
486 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/16(水) 16:55:32.71 ID:y9VlGV4I0
今回はここまで。
現時点で一方さんと妹達(打ち止め含)・ふぃあんまくんがヒロインっていうことは決まってるんですがやっぱり迷走してます
487 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/16(水) 17:22:03.02 ID:rkotC0I80
乙
垣根→一方通行→ふぃあんまくん→上条な感じだろうか
というか、え、妹達がヒロイン……現状出番が少なすg(ry
ホモが否定された…だと…!? まさかのツッコミ常識人枠が木原くんとは
488 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/16(水) 19:03:24.90 ID:DhEJDdado
乙
なんか一方通行を開発した、って響きエロいなゴクリ
489 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/16(水) 19:25:48.74 ID:cnUbkQd/0
乙
本当に何で一方さんはショタじゃないだろ……
木原くン台詞がブーメランで返ってきてねえか?(笑)
490 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/16(水) 19:40:37.64 ID:GQVwQhuRo
乙
いっその事一方さんとていとくんがふたりともショタなら丸く収まると思うの
491 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/16(水) 20:14:51.91 ID:ksx7X9WIo
乙
ほ、ホモとショタコンは別物だから(震え声)
492 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/17(木) 00:51:51.99 ID:K8XdctQv0
>>487
そんな感じ…なんでしょうか 恐らく
これから出るんです><
木原くン常識人っぽい感じしません?
>>488
開発(意味深)
投下。
493 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/17(木) 00:51:53.12 ID:fPoFptgAO
+
494 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/17(木) 00:52:44.58 ID:K8XdctQv0
「なぁ」
「あン?」
「何でお前、絶対能力者進化実験受けなかったの?」
「別に。受けたところで何になる」
「何にって、無敵だろ。お前の望むところだったんじゃねえの?」
「…どンだけ高みに至ったとしても、ダメなンだよ。結局、例えば神様を飛び越してみたとしても……俺を嫌いな野郎は俺を殺しに来るンだ。なら、実験を受けても意味がねェ。……俺は、誰も傷つけたく無かったンだ。正直、反射する生活にも疲れて死のうと思ってた。これは言ったと思うンだが」
「ま、君主論を読んでもその辺は事実だしな。力で脅すってのは短期的な出来事にしか有効じゃねえ」
「ン。……妹達が元気ならそれが一番だと思ってる。何があったにしても、アイツ等が殺されてイイ理由はただの一つも存在しねェ。第三位と俺のせいで生み出されたンなら、面倒は看る。アレだな、無駄遣いして来なくて良かったってトコか」
「ははは、何かその言い分だと適当にヤったらデキちまった男みたいだな」
「どォしてそうすぐエロい発想に持って行けるンですかねェ…?」
「怒るなよ童貞。お前の理想って何なの?」
「ど、童貞ちゃうわァ。………理想?」
「参考までに」
「何の参考だヨ。……打ち止め含む妹達が生きてて、幸せで、…フィアンマくンも幸せで、幻想殺しさンも無事で、…後はまァ、ショタゲーが出来る環境なら、別に」
「別にって言う割には高望みで居やがるな」
「なーンなーンですかァー。参考までにとか言いやがるから答えたンだろォが」
「はいはい、短気になるなって。それだけ聞けりゃ満足だ」
「何が」
「何でも。…気にすんな」
俺には、理想が無い。
俺には、前向きな生きる理由が無い。
俺には、大事なものが無い。
俺はどう足掻いたところで、暗部に身を置く様なクソ野郎であることに変わりはない。
それでも、コイツがそんな甘っちょろい理想の世界を望むなら。
作ってやっても良いかな、と思う。
守ってやろうか、と、思う。
いいや。
守り通してみたいと、思った。
495 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/17(木) 00:52:46.69 ID:fPoFptgAO
+
496 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/17(木) 00:53:11.53 ID:K8XdctQv0
九月三十日。
上条当麻は、御坂美琴とのバツゲームを履行していた。
内容としては、携帯電話のペア契約だった。
何でも、ペア契約をすること美琴の好きなキャラクターのストラップをもらえるらしく。
青色の方のストラップを受け取った上条は言われるがまま携帯に着け、彼女と別れた。
上条「…ってあれ? 御坂?」
10032号「ミサカの名前はミサカですが、どなたでしょうとミサカは聞き返します」
オリジナルの知り合いでしょうか、等と機械的な話し方をする御坂美琴(?)。
上条は首を傾げながら、しばらく話してみる。
御坂美琴ではなく、どうやら御坂美琴の妹らしい。
上条「そっくりさんだな」
10032号「このミサカは体細胞レベルでお姉様と同一ですから、とミサカは頷きます」
上条「体細胞…? ってことは双子?」
10032号「そんなようなものです、とミサカは間髪入れず誤魔化しました」
上条「あ、試作品販売してる。ひよこまんじゅう食う?」
10032号「見ず知らずの少女にひよこまんじゅうを奢るとは、貴方はナンパ師ですか。と、ミサカは軽蔑の眼差しを向けます」
上条「違ぇよ! 大体、自己紹介しあったら見ず知らずじゃねえし。どうせなら、一人よりは二人で食べた方が美味しいだろ? お菓子とかは」
10032号「…菓子類の味は周囲の人員の多少に関わらず一定なのでは、とミサカは疑問に小首を傾げます」
10032号に対し、御坂妹というニックネームをつけた上条は、ひよこまんじゅうを奢った。
いつもフィアンマと一緒に何か食べているので、昼食以外を一人で摂取することに違和感があるのだ。
497 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/17(木) 00:53:12.49 ID:fPoFptgAO
+
498 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/17(木) 00:53:32.45 ID:K8XdctQv0
ふぃあんま「にゃー」
野良猫を追いかける。
右方のフィアンマは、そうして暇を潰していた。
空模様は、徐々にその機嫌を悪くしていた。
猫「なーん」
ふぃあんま「かんねんしろ」なでなで
猫「みぁ」ごろごろ
服従のポーズを見せた野良猫のお腹をもふもふと触り。
とうとう降り出した雨に、フィアンマは僅かに顔を上げた。
野良猫を追いかけていた時とはまるで違う。
どこか虚ろな。まるで、泥水を瞳に流し込んだかの様な。
ふぃあんま「……やつがおれさまのしらないかみじょうとうまであるのなら、しんでもかまわないはずだ」
言い聞かせる様に、彼はそう呟いた。
夕方。されど、帰る様子を見せないまま、フィアンマはぼやく。
死んでも構わないはずだ。
もし、彼が記憶喪失なら、それは別人なのだから。
上条当麻の姿をした別人に、構う必要は無い。
日常の動作から、フィアンマは上条が記憶喪失なのではないかと、疑っている。
もしも、そうであるならば。
これから起こる事件で上条が殺されてしまうにしても、フィアンマは手助けをする必要は無い。
……無いのだ。
それに。
右方のフィアンマには、やるべきことがある。
世界を救うという行為を成し遂げる、義務がある。
上条は、お前は世界を知らないと言った。
フィアンマは、その発言について、よく考えた。
だが、どう考えても。
一介の男子高校生である上条よりは、自分は、世界について知っている。
どれだけの人間が苦しみ、嘆き、笑顔を浮かべられないか、識っている。
ならば、やはり自分の情は押し殺して世界を救う他無い。
少なくとも、左方のテッラがその様な行為に及ぶのであれば、止めるべきではない。
上条当麻が死んだとしても、心を痛める必要なんて、どこにも無い。
きっと、彼には記憶が無い。無理をしている、させている。
そして、彼が死ねば、彼はもう無理をしなくていい。救われる。
悲しみ、心を痛めるどころか、笑顔で迎え入れるべき事案。悲しむ必要は、ない。
無いはず、なのに。
猫「みー」
抱き上げていた野良猫が、フィアンマの頬を舐めた。
ごろごろと喉を鳴らす。
上条の死を想像しただけで、涙が流れていたようだ。
ふぃあんま「……んん」
ぐし、と服の袖で、目元を拭った。
こわくない、こわくない、こわくない……。
499 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/17(木) 00:53:33.42 ID:fPoFptgAO
+
500 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/17(木) 00:54:11.62 ID:K8XdctQv0
垣根帝督が退屈を持て余し、外に出たのは夕方のことだった。
垣根「…あん?」
打ち止め「そこの人ー、ってミサカはミサカは呼び止めてみたり」
垣根「ああ、最終信号か」
適当に相槌を打ち、彼は打ち止めを伴っててくてくと歩く。
段々と暗くなってきた。
雨が降り出したので、未元物質で傘を作る。
ほら、と差し出された真っ白な傘に目を輝かせ、いかにも子供らしく、打ち止めは受け取った。
打ち止め「わ…ありがとうございます、ってミサカはミサカはぺこりと頭を下げてみる」
垣根「多様性の獲得の為に何でもすることにしてるからな。気にするな…っていうか、何でお前外出てきた訳?」
打ち止め「お散歩に出てきたタイミングがとてつもなく悪かったの、ってミサカはミサカはしょんぼりしてみたり」
垣根「なるほど」
なら、適当に散歩して、送ってやる。
そう言って、垣根も未元物質で創った傘を差し、歩いていく。
そんな彼等へ、唐突に。
車が、突っ込んだ。
垣根「……あ?」
舌打ちせんばかりの不機嫌な声音。
彼は打ち止めの前に立ち、車を徹底的に破壊していた。
車を止めるつもりが、力加減を誤ったらしい。
垣根「あーあー…こっちはせっかく良い気分でガキと散歩してたってのに…」
車の"中身"を確認し、垣根は歪んだ笑みを浮かべる。
垣根「おやおや。資金繰りかどうかは知らねえが、カタギに手ぇ出すのはどうかと思うぜ? 後処理部隊<小間使い>が大忙しだ。…さて、と。暗部の案件は暗部の人間が片付けるってのがセオリーだ」
垣根は打ち止めに目を塞いでいる様告げ、"中身"を引っ張り出す。
下っ端だろう、男はふるふると震えていた。
垣根「俺は格下は基本的に見逃すタイプなんだが…どうしたい? 今なら、葬式プランと結婚式プランがあるぜ?」
男「ひ、ひっ…」
垣根「葬式はそのまんま。結婚ってのは…ま、地獄の底で婚活してろって感じか」
鼻で笑い、垣根は男の頭を掴む。
みしみし、という、純粋な握力とは思えない、凄まじい力が加わった。
打ち止め「も、もう目を開けてもいい? ってミサカはミサカは首を傾げてみる」
垣根「もうちょっと閉じてて」
垣根は男を放り、未元物質の操作により、素粒子単位で分解した。
当然、そんなことをされて生きながらえる人間など、まず存在しない訳で。
垣根「…ま、こんなもんか。恨むんなら自分の上司を恨むんだな」
どこの誰かは知らないが、と呟き。
たまにはこんな事もあるだろう、と気分を切り替えかけて。
不意に、目眩がした。
??「いやー、困っちゃうんだって、こっちもそういう慈善事業されちゃうと」
501 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/17(木) 00:54:12.56 ID:fPoFptgAO
+
502 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/17(木) 00:54:28.79 ID:K8XdctQv0
やりにくいよねえ。
下劣な声色。
垣根は気分を元に戻し、振り返った。
垣根「…テメェは」
数多「はっはぁ、わかっちゃったかなぁ? あのクソガキちゃんと暮らしてるようだし」
垣根「……一方通行、…木原数多か?」
数多「ご名答ご名答」
肩を竦めて、彼は手の中にある鈴の様なものを揺らす。
目眩がした。先程と、同じ。
うまく、演算出来なくなる。頭が痛い。
垣根「…AIMジャマー…キャパシティダウン…いや、違うな……」
数多「何でもいいだろ。って訳で回収だ」
垣根「……そのガキを、何に使うつもりだ」
数多「クソガキに次ぐ頭なら、大体予想はついてるだろうがよ。何せ、"最終信号"だ。金にもなるし、利益にもなる」
打ち止め―――最終信号。
彼女一体を手に入れれば、それ即ち世界中に散らばる20000体の妹達を手に入れたも同じ。
何せ、打ち止めは生ける入力装置なのだから。
何をするかはわからないが、あの木原一族の研究者が動いたのだ。ロクなことにはなるまい。
数多「こっちはこっちで仕事なんだ、ま、目ぇ瞑ってりゃ終わる」
打ち止めがどうなろうと、垣根帝督の人生には関係ない。
だけれど。
打ち止めが酷い目に遭わされるということは。
一方通行の死ぬ気の頑張りが、無駄にされるということだ。
『……俺は、誰も傷つけたく無かったンだ』
『……妹達が元気ならそれが一番だと思ってる』
『……打ち止め含む妹達が生きてて、幸せで、…フィアンマくンも幸せで、幻想殺しさンも無事で、』
垣根「さ、せるか……」
目眩がして、ふらふらとする。うまく立てない。
演算をしてみても、思い通りのものが創り出せない。
数多「お前も暗部の人間なら、甘い理想なんざ現実のそれに劣ることがわかってんだろ」
一般人が食物にされても、仕方が無いだろう。
そう嘲笑う木原数多は、数ヶ月前の垣根に酷似していた。
垣根「わかってる。……だがな、…一方通行が、打ち止めに生きろって思ってるから、…それを、叶える」
数多「ホモかお前。正直引くわぁ」
やれやれと呆れた声を出し、木原数多は踏み込む。
そして、うまく演算出来ない垣根の腹に、重い一撃を叩き込んだ。
垣根「ご、ッ…」
世界が揺れる。
膝を、ついた。
打ち止めが、何かを叫んでいる。自分を心配しているようだ。
垣根は何も言えないまま、歯ぎしりをして、倒れた。
意識が、闇の深淵へ沈む。
503 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/17(木) 00:54:29.69 ID:fPoFptgAO
+
504 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/17(木) 00:54:56.43 ID:K8XdctQv0
上条当麻は、家に帰るべく歩いていた。
やや小走りなのは、雨が降っているからでもある。
そうして、気がついた。
人が街中に一人も見当たらない。
否、違った。
倒れている。
上条「……何、だ…?」
一人二人ならば、まだわかる。
数十人単位、まだ理解出来る。
だが、見る人見る人全員が倒れていて。
病院に電話をしてみたはいいものの、繋がらない。
上条「どういうことだよ…?」
どうすればいいかわからないまま、走る。
不意に、爆風が吹き荒れた。
思わず、顔を腕で覆う。
上条「うわ、」
????「んー、ビンゴ」
明るく、若い女の声が聞こえた。
目の前に居たのは、修道女…と思われる、黄色い服を着た女。
顔が歪む程大量のピアスを装着しており、舌からは長いピアスが垂れている。
ヴェント「先に自己紹介しておこっか。私は、前方のヴェント」
上条「魔術師か!?」
ヴェント「おや、ご名答。目的は、上条当麻の右手ー…なんだケド、私力加減って苦手なんだよね。って訳で、手っ取り早く死んでもらえるカナ」
明るい声音が、かえって寒気を生じさせる。
上条は、のろのろと一歩下がった。恐ろしかった。
自分から首を突っ込んで戦ったビショップ・ビアージオとは、違う。
上条「何で俺が死ななきゃならねえんだよ」
ヴェント「主の敵だから。…ほら、この通り教皇直々のサインもあるよん」
見せられた紙の内容はイタリア語で、読めない。
だが、Toma Kamijoと綴られている部分は、読めた。
これはあくまで上条のイメージだが、今までローマ正教に逆らってきたツケなのだろう。
ヴェント「ま、安心してイイよ。アンタをぶっ殺した後、フィアンマは私が連れて帰るから」
アフターケアも万全でしょ、等と笑っている。
前方のヴェント。
なるほど、右方のフィアンマと類似的な名称だ。
ヴェント「どうやら"本命"が効かないみたいだし……ま、ラクに死ねると思わない方が良いよ」
上条「ッ、」
ヴェント「残念だけど、幸せになりたかったらドマゾにでも目覚めてね」
ハンマーが、振るわれる。
505 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/17(木) 00:54:57.56 ID:fPoFptgAO
+
506 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/17(木) 00:55:14.03 ID:K8XdctQv0
『…どンだけ高みに至ったとしても、ダメなンだよ』
『結局、例えば神様を飛び越してみたとしても……俺を嫌いな野郎は俺を殺しに来るンだ』
『なら、実験を受けても意味がねェ』
『……俺は、誰も傷つけたく無かったンだ』
『正直、反射する生活にも疲れて死のうと思ってた』『これは言ったと思うンだが』
綺麗事を貫いて生きている真っ当な人間。
自分よりも上位にありながら、美しい道を歩もうとする者。
殺人者である垣根帝督には、その背中を追う事しか出来ない。
その隣を歩くのが、精々なのかもしれない。
だが、だから何なのか。
そもそも、自分は。
垣根帝督は―――『第二候補』だ。
ならば、『第一候補』に取って替われる筈。
それ程の素質と実力が、この自分にあるのなら。
出来る筈だ。一方通行の理想一つ、守ってやる位。
出来ることをさせてもらえないのは、ストレスだ。
「……ふざ、けんじゃねえ、ぞ…」
アイツが望んだ世界が、汚らしい土足で踏み荒らされるのは、我慢ならない。
ムカついた。
507 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/17(木) 00:55:15.02 ID:fPoFptgAO
+
508 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/17(木) 00:55:31.80 ID:K8XdctQv0
雷光によく似た、何かの光。
ヴェントはそれを見るなり、上条を殺害するのを一旦中止にして消えた。
残された上条は咳き込み、しかし嫌な予感がして、走っていく。
鉄橋の下、空いたスペース。
一時間程走ってようやく辿りついたそこには、上条の友人が居た。
自らをバケモノだと蔑んで、それでも友達を守ろうと一生懸命だった、風斬氷華という少女だった。
ただし、様子が違う。
彼女の頭の上には天使の様な輪っかが浮かんでいるし、舌を突き出していて、その瞳は空虚。
彼女の意思を無視して、その輪っかの様なものが彼女を操っている様に思えた。
彼女の向かい側には、一人の女。
先程まで上条を殺そうとしていた、前方のヴェント。
ヴェント「何かと思えば、人工の天使か…」
呟いて、彼女は数度咳き込む。
魔力循環の不完全により、内臓が傷ついていた。
上条は風斬を庇う様に、ヴェントの前へ立った。
ヴェント「げほ、…あん? あら、逃げると思ってたんだケドね」
上条「コイツは、俺の友達なんだ」
勿論、正確には覚えていない。
だが、以前の自分ととても親しかったということは、知っている。
ならば、守らなければならない。
ヴェント「友達? あぁ、ナルホド。罪人同士で傷の舐め合い、か」
上条「…罪人?」
ヴェント「科学で創り出された天使なんて吐き気がする。完全に神様を馬鹿にしてるとしか思えない」
うええ、と吐きそうであるというジェスチャーを交えているその声には、悪意がある。
ヴェント「ま、いいか。そのバケモノごと、粉砕してあげる」
上条は、一度だけ風斬を振り返った。
日記によると、気弱ながら優しくて可愛かった少女らしい。
誰のせいかは知らないが、どう見ても、何かに耐えている様に見えた。
何かを強制されていて、苦しんでいる。上条には、そう見えた。
上条「大丈夫だ、風斬。俺が、助けてやる」
具体案など無いままに、それでも、上条は言った。
通じているかどうかは、わからなかった。
509 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/17(木) 00:55:32.83 ID:fPoFptgAO
+
510 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/17(木) 00:55:53.28 ID:K8XdctQv0
未元物質の制御を、無事取り戻す。
大量の"視界"を作り、撒いた。
学園都市中を見張れば、打ち止めを見つけられる筈なのだ。
何処に居るのかはわからないが、『学習装置』がどうだのと言っていた気が、する。
ならば、何処か落ち着いた状況で学習装置を使用しているはずだ。
先程の雷光に似た何かは何だろうか。見に行っている余裕も、暇も、無い。
携帯電話が、震えた。
確認しないで電話に出る。
一方通行だった。
一方『オマエ外出長いンだよ。何処行ってンだ』
垣根「散歩だよ、散歩」
見つけた。
みつけた。
ミツケタ。
引き裂いた様な笑みを浮かべ、垣根は歩いていく。
垣根「もう少ししたら帰れるとは思うんだが」
一方『ふゥン』
垣根「今日の晩飯何だっけ?」
一方『今考えてる』
垣根「そ。デザート付きで頼むわ」
一方『デザート、ねェ』
垣根「適当に…そうだな、カスタードパイとか。冷凍庫にパイ生地あっただろ?」
一方『ン…おォ、あった』
コツ、コツ、と革靴の音を響かせ。
垣根帝督は、木原数多と、『猟犬部隊』の居るビルへ近づいていく。
『猟犬部隊』の一部と思われる数人に襲われるも、視線すら向けず、惨殺した。
後の片付けは、わざわざ垣根帝督が気を配るようなことではない。
一方『騒がしいな。ケンカか?』
垣根「ただ単に雨じゃねえの? って訳で、ちょっと遊ぶから切るわ」
通話を終える。
携帯電話を、ポケットにしまいこんだ。
垣根「……行くか」
打ち止めを、助けに。
一方通行の理想を、叶えに。
511 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/17(木) 00:55:54.13 ID:fPoFptgAO
+
512 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/17(木) 00:56:29.06 ID:K8XdctQv0
「今まったく同じ立場の人間に、その一言を叫べるのかよ!!」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「……『神の如き者』をつかさどるたちばとして、たすけないわけにもいくまい」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 右方のフィアンマ
「―――私の弟は、科学に殺された」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 前方のヴェント
「ihbf殺wq」
学園都市第二位の『超能力者』・『未元物質』―――― 垣根帝督
「なん、だ…? そりゃ……」
『一方通行』を開発した『木原一族』の科学者――――木原数多(きはらあまた)
513 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/17(木) 00:56:30.75 ID:fPoFptgAO
+
514 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/17(木) 00:57:18.80 ID:K8XdctQv0
今回は以上です。
主人公が上条さんと垣根くんに決定しました。
515 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/17(木) 01:17:09.85 ID:AIuh1sTro
乙!
やっぱりホモじゃないですか!(歓喜)
516 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/17(木) 01:45:24.57 ID:nIlQ5PEy0
乙
幻想右方スレだと思ったら垣一スレでもあった、な、なにを言ってるかわからねーと思うが俺得です
ヒロインに打ち止めが含まれててこの展開は……打ち止め→垣根→一方通行→ふぃあんま→上条になる可能性が微レ存?
ショタコンのホモをロリが攻略するのは難度高いな
517 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 14:56:26.40 ID:awKPDEtm0
復旧した。よかった
518 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 17:55:34.06 ID:s7huj8V0o
ていとくんのもふもふが黒くなっちゃうでござる
519 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 19:15:20.31 ID:OUscSiaf0
乙
元々ていとくんってホモっぽいんだなあ
520 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 20:38:20.94 ID:zlHZG8oSO
家に帰ってカスタードパイを焼いていたエプロン姿の一方通行を見たら、さらに「おかえり」とか言って出迎えてくれたら……
俺は多分奇声を上げながら腹パンしちまうと思うんだ
521 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/18(金) 21:00:36.01 ID:A8LUTjqy0
>>516
微レ存ですね!
一方さんが初恋相手ならホモじゃないから、科学的にはホモじゃないから(震え声)
>>517
投稿不可本当困りました 良かった
>>519
偏見なんだよなぁ…(同意)
>>520
男がカスタードパイ焼いてくれてお出迎えしてくれたのに…?(困惑)
投下。
522 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 21:00:37.27 ID:UbWdZOgAO
+
523 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/18(金) 21:01:39.03 ID:A8LUTjqy0
拳を握って、踏み込む。
風の弾丸が飛んできたが、右手を突き出して、残りは避けた。
身体が、覚えている。
この様な異能との戦いに、どの様に応答すべきか。
雷撃を向けられたことがあるから、知っている。わかっている。
「ッ、こんな事して、戦争になったらどうすんだよ!」
魔術サイドと科学サイドは、本来介入してはいけない。
相互不干渉によって、その領域を保つのだ。
機密は守られるし、お互いその方が良い。
だが、こんな、科学ど真ん中へ魔術を持ち出して攻撃をすれば。
確実に関係は悪化して、最悪戦争にまで発展してしまう。
「なってしまえばいいのよ! こんな街、消えちまえばいい!」
「何だってこの学園都市をそんなに憎んでやがる!」
ぴたり、と攻撃が止んだ。
不気味な静寂。
ただ、風斬の体から、ジジ、という不気味な音だけが響いた。
「―――私の弟は、科学に殺された」
「…な、……に?」
時間が、止まった。
様な、錯覚を、覚える。
上条の視線と動揺を受け、ヴェントはハンマーを握り直した。
「……私と弟は、学園都市の遊園地へ行った」
「…ゆう、えんち」
「私は乗り気じゃなかったんだケド、弟がどうしてもって言ったから。一回だけだよ、って…それが、間違いだった。何重もの安全装置、最新の軽量化素材、全自動の速度管理プログラム! ……頼もしい単語で満たされていたそのアトラクションは、誤作動を起こした。幼い私と弟は、二人揃ってグチャグチャの塊にされたんだ!」
「お前……」
「B型のRh-。今吐いてるこの血は、病理学的にはとっても珍しいモノだって医者は言ってたわ。輸血のストックもそうそう簡単には見つからない」
血液と共に、彼女は吐き捨てる。
「二人分の輸血なんて用意出来なかった。方々に連絡しても、一人分しか集まらなかった。どちらか片方しか助からないって。……そして、私だけが生き残った! お姉ちゃんを助けてくださいって、そう言ったあの子はそのまま見殺しにされたんだ!」
上条は、想像する。
例えば、フィアンマと一緒に遊園地へ行ったとする。
そして、事故に遭遇したとしよう。
フィアンマが上条を助けてくれと言ったから、自分は生き残り、フィアンマは死んでしまった。
上条当麻は、その時どう思う。
悔しいはずだ。悲しいはずだ。恨めしいはずだ。嫌いになるはずだ。
医者だけではなく、学園都市それ自体も。ひいては、科学そのものさえ。
けれど。
「……お前を助けてくださいって言ったその子が、こんな事を望むのかよ! そんな瀕死の状態で、それでもお姉ちゃんを助けてくれって言えたそんな優しい子が、こんな復讐を望むと思ってんのかよ!!」
「ッ、……血が足りなかったんなら、あの子に回せば良かったんだ! 私なんて助からなくても良かった! あの子が望んでるか、望んでないかじゃない」
瞳は憎悪に満ちている。
「私は私の為に復讐する! 私はあの子の未来を喰ったんだ!!」
「今まったく同じ立場の人間に、その一言を叫べるのかよ!!」
ヴェントは、言葉に詰まる。
『あの日』と同じ状況の姉弟が居ても尚、こんな言葉が言えるのか。
「―――は、」
そして、鼻で笑った。
そんな、良心の問題ではない。
「……この道は、…この人生は、私が決めた。今この場で話を聞いただけの野郎に歪まされる訳もない」
攻撃、再開。
524 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 21:01:40.38 ID:UbWdZOgAO
+
525 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/18(金) 21:02:15.13 ID:A8LUTjqy0
「…気分は最悪だな」
呟きながら、垣根はビルの階段を昇っていく。
演算を一時乱された影響で、頭はまだ少し痛いし、雨に濡れた身体は寒い。
能力を使えば乾かす事も出来るが、そんな気力も無い。
「よお。邪魔するぞ」
気軽な調子で言い、垣根はドアを蹴破った。
能力で補強されているにしても、彼の脚力は元々強い。
それこそ、その辺の女子中学生の肩を脱臼させられる程。
「あ? あー…やれ」
面倒臭そうに応答した木原数多に言われるがまま。
『猟犬部隊』は、垣根に銃口を向け、即座に引き金を引く。
「響かねえぞ、クソ野郎」
能力を用いて、一陣の風。
窓ガラスが割れ、何人もの隊員が自由落下させられていく。
この高さから自由落下すれば、ひとたまりも無いだろう。
木原数多は動じるでもなく、ポケットから取り出した鈴の様なものを鳴らす。
またしても、頭の中が揺さぶられた。演算が、うまくいかない。
「学習しないねぇ。ま、テメェの目的は『これ』だろうし、先に無駄な希望は折っとくわ」
言いながら、木原数多は『学習装置』の機械を足でグシャグシャに壊し、風斬を天使に造り変え、打ち止めを苦しませるデータ―――『ANGEL』の内包されているディスクも叩き折り、踏み潰した。
これでは、中身を読み取ってワクチンソフトを造る事も叶わない。
「ご、っぐ…」
カラクリがわからないままに、垣根は演算を繰り広げていく。
予想とは違うものが出来上がる。ダメだ、うまくいかない。
四苦八苦する垣根の胸に、蹴りが入った。
まともに防御出来ないまま、垣根は頭痛に膝をつく。
こうなっては、能力ではなく、普通に体術を使うしかない。
そう思うも、垣根の動きを先読みした様に、木原数多は避けて、攻撃を加えていく。
526 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 21:02:16.12 ID:UbWdZOgAO
+
527 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/18(金) 21:03:17.00 ID:A8LUTjqy0
「がっ、…げ、ぉ…ぐ…ぅ……」
「はっはぁ! どうした第二位! 勢いが無いぜぇ!?」
何度も膝蹴りを食らわされ、垣根は立ち上がれない。
段々と、意識が薄らいでくる。
恐らく、あの鈴の様なものは、AIM拡散力場に作用する、AIMジャマーとは別種のタイプ。
数学のプリントに答えを書いているのに、余計な数式を付け足す様なものだ。
演算式そのものに無理やり式を足されるのだから、角度は狂うし、思うようなものは作れない。
(どう、すればいい)
垣根が倒れれば。
背後で熱病患者の様に苦しむ打ち止めは、昏い未来へ突き落とされる。
きっと、垣根や一方通行が通ってきたそれよりも更に茨の多い、道を。
進む羽目に、されてしまう。
それ以外にも、どうすれば打ち止めを助けられるか。
ワクチンソフトは作れない、見た様子では打ち止めはウイルスの様なものをインプットされている。
垣根には、直したり、癒す能力は無い。
ただ、同じものを複製するしか無い。
打ち止めの手足なら元に戻してあげられても、脳は元に戻してあげられない。
(どうすれば、ッ)
誰でもいい。
自分には出来ない、後ろの幼い少女を助けられるなら。
神様でも天使でもいいから、誰か。誰か…。
圧倒的な暴力に叩きのめされながら、垣根は誰かを助ける事を考えられている自分に、垣根は失笑する。
そんな都合の良い人材が来てくれるのなら、そんな奇跡が起きるのなら、最初から誰も苦しんだりしないんだ……。
「……ふむ。あのかがくせいてんしをはつげんさせている"らいん"はこのしょうじょか」
「あ?」
「…あ…?」
垣根は、のろのろと、僅かに振り返った。
そこには、一人の幼い少年が居た。
右方のフィアンマ。
一方通行が誰よりも大切に思い、垣根が守る対象の一人。
「フィ、アンマ…君…?」
「……『神の如き者』をつかさどるたちばとして、たすけないわけにもいくまい」
言いながら、フィアンマは打ち止めの様子を眺め、床に膝をつく。
そして、指折り組むと、少々『特殊』な歌を歌い始めた。
魔術に詳しいものであれば、それは捻れ切った力の流れを元に戻し、天使を元の位相へ戻す術式だとわかっただろう。
垣根は、当然、わからない。
だけれど。
その歌は、何だかとても優しかった。
胸の奥がじりじりと圧迫感を受ける。
ありとあらゆる素粒子を観測する彼の脳は、フィアンマの扱う『天使の力』を一部観測していた。
別位相<天国>の粒子を観測出来る彼を、最早人間と呼称しても良いものか。
一瞬だけフィアンマに気を取られた木原が、猛攻撃を仕掛けてくる。
「……は、………ぁ…」
528 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 21:03:18.46 ID:UbWdZOgAO
+
529 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga !red_res]:2013/01/18(金) 21:03:40.71 ID:A8LUTjqy0
意識が途絶える直前。
自分の奥底から、何かがこみ上げてくるのを、垣根帝督は感じていた。
それは、言葉に出来ない『何か』。
どんな言語を使っても形容出来ない、もの。
530 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 21:03:41.82 ID:UbWdZOgAO
+
531 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/18(金) 21:04:03.69 ID:A8LUTjqy0
「ihbf殺wq」
垣根帝督の身体が、ゆらりと立ち上がる。
意識は完全に途絶えた筈だった。
能力によって脚力を補強している様にも、思えない。
垣根の体はズタボロで、立ち上がれる筈なんて無かった。
だが、それはあくまで理論上の話。
垣根帝督の、その少年の、背中には。
右が白、左が黒の翼が、六枚―――宿っていた。
正体不明、説明不可。
『未元物質』によって形作られた翼とも、違う。
「なん、だ…? そりゃ……」
あまりにもオカルト染みた光景に、思わず木原数多は、呆然とした。
笑いまで出てしまう。どうすれば対処出来るというのか。
「ああ…? オイ、…何だ、そりゃあよ…お前、その背中の……わかってんのか…?」
「………sfxjgkhuwijsh」
おおよそ、地球上には存在しない言語。
フィアンマには理解出来て、木原数多には理解出来ない言葉。
その言葉と同時、攻撃が放たれた。
木原数多はモロにその攻撃を受け、流星の様に吹き飛び、やがて燃え消えた。
532 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 21:04:04.86 ID:UbWdZOgAO
+
533 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/18(金) 21:04:19.03 ID:A8LUTjqy0
垣根帝督が膝をつくと同時に、術式の行使が終わる。
フィアンマは打ち止めと垣根を交互に見、垣根へ近づいた。
彼の懐に手を差し込んで携帯電話を奪取し、病院へ電話をかける。
幸いにも、医者は気絶していなかった。
『天罰術式』から逃れているとは珍しい事もあるものだ、とフィアンマは思う。
医者の所在と無事を確認した後、フィアンマは垣根の懐へ携帯電話を戻す。
そして、打ち止めを垣根の身体に背負わせ、その垣根の身体を抱き上げた。
まるで巨大な米袋を持つかの様に、それでも頼りなさそうな挙動は一切無く。
フィアンマは彼らを病院へ運び込むべく、歩き出す。
534 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 21:04:19.90 ID:UbWdZOgAO
+
535 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/18(金) 21:04:49.53 ID:A8LUTjqy0
戦いは、終わった。
上条はヴェントを治療させようと、近づく。
いくら科学が嫌いだといっても、病院で治療を受けさせた方が良いに違い無い。
上条には観測出来ないものの、彼女の内外はズタボロの筈だ。
そう思った彼だったが、突然の爆風に顔を手で覆った。立ち止まる。
????「彼女はこちらで回収する」
上条「っ、誰だ!」
アックア「…『後方のアックア』。……それだけで充分であろう」
青系の長袖シャツ。
ゴルフウェアを連想させる、スポーティな格好。
茶色の髪。
白人。
静かな雰囲気。
ありとあらゆる面でフィアンマと対極に存在する、一人の傭兵。
後方のアックア。
上条「待てよ。…そいつは、間違った思い込みで苦しんでる! そして、『神の右席』に居る限り、その苦しみからは逃れられない」
彼女を解放しろ、と上条は言う。
敵にも関わらず、ヴェントを人生単位で心配する少年に、アックアは僅かに笑みを浮かべた。
馬鹿にする様なそれではなく、子供が短冊に綴ったお願い事を読む大人の様な微笑みだった。
アックア「…彼女は、この組織に居る為に様々な犠牲を払ってきた。……じきに住人も目を覚ます。霊装が破壊された以上、もはや『天罰術式』は有効ではないのである」
安心しろ。
言い残して、彼はヴェントを背負い、去っていった。
残された上条は、視線を落とし、ついで、風斬に走り寄る。
その性質上、右手で触れてしまわないよう気をつけながら。
上条「…風斬、もう大丈夫だ」
風斬「……あ、…わた、…し…ごめん、…なさい…ごめんなさい…」
泣きそうな顔をする風斬の頭を左手で撫で。
上条は、優しく微笑みかける。
上条「…もう、終わったんだよ」
むしろ、何もかもが始まってしまったのを感じ取りながら。
上条は、優しく、言い聞かせた。
536 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 21:04:58.26 ID:UbWdZOgAO
+
537 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/18(金) 21:05:22.35 ID:A8LUTjqy0
フィアンマは、垣根と打ち止めが治療を終えるまで、暇そうに待っていた。
待合室でパタパタと脚を揺らしていると、一足早く復活した個体の内、00001号が近寄ってきた。
治療するにあたっても、人員が多すぎては邪魔らしい。
00001号「お久しぶりです、とミサカは頭を下げます」
ふぃあんま「む」
00001号「食べますか、とミサカはペロキャンを差し出しました」
葡萄味のペロペロキャンディー。
彼女は既に一つ口に含んでおり、フィアンマの隣に座る。
記憶力の良いフィアンマは、見分けをつけていたらしい。
ふぃあんま「00001ごうだったか」
00001号「よくおわかりで、とミサカは肯定します」
もぐもぐと飴を口に含み、フィアンマはぱたぱたと脚を動かす。
葡萄の味付けがされたそれは、甘く口の中で味を広げていく。
美味しい。
ふぃあんま「このあいだ、ねこにえづけをしていたな」
00001号「愛らしかったので、とミサカは肯定しました」
ふぃあんま「かわんのか」
00001号「病院では飼えません、とミサカは落ち込みを見せます」
ふぃあんま「いえはないのか」
00001号「要求をすれば得る事も出来ますが、一方通行に迷惑をかけたくありません、とミサカは呟きます」
ふぃあんま「しゅしょうなことだ」
飴をぼりぼりと噛み砕き、ゴミを燃やし、フィアンマは立ち上がる。
垣根と打ち止めの治療が終わった。
ストレッチャーで運ばれていく彼らについていき、病室へ入り込む。
538 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 21:05:23.35 ID:UbWdZOgAO
+
539 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/18(金) 21:05:42.47 ID:A8LUTjqy0
大部屋のベッドの上。
垣根帝督は、目を覚ました。
垣根「…あん?」
ふぃあんま「めがさめたか」
垣根「…、…運んでくれたのか?」
ふぃあんま「いかにも」
能力持ちか、と勝手に納得しながら、垣根はぼんやりと天井を見つめる。
垣根「…悪かったな。最終信号―――打ち止めを助けてもらって」
ふぃあんま「……まぁ、かがくせいのてんしをみているのはきぶんがわるいしな」
垣根「天使?」
ふぃあんま「こちらの話だ」
垣根「……だっる」
ふぃあんま「ぼこぼこにされていたからな」
垣根「自覚はある。……ま、打ち止めもフィアンマ君も無事みてえだし、良いか……」
ふぃあんま「あくせられーたにれんらくせんのか」
垣根「ああ、忘れてた。…ちくしょう、晩飯抜きかよ…」
病院食嫌い、などとぼやいて、垣根は携帯電話を取り出す。
そして、一方通行に電話をかけた。
一方『どンだけ遊ンでンだよ』
垣根「悪い、一週間位入院だわ」
一方『あァ!?』
垣根「俺の着替えとか適当に持ってきて。あ、打ち止めも居るから」
一方『意味分かンねェンだけど』
垣根「病院来てくれたら説明してやるよ。あ、病室番号は302」
一方『……チッ。ハイハイ』
通話を終えた垣根は、病室から出て行くフィアンマを視線で見送り。
後は野となれ山となれ、と目を閉じた。
540 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 21:05:43.34 ID:UbWdZOgAO
+
541 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/18(金) 21:06:10.97 ID:A8LUTjqy0
上条がこの先のことを思って鬱々と歩いていると。
後ろから、『にゃーん』という可愛らしい声が届いた。
上条「ん?」
ふぃあんま「にゃー」
上条「おお、…怪我とか無いか?」
ふぃあんま「もんだいない」
フィアンマに抱きつかれ、うっかりずっこけそうになりながら、上条は抱きとめる。
よしよし、と頭を撫で、うっかり口をついて問いかけが出そうになった。
『神の右席が俺の右手を狙ってきてるのは、お前の指示なのか』。
言える筈がなかった。
仮にそうだったとしても、問い詰めたくなかった。
毎日の生活の中で、上条はフィアンマを傷つけたくないという気持ちが高まっているから。
フィアンマ当人から申告されるならともかく、問い詰めたくは、無い。
上条「っていうか、この雨の中何処に居たんだよ」
ふぃあんま「のらねことたわむれていた」
上条「あ、だから『にゃー』なのな」
ふぃあんま「にゃーん」
上条「はいはい、お家帰ったらご飯なー」
返事をしながら、上条はてくてくと歩いていく。
ご飯よりも先に、このびしょ濡れでは風呂が先かもしれない。
戦争になど、ならなければいい。
そう願いながら。
それでもやはり難しいだろうとも、思ってしまって。
上条は、繋いでいる手に、力をこめた。
542 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 21:06:11.93 ID:UbWdZOgAO
+
543 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/18(金) 21:06:28.90 ID:A8LUTjqy0
垣根帝督の携帯電話に。
差出人不明、アドレスが文字化けを起こしているメールが届いた。
曰く。
『順位繰り上げ、おめでとうございます』
544 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 21:06:29.83 ID:UbWdZOgAO
+
545 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/18(金) 21:07:32.24 ID:A8LUTjqy0
「俺も魔術師になりたい……」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「………なんだ、いまのは」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 右方のフィアンマ
「第一位になったからって調子乗ってんの、粗チンピラ? 死ねっつーかブッ殺す」
学園都市第四位の『超能力者』・『原子崩し(メルトダウナー)』―――― 麦野沈利(むぎのしずり)
「ぶっ殺されてえの? 行き遅れ」
学園都市第一位の『超能力者』・『未元物質』―――― 垣根帝督
「……あのさァ…」
学園都市第二位の『超能力者』―――― 一方通行
546 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 21:07:33.47 ID:UbWdZOgAO
+
547 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/18(金) 21:08:24.78 ID:A8LUTjqy0
今回はここまで。
こんな調子でロシア編まで行く予定です。
548 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 22:19:58.88 ID:TzoXUtxt0
乙
一方通行越えたか・・・
第一位でいて欲しかったがこれはこれで面白い
549 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 22:42:06.16 ID:OUscSiaf0
おおーつ。
垣根第一位おめでとう!
550 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/18(金) 23:26:29.59 ID:DD7sk/hYo
乙
ていとくんは粗チンじゃないから(震え声)
551 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 02:43:08.66 ID:yxqcvBTSO
乙
一方通行が毎日花持ってお見舞いに来てくれたら、俺はその度に「しね」と言ってしまうだろう
552 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 13:50:59.94 ID:/rPXXwl40
垣根くん第一位おめでとう!
>>551
調子こいてんじゃねーぞこの野郎(棒読み)
投下。
553 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 13:51:00.96 ID:rLMNQsiAO
+
554 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 13:51:22.70 ID:/rPXXwl40
十月三日。
救われないべき人間が救われれば、救われるべき人間が救われない。
怒りと悲しみの交錯する日。
何も知らないまま怠惰に過ごす日常の学生は、ただ平穏を享受する。
その陰で何人が泣いて、喚いて、命乞いをしているか、知らないで。
そうして知らないことが尊いかの様な顔をして。
知っている側の苦労など何一つ知らないまま。
そうして初めて踏み込んで、泣いて助けを求めるのだ。
冷酷なルールに従っていても、表の様に守られはしないのに。
「ひ……が、ごぉっ、ぐ」
「こっちは病院抜けて仕事にしに来てんだから、さっさと死んでくれねえかな」
「げほ、ぉご…!!」
「浜面仕上だっけ? 馬面? ま、いいや。死んどけよ」
垣根帝督は淡々と言って、足に力をこめた。
能力に補強された脚力に潰され、少年の頭部はあっさりと破壊される。
ぐしゃあ、と散らばる脳漿に肩を竦め、僅かに革靴へ付着したそれを壁へ擦りつけ。
妹達の関係者と思われるそっくりさんを逃した後、垣根はのんびりと伸びをした。
病院へ戻らなければならないだろう。スキルアウト討伐とは、疲れる仕事だった。
「……ちったあ甘い人間になったかと思いきや、やっぱり俺の本質は変わらねえな」
素っ気なく呟いて、垣根は欠伸を呑み込む。
向かう先は、自らの入院している病院の、病室。
学園都市第一位になっても、見える景色に変化は無かった。
555 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 13:51:23.80 ID:rLMNQsiAO
+
556 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 13:51:42.77 ID:/rPXXwl40
十月三日。
あくまで日常側に立つ上条当麻は、本日。
楽しいすき焼き鍋パーティーなのだった。
クラス総出のこれは、小萌が敗退ながらも健闘したクラスの皆への労いの意味合いを持つ。
完全下校時刻が過ぎた夜、第七学区のすき焼き屋における鍋パーティーは盛況だった。
夕飯を此処で済ませようと思った上条により、フィアンマも参加している。
青ピ「かわええなあ。あ、これ食べる?」
ふぃあんま「なんだこれは」
青ピ「白滝やで、白滝」
ふぃあんま「…しらたき?」
青ピ「こんにゃくの亜種やね」
ふぃあんま「なるほど」
生卵は敬遠しながらももぐもぐと食べるフィアンマは、色々な人間から可愛がられていた。
具体的には女子からは愛でられるし、男子からは鍋の中身をよそってもらえる。
上条「美味いか?」
ふぃあんま「あまいあじつけはきにいった」
わりしたー、と楽しそうなフィアンマは既に満腹なのか、上条に引っ付いてうとうとしている。
帰りはおぶって帰る事になりそうだな、と思いつつ、上条は柔らかく笑んだ。
557 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 13:51:43.63 ID:rLMNQsiAO
+
558 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 13:51:58.02 ID:/rPXXwl40
病室に戻ると、打ち止めが引っ付いてきた。
垣根に助けられて以来、彼女は懐いているのである。
そんな二人の様子を見て、一方通行は鼻で笑った。
一方「ロリコンは滅びるべき、じゃなかったでしたっけェ?」
垣根「別に俺ロリコンじゃねえし、…引っ付くな」
打ち止め「お帰りお帰りー、ってミサカはミサカはガン無視であなたに抱きついてわ、わわっ、あはっ、あはははは!」
垣根「寝てろ」
面倒臭いので打ち止めをくすぐりながら、垣根はやれやれとため息をつく。
一方通行には、何があったのか、全て話した。
仕事としてのそれは知らずとも、一方通行は暗部について知っているから。
怪我をする程身体を張る必要があったのか、と問われて。
理由を口にしたら、笑われた。
馬鹿じゃねェの、と笑われた後、ありがとう、と言われた。
だから、何も言えなくて、垣根も笑って返すしか無かった。
言えばわかってくれるこの距離が心地良い、と、垣根は思う。
559 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 13:51:59.09 ID:rLMNQsiAO
+
560 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 13:52:16.00 ID:/rPXXwl40
十月某日。
上条当麻はぐったりとしていた。
上条「俺も魔術師になりたい……」
何でそんなことを言い出しているのかというと、疲れているからだ。
如何に体力があるといっても、上条の毎日は慌ただしい。
御坂美琴からは理不尽に雷撃の槍を投げられるし、もう、何か、疲れた。
別に御坂美琴のせいだけではなく、鳥の糞が肩にかかったとか、色々理由はあるのだが。
上条「……っていうか、フィアンマは何処行ったんだろ…?」
散歩だろうか。
上条は首を傾げ、心配しながら、立ち上がる。
561 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 13:52:17.00 ID:rLMNQsiAO
+
562 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 13:52:41.64 ID:/rPXXwl40
十月某日。
垣根帝督と打ち止めは、この度めでたく退院することになった。
そして同時に、垣根宅に住人がもう一人増えた。
一方「……あのさァ…」
呆れた様な声を出すのは、現学園都市第二位の『超能力者』、一方通行。
現学園都市第一位の『超能力者』となった垣根は、まあまあ、と彼を宥める。
垣根「0930事件の時は良かったが、今度似たようなことがあった時に走っていくのは非効率だろ」
一方「…まァ良いか…」
打ち止め「何のお話? ってミサカはミサカはあのお部屋が気になるってそわそわしてみたり」
打ち止めが見つめているのは、ショタゲー&グッズ部屋だ。
非常に教育に悪い部類ばかりのそこは、一方通行と垣根以外立ち入るべからず、である。
一方「気ィ付けろ。あそこは呪われた部屋なンだ」
打ち止め「はっはー、呪いだなんてそんなオカルトなー、とミサカはミサカはご冗談をと肩を竦めておどけてみる」
垣根「家主の俺でさえそうそう入ろうとは思えねえ。女が入ると脚が徐々に腐っていく場所だ」
打ち止め「」
何それ怖い。
がたぶる、と無言で震え、打ち止めは絶対に入りません、と首を横に振る。
一方通行と垣根は無言で顔を見合わせ、無言でほっと胸をなで下ろした。
垣根「リハビリも兼ねて散歩してくる。打ち止めは頼む」
一方「ン」
打ち止め「ミサカも行くー! ってミサカはミサむぐぅ」
一方「放っておいてやれ」
一方通行に制止され、打ち止めはむぐむぐと身動く。
垣根はそんな二人をちらっと見、外へ出た。
563 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 13:52:42.66 ID:rLMNQsiAO
+
564 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 13:53:00.93 ID:/rPXXwl40
右方のフィアンマは、散歩していた。
上条が宿題ばかりに取り組んでいて、つまらなかったからだ。
構って欲しいからと、取り組みの邪魔をする幼稚さは無い。
そんな訳で、ひんやりとした路地裏を歩いていたのだが。
男「た、助けてくれえ!!」
左腕を欠損した男が、血液をボタボタと垂らしながら走ってきた。
どうしようか、と思っている内に、突然の閃光。
貫かれ、バタリと男が倒れる。フィアンマは首を傾げた。
??「…あちゃあ」
女の声が聞こえた。
んー、と悩む様な声。
??「バッチリ見られちゃったかな? んん、…逃げられても厄介だし、殺しちゃうか」
呟きの後、ビームの様なものが飛び込んできた。
咄嗟に避け、壁を焦がして抉り、張り付きながら、フィアンマは女を見やった。
彼女は、学園都市第四位の『超能力者』。
その名を、麦野沈利と言う。
麦野「…あ?」
ふぃあんま「………なんだ、いまのは」
能力者のビームか、ときょとつくフィアンマ。
対して、避けられた麦野は、プライドが傷ついた。
こんな子供に避けられるのは、我慢ならない。
麦野「……殺す」
彼女は、完璧主義者だ。
565 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 13:53:01.96 ID:rLMNQsiAO
+
566 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 13:53:18.11 ID:/rPXXwl40
垣根はコンビニで購入したミントキャンディーをもぐもぐと食べ、散歩していた。
ストロベリーミント味のこれは、口の中をさっぱりさせてくれる。
ふと視線を向けると、そこでは死闘が繰り広げられていた。
ちょっとした暗部抗争か何かか、とも思ったが、その割には一方的。
攻撃している側は、『アイテム』リーダー、麦野沈利。
攻撃されている側。
垣根がよく見知った顔だった。
右方のフィアンマ。
見目四歳児の、愛らしい七歳児である。
垣根はほとんど条件反射的に動いた。
未元物質の素粒子をバラ撒き、麦野の『原子崩し』を上空へ逃がす。
麦野「邪魔が次々と…」
垣根「ぶっ殺されてえの? 行き遅れ」
挑戦的に言いながら、垣根はフィアンマを後ろに隠す。
フィアンマは少しだけ判断に迷い、垣根の腰元にぎゅっと抱きつく。
麦野「第一位になったからって調子乗ってんの、粗チンピラ? 死ねっつーかブッ殺す」
垣根「誰が粗チンだコラ。よーし、ムカついた」
カチン、ときた垣根はぽんぽんとフィアンマの頭を撫でる。
彼はその気になれば、一歩たりとも動かずして麦野沈利を殺せる。
と、フィアンマが動いた。
麦野「!?」
動揺する麦野に抱きつき、そのまま地面へ押し倒す。
冷や汗をかいたのは垣根だった。何をしてくれているのだ、この子供は。
567 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 13:53:19.05 ID:rLMNQsiAO
+
568 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 13:53:35.29 ID:/rPXXwl40
麦野「この、」
至近距離でブチ抜いてやる。
そう思った麦野だったが、フィアンマと目が合って、動きを止めた。
ガキだろうと何だろうと、彼女は腹が立ったら壊し、殺す。
だというのに。
だと、いうのに。
麦野「……ぐ…」
ふぃあんま「……」
必殺☆うるうるおめめ作戦。
効果ありだった。
麦野沈利が普段まず出さない母性本能を刺激する。
手を振り上げた状態で、しかし動けないまま。
麦野沈利は沈黙した。
垣根はこの機に乗じて殺そうかと思ったものの、フィアンマの様子を見て、とりあえず留まっておく。
麦野「……、…」
ふぃあんま「……」
麦野は攻撃をやめ、フィアンマの髪を撫でる。
麦野の胸元に顔を埋めたまま、フィアンマはそのままでいた。
麦野は無言で立ち上がり、フィアンマを抱き上げたまま去ろうとする。
慌てて垣根は呼び止めた。
垣根「おい」
麦野「あん? 何よ」
垣根「その子は保護者が居るんだよ。離せ」
麦野「嫌」
垣根「さっきまで殺そうとしてただろうが」
麦野「気が変わった」
垣根「……待てコラ」
先程とは違う目的で、第一位と第四位は戦いを再開した。
569 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 13:53:36.15 ID:rLMNQsiAO
+
570 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 13:53:51.89 ID:/rPXXwl40
上条当麻がフィアンマを捜し歩いていると、クレープ屋に辿りついた。
新人ホスト染みた服装の少年と、黄色いワンピースに黄色いストッキングを穿いた少女の間の席に座っている。
少女と少年は仲が悪いのか、雰囲気はそこはかとなく悪い。
そんな中、その状態でクレープをもごもごと食べ、フィアンマは上条を見やった。
ふぃあんま「かみじょう」
垣根「ん、保護者の…上条当麻、か」
麦野「……、えっと、…フィアンマ君、だっけ?」
ふぃあんま「いかにも」
麦野「また会える?」
ふぃあんま「おれさまはげんざい、がくえんとしにすんでいるからな。きがあえば、またあうだろう」
クレープのゴミをゴミ箱に放り、フィアンマは席から下りる。
たたた、と上条に走り寄った。
上条「……友達にしては年齢離れ過ぎじゃないか?」
ふぃあんま「ゆうじんではないな。しりあいだ」
上条「ふーん?」
よくわからない交友関係を築いているなあ、と思いながら、上条は歩く
上条「今日の晩御飯カレーでいいか?」
ふぃあんま「…あまくちか?」
上条「中辛」
ふぃあんま「……」
上条「冗談だよ、甘口に蜂蜜入れたやつな」
平穏で平凡な毎日は、愛しい。
571 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 13:53:52.99 ID:rLMNQsiAO
+
572 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 13:54:25.84 ID:/rPXXwl40
「飼いませんからね?」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「…もっぷ……」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 右方のフィアンマ
「アンタが余計な事しなけりゃ、こっちだって休日を楽しめたってのに」
学園都市第四位の『超能力者』・『原子崩し』―――― 麦野沈利
「いやあ、まさか第一位になっただけじゃ交渉権獲得ならずとは思わねえだろ?」
学園都市第一位の『超能力者』・『未元物質』―――― 垣根帝督
「……死ぬンじゃねェぞ」
学園都市第二位の『超能力者』―――― 一方通行
573 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 13:54:26.92 ID:rLMNQsiAO
+
574 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 13:54:50.94 ID:/rPXXwl40
今回はここまで。
575 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 14:44:40.01 ID:u6h00t3So
乙
一方通行もはや専業主夫だな
そのうち行ってらっしゃいとおかえりなさいのキスとかし始めそう
576 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 15:15:41.16 ID:vj3GUtjfo
乙
姉ショタとか•••ふぅ•••
577 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 15:22:18.06 ID:VCabgYfz0
乙
むぎのんも落とされたか・・・
馬面は末永く爆発したなw
きっとみんなの願いをこのスレが体現してくれたんだ
578 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 15:38:25.53 ID:cNVm5YIt0
乙
むぎのんは母性が溢れてるからね、仕方ないね、年齢的n
打ち止め×垣根を見ると最終的にていとくんが死んでしまうんじゃないかと不安になる
垣根が死ぬ(瀕死になる)→寂しさのあまり打ち止めが呪われた部屋で腐る→その後、
>>1
の別スレのように垣根がショタで復活
⇒打ち止めお姉さん×ショタ垣根になる可能性が電子レベルで存在している…?
あ、ダメだ垣根がショタになったら一方さんが攻略される可能性のが高そうだ
579 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 21:07:37.93 ID:akJnz3aP0
>>575
アッー!
>>576
おねショタ良いですよね
>>577
惜しい人(?)を亡くしたものです…
>>578
あれ、こんなところに産廃が
垣根くんは死なない…予定です 予定…です…
ショタていとくんは一方さんに攻略されてしまいます
投下。
580 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 21:07:40.94 ID:rLMNQsiAO
+
581 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 21:08:05.92 ID:akJnz3aP0
垣根帝督は、『置き去り(チャイルドエラー)』出身の能力者だ。
『置き去り』とは、学園都市における社会現象の一つ。
原則、入学した生徒が都市内に住居を持つ事となる学園都市の制度を利用し、入学費のみ払って子供を寮に入れ、その後に行方を眩ます行為だ。
それを逆手に取り非人道的実験を行う研究チームも存在する。
そして、垣根は当然ながら、これらのチームに利用された。
一方通行も似たような経歴を持つが、それと同等―――否、それ以下に酷い扱いだった。
辛酸を舐め、汚泥の底で這い蹲る生活。
下等生物、実験体としてだけ扱われる、薬品漬けの日々。
有能無能問わず研究者達から見下され、地獄の底の暗部で、垣根は死体と共に育った。
そうして、思った。
いつの日か。
この血で汚れた手で、誰かを救ってやる。
誰かに脅されて人を殺す仕事をさせられている誰かを、助ける。
その思いは真っ直ぐだった。
そうして彼は、悪党の道を突き進んだ。
自分の道が悪と知っていて尚、彼は誇った。
救いを求めない非道であれ。誰よりも気高く、強く。
彼が目をつけたのは、統括理事長への直接交渉権。
この街のシステムを握れば、悲劇を食い止められると思った。
自分の様な哀しい『誰か』を二度と作らない世界を創ろうと、思った。
582 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 21:08:06.86 ID:rLMNQsiAO
+
583 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 21:08:23.16 ID:akJnz3aP0
垣根「…そう思ってた筈なんだが」
気付けば、友人が出来ていて。
幼い少女に慕われ、毎日を愉快に過ごす日々。
その愉快さに後ろめたさは無く、暗部という仕事に理解を示してくれる友人まで居る。
友人と呼んで良いかは曖昧だし、第一印象はお互い最悪だったはずだが。
守るべき対象が出来てしまって、相手方からも頼りにされている。
孤高の王で居るべき自分は、気付けば孤独とは程遠い場所に居た。
垣根「……まあいい」
悪党は孤独、だなんて。
そんな常識を気にする程、自分は小心者じゃない。
結論付て、彼は立ち上がる。
やるべきことがある。得なければならないものがある。
垣根の背中に、何かを視たのか。
一方通行は、静かに声をかけた。
一方「……死ぬンじゃねェぞ」
垣根は目を瞬き、振り返って笑う。
垣根「俺を誰だと思ってやがる。学園都市第一位の『未元物質』だぜ? 一方通行さんよ」
きっと、自分は間違ってない。
きっと。
584 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 21:08:24.08 ID:rLMNQsiAO
+
585 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 21:08:41.75 ID:akJnz3aP0
十月九日。
本日は、学園都市の独立記念日の為、祝日なのだった。
上条家は本日も平和そのもので。
フィアンマはというと、テレビをじっと見つめていた。
そこにはもふもふと柔らかで大きな兎の姿。
ふぃあんま「…もっぷ……」
呟きを漏らして、フィアンマはちらっと上条を見る。
対して、上条はそうめんを茹で、温かなつけ汁を作りながら端的に言った。
上条「飼いませんからね?」
ふぃあんま「うううー!」
上条「ウチにペットを飼う余裕なんてありません!」
ふぃあんま「……」
ぷくー、とほっぺたを膨らませ、フィアンマはテレビを消す。
そして、上条に近寄ると、話題を引きずらずに問いかけた。
ふぃあんま「かにかまはないのか」
上条「ん、あるぞ」
あーん、とかにかまを食べさせ、上条はよしよしとフィアンマの頭を撫でる。
心地良い平穏が、そこにはあった。
586 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 21:08:42.92 ID:rLMNQsiAO
+
587 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 21:09:01.18 ID:akJnz3aP0
垣根は数人の部下と共に、 素粒子工学研究所へとやって来ていた。
『ピンセット』を回収する為だ。
ピンセット。
正式名称は、『超微粒物体干渉吸着式マニピュレーター』。
磁力、光波、電子などを利用して素粒子を掴む(正確には吸い取る)事ができ、故にピンセットと呼ばれる。
盗難防止の為、クローゼットほどの大きさの金属製の箱をしているそれ。
垣根は丸ごと持っていく程馬鹿ではない、と簡単に組み替えていた。
必要最低限のパーツを使って組んでいけば良い。
出来上がったのは、中指と人差し指からガラス質の爪が伸びた金属製のグローブだ。
ガラスの爪の中には金属製の杭のようなパーツが通っている。
爪から抽出した素粒子を杭が分析、結果を手の甲の携帯電話のようなディスプレイに表示する仕組みだ。
素粒子工学研究所ではこれを用い、意図的に不安定にした物質を使った実験を行っていたらしい…が、垣根は気にしない。
研究所の一つや二つ、どうとでもなると知っているし、何よりも。
アレイスターの情報網の正体を掴む為の手段を得る為に、容赦の二文字は必要無い。
垣根「さて、と」
手に嵌め、ふふん、と垣根は楽しそうな笑みを浮かべる。
そこに、閃光が迸った。
垣根「…あん?」
ちら、とそちらを見やった。
『アイテム』と呼ばれる、正規メンバーが女四人の暗部組織だった。
垣根「邪魔すんじゃねえよ」
麦野「こっちも仕事でね」
垣根「せっかくの祝日だってのに大変だ」
麦野「アンタが余計な事しなけりゃ、こっちだって休日を楽しめたってのに」
垣根「いやあ、まさか第一位になっただけじゃ交渉権獲得ならずとは思わねえだろ?」
麦野「交渉権? ……ま、こっちも仕事だから。死んでもらえるかな」
垣根「お前、自分が格下だってこと忘れてねえか?」
『ピンセット』をカチカチと鳴らし、垣根はうっすらと笑む。
588 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 21:09:02.07 ID:rLMNQsiAO
+
589 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 21:09:25.67 ID:akJnz3aP0
麦野「…スタイリッシュ菜箸か何か?」
垣根「カッコイーだろ。ある意味ハンドメイドだぜ?」
無駄口を叩くも、攻撃は放たれている。
麦野の『原子崩し』の照準を『未元物質』による干渉で尽く外し、垣根は肩を竦める。
垣根「飽きたな」
言うなり、爆風が吹き荒れた。
正体不明の爆風の中、垣根は一人の少女の首根っこを掴んで高飛びする。
選ばれた少女は、フレンダ=セイヴェルン。
能力の判明していないたった一人を、垣根は獲物として選択したのだ。
如何に、妹達や一方通行、フィアンマを守ると決めていても。
だからといって、全人類に対しての博愛主義者へ、垣根は変貌した訳ではない。
垣根「ただいま」
フレンダ「ひゅ、…」
定規「遅かったね。お帰り」
彼らを出迎えたのは、『スクール』に所属している、派手なドレスの少女。
所持している能力は『心理定規』だ。
対象が"他人に対して置いている心理的な距離"を識別し、それを参考にして相手の自分に対する心理的距離を自在に調整できる…という恐ろしい能力だ。
彼女の能力は戦闘よりも、後方支援や尋問に向いていた。
これから行われるのは、尋問行為なのだ。
垣根「ワッカは?」
先程蹴りを入れて抵抗を剥奪したフレンダの細い身体を適当にベッドへ放り。
垣根はそう問いかけて、欠伸を呑み込んだ。
定規「ゴーグル君なら、『人材派遣』から人材を買い受けて、狙撃とか色々回ってるみたいだよ」
垣根「ふーん」
相槌を打ち、垣根はフレンダを見やる。
心理定規も、フレンダへ視線を向けた。
冷淡な四つの瞳に視線を向けられ、フレンダは小さく震えた。
フレンダ「な、何も話さないって訳よ」
垣根「心理定規」
定規「うん」
『距離』を、動かされる。
590 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 21:09:26.75 ID:rLMNQsiAO
+
591 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 21:09:42.68 ID:akJnz3aP0
麦野「…『メンバー』と『ブロック』が『アイテム』にやられてるみたいね」
白いふわふわしたニットのワンピースを着用した少女が、返事をする。
彼女は、『アイテム』所属の能力者だ。
レベル4―――『窒素装甲(オフェンスアーマー)』を所持する。
見かけは12歳位、(自己申告では中学生)の大人しそうな少女である
絹旗「やはり、私達が超狙うべきは『スクール』ですか」
麦野「まあね。加勢しても得にならないし」
そこで、三人目の少女が聞き返した。
彼女は、『アイテム』のメンバー。
滝壺理后。
いつもどこからか信号を受信してぼーっとしている天然系、または無表情癒し系の少女だ。
能力はレベル4―――『能力追跡(AIMストーカー)』。
肩の辺りで切りそろえられた黒髪に、ピンクのジャージという姿が基本スタイルである。
滝壺「ふれんだは…?」
麦野「見捨てる」
素っ気なく言って、麦野は歩いていく。
ひとまず、個人サロン辺りで身体を休めなければ。
絹旗「ですが麦野、」
言いかけて、絹旗は固まった。
麦野沈利の冷酷な瞳が、彼女を射抜いている。
麦野「…何? 今頃情報を吐いてるであろう女を助けに行こうって…そういう生ぬるいお話?」
絹旗「……、…」
滝壺「…いこう。きぬはた」
促され、絹旗は残念そうに歩いていく。
麦野沈利に、慈悲の二文字は、存在しなかった。
592 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 21:09:43.54 ID:rLMNQsiAO
+
593 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 21:10:01.18 ID:akJnz3aP0
垣根「んー…場所も聞き出して用済みだけど、お前どうしたい?」
フレンダ=セイヴェルンから情報を聴き終わり。
垣根は軽くそう問いかけて、脚を組んだ。
フレンダは口ごもり、視線を彷徨わせ、呟く。
フレンダ「…結局、殺されるのはわかってる訳なんだけど」
垣根「ふむ」
連絡が入った。
絹旗最愛が砂皿緻密のいるビルを爆破したらしい。
心理定規を向かわせ、絹旗と滝壺理后を相討ちさせた。
軽く時が止まった様な若干の穏やかな時間の中。
垣根帝督は、どうしたい? と首を傾げる。
垣根「選ぶ道は三つ」
フレンダ「……、」
垣根「一つ目、俺に今ここで楽に殺してもらう。安楽死プランをご用意中だ」
フレンダ「……」
彼女は、のろのろと首を横に振った。
垣根は、素手である左手を出し、人差し指と中指を立てる。
垣根「二つ目、このまま帰って第四位に殺される」
フレンダ「……」
フレンダは迷い、黙った。
垣根は、薬指を立てた。
垣根「三つ目」
フレンダ「…三つ目…」
垣根「ちょーっとだけ痛い思いをして、幸せに暮らすっていう選択肢」
594 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 21:10:02.15 ID:rLMNQsiAO
+
595 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 21:10:26.86 ID:akJnz3aP0
麦野「…チッ」
麦野沈利は、孤立していた。
滝壺理后は運悪く警備員に保護されてしまって、治療中。
絹旗最愛は『心理的距離』を弄られたせいで、自滅。
絹旗も治療を受けていることだろう。
フレンダは見捨てた上、行方不明。
もう、手駒が無い。まさかここまで追い詰められるとは思わなかった。
麦野、ひいては『アイテム』も、『スクール』に犠牲者を出さなかった訳ではない。
ドレスの少女を『原子崩し』で殺害したこともあり、『スクール』、残るは垣根帝督ただ一人。
麦野「……、…」
垣根「よお」
『ピンセット』による『滞空回線』の情報閲覧・情報取得を終えて。
"ちょっとした一仕事"もきちんと終えた垣根帝督は、普通に歩いてきた。
垣根「あのフレンダってガキはあっさりゲロっちまってな」
麦野「そんな事だろうとは思ったわよ」
垣根「あれ? 『心理定規』殺しちまったの?」
麦野「ドレスのメスガキなら殺したけど」
垣根「ふうん。残念だ」
そう言う割に、彼には悲しそうな様子が一切無い。
垣根「……まさか、俺に勝てるとは思ってないよな? 勘違いすんなよ。お前はあくまで『電子』。対して、俺はこの世に存在しない素粒子を操る能力者だ。つまり、上位互換と言い切っても何ら問題無い」
だから。
垣根「俺と戦っても意味は無い。それでも、やるか?」
フィアンマを巡って戦った際、麦野は垣根に勝つことは出来なかった。
無駄だということはわかっている。
しかし、その事実こそが、彼女の神経を逆撫でする。
麦野「……えよ」
垣根「あ?」
麦野「関係ねえよ!! カァンケイねェェんだよォォォ!! テメェが第一位だろうと何だろうと、私が殺すって決めた野郎は死ぬって決まってんだ!!!」
『原子崩し』が、放たれた。
596 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 21:10:27.80 ID:rLMNQsiAO
+
597 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 21:11:07.34 ID:akJnz3aP0
垣根は容易に『原子崩し』を防ぎ、首を傾げる。
場所は、段々と移動していった。
気付けば、そこは、一般人も居る場所へ。
「…くだらねえ」
「ああ゛!?」
激昂するまま、彼女の指先から、腕から、何度も放たれる『原子崩し』。
みっともなく這いずり、プライドを優先して、後先を考えない戦い。
垣根は、そんな彼女の姿が、何となく、昔の自分のように思えた。
気に入らないものは壊す。
守るものはなく、故に信念も無い。
上を目指すばかりで、誰の手を取る事も無く。
迷走して奔走して、得るものなど無い。
だからこそ、くだらない、と吐き捨てた。
突然、攻撃が止む。
何事か、と訝しがる垣根へ、麦野は猫撫で声で述べる。
「…くだらないのは、果たしてどっちかな」
「……あん?」
「暗部っていう闇の底で生活してきて、汚泥と血に染まったその体で。よくもまぁ、元第一位や最終信号と住んでいられるね」
救いを求めない非道であれ。
自分は闇の底へ沈み、血液に溺れて死ねば良い。
かつての垣根が思っていたこと。
今朝方、それでも良いと無理やり納得したこと。
「既に説明してるかもしれないけど、それにしたってさ。元第一位や最終信号がテメェみたいなクズを受け入れているのは、結局、本質を知らないからだよ」
垣根の心を代弁する様に、麦野は言う。
垣根の精神が、ザリザリと削れていく。
「その場その場の空気に酔ってふらふら動くのがテメェの本質だ。そこには何も無い。何かがあるフリをしているだけで、温かいモノなんて何一つ持ち合わせてない。本当は自分でも思ってるんだろ? 此処に居る自分は、何かおかしいんじゃないかって」
「………」
否定の為の言葉を探す。
否定の為の言葉を探す。
否定の為の言葉を探す。
みつから ない
―――そうだ。
きっと、自分は間違っていない、だなんて。
確信を持てない時点で、自分はああいった善人とは違う人間なんだって、線引きをしていたんじゃないか。
598 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 21:11:09.23 ID:rLMNQsiAO
+
599 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 21:11:28.11 ID:akJnz3aP0
麦野沈利から、暴言を投げられる度。
『自分だけの現実』が、ぐちゃぐちゃにされていく。
「……ろ」
「元第一位は、お前の上っ面しか見ていない」
「……めろ…」
「優しい垣根帝督を演じているテメェの本質は? …そうだよ、残酷な垣根帝督だ。善人だろうと『敵』に回ればデコイみたいにぶっ殺すクズ中のクズ。私と同じ様に」
「やめ、ろ…やめろ、……やめ…ろ…」
「研究所時代に昏い過去を持つ人間が、血生臭い現在を持つ人間が。……救いある未来に生きられるだなんて幻想、どっから持ってきたの?」
麦野沈利の精神攻撃だ。
気にしなければいい。
わかっていても、心を揺さぶられた。
一方通行と打ち止めに、拒絶される。
それだけじゃない。
自分の本質を見返してみる。
残るは、嫌悪感。蟠る悲壮感。
嫌な人間だ。ダメな人間だ。
善人ぶって流されたり、悪党を極める事もままならないこんな自分が。
嫌だ。
どうしようもないほどに、嫌だった。
600 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 21:11:29.00 ID:rLMNQsiAO
+
601 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga !red_res]:2013/01/19(土) 21:12:17.91 ID:akJnz3aP0
「あ、あ。…ああ、あ、あああああああ、ああああああああああああああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
602 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 21:12:19.18 ID:rLMNQsiAO
+
603 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 21:12:40.70 ID:akJnz3aP0
絶叫。
恐怖するままに、垣根帝督は絶叫していた。
リフレインする感情が、どこまでも木霊していた。
彼の背中から顕現した翼は、白黒入り混じっていた。
「…何、…?」
麦野沈利は、後ずさる。
垣根が腕を横に凪いだ。
最早『目に見えない力』が、麦野沈利の右目を貫いた。
「ぎ、っがァァあああああああ!!」
痛みに絶叫する彼女へ、翼が攻撃を加える。
左手が、まるで人形の腕を裁縫バサミで寸断したかの様にちぎれ、吹っ飛んでいった。
逃げ惑う一般人と、逃げる事も隠れる事も出来ないまま、倒れる麦野沈利。
垣根は恐怖に怯える幼い子供の様に暴走した。
翼は麦野の身体を叩き、貫く。嫌な肉の音がした。
『警備員』が慌てて麦野を遠ざけ、垣根に銃口を向ける。
謎の翼が被害を出してしまう前に、垣根を撃って倒そうという試み。
一人の女性、警備員が、その銃口を下げさせる。
「子供に銃を向けるな!」
「しかし、」
言い争っている間に、一人の少年が近づいて来た。
彼は打ち止めと呼ばれる十歳程度の少女を、危ないから、と警備員へ任せる。
そうして、怯え、暴れまわる垣根に、近づいた。
604 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 21:12:41.56 ID:rLMNQsiAO
+
605 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 21:13:26.87 ID:akJnz3aP0
「なァ、」
「あ、ああ、あ、xexwyguzhiw…」
垣根の翼が、一方通行へ攻撃しかけた。
そして、寸前で止まり、僅かに引く。
一方通行が『反射』設定をしていれば、かえって攻撃が命中していたはずの動き。
だが、その攻撃を一方通行が受ける事は無かった。
垣根帝督を信頼している彼は、『反射』を設定せず、まったくの無防備で近づいたからだ。
「……大の男が往来で泣いてンじゃねェよ、みっともねェ」
「……、gfxwu…」
翼が、消える。
自分より、身長も体格も。
ついには序列まで上位である少年の情けない様子に、一方通行は僅かに笑った。
確かに死ぬなとは言ったが、殺せとも言っていない。
拒絶に恐れ慄く瞳を見据え、一方通行は手を伸ばす。
何処へ手を伸ばせば良いかわからない男を、そのまま抱きしめた。
拒絶の対義。
即ち、受容。
「………帰ンぞ、帝督」
606 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 21:13:28.14 ID:rLMNQsiAO
+
607 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 21:14:06.48 ID:akJnz3aP0
「後方のアックアの襲撃に備え、護衛に来たんです」
天草式十字凄教(あまくさしきじゅうじせいきょう)メンバーの1人―――― 五和(いつわ)
「しらない」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 右方のフィアンマ
「……フィアンマ、もしかしてヤキモチ妬いてるのか?」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「カブトムシ05ってのはどうだ」
学園都市第一位の『超能力者』・『未元物質』―――― 垣根帝督
「誰がお母さンだ誰が」
学園都市第二位の『超能力者』―――― 一方通行
608 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 21:14:07.34 ID:rLMNQsiAO
+
609 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/19(土) 21:14:26.77 ID:akJnz3aP0
今回はここまで。
えんだあああああああああああああああああいやああああああああああああああああああ
610 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 21:16:05.39 ID:Yfjuv/iU0
>>609
自分で言うなwwwwwwwwww
611 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 21:27:30.28 ID:rLMNQsiAO
>>591
×〜『ブロック』が『アイテム』
○〜『ブロック』が『グループ』
612 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 21:33:43.56 ID:5lIyyq6to
>>609
ワロタ
613 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/19(土) 22:32:53.03 ID:vj3GUtjfo
乙
兎を飼っちゃだめなら兎になればいいんじゃないかな(提案)
614 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/20(日) 00:27:19.74 ID:DmT2yxXv0
乙
第一位と第二位完全に夫婦じゃないですかー(歓喜)
615 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/20(日) 00:31:54.89 ID:mj4QMX2bo
乙
垣一いちゃらぶホモエロ☆⌒ 凵\(\・∀・) マダァ?
616 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/20(日) 21:08:35.68 ID:W+ah9BSX0
だってそこに愛があったから…。
そうそう、初詣行ってきました。おみくじが大吉でした。
これも日頃の右方のフィアンマ信仰のお陰だと思います。
>>613
バニーボーイですか(興奮)
垣一じゃなくて一垣かもしれないんだよなあ……
投下。
617 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/20(日) 21:08:42.80 ID:RKG97dfAO
+
618 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/20(日) 21:09:15.47 ID:W+ah9BSX0
十月十二日。
本日の上条・垣根家の昼食は、焼肉である。
メンバーとしては、上条、垣根、打ち止め、フィアンマ、一方通行だった。
席割りは何故か一方通行の膝上がフィアンマであり、上条の隣が打ち止めである。
上条「えーっと、垣根さんでしたっけ。この間はフィアンマがお世話になりました」
垣根「ああ、いや、こっちも暇だったし、遊んでもらった様なモンですし」
打ち止め「こちらもお母さんがいつもお世話になってますってミサカはミサカはペコリと頭をさげてみっ、いたい!」
一方「誰がお母さンだ誰が」
打ち止め「似たようなものじゃないー、ってミサカはミサカはむくれてみる」
下げられた打ち止めの頭をパシィン、と叩く一方通行に、むすくれる打ち止め。
垣根は上条にメニュー表を渡し、フィアンマを見やる。
垣根「久しぶり…って程でもねえな」
ふぃあんま「そうだな」
よしよーし、と頭を撫でられるも、マイペースにフィアンマはメニューを覗き込んでいる。
上条は断ったが、先程垣根がここの会計を持つということが決定した。
上条「別に何でもいいんだけど、お前超能力者の友達多くないか?」
ふぃあんま「あいてをえらんでいるわけではないのだがね」
単にハイレベルな人間はハイレベルな人間と友好関係を築くだけなのでは。
そんなことをさらりと言うフィアンマは、今日も今日とて不遜だった。
619 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/20(日) 21:09:16.38 ID:RKG97dfAO
+
620 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/20(日) 21:09:29.89 ID:W+ah9BSX0
一方「ン、何食べたい? 何でも頼ンでイインだぞ」
一方通行は本日もブレず、フィアンマにデレデレである。
フィアンマもそれはわかっているが、別に頓着しない。
上条は打ち止めを御坂美琴の末妹と判断し(そしてそれはある意味間違っていない)、のんびりと勧める。
上条「えーと、打ち止めだっけ? 何か興味あるやつあるか?」
打ち止め「このオイキムチっていうのはどれ位辛いの、ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」
穏やかに話す上条と、楽しそうにはしゃぐ打ち止め。
垣根と一方通行にデレデレと構われながらも、フィアンマはその光景を面白くなく思った。
それは所謂『独占欲』や『嫉妬』と呼ばれるもの。
しかし、十字教において『嫉妬』は大罪の為、フィアンマは絶対に自らの嫉妬を認める様なことはしないだろう。
垣根(お子様ランチか? それとも大人ぶって普通メニューか?)
一方(どちらにせよ可愛いなァ、色々と考え様がある)
ショタコン二人は本日も通常運転だった。
621 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/20(日) 21:09:30.80 ID:RKG97dfAO
+
622 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/20(日) 21:09:51.14 ID:W+ah9BSX0
お会計、三万二千五円也。
垣根にとってはまったく痛く無い支払いだった。
一方通行と打ち止めの食い扶持はほとんど当たり前に請け負っているし、可愛いショタとその保護者に奢るのならば、金も使われて本望というものだろう…と、垣根帝督は考えている。
ふぃあんま「せわになったな」
垣根「いやいや。またな」
打ち止め「ばいばい幻想殺しさん、ってミサカはミサカは手を振ってさよならの合図を告げてみる!」
上条「今日はありがとうございましたー。またなー、打ち止め」
一方「気ィ付けて帰れよ」
ふぃあんま「むろんだ」
お互い手を振り合い、背を向けて歩き出す。
不意に、上条の手をフィアンマがきゅっと握った。
柔らかで白いほっぺたが、膨らんでいる。
どうして拗ねているんだろうか、と上条は首を傾げた。
上条「……フィアンマ、もしかしてヤキモチ妬いてるのか?」
俺が打ち止めちゃんばっかり構ってたから、と問う上条。
フィアンマは頬を膨らませたまま、ぷい、とそっぽを向く。
肯定しているようなものである。わかりやすい。
上条「素直だな…」なでなで
ふぃあんま「……む」
上条「ほらほら、構うから機嫌直し…ん?」
家の前に、一人の少女が、ややそわつきながら立っていた。
彼女はこちらを見るなり、ぺこっと頭を下げる。
??「あっ、お久しぶりです!」
623 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/20(日) 21:09:52.02 ID:RKG97dfAO
+
624 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/20(日) 21:10:10.80 ID:W+ah9BSX0
垣根、一方通行、打ち止めも無事家まで帰って来た。
少し食休みを取り、焼肉のタレで渇いた喉を水で潤し。
現在、垣根は打ち止めと共に育成ゲームをやっていた。
ショタ系のちょっといやらしいあれではなく、指定で動物などを創るものである。
休日に娘と遊ぶお父さん状態である。
垣根「カブトムシ05ってのはどうだ」
打ち止め「どう見ても戦車じゃない、ってミサカはミサカは首を傾げてみる」
垣根「ははあ、見くびってやがるな。これを見ろ」
打ち止め「!? 戦車だけじゃない!! ってミサカはミサカは大興奮してみたりー!」
垣根「ちなみにコイツの名前はしんとくんだ」
打ち止め「何でしんとくんなの? ってミサカはミサカは問いかけてみる」
垣根「何となく」
一方通行はというと、参加する様なことはせず、ブラックコーヒー片手に二人の様子を眺めている。
垣根はふと彼を振り返り、薄く笑みを浮かべた。
垣根「……、」
一方「……」
ふい、と視線を逸らし、一方通行はコーヒーを飲む。
学園都市の独立記念日<あの日>の顛末に羞恥を覚えているのは、何も垣根だけではない。
『嫌わないでくれ、拒絶しないでくれ、俺は、俺は……ッ』
『馬鹿か。オマエの性格なンざ、馬鹿馬鹿しい部分も含めてわかってるっつゥの…』
『違うんだ、…違う……』
『疑うのは簡単だが、…打ち止めも俺も、オマエを嫌う事はまァ無ェよ。だから、……大丈夫だ』
『一方通行、』
『……もォ何も、怖い事なンて無いンだ』
ショタにしか性的・恋愛的興味は無い筈だが、と両者は思う。
あの日のやり取りは、まるで浮気を言い訳する亭主と妻の様だった。
625 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/20(日) 21:10:11.70 ID:RKG97dfAO
+
626 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/20(日) 21:10:28.38 ID:W+ah9BSX0
突然の訪問者は、上条当麻の知り合いだった。らしい。
今の上条は記憶が無いので、誰それ状態だったが。
天草式十字凄教正規メンバー、その名を五和。
『法の書』事件で共闘したことに覚えはありませんかと問われ、上条は苦笑いするしかなかった。
そろそろ、自分の記憶を補う代わりの誘導尋問法でも学んだ方が良いかもしれない。
上条「それで、五和は何しに来たの?」
五和「後方のアックアの襲撃に備え、護衛に来たんです」
彼女の噛み砕いた説明によると、アックアが宣戦布告をしてきたのだとか。
上条の右手を狙って来ており、迎撃するべく、天草式十字凄教が戦うことになった。
斥候として、五和は上条宅にしばらく泊まり込むことにしたそうで。
申し訳ないがしばらく此処に置いて欲しい。
自分の為の頼みと知っていて断れる訳もなく、上条は素直に受け入れた。
しかし、気合を入れたポーズの五和の腕は細く、見目も普通の少女な訳で。
上条「それで、五和は何しに来たの?」
五和「ですから、後方のアックアの襲撃に備え、護衛に来たんです」
上条「……」
無理なんじゃないか。
思うも、上条は彼女のやる気には口を出さないでおこう、と思う。
お夕飯の支度しますね、と言う彼女に任せ、上条はフィアンマを見やる。
上条「あのさ、後方のアックアって、」
627 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/20(日) 21:10:29.44 ID:RKG97dfAO
+
628 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga !red_res]:2013/01/20(日) 21:10:53.90 ID:W+ah9BSX0
「しらない」
629 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/20(日) 21:10:54.97 ID:RKG97dfAO
+
630 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/20(日) 21:11:15.14 ID:W+ah9BSX0
冷え切った声音。
思わず、上条は動きを止めた。
ひんやりとした刃を、360度全方位から向けられているかの様な。
威圧感による恐怖に、上条は固まった。
金色の瞳が、その色合いと対照的に底冷えしている。
地雷原。
地雷の、半歩手前。
そんな場所に立っているかの様な。
「…ぁ、…」
「…………」
金色の瞳から放たれる視線が、上条の右手へ移動した。
目の前の少年が、自分が守ると決めたフィアンマであることを、忘れそうになる。
得体の知れない恐怖にガチガチと歯を鳴らして震える上条。
「、…フィ、アンマ……」
「…………」
部屋の温度が下がったまま。
そんな錯覚に、上条は視線を彷徨わせる。
嫌な冷や汗が湧いている。
631 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/20(日) 21:11:16.09 ID:RKG97dfAO
+
632 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/20(日) 21:11:32.77 ID:W+ah9BSX0
五和「そういえば、お夕飯って何時頃のご予定ですか?」
上条「え、あ、」
日常の空気が、冷えを裂いた。
一気に緊張が抜け、上条は返事をする。
フィアンマも『右方のフィアンマ』としての顔をやめ、本を手にとった。
何も無かったかの様に。
上条はもう一度、フィアンマを見やる。
そして落ち着きを取り戻した状態で、問いかけた。
上条「……お腹空いてるか?」
ふぃあんま「いいや、まったく」
上条「だ、よな」
触れてはいけない部分は、誰にだって存在する。
上条はそこに触れたのだ、と自覚した。
本気の怯えを見てとって。
九割方自らの予測を確定したフィアンマは、本に綴られた文字列を目で追う。
ふぃあんま(……やはり、かみじょうには…)
633 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/20(日) 21:11:33.59 ID:RKG97dfAO
+
634 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/20(日) 21:11:57.18 ID:W+ah9BSX0
『滞空回線』の解析を経て、『ドラゴン』の存在を知ったはいいものの。
そこから、直接交渉権には漕ぎ着けなかった。
更に最新部、最暗部の情報を知らねばならないようだ。
暗部を全て壊す。
暗部に囚われて仕事をさせられている人間を救う。
そこまでして拘る事ではないのかもしれない、と垣根は思う。
だが、それではいけない。流されてばかりでは、良くない。
どんな自分でも受け入れると言ってくれた二人の為にも。
姿勢が前向きか後ろ向きかはともかく、進まなければ。
635 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/20(日) 21:11:58.60 ID:RKG97dfAO
+
636 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/20(日) 21:12:19.30 ID:W+ah9BSX0
夕飯を終えて。
風呂が壊れてしまった為、上条、五和、フィアンマはお風呂のあるレジャー施設へとやって来た。
五和と話す事で、また少し、以前の自分を知ることの出来た上条は安堵する。
少しずつ少しずつ、以前の自分へ戻っていければ良い。
そうして今悩んでいることは、フィアンマに気取られてはならない。
レジャー施設を出て、歩いていると、フィアンマとはぐれた。
離れない程度に五和と共に散策していると、不意に人の気配が絶たれる。
不自然な程人が近寄らない―――『人払い』の術式だった。
「警告はした」
ズン、という重い音。
上条と五和は動きを止め、理不尽な暴力の予兆に目を向けた。
「貴様達の前には、幾つかの選択肢があった筈である」
青。
橋の上、ライトアップの青が、彼の身体を照らし出す。
後方のアックア。
『神の右席』の一人にして、聖人としての力を最大限活用する者。
「その結果が"これ"であるのならば、些かの失望を覚えるものである」
上条は、五和を庇う様に、一歩前へ出る。
「…後方のアックア」
「……行くぞ、我が敵」
圧倒的な暴力による爆風が、吹き荒れた。
637 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/20(日) 21:12:20.21 ID:RKG97dfAO
+
638 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/20(日) 21:12:59.79 ID:W+ah9BSX0
「……私だって、アンタの力になれる。ううん、なりたい」
学園都市第三位の『超能力者』・『超電磁砲』―――― 御坂美琴
「…どちらにころんでも、せんそうはおきるだろう」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 右方のフィアンマ
「ありがとう、五和。少し楽になった」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「悪党は、誰かを守っちゃいけねえのか。そんな常識は、俺には通用しねえ」
学園都市第一位の『超能力者』・『未元物質』―――― 垣根帝督
「あの野郎は俺より強いンだ、心配いらねェよ」
学園都市第二位の『超能力者』―――― 一方通行
「右方のフィアンマは優し過ぎるんですよ」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 左方のテッラ
639 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/20(日) 21:13:01.24 ID:RKG97dfAO
+
640 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/20(日) 21:13:16.32 ID:W+ah9BSX0
今回はここまで。
641 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/20(日) 23:14:55.19 ID:O4Bo8LJNo
乙
上条さんが段々ノマールになってきてないか?(困惑)
642 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 01:27:30.12 ID:A8TqGQjX0
乙
一垣も大好物です
643 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 10:58:01.96 ID:fwYm78SSO
乙です
さりげなく焼き肉のタレが飲料水扱いになってるのだが……
あと垣根と一方通行のBL展開になっちまったら俺は二人を倒して学園都市第一位に君臨することも考える
644 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 18:21:06.00 ID:I8iatTsR0
>>641
ノーマル?(難聴)
>>643
>>1
の日本語が時々迷子ですすみませ…
おや、
>>643
の様子が…?
古代ギリシャにはゲイの軍隊があり、滅茶苦茶強かったそうです。
つまりわんつーは…?
投下。
645 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 18:21:08.95 ID:l+ARCOIAO
+
646 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 18:21:31.19 ID:I8iatTsR0
後方のアックアが、その手にあるメイスを振るう度。
爆風が粉塵を巻き上げる。
アックアは氷を用いた高速移動を用いている為、その巨躯に見合わず、素早い。
『神の力』『聖母崇拝術式』『聖人』。
様々な才能を組み合わせている彼の一撃一撃は、重い。
それでも、五和はなかなかに善戦している。
事前に天草式十字凄教の本隊をやられた割には、健闘していた。
ただし、それはアックアが様子見に攻撃を放っているからに過ぎない。
時折話しているのは、右手だけを明け渡せと言っているのだろうか、とフィアンマは思う。
ごろつきの傭兵と名乗る割に、なかなかどうしてアックアは弱者に甘い。
当然、上条は右手を差し出す事を断り、何度も回避し、突破口を探ろうとする。
そんな様子を、廃ビルの上から眺め。
フィアンマは、ややぼんやりとした表情で呟く。
例え、奇跡が起きて上条の命が助かっても。
計画通り、上条当麻が殺されても。
「…どちらにころんでも、せんそうはおきるだろう」
呟いている彼が助けに入ることは無い。
何の未練も無い訳ではないし、上条が死ねば泣きはする。
けれど、彼が個人的感情で動くことは無い。
自分が思う様に世界が救われるのであれば、それを妨害する訳にはいかない。
「……しぬなよ」
幼くか細い声が、空気に溶けた。
647 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 18:21:32.08 ID:l+ARCOIAO
+
648 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 18:21:47.97 ID:I8iatTsR0
五和は、ふと。
自らの意識が浮上してきたことに気がついた。
上条は、どうなった。
のろのろと、顔を上げる。
ゼロ距離で、密着した上条は、血まみれだった。
自分の手も血まみれで、その血液量は五和のものだけではなく。
むしろ、上条が出してしまった血液量の方が多い。
上条の表情は虚ろで、口は少し開いていて。
死んでいるのか、生きているのかすら、曖昧だ。
「あ……ぁ…」
「……呆気ないものであるな」
五和は、後方のアックアが目の前にいる事すら、忘れた。
沢山の手持ちのものをかき集め、上条の身体を治療しようとする。
緑色の淡い光が舞い、上条の身体を癒そうとして―――弾ける。
上条の右手にある『幻想殺し』は、ありとあらゆる異能を消してしまう。
敵性を持ったそれだけではなく、回復、快癒の意味合いのそれさえも。
「あ、あ……うわあああああああああああああああああ!!!」
絶叫しながら、彼女は何度も治療を行おうとする。
そうしている内に、手持ちの材料もなくなってきた。
財布や小銭などを使って魔術を行う天草式十字凄教のやり方。
だが、無駄遣いをしていればあっという間に材料は無くなってしまう。
アックアは面倒そうに、彼女の背中を踏んだ。
彼女ごと上条を粉砕してしまおう、と考えたのだ。
「っぐ、ご、ぐぐ…がッ、あああああああああああああああああ!!!!」
絶叫して、彼女は海軍用船上槍を構える。
何があっても、上条を守りたい。死んでも、守りたい。
そう思う彼女の肩へ、誰かの手が触れた。
上条当麻だった。
649 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 18:21:48.92 ID:l+ARCOIAO
+
650 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 18:22:09.39 ID:I8iatTsR0
「ありがとう、五和。少し楽になった」
そんな訳が無い。
回復魔術は尽く打ち消されてしまったし、上条の身体はボロボロのままだ。
なのに、彼は立ち上がる。
中途半端に決意を折られてしまったせいで、五和は動く事が出来なかった。
「っ、おおおおおおおおおおおおお!」
上条は右拳を握り、アックアへ殴りかかる。
アックアはそれに対し、一度だけメイスを振るった。
地面に突き刺したメイスへ、上条の身体が折れてかかる。
まるで干された布団の様になった上条の様子を眺め、アックアは笑みを浮かべた。
一人の少女の為に命を張った、その勇気を讃える様に。
「ここで引き抜かれるのも酷だろう。義手の用意をし、病院で切除して明け渡すが良い」
猶予を与える。
告げて、彼は闇に消えていった。
五和は槍を取り落としながら、上条を運ぶ。
651 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 18:22:10.28 ID:l+ARCOIAO
+
652 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 18:22:35.66 ID:I8iatTsR0
天草式十字凄教が荒れているのを見ながら。
フィアンマは上条の身内として、病室へ入った。
人工呼吸器をつけ、点滴や輸血の針が腕に沢山刺さっている上条の見目は、どこまでも痛々しい。
「……かみじょう」
ぽつりと呟き、フィアンマは手を伸ばす。
小さな手で、上条の頬へ触れた。
「…かみじょう、…」
ふと、上条が目を覚ました。
フィアンマを見やり、曖昧な笑みを浮かべる。
「フィアンマ、…どこ、いって…たんだ…? アックアの攻撃…とか…まきこまれ、て…ないか…?」
目覚めて最初にしたのは、フィアンマの心配だった。
上条当麻の本質は、右腕の有無でも、記憶の有無でもない。
優しい笑みに唇を噛み締め、フィアンマは問いかける。
天草式十字凄教の面々は、既に出発しているようだった。
「……かみじょう」
「ん…?」
「…もし、…もしも、おれさまが、…かみじょうがどうなるかを知っていて、てをこまねいているとしたら、どうする」
「……、…」
「…しつもんを、かえよう。……かわがあり、おれさまひとりと、すうじゅうにんののっているふねがしずみそうになっている。かみじょうは、どうする。……おれさまは、かみじょうののっているふねをみすて、すうじゅうにんのほうをすくおうとしている」
「…何か、…難しい質問するんだな…。…ん…とりあえず、フィアンマを助けて…次に、その人達を助けるよ…」
当たり前じゃないか、と上条は柔らかい笑みを浮かべる。
「俺は、…フィアンマに助けて欲しいから…フィアンマを大好きな訳じゃないんだぞ…?」
「……、………」
「何かをしてくれるから、見返りがあるから、……誰かを助ける訳じゃない。誰かを好きだから守りたいって思うことに…助けたいって思うことに、理由も理屈もいらないんだよ」
だって、その辺りの論文を引っ張ってくれば、人間を助ける理由すら、存在しない。
「だから、俺は」
上条は、のろのろと起き上がる。
人工呼吸器をそっと外し、傍らに置いた。
「フィアンマが何をしても、しなくても。フィアンマを助けに行くし、守るよ」
でも、とりあえず。
「ごめんな。天草式の人達を、先に助けに行ってくる」
彼は、点滴の袋の下がった棒を支えにして、出て行ってしまう。
フィアンマはそんな彼に視線を向ける事すら出来ず、俯いた。
『俺は、…フィアンマに助けて欲しいから…フィアンマを大好きな訳じゃないんだぞ…?』
視界が曇る。
いつの間にか、フィアンマは泣いていたようだった。
653 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 18:22:36.57 ID:l+ARCOIAO
+
654 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 18:22:57.03 ID:I8iatTsR0
御坂美琴は、お風呂のレジャー施設から出、散歩していた。
何だか警戒令が出てしまったので、出られないというか。
出ようと思えば出られるのだが、何となくぷらぷらしたかったのだ。
そんな美琴は、奇妙なものを見た。
上条当麻。
ただし、その様子は尋常ではない。
身体の至るところ、頭部にまで包帯を巻いており。
ガラガラと支えにしているのは、あれは点滴ではないだろうか。
よくよく見てみると、輸血パックも吊り下がっている。
どう見ても重傷だ。恐らく、病院から抜け出して来たのだろう。
「ちょ、ちょっと!」
思わず呼び止める。
顔を上げた彼の目の焦点は、ズレていた。
これでは物もまともに見る事が出来ないだろう。
「アンタ、どこ行くつもり?!」
「…皆を…助けに、行かないと…」
その一言に、美琴はゾッとした。
尋常ではない。人助けの為に、ここまでするものなのか。
「…御坂、退いてくれ」
「…ダメ。アンタは重傷人。病院に戻んなさいよ」
「……御坂」
ぼんやりとした表情で、上条は言う。
「止めてくれるのは、ありがたいんだけど。でも、助けに行かないといけないんだ」
「そんなボロボロになってまで、行かなきゃいけないの!?」
彼は、無能力者だ。
御坂美琴の電撃を打ち消す事は出来るが、それでも、一般人なのだ。
「御坂、」
「ッ、」
「……ありがとう、御坂」
礼を言うも、彼は止まらない。
御坂美琴は、止める事を諦めた。
彼への執着の理由を自らの中で認めながら、言う。
「なら、何処へ行くか教えなさい」
「……?」
「……私だって、アンタの力になれる。ううん、なりたい」
きっと、この少年はいつも一人で戦っている。
地下街でもそうだったように、思う。
超能力者の申し出に、上条は、首を横に振る。
「…御坂は、女の子だろ」
「……、」
どんな能力を持っていても、御坂美琴が細身の女の子であることには変わりない。
上条は、御坂美琴を巻き込みたくない、と首を横に振った。
それはかつての魔術師との約束<覚えていないこと>の為でなく、彼の本質的なもの。
「じゃあな、御坂」
―――御坂美琴は、動けなかった。
655 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 18:22:57.90 ID:l+ARCOIAO
+
656 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 18:23:38.23 ID:I8iatTsR0
聖ピエトロ大聖堂。
戦略交渉人と呼ばれる人間は、ローマ教皇へいくつかの降参する為のプランを用意してきた。
「アックアが負けるとはどういうことだ…っ、」
教皇は取り乱していた。
前方のヴェントは療養中。
後方のアックアは撃破された。
右方のフィアンマは行方不明…というよりも、戦力外。
コツ、コツ、と。
ゆっくりとした足音が響いてきた。
その足音の一定のリズムは、本人の精神性をも表しているかの様だった。
「いけませんねー。ははあ、まさかアックアが倒れるとは…。猿は猿でも知能をつけて成長、という事ですかねー。偉大なるローマ正教が治める世界に混乱生じる場合は、いかなる者であろうとその元凶をすみやかに排除すべし、といったところですか」
ローマ教皇は振り返り、彼の顔を見た。
左方のテッラ。
『神の右席』としてまともに機能する、最後の一人。
「ヴェントを使った学園都市への奇襲。アックアの圧倒的な才能さえ、ことごとく、あっけなく失敗に終わってしまいました。右方のフィアンマは実質空席状態。科学サイド総本山、学園都市の動きを封じるだけの、圧倒的な策を提示しましょう」
ローマ教皇は、沈黙する。
罪なき信徒まで巻き込んでの籠城は考えたくない。
どうすればいいかなど、この局面で浮かぶべくもなかった。
テッラは、そんなローマ教皇の考えとはまったく別に、軽い調子で言った。
「まずはイギリスを討つとしましょうか」
「なに?」
訝しむローマ教皇へ、テッラは丁寧に説明する。
「現状、我々はロシア成教を取り込んだ事によって、イギリス以外のヨーロッパはほぼ掌握していますから」
続く発言に、説明に、恐るべき言葉に、考えに、ローマ教皇は困惑と共に戦慄する。
この男は、おかしい。
ローマ正教の為であれば、世界的な大規模戦争すら起こすというのか。
ほとんど崩れた大聖堂へ戻り向かい、ゆったりと歩みを進めながら、テッラは呟く。
「右方のフィアンマは優し過ぎるんですよ。異教徒など、人扱いしなくても良いでしょうにねー…」
657 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 18:23:39.45 ID:l+ARCOIAO
+
658 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 18:24:01.22 ID:I8iatTsR0
上条当麻が目を覚ますと、五和が居た。
どうやら、後方のアックアへ『聖人崩し』を食らわせる事が出来たらしい。
良かった、と上条は微笑む。
病室の外、ドアの隙間から、フィアンマが顔を覗かせていた。
ちょっぴり気まずそうな顔をしている。
意識朦朧としている時に話しかけられた記憶があるのだが。
上条「フィアンマ?」
ふぃあんま「…うー」
上条「どうしたんだ、入って来いよ」
ふぃあんま「……」
上条「?」
おいでおいで、と手招きをする。
フィアンマは上条にとてとてと近寄り、抱きついた。
傷が痛むのを感じながらも、上条は笑って抱きとめる。
少しだけ、何かが、変わった。
659 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 18:24:02.10 ID:l+ARCOIAO
+
660 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 18:24:20.37 ID:I8iatTsR0
十月十七日。
迎電部隊が『ドラゴン』の情報を求めて『フラフープ』を占拠した。
その仕事は『グループ』に割り当てられたものであり、垣根には関係無い。
無いのだが、暇潰しがてら、向かう事にした。
垣根は何よりも退屈を愛さないのだ。
打ち止め「? あの人は何処に行っちゃったの?」
一方「『仕事』に似た『遊び』だそォだ」
打ち止め「…このミサカを助けた時と同じ? ってミサカはミサカは問いかけてみる」
一方「ン」
即ち、暴力の世界。
命を賭けて何かを得る場所。
要するに、戦場だ。
打ち止め「大丈夫、かな。…って、ミサカは…」
一方「あの野郎は俺より強いンだ、心配いらねェよ」
肩を竦め、一方通行は打ち止めの頭をわしゃりと撫でる。
垣根帝督は、少女に心配されずとも、強い男だ。
661 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 18:24:21.57 ID:l+ARCOIAO
+
662 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 18:24:39.08 ID:I8iatTsR0
第七学区の病院にて。
絹旗最愛は、滝壺理后の下へやって来ていた。
『心理定規』によって、彼女の心はやたらと弄られた。
そうして現在の距離は、とてつもなく近い。
絹旗「滝壺さん」
滝壺「あ、…きぬはた…」
絹旗「これ、超お見舞いの林檎です」
差し出されたリンゴを受け取り、滝壺はやんわりと笑む。
『体晶』による無茶が、いたるところに出ていた。
絹旗は、滝壺の手をそっと握る。
そして、真っ直ぐな瞳で彼女を見つめた。
絹旗「…逃げましょう」
滝壺「…え…?」
絹旗「麦野はきっと、私達を超追ってきます。ですから、何処かへ逃げましょう」
滝壺「……、…」
絹旗「…私が、滝壺さんを超守りますから」
滝壺理后は、少し迷って。
『うん』、と小さく頷いた。
663 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 18:24:40.05 ID:l+ARCOIAO
+
664 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 18:24:58.36 ID:I8iatTsR0
『フラフープ』。
それは、学園都市にある、世界最大の粒子加速装置。
都市外周の壁をなぞる円形の形状で、地下200mの位置にあるものだ。
『グループ』とは別働隊として、垣根は潜り込んでいた。
やっているのは、秘密裏に人質を逃がすことだ。
『迎電部隊』の人質確保係は、不可解そうに眉を潜める。
「お前は、『スクール』の…?」
「あ? 俺が此処にいる事がそんなに不思議か?」
「どういうことだ、コイツ等はただの一般人で、」
つまり、守る価値は無いだろう。
そんな言い草に、垣根はため息を漏らす。
「悪党は、誰かを守っちゃいけねえのか」
同じ暇潰しなら、人助けでも良いじゃないか。
それに、既存の常識など、塗り替えれば良いだけのもの。
「そんな常識は、俺には通用しねえ」
あっさり言って、彼は『迎電部隊』の元隊員であるテロリストを殺害した。
統括理事会側からは何も言われないし、牽制の攻撃も無い。
なので、垣根帝督は自由に動き回っていた。
665 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 18:24:59.49 ID:l+ARCOIAO
+
666 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 18:25:15.36 ID:I8iatTsR0
『迎電部隊』が閉じこもった個人サロンへ攻撃を仕掛け。
無事騒動が終わったと思いきや、垣根は奇妙な相手と遭遇した。
『ドラゴン』―――『エイワス』。
科学によって顕現させられた、天使の様な生命体。
警戒の攻撃は、体ごと捩じ伏せられた。
「何の為に、俺に接触しやがった…?」
「何、簡単なことだよ。教えに来たというだけのこと」
「教え…?」
「君と同じ場所に居を置く打ち止め。彼女は、私の顕現によって高負荷をかけられている」
ミサカネットワークを使った、天使の顕現。
0930事件の時と同じパターン。
垣根はギリ、と歯を食いしばり、立ち上がった。
「なら、此処でテメェを殺せば…と言いたいところだが、実力差は否めねえ」
どうすればいい、と垣根はぼやく。
エイワスは、答えた。
「ロシアへ行け」
もうすぐ、戦争が始まる。
667 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 18:25:16.33 ID:l+ARCOIAO
+
668 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 18:25:41.65 ID:I8iatTsR0
イギリスで発生したクーデター。
またの名を、『ブリテン・ザ・ハロウィン』。
その混乱に乗じて、禁書目録の遠隔制御霊装が盗まれた。
盗んだ者は、左方のテッラ。
『光の処刑』を完成させた、強力な魔術師だった。
そして、彼が求めるものはもう一つ。
『上条当麻、君を狙って刺客が来る』
ステイル=マグヌスは恩人を殺させまいと、上条に連絡した。
幻想殺し。
即ち、上条の右腕を狙って刺客がとめどもなく来る、と。
学園都市から絶対に出るな、という言外のアドバイスでもあった。
「…テッラって野郎は、何処に居るんだ?」
『ロシアへ向かっているだろう』
「そっか」
上条は、眠るフィアンマを見やる。
通信を終え、呟いた。
「……なら、誰かを巻き込む訳にはいかないな」
自分を狙う凶刃を、学園都市まで持ってこさせる必要は無い。
上条は、学園都市から出る決心をした。
禁書目録という少女とは、自分は面識がある。
以前の自分が守ったものを、守り抜かなくては。
669 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 18:25:42.55 ID:l+ARCOIAO
+
670 :
書き置き
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 18:26:12.26 ID:I8iatTsR0
『フィアンマへ
上条さんは少し出かけてきます。
もしかしたら、長い間出かける事になると思う。
俺が居ない間、一方通行に頼ってください。
一方通行なら、フィアンマを守ってくれるから。
行ってきます。
上条当麻』
671 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 18:26:13.26 ID:l+ARCOIAO
+
672 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 18:26:51.50 ID:I8iatTsR0
垣根帝督は帰って来るなり、慌ただしく服を着込んだ。
一方通行は熱に苦しむ打ち止めの身体を冷やしていたが、一向に効果が無い。
そんな打ち止めの身体を抱き上げ、上着を着せ、垣根は一方通行を見やる。
「俺は打ち止めの問題を解決してくる」
「何処に行く気だよ」
「ロシア」
「…ロシア?」
「お前は学園都市に居ろ」
「オマエ、」
「打ち止めの体調を元に戻して、必ず戻る」
だから、安全圏に居ろ。
言うなり、彼は出て行こうとする。
ロクな説明も無しに。
0930事件の時の様に。
何も言わないで全て背負い込んで、彼は孤高に全てを守ろうとしている。
一方通行は、垣根の服を掴んだ。
「帝督、」
「……一方通行」
「あン?」
「これから、戦争が起こる。恐らくな。お前もわかってるとは思うが」
「………」
「戦争が終わって、俺が打ち止め連れて帰ってきたら」
「…来たら、何だよ」
「……いや、何でもねえ。家に居ろよ」
垣根は一方通行の手を払い、家から出て行った。
「……死亡フラグ立ててンじゃねェよ、ばァか……」
673 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 18:26:52.44 ID:l+ARCOIAO
+
674 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 18:27:33.80 ID:I8iatTsR0
右方のフィアンマは、目を覚ました。
一人ぼっちの暖かな部屋。
暖房の電源を切り、書置きのメモを見る。
彼が何をしに行ったのか、気がついた。
『フィアンマが何をしても、しなくても。フィアンマを助けに行くし、守るよ』
「……」
思い返し、沈黙する。
上条はきっと、誰も傷つけない為に出て行った。
記憶のあるなしじゃない。
特別な力のあるなしでもない。
彼の本質。
上条当麻は彼自身が思うまま、誰かを助けに行った。
戦地のど真ん中へ飛び込めば、自分だけが傷つくと知っていて。
右方のフィアンマは沈黙のままに、暫し思考した。
675 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 18:27:35.07 ID:l+ARCOIAO
+
676 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 18:28:11.35 ID:I8iatTsR0
「……その代わり、俺から離れンなよ?」
学園都市第一位の『超能力者』―――― 一方通行
「おれさまもろしあいくのー! ろしあろしあろしあー!!」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 右方のフィアンマ
「フィアンマ、お腹空かせてねえかな…寂しくて泣いてたらどうしよう」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「……結局、俺には何も救えねえのか」
学園都市第一位の『超能力者』・『未元物質』―――― 垣根帝督
「ちょろっとー、何よその顔はー」
学園都市第三位の『超能力者』―――― 御坂美琴
「……遅くなって、ごめんね」
『右方のフィアンマ』の父親にして純粋な『魔神』―――― オッレルス
677 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 18:28:12.37 ID:l+ARCOIAO
+
678 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 18:28:29.14 ID:I8iatTsR0
今回はここまで。
679 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 18:34:22.59 ID:Xg88tvXB0
>>1
おにショタほのぼのSSじゃなかったんですか(怒)
680 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 19:39:00.77 ID:TXQ5mFRI0
乙
特殊性癖スレかと思いきや、わりと普通に再構成としても面白い
浜面いない影響で絹滝…だと…
おにショタホモスレから、おにショタホモ百合スレへと新たな可能性を獲得したのか
681 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 20:10:11.79 ID:A8TqGQjX0
乙
ふぅ……ここが天界か
ふぃあんまくんかわええ
682 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 20:16:32.91 ID:Falv8MGWo
乙
やんでれふぃあんま君はまだですか(困惑)
683 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:43:09.08 ID:MP0bEL680
>>679
こっちの事情も考えてよ(棒読み)
>>680
ありがとうございます
多様性の獲得というやつです
ヤンデレふぃあんま君はまもなく…。
投下。
684 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 21:43:10.53 ID:l+ARCOIAO
+
685 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:43:41.11 ID:MP0bEL680
十月十八日。
ロシアが第三次世界大戦を宣戦布告。
十月十九日。
第三次世界大戦が開戦する。
そして、十月三十日。
上条当麻は、ロシアの雪原に立っていた。
ヒッチハイクを繰り返して、此処までやって来たのだ。
そんな彼は、後ろから聞こえる声をガン無視していた。
??「ねえ、ちょっと待ちなさいよ!」
聞き覚えのある様な声のような気がしないでもない。
上条は時折戦闘機の飛んでいる空を見上げてぼやく。
上条「フィアンマ、お腹空かせてねえかな…寂しくて泣いてたらどうしよう」
はぁ、とため息が漏れた。
バジバジバジッ、という音と共に跳んできた雷撃を右手で防ぎ、上条は振り返る。
非常にしょっぱい顔で、であった。
上条「………」
美琴「ちょろっとー、何よその顔はー」
せっかく学園都市を抜け出て支援しに来たのに。
そう言わんばかりに、彼女はむすくれていた。
上条は彼女に助けて欲しいと言った覚えはない。
上条「っていうか危ないから帰った方が良いぞ」
美琴「あの時はなあなあに見過ごしたけど、今回ばかりは支援するからね」
上条「聞けよ!」
自分を守るつもり満々の美琴にため息を吐き出し。
上条は仕方なく、てくてくと歩いた。
関係の無い彼女を巻き込みたくはなかったが、仕方が無い。
せめてフィアンマがここへ来ないことを、願うばかりだった。
686 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 21:43:41.93 ID:l+ARCOIAO
+
687 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:43:57.67 ID:MP0bEL680
十月二十八日。
一方通行は悩み悩み、それでも垣根の思いを踏みにじるまい、と家に居た。
そんな折、インターフォンが鳴り響く。
訪問者は、右方のフィアンマだった。
一方「あン? フィアンマくンか」
ふぃあんま「ん」
至って普通に迎え入れる一方通行。
そんな彼の眼前へ、一枚のメモが突きつけられた。
上条当麻がフィアンマへ残した書置きである。
一方「…ン、だから此処に来たのか」
ふぃあんま「いかにも。だが、たよりたいのはにちじょうのさまつごとではない」
つまり、食事の世話や生活費一切の話ではない。
どういうことだろう、と一方通行は眉を潜める。
そんな彼へ、フィアンマは予測を論理立てて話した。
この戦争のきっかけとなったのは、ある意味上条当麻で。
上条は刺客の被害を周囲に振りまくまいと、敢えて戦場に飛び込んだこと。
一方「…なるほど」
ふむ、と一方通行は考える。
学園都市最強である自分に預ける程、上条は切迫した状況なのだろう。
一方「……なら、大人しく待ってよォな」
俺もそうだし、と端的に言う一方通行。
対して、フィアンマは断る。
ふぃあんま「おれさまをろしあへつれていけ」
一方「…俺の話完全スルーなンですかァ?!」
ふぃあんま「おれさまもろしあいくのー! ろしあろしあろしあー!!」
駄々こね。
アシを確保する為に一方通行を頼ってきたらしい。
地団駄を踏むフィアンマに対し、一方通行はしばし困り果てる。
上条の為に、行かせる訳にはいかない。
本音を言えば、自分も垣根を追ってロシアへ行きたいが。
688 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 21:43:58.52 ID:l+ARCOIAO
+
689 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:44:21.13 ID:MP0bEL680
地団駄を踏み、ひっくり返って尚一方通行が折れないのを見て。
それならばいい、とフィアンマは立ち上がる。
ふぃあんま「おれさまひとりでいく」
一方「無理だろ」
ふぃあんま「できるさ」
自信満々の様子。
確かに、一方通行はフィアンマは天井へ何らかの攻撃を加えたことを知っている。
それが能力なのかどうかまではわからないものの。
ふぃあんま「それで、おまえはいかないんだな」
一方「…はァ……」
深々とため息をつき、一方通行はフィアンマの頭を撫でる。
そうしてコキコキと首を鳴らし、頷いた。
一方「ン、わかった。俺も行く」
ふぃあんま「!」
一方「……その代わり、俺から離れンなよ?」
ふぃあんま「わかった」
一方通行はフィアンマを抱き上げ、フィアンマの服の上にコートを着せ、自分も白いコートを着る。
フィアンマが自分のふわふわとした襟を触っている間に、移動していく。
そろそろ、自分の代わりに頑張り過ぎている垣根帝督を助けるべきだと、思ったから。
ふぃあんま「おまえのあしでたどりつけるのか」
一方「何なら飛ンでもイインだが、目立つしなァ」
ふぃあんま「こうがくめいさいはどうなんだ」
一方「ベクトル操作すりゃ可能だが、多分全身が光って終わる」
『自分だけの現実』にパラメータを入力して。
一方通行は反射膜の範囲を広げた。
自分の触れている人間の体も、自分のものとして考慮する。
誰かを守る為に破壊と拒絶の力を使う様になったのは、やっぱり、フィアンマのお陰だ。
690 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 21:44:22.09 ID:l+ARCOIAO
+
691 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:44:37.86 ID:MP0bEL680
十月三十日。
垣根は打ち止めの身体を抱きかかえたまま、迷走していた。
どうすれば彼女を救えるのか。
垣根「……、」
打ち止め「……ぅ…」
ぐったりとしている彼女の身体は熱い。
冷えピタに似た冷却物質を創り出し、身体を冷やしてあげても、根本的な解決にはならない。
かといって身体を温めてあげても、何の意味も無くて。
垣根「…打ち止め」
彼の人生に、彼女の生死は関係無い。
だが、彼女を死なせることは、垣根のプライドにかけてあってはならない。
垣根「……、」
打ち止め「あ、ぅ…どうし、…たの……って…ミサ、か…は…」
ぼんやりと。
焦点の合わない瞳で、垣根の姿を捉え。
彼女は、のろのろとした口調で問いかける。
垣根は、そんな彼女へ、曖昧に笑いかけた。
垣根「…何でもねえよ。寝てろ」
再び目を閉じる打ち止めの頭を撫で。
汗で張り付いた前髪を退かしてやり、息を吐く。
目の前には、何人ものロシア軍兵士。
彼らは何の躊躇いもなく、垣根へ銃口を向けた。
垣根「…誰に喧嘩売ってるかわかってんのか? お前等」
科学サイド、最大の生産性を誇る未元物質。
彼はうっすらと笑って、暴力を―――否。
『暴力』から一文字を抜いた、圧倒的な『力』を振るう。
大事な少数を、護る為に。
692 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 21:44:38.72 ID:l+ARCOIAO
+
693 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:44:55.78 ID:MP0bEL680
上条と御坂美琴は、テッラの潜伏する軍部詰所へ潜入した。
うっかり見られた際には、美琴の電撃によって的確に気絶させる。
『おや、そうですか』
穏やかな男の声。
左方のテッラの声だった。
(誰と話してるんだ…?)
眉を潜める上条。
彼の手の中で光るモノは、恐らく禁書目録の遠隔制御霊装だろう。
あれを破壊すれば、禁書目録という少女は助かる。
『エリザリーナ独立国同盟…なるほど、見つからない訳ですねー』
『ええ、ええ。仕方がありませんし、自分で出向くとします』
エリザリーナ独立国同盟。
ロシア、『殲滅白書』本拠地のある場所から一番近くに存在する国家だ。
近年、ロシアのやり方に納得できず独立した小国の集まりで形成された。
独立時の立役者である女性、エリザリーナの名を国名に頂いている。
そうしている間にも、テッラは小窓の様のような場所を開け、ひらりと出て行ってしまう。
上条は追って突入しかけ、留まる。
ざっと百以上の瞳が監視の色に輝いていた。
「…いこう、御坂」
「エリザリーナ独立国同盟ね」
ひそひそと話し、彼等は外へ出る。
一刻も早く、左方のテッラから大天使の『素体』となる人間を守らなくてはならない。
694 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 21:44:56.75 ID:l+ARCOIAO
+
695 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:45:14.91 ID:MP0bEL680
絹旗最愛は、滝壺理后を背負って歩いていた。
滝壺は『体晶』の副作用により、酷い状態だ。
学園都市から出てしまった以上、治療の策は無い。
だからこそ、彼女達はとある場所を目指していた。
「…超大丈夫です。一説ですと、エリザリーナ独立国同盟は特別な超能力を扱える人間が居るそうですし」
「きぬはた……」
「大丈夫ですよ」
彼女は細い体ながらも、窒素を駆使して滝壺の身体をしっかりと背負っていた。
そんな彼女達の後ろに、一人の『超能力者』が立つ。
「…あの野郎を殺す前の準備運動には調度良いかにゃーん?」
ねっとりとした、女の声だった。
絹旗は、恐る恐る振り返る。
そこに、居たのは。
「…麦、野……」
「久しぶりだね、絹旗。滝壺も」
練習的<デコイ>代わりに、死んでもらって良いかな。
そんなことを明るく言い放って、彼女は、閃光を放つ。
696 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 21:45:16.01 ID:l+ARCOIAO
+
697 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:45:31.71 ID:MP0bEL680
幾多の声に応える様に。
ローマ教皇は、目を覚ました。
誰もが望む、戦争の終わりという悲願。
それを叶える為に、彼は立ち上がった。
彼が向かうのは、聖ピエトロ大聖堂の地下。
ロシア成教の一部と協力し合えば、テッラの計画を阻害出来る。
そう考えたからこそ、彼は無理をした。
(……フィアンマ…。……主よ…)
右方のフィアンマが、どうかテッラの前に立ちふさがる事を祈って。
一人の老人は、覚悟を決めた。
698 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 21:45:34.63 ID:l+ARCOIAO
+
699 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:45:55.96 ID:MP0bEL680
垣根帝督は、無力感に打ちひしがれていた。
ロシア軍を倒すついでに、プライベーティアと呼ばれる非道部隊も殺した。
ロシアの集落の人間達からは感謝された。
された、けれど。
打ち止めの体調は一向に良くならない。
そして、どうすれば良くなるのかもわからない。
もしかしたら、あのエイワスと名乗る生命体に騙されたのかもしれない。
「…ちく、しょう」
打ち止めはぜえぜえと荒い息を零している。
その顔に、元気は無い。
いつもは天真爛漫にはしゃぐその元気さは欠片も無い。
垣根帝督は、『未元物質』だ。
彼はその気になれば、人間だって創造出来るだろう。
それは正しく神の所業だが、そんな彼でも出来ないことがある。
『一方通行』と違い、既存のものに何かをすることは出来ない。
打ち止めの脳をもう一つ創る事は出来ても、打ち止めの脳を苦しめる何かから救う術は、持たない。
複製品を創る力では、何の解決にもなりはしない。
『!? 戦車だけじゃない!! ってミサカはミサカは大興奮してみたりー!』
『……打ち止め含む妹達が生きてて、幸せで、』
無邪気な笑顔。
優しい願い。
「……結局、俺には何も救えねえのか」
何も、守れないのか。護ることなんて、出来ないのか。
垣根は、雪原にみっともなく膝をつき、打ち止めの身体を抱きしめた。
打ち止めは指先を微かに動かすだけで、垣根を抱きしめ返すことさえままならない。
誰の夢も、命も、救えない。
『研究所時代に昏い過去を持つ人間が、血生臭い現在を持つ人間が。……救いある未来に生きられるだなんて幻想、どっから持ってきたの?』
麦野沈利の言葉を、思い出す。
「……は、…はは、…そう、だよなあ…」
一方通行と打ち止めは、嫌わないと言ってくれた。嬉しかった。
だけれど、汚いこの手は無力で、何も返してあげられない。
そんな彼は、人の気配にふと振り返る。
そこには、魔法使い染みた衣装を纏う、一人の魔術師が立っていた。
700 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 21:45:56.85 ID:l+ARCOIAO
+
701 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:46:17.94 ID:MP0bEL680
何をするにしても情報が足りない。
そんな訳で無線機を適当に盗み、能力を使いながら傍受を続けた結果。
一方通行はフィアンマと共に、核爆弾の発射を食い止めるべく動いていた。
ふぃあんま「じぜんかつどうにでもめざめたのか?」
一方「そォいう訳でも無いンだけどな」
どうせ暇つぶしをするのなら、善行の方が気分が良い。
加えて、核爆弾が残す爪痕は、痛々しい。
一方通行は『反射』をすれば良いが、他者はそういう訳にはいかない。
だからこそ止めるというのも、一つの理由。
一方「砲台を潰せばイイか、とりあえず」
うん、と頷いて、彼は跳ぶ。
彼の指先一つで物は役目を放棄し、人は命を喪う。
一方「…ン、これでイイだろ」
砲台を壊されれば、弾道ミサイルは発射出来なくなる。
すっきりさっぱり破壊した一方通行は罪悪感無しにあっさりと言った。
彼は人を傷つける事が好かないだけで、必要があれば殺し以外はするし、物は徹底的に壊す。
ふぃあんま「いいこいいこ」なでなで
一方「ン」
デレデレと撫でられている一方通行は、ふと奇妙なものを発見した。
少女が少女を背負い、誰かから襲撃を受けている。
一方「……襲ってる方は…『原子崩し』、か?」
ふぃあんま「まぎれもなくそうだな」
一方「知り合いなのか?」
ふぃあんま「そんなようなものだ」
一方「ンー」
人助けをしておこうか、と思う。
702 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 21:46:18.93 ID:l+ARCOIAO
+
703 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:46:36.12 ID:MP0bEL680
絹旗最愛は、必死に逃げていた。
彼女の能力は『窒素装甲』。
自動車を持ち上げ、弾丸を受け止めることすらできる素晴らしい能力だ。
だが、その程度。
軽機関散弾銃の威力にして、『五メートル以内の距離から七連発以上を受ける』と貫かれてしまう。
「っ、はぁ、ぁ…あっ」
「っ、」
追われ、疲れ果て、絹旗の細い腕は、ついに滝壺を抱きとめ落としてしまう。
後ろに迫る麦野沈利は、愉しそうにうっすらと笑っていた。
「ッ…滝壺さん、逃げてください!」
「でもきぬはた、きぬはたが、」
「私は、…もう、超良いんです」
自分のことなどどうでもいいから。
走って、一秒でも長く逃げて、生き延びて欲しい。
そう微笑む絹旗に、滝壺は泣きそうになって動けなくなる。
そんな彼女達の前に、一人の少年が立った。
学園都市第二位、一方通行。
絹旗最愛の能力を特殊な形で引き上げることとなった、演算パターンの元素体。
「な、ん…?」
何が起きているかわからないまま、一方通行を見上げた。
白い彼の背中は細いが、しかし、とても心強く思えた。
攻撃が止んでいる。どうしてだかは、わからない。
「……、…フィアンマ君、…退いて。私は、…私はね、…もう、全部壊すしかないんだよ」
か細い麦野沈利の声。
フィアンマと呼ばれた幼い赤髪の少年は、一方通行に抱きついたまま、麦野を見つめる。
「そうおもうのならば、おれさまごとつらぬいてみろ」
麦野沈利は、義手を一方通行へ向ける。
一秒。
五秒。
十秒。
一分…。
いつまでたっても、『原子崩し』が放たれることは無かった。
一方通行の『反射』を恐れた訳ではない。
本能単位で愛おしいと思ってしまった子供を貫けない程、結局、麦野沈利にも柔らかな部分があったということだ。
704 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 21:46:36.99 ID:l+ARCOIAO
+
705 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:47:10.84 ID:MP0bEL680
絹旗最愛から、『暗闇の五月計画』に関する恨み言をぶつけられ。
一方通行は少し迷った後、謝罪をした。
まさか謝罪をされるとは思っていなかった絹旗は押し黙り。
麦野はフィアンマに説教されたことで、正気を取り戻していた。
密かに、本当に密かに、一方通行は、"やっぱりショタは世界を救うな"と思った。
「えりざりーなどくりつこくどうめいへいけ」
言いながら、フィアンマは懐から取り出したやや赤い液体を滝壺の手足へかける。
そして何事かを詠唱すると、滝壺の体調が多少なりともマシになった。
紛れもなく、回復魔術である。
「……?」
「…今の、超何ですか?」
「くわしくきくな。はなすとながくなる」
言って、フィアンマは立ち上がる。
麦野沈利は絹旗達には謝らないものの、エリザリーナ独立国同盟へ行く途中、彼女達を守る事は決めたようだった。
「……フィアンマ君は、第二位と何処に行くの?」
「さがしびとがいる」
だから、捜す。
言って、彼は一方通行の手を取る。
一方通行はフィアンマの手を握り返し、再び歩き始めた。
706 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 21:47:11.95 ID:l+ARCOIAO
+
707 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:47:28.64 ID:MP0bEL680
魔法使い染みた衣装を纏う青年の名は、オッレルスというらしい。
彼は打ち止めの様子を暫し見つめ、治療の手段がある、と言った。
何でも、彼女の内側にある『歌』のデータを用いれば良いらしい。
だが、此処にミサカネットワークのデータを出力出来る人材は存在しない。
別の方法としては、オッレルスの知るその『歌』を用いれば良いと言う。
打ち止めの脳内をぐちゃぐちゃにしているその結び目を解くイメージらしい。
「…俺は、どうすれば良い」
「この子の為に死ぬ覚悟があるのなら、"特殊な方法"を教えよう」
「…それを行うと、具体的にどうなる」
「血管が破裂するかもしれないし、死ぬかもしれない」
「……は、」
問題無い、と垣根は笑う。
自分の体など、いくらでも未元物質で補えば良い。
フィアンマの膝の怪我を治した時点で、そういった技術は獲得していた。
死ぬ前に治療してしまえば問題無い。
アイツの大切にしているガキの命を救う為なら。
こんな命、賭けてやる。
「……教えてくれ」
思えば、自分は。
『未元物質』は、その為にあったのかもしれない。
身を切って、補い、誰かを助ける為に、この能力はあったのかも、しれない。
そうして彼は、魔術を行使した。
708 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 21:47:29.81 ID:l+ARCOIAO
+
709 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:47:46.28 ID:MP0bEL680
エリザリーナ独立国同盟。
上条と美琴が到着した時点で既に、その場所は荒れていた。
何があったのかはわからない。
恐らく、左方のテッラの襲撃を受けたのだろう。
血色の悪い女性―――エリザリーナは、上条を見やった。
「あなたが、幻想殺しね」
上条は、無言のままに頷く。
エリザリーナは、修道女を回収されてしまったことを告げる。
上条は、自分を保護すると言う彼女の申し出を断った。
「御坂、ここの人達の治療とかを頼めるか」
「アンタはどうするのよ」
「俺は、決着をつけてくる。どの道襲ってくるだろうし」
きっぱり言い切って、彼は背を向ける。
その背中に怯えは無い。
彼は、この戦争を終わらせることが終着点という訳ではないから。
戦争を終わらせて、家に帰ることが。
日常生活へ戻ることが、何よりの終着点<ゴール>なのだ。
710 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 21:47:47.10 ID:l+ARCOIAO
+
711 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:48:34.43 ID:MP0bEL680
《
>>709
×修道女 ○修道女<そたい>》
血まみれの身体を治療しながら。
垣根は、体調が元に戻った打ち止めを抱いたまま、歩いていた。
彼が向かう先は、エリザリーナ独立国同盟。
沢山の超能力者と、苦しむ弱者の集う場所。
そんな折、地面が揺れる。
まるで教会からかき集めた様な不気味な城が、出来上がっていく。
土と風が巻き上げられ、次々と城を組み立てていく。
城というよりも、最早それは一つの街とも言えた。
『天の国』。
そう呼称するに相応しい。
垣根は、胸に何かの重圧が伸し掛ってくる事を感じながら、進んでいく。
謎の城にかまけている場合ではない。
一刻も早くエリザリーナ独立国同盟へ向かい、疲れきった打ち止めを休ませてやりたい。
712 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 21:48:36.62 ID:l+ARCOIAO
+
713 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:49:01.39 ID:MP0bEL680
大天使『神の火』が人ならざる絶叫をしている声に、フィアンマは眉を潜める。
街とも城とも呼べない場所は、次々と築かれている。
「『神の国(ラレーゴラ)』…か」
「…なンだ、あれ…」
まるで、学園都市を宗教的に作り替えたかの様な。
様々な教会などを集めて作られていくその場所。
バチカンよりも更に神聖に感じられるのは、随所に『天使の力』を流しているからだろう。
神の国と言えば聞こえは良いが、要するに魔術的な神殿だった。
完全に築き上げられたそれは、土台ごと上空へ浮上していく。
フィアンマは目を細め、それを見上げた。
―――上条当麻は、連れて行かれた。
判断する。
自分も、そうしようと考えていたこともあった。
この救済計画は、フィアンマの考えていた要素も混じっている。
そうして、フィアンマは押し黙った。
ふと、振り返る。
一人の青年が立っていた。
フィアンマがこの数年、待ち焦がれた顔だった。
「……遅くなって、ごめんね」
「……ぱぱ、…」
じわ、と目に涙を溜め、フィアンマは一方通行から離れると、オッレルスに近づき、抱きついた。
「、……おれ、さま、…いいこに、してた…ずっと、…して、た……」
「………うん、…知ってるよ。……ごめん…。もう、良い子じゃなくて、良いよ」
「り……おかえ、り…」
鍔広の帽子に黒い外套、物々しい眼帯といった格好の魔法使い染みた魔術師は、フィアンマを強く抱きしめ返す。
「……一方通行、だったね」
「…ン、…あァ」
「この子を守ってくれてありがとう。礼を言うよ」
言って、オッレルスはフィアンマの頭を撫でしゃがみ、視線を合わせた。
714 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 21:49:02.42 ID:l+ARCOIAO
+
715 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:49:25.93 ID:MP0bEL680
一方通行が、上空へ顕現した大天使『神の火』に警戒している間。
オッレルスは、フィアンマに話しかけていた。
感動の対面をしている暇は無い。決断をしなければならない。
「……敢えて、右方のフィアンマと呼ぼうか。フィアンマ」
「……ん」
「…フィアンマは、…幻想殺しを助けたい?」
「………」
「今まで何度も助ける好機があって、それを手放してきて……それでも、今更助けたいと、そう思うかい?」
責めている訳ではない。
父親からの問いかけに、フィアンマは小さく頷いた。
「…おもう。……おれさまは、…まちがえた。いちどめはみおくり、うしなった。にどめはみすごし、きずつけた。……さんどめはもう、まちがえない」
じわじわと滲む涙を手の甲で拭って、フィアンマはそう述べた。
記憶のあるなしで見捨てるという打算的な考えは、やめた。
例えどんな状態であったにせよ、上条当麻を大好きだと自覚したから。
もう、安易な方向へは、逃げない。
「三度目の正直、とも言うしね」
「……ぱぱ、…えっと、」
「……時間が無い。きちんと教えられるかどうかは不明だが、教えよう」
絶対の『反射』を持つ一方通行へ守ってもらう状態で。
オッレルスは、淡々とフィアンマへ魔術を教えた。
口伝と、雪原への軽い指示だけでは、簡単に覚えられる筈もない。
だが、フィアンマは頭へ叩き込んだ。
『光の処刑』を完成させたテッラ相手に、『聖なる右』一辺倒で戦おうとは、思わない。
「大丈夫だよ」
「……うん」
「そんなに怖がらなくても、大丈夫だ。実力がある。……何しろ、君は俺の息子なんだから」
「うん」
右方のフィアンマは雪原へ陣を描き始めた。
そうして、『神の火』を、見上げる。
「―――おれさまが、とめるんだ」
716 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 21:49:26.87 ID:l+ARCOIAO
+
717 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:52:09.79 ID:MP0bEL680
「―――上条当麻を守る為なら、俺様は何人でも殺す」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 右方のフィアンマ
「……異教徒との生活に馴染み過ぎてしまいましたか。残念です」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 左方のテッラ
「…誰、だ……?」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「これは、懇願でも、嘆願でも、依頼でも、命令でもない」
学園都市第一位の『超能力者』・『未元物質』――― 垣根帝督
「また、三人で一緒にくらせるよね、ってミサカはミサカは、問いかけてみたり…」
『妹達』の司令塔にして生ける入力装置――― 打ち止め
718 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 21:52:15.88 ID:l+ARCOIAO
+
719 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/21(月) 21:52:28.26 ID:MP0bEL680
今回はここまで。
720 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/21(月) 22:33:26.74 ID:Falv8MGWo
乙
ふぃあんま君マジ天使
721 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/22(火) 16:46:23.00 ID:n8b0/EuSO
乙
結局、一方通行が美琴の代わりをやったせいで美琴の出番が減ったって訳よ
別に良いんだけどね!
だがBLはゆるさん
722 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/22(火) 17:58:25.40 ID:2m2OZttco
乙
ショタは世界を救うね、流石
723 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 00:15:54.90 ID:UzeMC11Q0
>>721
でもここホモスレなんだよなぁ…(困惑)
投下。
724 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 00:16:21.16 ID:wMVXuWxAO
+
725 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 00:16:39.87 ID:UzeMC11Q0
垣根はどうにか、エリザリーナ独立国同盟へと辿りついた。
断りを入れ、打ち止めをベッドへ寝かせる。
横たわったことで楽になったのか、打ち止めの表情は和らいでいる。
体調を元に戻したとはいえ、体力の激減は甚だしい。
「ん……」
「……」
垣根は軽く壁に寄りかかり、息を吐き出す。
窓の外、黄金の光が見えた。
城というか、謎の街全体を包んでいるようだ。
「…何なんだろうな、あれ」
彼の独り言に、女性の声が応えた。
「天国じゃないの」
「…あん?」
視線を向ける。
麦野沈利だった。
垣根は咄嗟に打ち止めを守ろうとする。
麦野は、無言で首を横に振った。
「殺してやるつもりはあったけど、気が変わった。そう警戒すんなよ」
「……っつか、天国ってお前」
「それっぽい、と思っただけよ」
「何でお前が此処に居んの?」
「絹旗と滝壺の治療」
「ふーん」
先程は第三位を見かけたし、学園都市は大変だろうな、と垣根は他人事に思う。
窓の外の街は巨大で広大で、排他的な暖かさを感じた。
726 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 00:16:40.88 ID:wMVXuWxAO
+
727 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 00:17:03.07 ID:UzeMC11Q0
『神の国(ラレーゴラ)』。
その名が指し示す通り、それは霊魂の彷徨う街だ。
街と城を組み合わせた形をしているその場所には、死者が居る。
左方のテッラが主なのだから、その大半はローマ正教所属だった人間。
霊魂を泥から作った肉に押し込め、いざという時は伏兵として用いる。
死者を蘇らせられるのは、テッラの属性が大地であるからだろう。
人は皆土に還る。そこから復活させたのだ。
様々な教会から部品を引き抜き、地上の力の流れに手を加えた上で、築かれた神殿。
『天使の力』を適切な場所へ流し、その力によって"天の国の形"を保つ。
そんな場所へ、"形を整えた"フィアンマは足を踏み入れた。
中は、いたって普通の街並み。
高度一万メートルに浮かんでいることや、そこに居る人間が、現時点において皆死者であることを除けば。
「……、」
フィアンマは、ふと、立ち止まる。
「……、…」
「あれ?」
赤く長い髪。
金色の瞳。
フィアンマは、終ぞ、写真立ての中でしか見たことのなかった女性。
即ち、右方のフィアンマの母親が、そこに居た。
彼女はフィアンマを見やり、にこりと柔らかく笑む。
「どうしたの、道に迷ったの?」
「……ぁ、」
「一緒に帰ろう? お家は暖かいから…」
綺麗な笑顔で、彼女はフィアンマを抱きしめた。
死者である彼女の身体は、氷の様に冷たい。
「……、」
左方のテッラが何を考えているか、何となく予想はつく。
ローマ正教徒になるか、或いは死ぬか、その二択を突きつけて。
そうして自分が認めた人間だけを、この場所へ導くのだ。
右方のフィアンマはまだ、左方のテッラを裏切ってはいない。
故に、此処で、母親と暮らす事が許される。
されど。
けれど。
「……ごめんなさい、」
彼は前を向いた。安易な方向へ逃げないと決めたから。
728 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 00:17:04.25 ID:wMVXuWxAO
+
729 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 00:17:31.16 ID:UzeMC11Q0
上条当麻は、『光の処刑』の法則を見極めるべく奮闘していた。
完成する前は一種類、それも大まかな内容だったらしいが、現在は違う。
だが、幾つまで変更することが出来るのか、わからない。
加えて、彼は禁書目録の遠隔制御用霊装により、通常魔術を行使している。
扱える術式は限られる様だが、手立てが多いことには変わりない。
「ッ、」
その名の通り、大地を司る左方のテッラの得意とする術式は、主に地面へ変化を与えるものだ。
そして、身一つで戦う上条にとっては地面が平坦でないことは辛いこと。
何しろ、デコボコの大地では走る事が出来ない。
無闇に突っ込んだところで、たどり着くまでの時間の合間に『光の処刑』で優先順位を変えられてしまえば。
果たして、自分の右手も通じてくれるかどうか。
「拍子抜けですねー…。…さて、そろそろこちらとしても作業を済ませたいので」
「なん、ッ」
「世界を救済し、主の御恵を広める為にも、貴男には死んでいただく必要があるんですよ」
「ふざけんな! そんな上から目線の救いなんざ、必要だと思ってんのかよ」
「必要でしょう。世界は歪んでいますし、神を捨てた人があまりにも多すぎますしねー」
さらりと言って、テッラは手にしている『円盤』を軽く振るう。
『神の火』を制御する為のものでもあり、魔術現象を起こす為に必要な霊装でもあるようだ。
上条は地面から現れた腕に殴られ、その勢いのまま、壁へ叩きつけられる。
げほげほ、と噎せ、テッラを睨み。不意に、ドアが開いた。
テッラ側の加勢かと思った上条は、思わず身を強ばらせた。
立ち上がろうにも、運の悪い事に足は折れている。立てない。
絶体絶命。
「……、…」
恐る恐る、視線を向ける。
730 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 00:17:32.13 ID:wMVXuWxAO
+
731 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 00:17:53.86 ID:UzeMC11Q0
二十代半ば、といったところか。
長身の、赤髪の青年が立っていた。
セミロング程度の赤い髪は、魔術によるそよ風に僅かに揺れている。
白い頬には血液らしき赤い液体が付着していて。
その右手には、黄金で造られた長い剣の様なものが握られていた。
「…誰、だ……?」
掠れた声で、上条は問う。
対して、青年は端的に答えた。
「分からんのか」
「……?」
彼は上条を見やり、少しだけ笑みを浮かべてみせた。
その笑顔を、上条は知っている。
「フィアンマ…?」
「ああ」
「え、でも、」
「……、…貴男はそちらにつく事にしたのですか?」
「ああ、もう迷わん。―――上条当麻を守る為なら、俺様は何人でも殺す。無論、お前も」
「……異教徒との生活に馴染み過ぎてしまいましたか。残念です」
「お前のやり方では世界を救えんよ」
「貴男がローマ正教の教えに疑いを持ってしまったから、ではないですかねー?」
上条を襲った土の弾丸が剣の一振りで燃やされる。
「フィアンマ、お前何で」
「この見目か? 少し"弄った"だけだよ。此処に来た理由は…そうだな、…お前が俺様を守ったように、…俺様も、お前を守りたいと思ったからだ」
言って、彼はテッラを見据える。
一切の容赦も、情も、そこには無い。
左方のテッラとはそれなりに良い思い出もあったが、それも今日まで。
「死にたくなければ足掻くんだな」
「心が痛みますねー」
攻撃が、拮抗する。
732 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 00:17:54.99 ID:wMVXuWxAO
+
733 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 00:18:12.34 ID:UzeMC11Q0
少女の意識が、きちんと浮上した。
熱に浮かされた様子は、最早一片も無い。
打ち止めと呼ばれる少女は、傍らで僅かにうとつく垣根を見上げる。
垣根は、目を開けた。
打ち止めの額に触れて薄く笑み、窓の外を見る。
神聖過ぎて、いっそ不気味な程に。
外から注ぐ黄金の光を受け、大天使『神の火』が再起動した。
一度右方のフィアンマの『聖なる右』によって沈められたものの、土を得て戻ったらしい。
あの黄金の光は不可解だが、何となく、察する。
あれが『神の火』の意思によって地上へ向けて流れきってしまえば、全てが破壊される。
ユーラシア大陸全土は呑み込まれるだろうか。止めなければ。
しかし、あれを生身の人間が止めれば、死ぬかもしれない。
簡単な予測演算<よそう>を終えて、垣根帝督は立ち上がった。
そんな彼の服の袖を、打ち止めの小さな手が掴む。
「また、三人で一緒にくらせるよね、ってミサカはミサカは、問いかけてみたり…」
不安げな問いかけだった。
言葉にしなければ、垣根が消えてしまうと思ったのかもしれない。
垣根帝督は少し悩んで、打ち止めの手の甲を優しく撫でた。
「……俺も、さ。…お前と、一方通行と、…一緒に、暮らしていきたかったよ」
告げて、彼は出て行ってしまう。
打ち止めは起き上がれず、伸ばした手は空を切る。
垣根帝督の背には、12枚の翼があった。
能力と規定出来ない、特別な力。
けれど、もはやそれは黒に一部とて染まらない。
彼は翼を宿したまま、『神の火』を見上げる。
「……何か、あれだな。…似合わねえ」
「そォだな。オマエにメルヘン翼ってのは違和感あるよなァ、やっぱり」
「………あ?」
734 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 00:18:13.32 ID:wMVXuWxAO
+
735 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 00:18:32.08 ID:UzeMC11Q0
『神の如き者』が駄目なら、『神の力』で。
属性を迂回して攻撃を重ね、体力を消耗したテッラに、躊躇なく、フィアンマは刃を突き立てた。
『光の処刑』を使わせない様、言葉を紡がせない様、首を掻っ切る。
溢れ出した血液が手を汚して尚、フィアンマは引かない。
上条に見られているとわかっていながら、剣を短く持ち、テッラの身体を何度も貫いた。
手に嫌な感触が伝わるが、フィアンマは頓着しない。
死体の手から滑り落ちた遠隔制御霊装を『聖なる右』で粉砕する。
そして、彼はのろのろと振り返った。
「……失望したか?」
淡白な声だった。
死体を蹴って剣を捨て、フィアンマは血まみれの手はそのままに、上条を見る。
その顔も、入ってきた時以上に血に汚れ、赤黒いモノが付着していた。
上条は立ち上がれないままに、フィアンマを見つめた。
「して、ねえよ」
「……、」
「だって、…フィアンマは、…俺を助けに来たんだろ」
失望などするものか。
そう言う上条に、フィアンマは安堵の表情を浮かべて、近寄る。
街全体が揺れた。適切な処理をしなければ、制御を失った『天使の力』が世界を滅ぼしてしまう。
フィアンマは上条を抱え、脱出用のコンテナへ向かった。
何度か聖なる大剣を振るった事もあり、壊れているものが多い。
『神の火』の素体となった少女等、逃がすべき人員は逃がした。
右方のフィアンマは最悪、この街に住む死者達と運命を共にするつもりでいる。
「……フィ、アンマ。まさか、」
「………当麻。…俺様は、当麻のことが大好きだよ」
フィアンマは、そっと上条の頬へ口付けて。
上条が動けないよう動かないよう、彼の折れた足に少し重圧をかけ、痛がる彼をコンテナへ押し込んだ。
「色々とやることがある」
「待てよ、」
「……、元気でいてくれ」
右方のフィアンマは上条の乗ったコンテナをぐいと押す。
レールに沿って動き出すコンテナは、やがて見えない場所へと消えた。
「俺様が大きくなったらこうなるんだろうか」
呟き、オッレルスに整えてもらった自分の身体をぺたりと触って、フィアンマは動く。
『神の火』は、一方通行達が対処してくれていた。彼らを信じよう。
自分は、この『神の国』をどうにかしなければならない。
落ちていく間に軌道を変えて、北極海辺りに着水させれば良いだろう。
見目を魔術的に青年のそれへ整えたとしても。
七歳の少年に過ぎないフィアンマは。
胸に蟠る不安感を無理矢理に、呑み込んだ。
736 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 00:18:33.01 ID:wMVXuWxAO
+
737 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 00:18:49.78 ID:UzeMC11Q0
「お前、来るなって言っただろうが!」
「うるせェな」
『神の火』の攻撃を未元物質によって防ぎ、垣根は怒鳴る。
一方通行は迷惑そうな顔をすると、垣根を見た。
赤い瞳は真っ直ぐで、澄み切っていて。
子供の様というよりは、覚悟を決めたそれだった。
「……オマエに死なれる訳にゃいかねェンだよ」
『反射』を通り抜ける様な攻撃を受け、傷つけられながら、一方通行は垣根を支援した。
垣根は唇を噛み締め、翼を振るう。
『神の火』と拮抗し、翼の真価を引き上げる様に、一方通行が動く。
攻撃の威力が増し、『神の火』を押していった。
そして。
人ならざる絶叫を発し、大天使は、掻き消えた。
その後に、荒れ狂う力の奔流は、遺らなかった。
738 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 00:18:50.85 ID:wMVXuWxAO
+
739 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 00:19:13.03 ID:UzeMC11Q0
疲れきっていた。
垣根は雪の上に倒れ、一方通行に打ち止めを任せる。
一方通行は少し考えて、打ち止めを迎えに行った。
垣根はぼんやりと、空を見上げる。
回収部隊と思われる人間が居た。
彼等は垣根に警戒しながら近づいてくる。
演算がままならないフリをして、運ばれていく。
(…最初から、こうすりゃ良かったのか)
知られてはならない情報はいくつも掴んでいる。
となれば、後は脅迫して、未来を勝ち得るだけ。
「今後、打ち止めや妹達を使うな。何かしらの盾を使って汚れ仕事を押し付けるな。もしそういった事例が一つでも見られたら、俺は学園都市ごと叩き潰す」
「…ご自分の立場がわかっていないのですか?」
「……はー」
拘束を壊し、その勢いでヘリすらぶち壊しながら、垣根帝督は息を吸い込む。
攻撃を全ていなし、彼は吹っ切れた様に笑った。
学園都市全体を握る必要なんてなかった。
中枢に食入らなくても、自分の理想は達成出来た。
打ち止めを一方通行に任せた今、自分は存分に暴れる事が出来る。
武器全てを垣根に向ける暗部の人員に、垣根帝督は楽しそうに告げた。
「これは、交渉でも、提案でも、取引でも、懇願でも、嘆願でも、協定でも、依頼でも、妥協でも、命令でもない」
12枚の翼は、天使を守る様に優雅に動いていた。
「凱旋だ、バーカ」
740 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 00:19:14.16 ID:wMVXuWxAO
+
741 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 00:19:31.94 ID:UzeMC11Q0
軌道をきちんと北極海へ着水する様に変え。
フィアンマは、城部分ではなく、街部分へ戻って来た。
通るべく、切りつけた人の怪我は、既に治っている。
これから全てが壊れるとも知らないまま、死者は微笑む。
「どうしたんだ、そんな顔して」
「……ん」
昔、フィアンマの目の前で死んでしまった人だった。
事故に巻き込まれたフィアンマの幸運故に、庇う様にして死んだ、明るい青年だった。
彼はのんびりと笑って、フィアンマの頭を撫でる。
もう二度と、彼、いや、彼らの眠りが妨げられることはない。
自分は正しいことをしたのだと、言い聞かせ。
フィアンマは、青年に撫でられるまま、小さく笑った。
上条を助けられた今なら。
死んでしまっても、良いと、思えた。
742 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 00:19:32.89 ID:wMVXuWxAO
+
743 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga !蒼_res]:2013/01/23(水) 00:20:02.84 ID:UzeMC11Q0
超巨大浮遊魔術要塞『神の国』は、北極海へ沈んだ。
着水時の衝撃によって津波が発生したものの、周辺住民が避難済みだった為、人的被害は無し。
北極海域に、生体反応無し。
744 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 00:20:03.81 ID:wMVXuWxAO
+
745 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 00:20:57.35 ID:UzeMC11Q0
「あー……サバカン=セイヴェルンだっけか?」
学園都市第一位の『超能力者』・『未元物質』――― 垣根帝督
「幻想殺しさンが落ち込ンでも、フィアンマくンは帰って来ねェンだ」
学園都市第二位の『超能力者』――― 一方通行
「……俺、…フィアンマを、…見殺しにしたんだ…」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「ええー…俺子守りとかそういうのキャラじゃねーんだけどな……」
紆余曲折あって魔神の下へ身を寄せている魔術師――― ウートガルザロキ
746 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 00:20:58.94 ID:wMVXuWxAO
+
747 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 00:21:14.32 ID:UzeMC11Q0
今回はここまで。
748 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage ]:2013/01/23(水) 01:20:26.70 ID:J2XukAi/0
__,,....) , 。 ヽヽ
/⌒ヽ'´ );'・;,、`●;.ミ∵;,、 。 ;, ──┐. | |
と(^ω^*)Uてノ)゙、`●ヾ`;`、`●;.、`●'`;ヾ;;ヾ;.,、`●; '. / | | ───────
/⌒ヽ''´ );'・;,、`●;.ミ∵;,、 。 ;, ノ ノ
と(^ω^*)Uてノ)゙、`●ヾ`;`、`●;.、`●'`;ヾ;;ヾ;.,、`●; '.
/⌒ヽ''´ );'ヾ`;ヾ`;・;,、`ヾ `;●;.;, 、` ● ; . ミ ; ,、
と(^ω^*)Uてノ)゙``;;ヾ;ヾ;;,、`●;.'';,,
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|``;`、`●`;,、`●;.、`●;. /⌒ヽ まだ、ほかほかだお( ^ω^)
|`;ヾ;;ヾ;●`;ヾ;;,、`●;ヾ;;.、`●;. ∬(^ω^*)パクパク・・・
|ヾヾ`;、`●;,、`●`;,、`●;.●、`●;.`●;:;;O●と;: ヽ
|;ヾ;`●`;,、`●;●v●●.、`●;.'`;,、`● (^(^`_ ,、 /⌒ヽ大量のうんこを発見したおー!
|`●`;,、`;`●;.`●:;●;;'ヾ;●●;.`●;.`●:;●●:;. (*^ω^)
|ヾ`●;●.`●`●`●;.`●:;●;;';.`●`●;.`●:;●;; ⊂ )
|`●`;,、`●;`●;.●`●:;●;;';ヾ`●;.`●:;●;;';....●;; 人 Y すごいお! ここは天国かお!
|`●;●.`●:`●;.●`●●●:;●;;';●;;'●ヾヾ`;: ;●し´ (_),.,;,., /⌒ヽ' /⌒ヽ' /⌒ヽ'
|●●;ヾ;`●`;,`●●;.`●:;●;;'、`●;.`●:;●;;'`●;;ヾ;.、`●;.`●:;●;;'`●;. (^ω^*) (^ω^/⌒ヽ (^ω^*)
|`●;ヾ;●`;;●ヾ;,、`●;.`●;.`●`●;.`●:;●;;':;●;●;'、`●;.'●`;,●●●●、` ⊂;⊂;;.\ ⊂.:;,..(^ω^*)⊂⊂.;:\
|●●`●`;,、●v`●;●`●;.`●:;●;;'`●;.`●:;●;;'.、`●;.`●●●;.`●:`●;.`●:' ;,.・.,\.,;;:;.:;../⌒ヽ⊂;.,\)⊂.;:,..: )�・
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749 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 02:35:45.61 ID:7JF/oAeW0
乙
ひゃっはー! ていとくんマジかっこいい、凱旋かっこいい、チンピラかっこいい
サバカン=セイヴェルン…いったい何ンダなんだ……?
750 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 05:16:47.73 ID:bnWbgcAr0
乙
まさかのザロキさんwww
751 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 06:17:53.62 ID:0FhXEhaSO
北極海が北海道に見えた
何を言ってるかわからねーと思うが俺自身も何を言ってるかわからない……
あとふぃあんま君は元に戻るのですか?戻らない場合は学園都市が平らになる可能性が無きにしもあらずなのよ
752 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 16:10:32.65 ID:oPGSBbFZ0
>>749
もしかして学園都市の技術を搭載した…
>>751
北海道で牧場の牛と戯れるふぃあんまくんかわいいです
ここはおにショタスレですからねー
投下。
753 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 16:10:36.58 ID:wMVXuWxAO
+
754 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 16:11:07.69 ID:oPGSBbFZ0
十一月三日。
暗部生活から脱却した垣根帝督は、一方通行と共に日々を怠惰に過ごしていた。
一応学園都市の病院でも診てもらった打ち止めが退院した為、三人の生活が元通りに始まる。
打ち止め「『……俺も、さ。…お前と、一方通行と、…一緒に、暮らしていきたかったよ』…うんうん、やっぱり格好良かったよ、ってミサカはミサカは一方通行に垣根の名言を披露してみたり」
一方「ほォ」
垣根「おいやめろ、ボコボコにするぞテメェら」
以前より更に優しい生活の中。
言葉責めという集中砲火を受け、垣根は辟易していた。
しまいには家出してしまおうかと思ったところで、インターフォンが鳴る。
一方「ン?」
垣根「…ちょっと見てくるか」
垣根は立ち上がり、僅かに警戒しながら玄関へ向かう。
訪問者を確認して、垣根はドアを開けた。
ふわふわの長い金髪にベレー帽。
お姫様の様にふんわりとしたワンピースに、コート。
そんな服装の幼い少女と手を繋いでいる少女。
彼女は白いふわふわとした短い髪に、真っ黒な瞳をしていた。
垣根帝督に身体を作り替えてもらった御蔭で命を助けられた、フレンダ=セイヴェルンだった。
元は、今手を繋いでいる妹と容姿がそっくりだったのだが。
????「大体、おねえちゃんを助けてくれてありがとう」
フレンダ「結局、暗部からも解放してくれて本当にありがとうって訳よ」
お礼の言葉。
少女二人に微笑みかけられ、垣根帝督は気恥かしさに口ごもった後、首を傾げて言う。
垣根「あー……サバカン=セイヴェルンだっけか?」
フレンダ「誰!?」
755 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 16:11:09.53 ID:wMVXuWxAO
+
756 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 16:11:36.24 ID:oPGSBbFZ0
フレメア―――愛する実妹を人質に取られた上での暗部生活に、麦野沈利から狙われた命。
その両方を、フレンダ=セイヴェルンは、垣根帝督に救われた。
そんな訳で、妹を連れて垣根宅へやって来たのである。
一方「……『仕事』関係か?」
垣根「そんなようなモン」
フレンダ「突然の訪問は迷惑だったかな。あ、あの子はフレメア。結局、私の妹って訳よ」
垣根「いいや、別に。……妹か」
打ち止め「ぷるぷるで勝負だーッ、ってミサカはミサカは闘争心を燃やしてみたり!」
フレメア「大体、負けないからね!」
垣根「すげえ仲良くなってる…」
一方「ガキなンざそンなモンだろ。知らねェけど」
フレンダ「結局、貴方が第一位ご執心の第二位って訳ね」
一方「あン? ご執心?」
垣根「俺が助けた命なら俺が消しても良いな、っつか消しちまうぞ」
フレンダ「ちょ、すと、ストーップ!」
垣根に羽交い絞めにされ、じたじたと身動くフレンダ。
フレンダの妹であるフレメアは、打ち止めとゲームをして楽しそうにしている。
一方通行はそんな長閑な様子を見て、少しだけ笑って。
部屋を抜け、場所を移し、電話をかけた。
日常に戻れないでいる、友人へ。
757 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 16:11:37.24 ID:wMVXuWxAO
+
758 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 16:11:57.06 ID:oPGSBbFZ0
十一月三日。
上条当麻は、無事、学園都市の寮まで戻って来た。
本来ならば学校へ行かなければならないのだが、行く気が起きない。
彼は、部屋で一人。
今はもう部屋に居ない子供の服を握って、沈黙していた。
上条「……」
彼が手にしているのは、子供のパジャマの上着だった。
一緒に帰ってくるはずだった。
或いは、帰ってくれば、此処に居てくれるはずだった。
『………当麻。…俺様は、当麻のことが大好きだよ』
自分を助ける為に、身体を作り替えた子供。
強大な力を持っていても、あの子の本質はただの子供だ。
上条「……俺、…フィアンマを、…見殺しにしたんだ…」
呟いて、何度でも自覚する。
足が折れていたから、そこに重圧をかけられたから、動けなかった。
それは確かに良い言い訳になる。恐らく、フィアンマもそれを狙った。
どんな状態でもフィアンマを助けようとする上条の性格を理解した上で。
フィアンマは、上条を諦めさせる為に、あんなことをしたのだ。
方々へ連絡をしてみたが、フィアンマの所在はわからないらしい。
北極海域に生体反応は無いそうだ。きっと、あの街と共に沈んでしまった。
どんなに強大な魔術を扱えても、元はただの人間。
溺れれば死ぬし、倒壊した建物で圧死することも、ある。
ブー、ブー。
携帯電話が震えた。
上条は服を左手に持ち、右手で携帯電話を手にし、電話に出る。
上条「一方通行…か…?」
一方『…よォ』
上条「……、…」
一方『……フィアンマくンをロシアに連れて行ったのは、俺だ。……、…謝ってどうなるってモンでもねェが、…ごめン』
上条「…べ、つに…一方通行のせいじゃ、ねえよ。……俺が、弱かったから…フィアンマは、居なくなったんだ」
声が震える。
上条は、服が濡れたことで、自分が泣いていたことに気がついた。
一方通行は上条の様子を第三位越しに知っている。
759 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 16:11:57.92 ID:wMVXuWxAO
+
760 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 16:12:38.12 ID:oPGSBbFZ0
一方『幻想殺しさンが落ち込ンでも、フィアンマくンは帰って来ねェンだ』
知っていて、そう言った。
上条が泣いて悲しめば、フィアンマも悲しむと思ったから。
上条はわかってる、と言って、歯を食いしばる。
上条「でも、さ。…俺、…フィアンマを、見殺しにしたんだよ…。……無理矢理にでも手を引っ張れば、…這いつくばってでも一緒に連れて帰れば、…フィアンマは、死ななかったんだ。世界が氷河期に突入するしないの瀬戸際だったっていうのはわかる、それでも……世界が滅ぶまで、一緒に居てやれたのに」
なのに。
上条「俺の、せいなんだ。…俺が…俺が、…もっと、……」
服が濡れていく。
上条は幾度も唇を噛み、身体を震わせた。
一方『……フィアンマくンは、何て言ってたンだ』
上条「…最後、…"元気でいてくれ"って……」
一方『なら、そォしてやるしかねェだろ』
上条「………」
一方『…幻想殺しさンが泣いて、学校も行けないままでいたら、フィアンマくンだって、嫌だと俺は思う』
死んでしまったフィアンマの為にも。
胸を張って生きていかなければならない、と一方通行は諭す。
一方通行だって、生きる指針とも言えたフィアンマが居なくなった事は辛い。
垣根と打ち止めが居なければ、死んでいたかもしれない。
一方『ゆっくりでイイから、……立ち直らねェと』
上条「そ、う…だな。……ありがとな…」
電話を終えて。
上条は携帯電話を放り、ベッドへ俯せに横たわった。
上条「元気に、…なら、ないと…。…ごめん、な…フィアンマ……」
761 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 16:12:39.52 ID:wMVXuWxAO
+
762 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 16:13:08.46 ID:oPGSBbFZ0
一方、死者扱いになっている右方のフィアンマはというと、すこぶる元気だった。
北極海へ沈む直前にオッレルスに回収された彼は身体を元に戻し、イタリアで療養していた。
ミラノのアパートメントの部屋の中、現在、彼は療養を終え、元気いっぱいだった。
ふぃあんま「ぱぱ、おやつたべたい」
ぎゅう、と抱きつかれ。
オッレルスはのんびりと笑み、フィアンマの頭を撫でる。
オッレルス「んー、ストックが無いからな…」
悩み悩み、彼はフィアンマをあやし。
良い子であることをやめ、わがまま(とはいえ可愛いレベルの要求だ)を言うフィアンマの要求に応えるべく、彼は視線を移す。
その先に居るのは、夕飯の下拵えを適当にしている一人の青年が居た。
スーツを着た、軽薄そうな金髪の男。
彼の名を、ウートガルザロキと言う。
本名ではない。
北欧神話に登場する巨人の王の名称を用いているだけだ。
その名の通り、彼が最も得意とする魔術は幻術である。
ウート「……、」
オッレルス「フィアンマと一緒に買い物に行ってきてくれ」
ウート「ええー…俺子守りとかそういうのキャラじゃねーんだけどな……っていうか、飯は」
オッレルス「終わらせてからで良いよ」
ウート「はいはい」
ふぃあんま「うー」
ウート「その中途半端な呼び方やめてくんない? せめてこう…ま、良いか適当で」
下準備を終え、ウートガルザロキはフィアンマをひょいと抱き上げる。
彼は様々な事情があり、それを土台として、オッレルスとの間に心地の良いしがらみを持っていた。
ショタコンではないものの、子供好きではある為、機嫌は良い。
763 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 16:13:09.43 ID:wMVXuWxAO
+
764 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 16:13:41.57 ID:oPGSBbFZ0
ウートガルザロキに連れられ、フィアンマはスーパーマーケットまでやってきた。
お菓子コーナーでだらだらとしながら思う事は、上条のことだった。
ウート「…学園都市帰らなくていいのか?」
ふぃあんま「…なやんでいるんだ」
ウート「自分がしたいようにしとかねえと、後々困るぜ?」
ふぃあんま「…そのりろんでいうと、うーとがるじゃ…にゃ、…うとがるでは、ぱぱといっしょがいちばんいいのか」
ウート「まあな。いや、別にあんたから盗りたいとかそういう訳じゃねえけど」
ふぃあんま「……、みゃー」
ウート「あー、これ?」
甘そうなチョコマシュマロの袋を見せ、カゴに入れる。
フィアンマは満足そうな顔をし、目を伏せた。
ウート「ま、何にせよしばらく悩めば良いんじゃねえの。オッレルスは君との再生活に喜んでるし、そのカミジョウなんたらも君に戻ってきて欲しいとは思ってるだろうし。自分の価値を判断して、自分がどっちに居たいか考えて動けば良い」
ふぃあんま「……おれさまががくえんとしにいって、ぱぱがおちこんだら、うとがるでがなんとかしてくれるか?」
ウート「もちろん。その為に居るようなモンだし?」
会計を済ませ、袋片手にフィアンマの手を引き、ウートガルザロキはてくてくと歩く。
ふぃあんま「うとがるで」
ウート「んぁ?」
ふぃあんま「もしや、ままとよんだほうがいいのか」
ウート「それはちょっと勘弁してくれ」
ふぃあんま「はずかしいからか」
ウート「いやそうじゃねえだろ」
765 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 16:13:42.48 ID:wMVXuWxAO
+
766 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 16:14:42.57 ID:oPGSBbFZ0
「……打ち止めの監視と保護、警護。わかったな」
学園都市第一位の『超能力者』・『未元物質』――― 垣根帝督
「一端覧祭、ねェ…」
学園都市第二位の『超能力者』――― 一方通行
「………フィアンマが居たら、屋台回りしただろうな…」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「……あー、もう!」
『未元物質』によって造られた生命体――― カブトムシ05
「はたらいたらまけかな、とおもっている」
ローマ正教最暗部『神の右席』―――― 右方のフィアンマ
767 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 16:14:43.85 ID:wMVXuWxAO
+
768 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 16:14:58.99 ID:oPGSBbFZ0
今回はここまで。
769 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 17:06:35.42 ID:iyBYli7v0
【悲報】ふぃあんまくんニート化
770 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 19:01:33.47 ID:bnWbgcAr0
乙
カブトムシ05可愛い
771 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 21:55:46.67 ID:h/QM46Tp0
先の展開が浮かばなくなってきた…
投下。
772 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 21:55:48.06 ID:wMVXuWxAO
+
773 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 21:56:27.18 ID:h/QM46Tp0
一端覧祭。
学園都市で十一月に行われる、世界最大の超巨大文化祭である。
大覇星祭と対をなす一大イベントであり、大覇星祭が"外部向け"ならば、こちらは"内部向け"に開催されるイベント。
メインのターゲットとなるのは同じ街の学生であり、超科学・超能力に慣れきった学園都市の住人に対し、『それでも驚くような何か』
を提出しなければならないという、ある意味で世界一難易度の高い文化祭とも言える。
また、入学希望者の学校見学や体験入学、オープンキャンパスを兼ねるため、多くの入学者を確保すべく名門校ほど力を入れる傾向がある。
なので、教師も多少の無茶などは許してくれる傾向にあるのだった。
上条当麻はどうにか元気を振り絞り。
学校へ来て、一端覧祭の準備手伝いをしていた。
飾り付けの為の力仕事が多く、それでも何とか耐え忍ぶ。
空元気を発揮して動きながら、上条は、ふと出店などを眺めてぼやいた。
上条「………フィアンマが居たら、屋台回りしただろうな…」
きっと、食べたことのないものばかりで。
きっと、やったことないことばかりで。
一緒にやれたら、食べられたら、楽しかっただろう。
不意に泣きそうになって、上条は唇を噛み締める。
散々泣いた、涙はもう既に枯れ果てている。
彼は今まで通りの自分を演じようと、笑った。
吹寄「という訳で、今年は男装&女装喫茶で決定済みなのよ!」
上条「ええええええ!!?」
774 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 21:56:30.56 ID:wMVXuWxAO
+
775 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 21:56:45.83 ID:h/QM46Tp0
ウート「そういえば」
ふぃあんま「ん?」
まだ学園都市へ戻るタイミングの掴めないフィアンマは、だらだらと過ごしていた。
実父に甘え、ウートガルザロキに遊んでもらい、なかなか充実した日々である。
ウート「ローマ正教は放っておいて良いのかよ?」
ふぃあんま「む」
忘れていた、とばかりの表情。
ローマ正教などどうでも良いと思っている部分が大きいからである。
フィアンマはしばし考え込んだ後、にこやかにこう言った。
ふぃあんま「はたらいたらまけかな、とおもっている」
ウート「これは父親として怒った方が良いんじゃねーの」
オッレルス「まだ七歳だし、可愛いから別に」
ウート「この父親にしてこの息子ありかよ」
オッレルス「私も働いていないクチだから、何とも…」
ウート「……まあいいか…って、んな訳あるか。とりあえず復興だけでも行った方が」
ふぃあんま「…しかたがない」
ウート「…何で俺が説教キャラに回ってんだよ…」
そんなキャラじゃないのに、と項垂れるウートガルザロキから離れ、オッレルスの膝に座り。
脚をぱたぱたと動かし、不意に膝から下りて立つ。
ふぃあんま「しごとをしてくる」
告げて走り出す。
今まで放ってきた分の仕事位は、やり遂げようと。
776 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 21:56:46.92 ID:wMVXuWxAO
+
777 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 21:57:03.15 ID:h/QM46Tp0
打ち止めが朝ごはんを食べない。
今日の食事が不服という訳ではない。
コーンスープ、ポテトサラダ、バターを塗ったシュガートースト。
どれもこれも打ち止めの好みのものであるはずなのだが。
何故か頑なに食べようとしないのである。
打ち止め「今日は一端覧祭です!」
垣根「だから何? 熱いの?」
言いながら、垣根は打ち止めのコーンスープに牛乳を足してしまう。
熱いから食べない訳ではないのに、と打ち止めは目を見開いた。
打ち止め「逆兵糧攻めされたーっ! ってミサカはミサカは涙目になってみる!」
一方「一端覧祭、ねェ…」
要するに、屋台のご飯を食べたいということだ。
だから朝食を抜いて沢山食べよう…と、そういうことである。
一方(打ち止めが学校に通うってのは…まァ、無理だろォな)
何せ、戸籍が無い。
第三位と相談すればどうにかなるだろうか、と考え込む一方通行。
仕方なくご飯を食べる打ち止めに対し、垣根はうーん、と考えた。
垣根「……そういや、冬物のブーツとか買ってなかったな」
打ち止め「! 善は急げってミサカはミサカはコムズカシイ言葉を使いつつダーッsむぐぅ!」
一方「飯食い終わってからにしろ」
一方通行に首根っこを掴まれじたばたとする打ち止め。
やがて諦めたらしい彼女は、再び朝食の攻略へ取り掛かる。
778 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 21:57:04.23 ID:wMVXuWxAO
+
779 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 21:57:27.47 ID:h/QM46Tp0
右方のフィアンマは、『神の右席』解体を受けて、自由になった。
フリーの魔術師となった訳だが、だからといってどこかに属そうとは思わない。
やれるだけのことはやり、一介のローマ正教徒となった彼は、悩み悩んで。
一端覧祭を機に上条の下へ戻ると、オッレルスへ告げた。
ふぃあんま「おまつりにまぎれて、とうまのうちへもどる」
オッレルス「…そっか」
ふぃあんま「……でも、…ぱぱのところにはまたくるよ」
オッレルス「……うん」
ぎゅう、と抱きつき。
フィアンマは、ついでだから一緒にお祭りに行きたい、と誘った。
大きなイベント中、学園都市は警備が手薄になる傾向がある。
ウート「行ってこいよ」
オッレルス「…そうするよ」
ウートガルザロキに家を任せ、二人は外へ出た。
オッレルスの魔法使いの様な装いも、文化祭のコスプレの一種と思われることだろう。
オッレルス「……ご飯はきちんと食べていたのか?」
ふぃあんま「? もちろん」
オッレルス「なら良いが」
その割には大きくならないな、と思うオッレルス。
フィアンマはマイペースに眠ることにしたのだった。
780 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 21:57:28.52 ID:wMVXuWxAO
+
781 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 21:57:56.63 ID:h/QM46Tp0
垣根帝督と一方通行は、打ち止めを連れて外へ出てきた。
一方通行としては、垣根の買い物に付き合いつつ、上条の在籍するとある高校へ寄りたいところである。
何の出し物をするかは聞き出せなかったが、適当にたどり着けるだろう。
垣根「それで、お前が行きたいのは常盤台中学か?」
打ち止め「お姉様には会いたいけど、どっちかといえば遊びが良いかなってミサカはミサカは希望を告げてみたり!」
一方「屋台回り方面…後は各々の学園の出し物って感じか」
打ち止め「そんな感じかなってミサカはミサカは頷いてみる」
交通機関の為に持たせている電子マネーカードで事足りるだろう。
使いすぎて万が一マイナスになっても、その金は一方通行の口座から落ちる。
そのことに思い至り、打ち止めはきょろきょろと辺りを見回した。
垣根「なら適当に…って、あん?」
一方「…あァ?」
気付けば、打ち止めが居ない。
目当ての何かを発見したらしい彼女が勢い良く駆けていく背中が見えた。
チッ、とほぼ同時に舌打ちをした学園都市序列一、二位は考える。
子供一人というのは心配だ。得に、この街では。
一方「追いかけるか」
垣根「いや、良い」
首を横に振り、垣根は無言のまま演算した。
5機の、真っ白で、全長15m程の大きなカブトムシが創造され、垣根の指示を受ける。
垣根「……目的、打ち止めの監視と保護、警護。わかったな」
無音で、カブトムシは動き出す。
打ち止めを捜索しに向かったのだ。
垣根は思い出した様に、独り言染みたオーダーを加えた。
垣根「一番に打ち止めの傍へ辿りついた個体以外は自壊しろ。辿りついた個体は形態をヒューマンに変更して付き添え」
一方「…何やってンだ」
垣根「出産」
軽く言って、彼はてくてくと歩いていく。
心配はいらない、と呟いて。
782 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 21:57:57.59 ID:wMVXuWxAO
+
783 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 21:58:16.98 ID:h/QM46Tp0
ふぃあんま「にゃー、わたあめたべたい」
オッレルス「じたばたしない」
こら、と叱られながらわたあめを買ってもらい、頬張るフィアンマ。
とある高校の場所は知っている。
そこに行って上条に会っても良いのだが、それは夕方頃にする。
もぐもぐ、とわたあめを食べつつ、オッレルスの手を握って歩くフィアンマは、ただの子供だった。
右方のフィアンマとしての立場や、良い子であることの制約から抜けて。
何かに恐れたり、縛られたりする必要は、もう何処にも無い。
フィアンマの目の前を、猛スピードでカブトムシ型の何かが駆け抜けて行った。
オッレルス「…自動車という訳でもなさそうだ」
ふぃあんま「おおきかったな」
背中に乗ったら楽しそうだ、とぼんやり思い。
今度はあれが食べたい、と彼はマイペースに強請った。
784 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 21:58:18.07 ID:wMVXuWxAO
+
785 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 21:58:39.78 ID:h/QM46Tp0
上条当麻は、膝上スカートの魔女っ娘衣装を手に握り、固まっていた。
これを着なければならないのである。
女装喫茶というキワモノに決定してしまったのだから、仕方のないことである。
それにしても。
上条(い、いやあああああ! っていうか誰が得すんだよコレ!?)
上条「ふ、不幸だ…っ」
不運に悲しくため息を漏らし、しかし着ない訳にもいかず。
上条は大人しく衣装を着用した。
ちなみにガーターベルトとニーソックスも着用である。
上条「っていうか何で科学ど真ん中で魔女…?」
青髪「仕方ないでー、カミやん」
そう言う彼も、その男らしい身体に魔女っ娘衣装を纏っている。
彼は業務を終えた後のナンパに神経が集中しているようだ。
数時間の苦労なのだから、と上条は自分に言い聞かせることにする。
786 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 21:58:41.00 ID:wMVXuWxAO
+
787 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 21:59:01.89 ID:h/QM46Tp0
五機の白いカブトムシの内。
五体目に作られた個体―――カブトムシ05は、打ち止めに接触出来た。
マスターである垣根の指示に従い、垣根帝督そっくりの見目へ変貌する。
そっくりとはいえ、その髪や肌は異常に白い。
また、瞳の色は美しい緑色である。日本人離れしていた。
打ち止め「見つかっちゃったー、ってミサカはミサカはてへぺ…あれ? 何か垣根と違うねってミサカはミサカは疑問を口にしてみる」
カブトムシ05「私は『未元物質』によって造られました、通称カブトムシ05です。口頭オーダーに従い、貴方の保護を開始します」
打ち止め「未元物質っていうことは…垣根の羽なのってミサカはミサカは抽象的に尋ねてみたり」
カブトムシ05「羽ではありません。私は」
打ち止め「あっ、あんなところに射的屋があるってミサカはミサカは猛ダッシュ!」
打ち止めは人(?)の話を聞かずに走って行ってしまう。
垣根帝督の見目をした白いカブトムシ05は黙って考え、やがて計算を終えた。
カブトムシ05「……あー、もう!」
カブトムシ05は垣根(マスター)に代わって、走って打ち止めを追う。
788 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 21:59:03.01 ID:wMVXuWxAO
+
789 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 21:59:22.83 ID:h/QM46Tp0
本物の垣根帝督は一方通行共に靴屋へ寄り、ブーツを購入し。
その袋を片手に、一方通行の目的であるとある高校へやって来た。
上条「いらっしゃいま……」
一方「……」
垣根「……、」
上条「……、…は、…ははは。不幸だー!」
魔女っ娘従業員上条当麻。
不幸だと叫びながらも、席を案内する。
周囲はというと、学園都市第二位になった元最強の姿に慄いていた。
一方「…ま、売上貢献したらすぐ出て行くから気にすンな」
上条「別にまだ混んでないし、ゆっくりしていっても良いんだぞ?」
垣根「その格好エロいな」
上条「褒め言葉、なの…か…?」
一方通行の序列などを気にしない上条はそう明るく言って。
差別をしないやつなんだな、と思う垣根は、彼に話しかけた。
上条が言った通り、まだ混み合ってはいない。
一方「…そォいや打ち止めは?」
注文を聞いた上条が厨房(とはいえ調理室だ)の方へ一旦消えてしまった為、一方通行は問いかけた。
垣根はカブトムシ05の視界をジャックして答える。
垣根「無事合流したみてえだな。今は…何だ、あれ。…輪投げか。輪投げやってる」
一方「ふゥン」
垣根「……あ?」
一方「どォかしたンかヨ」
垣根「………いや、…気のせいだろ。多分」
彼が『視』たのは、あの特別な方法を教えてくれた魔法使いに懐いている右方のフィアンマの姿であった。
790 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 21:59:24.07 ID:wMVXuWxAO
+
791 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 21:59:40.05 ID:h/QM46Tp0
夕方。
出し物も出店も、大概が終い時。
上条は準備と、日中頑張ったからという理由で、片付けを免除されていた。
一方通行と垣根は既に帰ってしまったようだし、上条も真っ直ぐ帰る事に決める。
一方、垣根達は打ち止めを迎えに行っていた。
垣根「よお。ご苦労さん」
カブトムシ05「無事目的を達成しました」
打ち止め「この人も一緒に住んじゃ駄目? ってミサカはミサカは問いかけてみる」
垣根「あん? ……」
喜怒哀楽の信号パターンなどを獲得しているカブトムシ05。
打ち止めと出店を回る中で、多少なりとも自己実現を成功させたようだ。
カブトムシ05は現在、打ち止めの手にある綿あめに興味を惹かれている。
仮に垣根が自壊命令を出さなければ、いつまでも存在出来るだろう。
垣根「……どうする?」
一方「イインじゃねェの。コイツがどォいうモンかは知らねェが」
カブトムシ05「…私はどうなるのでしょう?」
垣根「とりあえず俺の手足として飼ってやる」
元々お前は俺の手足だが、と肩を竦め、垣根は一方通行達と共に帰路へついた。
792 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 21:59:41.00 ID:wMVXuWxAO
+
793 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 21:59:56.88 ID:h/QM46Tp0
そして、右方のフィアンマは、オッレルスとさよならのキスをしていた。
頬に口付けてから離れ、上条の家へと向かっていく。
全ての片付けを終えた彼が帰って来てくれることを、願って。
フィアンマは少しだけ悩んだ後、ベランダへその身体を預けた。
上条に初めて発見してもらえた時の様に。
ふぃあんま「……」
謝らなければ。
そう思っていると、玄関からガチャガチャという音が聞こえた。
鍵の開く音だった。
上条「………ただいま、なんて…誰も、応えてくれないのにな…」
呟きながら、上条は服を手にする。
涙で濡らしてしまったフィアンマのパジャマだった。
洗濯をしたので、干そうと思って、忘れていた。
今から少しだけ干そうかと思い、上条は、ベランダを開ける。
794 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 21:59:57.95 ID:wMVXuWxAO
+
795 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 22:00:13.68 ID:h/QM46Tp0
「…うにゃ…」
「……え?」
思わず、上条は窓を閉めかける。
どうにか、パジャマを落とさずに堪えた。
嗚呼、彼が居る。
小さい。子供だと思われる。
何故だかは知らないか、ベランダの手すりに引っかかっている。
絶妙なバランスで引っかかっている子供は、四歳程。
細くて小さい。よく引っかかっていて、落ちてしまわないものだ、と上条は感心する。
その子供は、のろのろと顔を上げ、自分の顔を見るなり、ほっとした笑みを浮かべた。
「ただいま、とうま」
796 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 22:00:15.04 ID:wMVXuWxAO
+
797 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 22:00:57.96 ID:h/QM46Tp0
「表出ろコラ」
学園都市第一位の『超能力者』・『未元物質』――― 垣根帝督
「打ち止めはさっきから何言ってンだ」
学園都市第二位の『超能力者』――― 一方通行
「っ、あ…ぁ、っ、ぐすっ、ひぐっ、…うああああああああっっ……!」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「口頭オーダーを確認。外出します」
『未元物質』によって造られた生命体――― カブトムシ05
「……ご、…ごめん、…なさい」
幼い子供にして優秀なるフリーの魔術師―――― フィアンマ
798 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 22:00:59.50 ID:wMVXuWxAO
+
799 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/23(水) 22:01:47.44 ID:h/QM46Tp0
今回はここまで。
何か先の展開素案みたいなものがあったら教えてくださると嬉しいです。
800 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 22:30:12.85 ID:ZJbWwLea0
そろそろセックス
801 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 22:36:11.21 ID:1z97k/+V0
展開というか、小ネタですけど、上条さんたちのBLに悶える原作女性の姿が見たいです。
802 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 23:08:25.86 ID:Hu4EO0v7o
乙
やっぱりていとくんはホモじゃないか(困惑)
後バニーショタを頼む
803 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/23(水) 23:50:00.29 ID:bnWbgcAr0
乙
ていとくんが出産とか……アリだと思います
804 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 00:12:12.52 ID:9UNLOnAAo
とりあえずわんつーはくっつけばいいよ
805 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 03:16:52.38 ID:PzCDsGtSO
超乙ってやつですよ
でもですね、超ていとくんの妄想なら未だしも上×右の超BL展開なんてやらかしたら北海道が超平らになるくらいじゃすまねェぞ
806 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 05:08:07.79 ID:Lb+LM6Kpo
灰村絵だと普通に可愛いんじゃないか、女装上条さんは
807 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 06:48:18.15 ID:B4Sws/Czo
乙様
>>1
から読んでたら朝になってたでござる
ペドに始まりヒーローになったり出産してみたりでていとくん色々すごいなあ
>垣根「その格好エロいな」
完全にガチホモやないかい(歓喜)
808 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 12:37:03.71 ID:MJ4sepOFo
ショタコンがホモになるのは稀によくあることだしまあ多少はね?
809 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 13:14:24.16 ID:VbNA7c350
乙
出産wwww一方さんが母親役かと思ってたが逆だったか……!
そういえば前に妹達(打ち止め含)ってあったけど、これ打ち止め含むじゃなくて打ち止めに限るじゃないですかー!
生まれることすらない番外さんよりはマシだろうけども
810 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/24(木) 22:57:07.64 ID:6/G840MQ0
>>800
ウイッス
>>801
誰を腐女子キャラにするかが悩みどころなので、もし希望がありましたら…
>>802
ウイッス
>>805
おにショタなんでBLじゃないっすねぇ〜
>>806
得に最近の絵だと可愛いと思います
>>807
絶対領域に対してエロいって言っただけだから(震え声)
>>809
でも普段は一方さんが母親役だと思います
これからがヒロインの見せ場だから(震え声)
初恋相手が男ならホモじゃないそうです。セウト。
投下。
811 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 22:57:08.81 ID:GyaK1OXAO
+
812 :
小ネタ:腐女子達
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/24(木) 22:57:53.92 ID:6/G840MQ0
初春「佐天さん、都市伝説とはまた別なんですけど、イケメンカップル目撃情報ですよ!」
佐天「聞きたい聞きたい! っていうか初春は風紀委員だから一端覽祭大変だったんじゃ?」
初春「お仕事の合間に情報入手に決まってるじゃないですか」にこにこ
佐天「ほほう、さっすが私の初春! で、どんな見た目なの?」
初春「えっとですね、片方が金茶髪の長身イケメンさんで、もう片方がアルビノ美少年だったそうです。それで、靴屋さんで仲睦まじーくブーツ選んでたみたいですよ」
佐天「完全にデキてるね!」
初春「ですよね! 私はチンピラ受け派なので長身さんが受けだと思うんですけど」
佐天「ちっちっちっ、身長が高い方が攻めなのは王道だよ? あ、リバでも良いよね」
初春「『……今夜はオマエにヤらせてやる』みたいな感じですか?」きゃーっ
佐天「都市伝説だと学園都市第一位・第二位が実は学生夫婦って聞いたけど、まさか…?」
初春「まさか夫夫…?」
813 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 22:57:55.09 ID:GyaK1OXAO
+
814 :
小ネタ:腐女子達2
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/24(木) 22:58:23.28 ID:6/G840MQ0
シギン「……」
トール「何見てんの?」
シギン「お帰り、腐男神…じゃなかったね。雷神トール。これは標的の下見」
トール「お仕事熱心な事で…と、これって上条当麻か?」
シギン「そう」
トール「……このちびっこいのは?」
シギン「右方のフィアンマ」
トール「…ふんふん…デキてんの?」
シギン「接触して揺さぶりをかけてみれば良いよ」
トール「それもそうだな。…俺はショタは無条件で受け派だが…お前は?」
シギン「年上受け派」
トール「あー……『助言』はともかく、どうも"これ"に関しては意見が合わねえな、シギンちゃんよ」
シギン「特別残念でもないけどね。シンプルには出来ないけど」
トール(俺の『敵』としての適性どころか、これは鈍感攻めとしても美味いな…早く会いたいところだ)そわそわ
815 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 22:58:24.42 ID:GyaK1OXAO
+
816 :
小ネタ:子離れ
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/24(木) 22:59:03.78 ID:6/G840MQ0
オッレルス「……」ぐすっ
ウート「おー、お帰…帰宅早々何で泣いてんの」
オッレルス「……あの子と一緒に居たかった」ぐすぐす
ウート「いやいや、学園都市の祭楽しんできたんだろ?」
オッレルス「もちろんそうだよ」
ウート「じゃあ良いじゃん」
オッレルス「……やっぱり手放したくなかった」ぶわっ
ウート「なら格好つけて『私は君の父親だから、君の未来を縛り付ける権利は無いんだ』とか言わなきゃ良かっただろ? 『パパは―――と離れたくないんだよ、ずっと一緒に暮らそう』とか言えば良かったものを。プライドのプラi程度しか無いお前なら言えた筈だろうよ」
オッレルス「…失敗した…」めそ
ウート(『……おれさまががくえんとしにいって、ぱぱがおちこんだら、うとがるでがなんとかしてくれるか?』……ま、約束しちまったしな。慰めるか)
オッレルス「…死にたい…」めそめそ
ウート「いつもの台詞じゃねえか、ソレ。いい加減子離れしろ」はー
オッレルス「……無理だよ」ぐずっ
ウート「……あーもう、慰めてやるから元気出せよ。添い寝でも何でもしてやるからさ」
オッレルス「……何でも?」
ウート「な、何でも」びくっ
オッレルス「……」
ウート「待ってタンマちょっとヤるのは無しだってそんなまさかアッー!」
817 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 22:59:06.63 ID:GyaK1OXAO
+
818 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/24(木) 22:59:24.97 ID:6/G840MQ0
上条は目の前の光景を疑って。
フィアンマは手すりから降り、彼に近寄った。
後ろ手で、がらがらとベランダを閉めて部屋へ入る。
現状を理解出来ないまま、ぼんやりとしている上条へ抱きついた。
上条はパジャマを一旦ベッドへ置き、床へ膝をつく。
そうして、確認する様に、眼前の細い身体を強く抱きしめた。
「…こ、…どこ、行って…たんだよ…」
「…、…いたりあにいたんだ。すこしけがをしたから、ぱぱのところでちりょうとりょうようを、」
「死んだ、かと、…思っ、た……」
「………とうま」
「本当に、…ちくしょう、……っ、あ…ぁ、っ、ぐすっ、ひぐっ、…うああああああああっっ……!」
小さい子供の様に、声を堪えず大泣きをする上条に、フィアンマは一瞬戸惑う。
少しだけ戸惑って、上条の頬を撫で、強く抱きしめられながら謝罪した。
「……ご、…ごめん、…なさい」
謝ろうと思っていた。
上条に会ってすぐ謝ろうと思っていたのに、忘れていた。
上条は首を横に振り、フィアンマの髪を撫でる。
「……だが、…とうまも、おれさまにあやまれ」
「………?」
「…おれさまのことを、…ほんとうは、おぼえていないんだろう?」
―――上条当麻の息が、詰まる。
819 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 22:59:25.92 ID:GyaK1OXAO
+
820 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/24(木) 22:59:42.12 ID:6/G840MQ0
垣根帝督は、一種の羞恥プレイに晒されていた。
何故かというと、カブトムシ05が垣根の一部である以上、個人情報がダダ漏れだからである。
そしてカブトムシ05はその精神性故にプライバシー保護について深く考えていない。
打ち止め「じゃあやっぱり垣根は一方通行のことが大好きなのね、ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」
垣根「オイ」
カブトムシ05「はい、心の底から」
垣根「それ以上言ったらぶっ殺すぞお前」
カブトムシ05「愛していますね。執着も伴っています」
打ち止め「じゃあ近々ラブロマンスが始まるねってミサカはミサカは大興奮!」
垣根「表出ろコラ」
カブトムシ05「口頭オーダーを確認。外出します」
双子の様な垣根とカブトムシ05が一旦家を出ていくのを見送り。
どうせ喧嘩ではなくコンビニ辺りへ買い物に行くのだろうと思いながら。
一方通行は退屈そうに缶コーヒーを開封し、呑み込んだ。
一方「打ち止めはさっきから何言ってンだ…?」
本当にラブロマンスが開始するかどうかは、未定である。
821 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 22:59:43.08 ID:GyaK1OXAO
+
822 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/24(木) 23:00:03.83 ID:6/G840MQ0
「…おれさまのことを、…ほんとうは、おぼえていないんだろう?」
問い詰めるでもなく。
ただただ、事実を指摘する声。
上条は、嘘を重ねようと口を開いて。
真っ直ぐな視線に嘘を告げられず、真実を答えた。
「……俺には、…九月八日から前の記憶が、無い。…ごめん。……フィアンマを傷つけたくなくて、ずっと嘘をついてきた。ずっと、お前を騙してきた。どうして気づいたのかはわからないけど、……本当に、本当に…ごめん」
絞り出したかの様な、声。
上条は、フィアンマを抱きしめたまま、小さく震えた。
嘘をついてきた。ずっと、騙していた。
いつかバレるとは思っていながら、結局言い出せずに。
けれど、フィアンマは糾弾することはせずに、上条を抱きしめたままでいた。
「…くがつようかいこうのおまえは、…かわらないんだな。じつづきか」
「……ああ」
「…そうか。……、…じゅうがつのじてんで、おまえにきおくがないことはさっしていた。おれさまにたいするたいおう、…しぐさ、かいわのなかでのきょどう。そういったものから、はあくしていた。……きおくがないなら、それはべつじんだとおもった。おれさまのすきなとうまでなないとおもった。だから、あっくあとおまえがせんとうしていたとき、たすけにいかなかった。……すまない」
お互いに謝罪をして、お互いに許しあう。
死別の恐怖に比べれば、どんな罪状だって、霞んだ。
823 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 23:00:04.86 ID:GyaK1OXAO
+
824 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/24(木) 23:00:26.13 ID:6/G840MQ0
二時間程経過した後。
垣根帝督とカブトムシ05は、後者が一方的にボコボコにされた状態で帰って来た。
ボコボコとはいっても、彼は自己修復されていくので、じきに傷は見えなくなるだろう。
彼等の手には、コンビニの袋が握られている。
垣根「ん」
垣根が一方通行へ寄越したのは、一方通行お気に入りの銘柄の缶コーヒーだ。
気分を考慮してか、一本だけ温かいものを購入してきてくれたらしい。
一方「どォも」
軽い相槌と共に温かい缶コーヒーの攻略を始め、残りは袋ごと膝の間へ。
垣根はぷいとそっぽを向き、『あかずの間』へ姿を消した。
対して、ボロボロながらも痛みという感覚の無いカブトムシ05は、袋の中からアイスを取り出す。
練乳とホワイトチョコの使われた甘いモナカアイスは打ち止めへ。
カブトムシ05「どうぞ」
打ち止め「おやつだーっ! ってミサカはミサカは大はしゃぎしてみる!」
一方「垣根が買ってきたのか」
カブトムシ05「いえ、要求したのは私です。どうぞ」
一方通行へ差し出されたのは、ほろ苦いエスプレッソ味のアイス。
一方通行は少し悩んだ後、カブトムシ05の手からアイスを受け取った。
温かい缶コーヒーを飲みながら、備え付けのスプーンでもぐもぐと食べる。
打ち止めももごもごとモナカアイスを頬張り、一方通行の隣へ腰掛ける。
打ち止め「あなたの分は? ってミサカはミサカは首を傾げてみる」
カブトムシ05「私には内臓器官一切がありませんので」
打ち止め「消化出来ないの? ってミサカはミサカは問いかけてみたり」
カブトムシ05「出来ない訳ではありません」
打ち止め「じゃあミサカの半分あげよう! ってミサカはミサカはお姉さんぶって半分こ」
カブトムシ05「……」
カブトムシ05は表情無く受け取り、思い出した様に笑みを形作る。
そうして『ありがとうございます』と告げると、モナカアイスを口にした。
カブトムシ05(砂糖の含有量が過分に…美味しい、のでしょうか?)
真っ白な垣根帝督は、僅かに首を傾げる。
825 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 23:00:27.27 ID:GyaK1OXAO
+
826 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/24(木) 23:02:15.80 ID:6/G840MQ0
十一月半ば。
今日は雨が降っていた。
上条が学校へ行っている間退屈なフィアンマは、垣根宅へやって来た。
ピンポーン、とインターフォンを鳴らす。
ガチャ、とドアが開いた。
カブトムシ05「……フィアンマさんですね」
ふぃあんま「かきねていとく…ではないな」
斥候、もとい出迎えのカブトムシ05は、フィアンマを家へ迎え入れて引っ込んだ。
一方通行はフィアンマを見るなり、安堵に泣きそうになりながら、頭を撫でる。
一方「ン、良かったなァ…」
ふぃあんま「おれさまはしんだことになっていたのか?」
一方「完全に死ンだと思ってた、俺も幻想殺しさンも」
ふぃあんま「…そうか。しんぱいをかけたな」
一方「幻想殺しさンにはもう会ったのか?」
ふぃあんま「ん、しゃざいをした」
一方「そっかそっかァ…」
よしよし、とあやし撫で、一方通行はフィアンマにおやつを振舞う。
もぐもぐ、とありがたくいただきながら、ふと、フィアンマは思い出した様に言った。
ふぃあんま「そうだんがある」
一方「相談?」
ふぃあんま「おまえと、かきねていとくに」
垣根「呼んだ? !! フィアンマ君!」
『あかずの間』から顔を覗かせた垣根が、フィアンマへ抱きつこうとして。
一方通行に叩き落され、ソファーへ沈んだ。
827 :
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[sage]:2013/01/24(木) 23:02:18.29 ID:GyaK1OXAO
+
828 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/24(木) 23:02:38.47 ID:6/G840MQ0
垣根「ははあ、なるほど。なるほどね」
一方「ンー…」
悩み相談。
内容を簡潔にまとめると、仲直りがしたい。
ケンカをした訳ではなく、上条と離れていた期間を埋める程の仲良しさを取り戻したい。
感覚としては、同窓会で再開した友人へアプローチするようなものである。
垣根はふむふむと頷き、一つのアイデアが浮かんだらしい。
少し待っていろと言って、垣根は出かけた。
カブトムシ05はというと、起きだしてきた打ち止めと一緒に落ちモノゲームをやっている。
一方「アイツが何持ってくるかは知らねェが…仲良くなりてェなら、甘えることだろォな」
ふぃあんま「あまえか」
一方「父親に甘えるみてェにな」
ふぃあんま「なるほど」
その定義で言えばだいぶ甘えているような。
フィアンマがうーん、と考えていると、垣根が帰って来た。
その手には紙袋がある。
垣根「これをプレゼントするから、着て上条に甘えてみろ」
ふぃあんま「なんだこれは」
垣根「バニーさん」
ふぃあんま「…うさぎ?」
垣根「バニースーツって言って、ある場所では制服として採用されてるやつだ。あ、雨で濡らさない様に気をつけろよ?」
垣根から黒い紙袋を受け取り、フィアンマは出て行った。
一方通行は垣根をじろりと睨み、責める様に言う。
一方「ペド野郎」
垣根「あー、見られねえのが残念だ」
しれっとジト目の視線から逃れ、彼は台所へ消える。
829 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 23:02:39.32 ID:GyaK1OXAO
+
830 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/24(木) 23:02:56.62 ID:6/G840MQ0
上条当麻は、短時間の居残りを終えて家路へついた。
フィアンマが帰って来てくれた為、元気いっぱいである。
そんな訳で、上条はスーパーマーケットへやって来ていた。
フィアンマが好むチョコマシュマロや、夕飯の材料を購入する。
鼻歌でも歌いかねない機嫌の良さ。
しかし、彼は現在、フィアンマと微妙に距離を取っている。
許しあったものの、記憶喪失であることがバレてしまったため、気まずいのだ。
とはいえ、気まずいと感じているのは上条だけであり。
フィアンマは普通通りなので、前述のバニースーツ受け取り悩み相談と相成ったのだ。
上条「ただいまー」
買い物を終え、上条は帰って来た。
がさごそと買い出しをしてきた材料を冷蔵庫に入れ、部屋を見やる。
上条「フィアンマ?」
しまい終わり、部屋へ足を踏み入れた。
上条が捜しているフィアンマは、兎の耳を生やし、ベッドへちょこんと座っていた。
831 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 23:02:57.59 ID:GyaK1OXAO
+
832 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga !桜_res]:2013/01/24(木) 23:03:35.51 ID:6/G840MQ0
まず目に入ったのは、僅かに見える白くて丸い尻尾の飾り。
ふわふわとしたそれは真っ白で、良い素材だろう。
黒い、サテン製のレオタード。
乳房などある筈もない胸に、それでもぺたんと張り付いて。
その華奢な身体のラインを強調していた。
うっかりぺろんと剥がれてしまった時のことを思うと、何やら疚しい気持ちが湧いてくる。
股間を見やれば膨らみはあるものの、幼さに見合ったサイズ、はみ出してしまうことも無く。
ウサギの耳をかたどったヘアバンドは学園都市製のもので、生体電気に反応して動く。
現在、不安げにゆらゆらと揺れて垂れていた。愛らしいものである。
赤い蝶ネクタイ付きの付け襟が、細い首を強調して。
普段の服以上に、鎖骨さえ強調していた。
カフスは白。
折れそうな手首を、手錠の様に覆っている。
ストッキングは黒だが、申し訳程度の色合い。
透けているその脚は白く。
その年齢故に、性別が男にも関わらず、ムダ毛の無いすべすべの脚。
まったくもってむちむちではないが、つい破って素足を見てしまいたくなる程、エロティックだった。
黒い衣装によって肌の白さが際立ち。
フィアンマは、少しだけ寒そうに身体を震わせた。
上条を見た瞬間、ぴょこん、と兎耳が立つ。
「……とうま、…なかなおり、しよう」
833 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 23:03:36.58 ID:GyaK1OXAO
+
834 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/24(木) 23:04:04.51 ID:6/G840MQ0
「こ、今宵の上条さんはちょいとエロティックですよ」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「……告白はなさらないのですか?」
『未元物質』によって造られた生命体――― カブトムシ05
「……きゅ?」
世界を救える程の力を持ったショタ―――― フィアンマ
835 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 23:04:05.52 ID:GyaK1OXAO
+
836 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/24(木) 23:04:24.15 ID:6/G840MQ0
今回はここまで。
仲直り(意味深)
837 :
仲間由紀恵
[sage]:2013/01/24(木) 23:12:53.48 ID:xvOx90VU0
ショタンマさんの画像Twitterのアイコンにしたら怒る?
838 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 23:17:49.77 ID:9UNLOnAAo
フィアンマかわいいいい!!!!上条さんがマジ羨ましい、ショタに愛されてえ
カブトムシ意味深っ……!
839 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/24(木) 23:17:58.56 ID:swKv2eDto
ふぅ•••バニーショタは世界を救うな乙
840 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/25(金) 00:04:55.46 ID:L3C55D2w0
乙
長身が攻め……佐天さんのように考えていた時期が私にもありました
841 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/25(金) 18:48:47.55 ID:MxQohs940
乙
>>837
そんなことしていいはずがねぇだろうが!
俺もお願いします
842 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/25(金) 21:19:49.09 ID:dgWl+57DO
乙
ていとくんあかずの間に入り浸って何やってるんだろうか
843 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/25(金) 22:41:33.47 ID:8UbdPVsGo
そりゃナニだろ
あかずの間っていうかおかずのm…ゲフンゲフン
844 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/26(土) 13:15:37.54 ID:ySmtVgCO0
>>837
>>841
自作発言をしないというか、プロフとかに一言添えてくだされば問題無いです
迷走が再開してしまったせいで文章が短い…一応二スレ目突入したい気持ちはあるんですが。
投下。
845 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 13:15:45.28 ID:kb2eJvlAO
+
846 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga !桜_res]:2013/01/26(土) 13:16:17.84 ID:ySmtVgCO0
「……とうま、…なかなおり、しよう」
上条当麻は、自分の心拍数が上昇したことを知った。
無闇に喉が渇いて仕方が無い。
別に、緊張している筈ではないのに。
相手は男だ、幼い子供だ、わかっていても、意思がそう向かわない。
「なか、…なおり?」
聞き返して、上条はゆっくりと近寄った。
隣に腰掛け、視線をフィアンマの太ももへ向ける。
顔や普段の雰囲気は幼いのに、手足は伸びやかに長い。
スタイルが良いのだ、と感じながら、上条は手を伸ばした。
フィアンマの髪に触れ、優しく撫でると、兎耳が揺れる。
「…俺達、別に喧嘩してる訳じゃないだろ?」
「…よそよそしいじゃないか」
「それは、…そんなこと…」
口ごもる上条の膝へ、フィアンマが跨ぎ登った。
向かい合った状態で見上げてくる。
やや前のめりのため、上条からはフィアンマの胸元が見えた。
一緒に入浴したこともあるし、見たところで何ともないはずなのに、つい視線を逸らした。
「…っていうか、その衣装はどうしたんだよ」
「かきねていとくにもらった」
「そんな高そうなヤツくれたのか? 後でお礼しないとな」
「はなしをそらすな」
「いや、別に逸らしてませんのことよ?」
「こちらをむけ」
むに、と頬を小さい両手で掴まれ、視線を元の位置へ。
上目遣いで見上げてくるフィアンマは、少し不安げな表情を浮かべていた。
自分のよそよそしい態度が不安にさせてしまったのだ、と上条はようやく自覚する。
847 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 13:16:19.20 ID:kb2eJvlAO
+
848 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga !桜_res]:2013/01/26(土) 13:16:36.91 ID:ySmtVgCO0
「…ごめんな」
謝罪をして、上条はフィアンマの身体を抱きしめた。
ふる、と兎耳が傍らで震える。
フィアンマは両手で上条の背中を摩り、そうしてすりついた。
しばらく甘えていると、不意に、レオタードがぺろんと捲れる。
真っ白な肌に、薄桃色のささやかな突起が二つ。
上条はそれを視界に捉え。
性的興奮に唇が乾いていく事に気づかないまま、呟く。
「こ、今宵の上条さんはちょいとエロティックですよ」
言い訳の様な色を帯びた発言だった。
フィアンマはきょとんとして首を傾げる。
上条は思うまま、フィアンマの首元、鎖骨へ舌を這わせた。
ぴちゃ、という僅かな水音が、お互いの耳元で木霊する。
「ん、…にゃ…」
「…兎さんはにゃあじゃないだろ…?」
「……きゅ?」
鳴き直すフィアンマに小さく笑って、上条は頬へ口付ける。
上条はそのまま後ろへ倒れ、体勢を変えて、押し倒す。
幼子の様に突起を舐め、そのまま、口に含んだ。
まだ充血していない薄ピンク色の胸突起からは、甘みすら感じられる。
まだまだ乳臭いフィアンマの甘い体臭は、上条の興奮を誘った。
すべすべの肌を撫で、ストッキングへ手をかける。
ぴり、と破れる音。些細な。
乱暴に脱がしてしまいたい衝動を、堪える。
「…とうま?」
心配する様な声が聞こえる。
上条は、自分の表情が下卑たものかどうかもわからないまま、笑みを浮かべた。
「……仲直り、だろ?」
フィアンマの見目が、中性的だから。
そんなことを自分に言い聞かせ、上条は欲望のままに動く。
849 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 13:16:38.16 ID:kb2eJvlAO
+
850 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/26(土) 13:16:58.39 ID:ySmtVgCO0
垣根帝督は、『あかずの間』でぼんやりとしていた。
興奮材料は多々周囲に溢れているが、ヌきたい気分でもない。
垣根「……」
不意に、ノックがされた。
誰かと確認すれば、意外にもカブトムシ05。
入れよ、と軽く許可を出して、垣根は退屈そうに天井を見上げた。
カブトムシ05は静かに入室すると、ドアを閉める。
ついで鍵を閉めた後、少し迷って、カーペットに座った。
垣根「何か用?」
カブトムシ05「いえ。強いて言えば差し入れと呼称されるべき事案です」
そう言う彼の手には、アイスが握られていた。
チョコ味のチューペットアイスだ。
二つにパッキンと割り、一本を差し出される。
垣根は大人しくそれを受け取って、開封し、口にした。
垣根帝督が最近やたらと此処に来る理由はたった一つ。
一方通行と、あまり顔を合わせたくないからだ。
別に、ケンカをした訳ではない。
むしろ、関係は良好で、一方通行への嫌悪感など欠片も無い。
それこそが問題。それこそが理由。
カブトムシ05「……告白はなさらないのですか?」
垣根帝督の深層が、問いかける。
自問自答の現実出力形。
垣根はチューペットから甘い液体を吸い出して、呑み込む。
垣根「未来がねえ」
そして、端的に言い切った。
851 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 13:16:59.38 ID:kb2eJvlAO
+
852 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/26(土) 13:17:27.55 ID:ySmtVgCO0
カブトムシ05「…未来?」
垣根「…例えば、俺が一方通行が好きだと告白する。うまくいかなきゃすぐさまご破産、この生活は終わりだ。……仮にOKだとする。まあ、付き合うだろ? で、今までの生活に性的なそれがプラスされる。それで、その先は? 日本では結婚出来ねえ。同性同士じゃガキも作れねえ。仮に作ったとしてもどういう目を向けられるかわかりきってる。……付き合って別れりゃ、友達にすら戻れねえ。これだけの膨大なデメリットを把握しているクセに告白するなんて、バカバカしくて出来ねえよ」
それは、酷く理性的な考えだった。
学園都市第一位の冷酷な頭脳は、自らの感情さえ駆逐する。
未来性がないなら、必要がないなら、あってはならないのなら。
理論によって自分の思いを消してしまうその姿は、人間らしくなかった。
或いは。
その様な考えでしか動けない垣根だからこそ、カブトムシ05を生み出せたのかもしれない。
『生産性』を司るが故に、非生産過ぎることに恐れを抱く。
垣根「……一方通行が幸せなら、それで良いじゃねえか」
カブトムシ05「……」
垣根「…これ以上賭けてどうすんだよ。確実な破産が見えてるギャンブルみてえなモンだ」
安全圏で良い、と垣根は小さく笑ってみせる。
カブトムシ05は、緑色の瞳でじっと垣根を見つめた。
カブトムシ05「……私にはわかりかねますが、…予測演算とは別の方向を突き通せるのが、本物の人間の心なのでは?」
垣根「俺に情緒を期待すんな。そんな高尚なモンはさほど持ち合わせちゃいねえし」
カブトムシ05「……」
垣根「………ま、気にすんな。俺が欲しいのは、恋人よりも家族だったようだ」
空っぽになったゴミを、放り捨てる。
853 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 13:17:28.69 ID:kb2eJvlAO
+
854 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga !桜_res]:2013/01/26(土) 13:17:51.31 ID:ySmtVgCO0
上条の口の中にすっぽりと収まる程度のサイズの性器。
まだ射精をしたことの無いそこは、しかし本能として刺激に対し、勃起していた。
「っ、あ…」
「ん、…フィアンマ、痛い…か?」
「う…」
ふるる、と首を横に振る。
フィアンマのセミロングの髪が、さらさらと揺れた。
女の子みたいだ、と小さく笑んで、上条は先端へ舌を這わせる。
抱いている好意か見目故か、意外にも嫌悪感は無い。
尿よりも、どちらかというと汗の様な味がした。
そもそも、どちらかといえば無味である。
精通をしていない以上先走りが溢れることもなく、フィアンマはこそばゆさの近い違和感に身を震わせる。
「っぅ…、もう、いい。……おれさまも、する」
「え、フィアンマ…」
驚く上条の股間へ、細い指がかかる。
そうして下着からぐいぐいと取り出し、拙い動作で扱いた。
まだ自慰を経験したことも無い子供が、見よう見まねで愛撫をしている。
あまりにもインモラルな光景に、上条は軽く目眩を覚えた。
855 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 13:17:52.81 ID:kb2eJvlAO
+
856 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/26(土) 13:19:19.75 ID:ySmtVgCO0
『あかずの間』のドアの前で。
一方通行は沈黙し、垣根帝督の二倍の独り言を聞いていた。
ノックをしようとした手を、そのままだらりと下げる。
『……告白はなさらないのですか?』
『未来がねえ』
ともすれば、泣きそうな声であったようにも思う。
『嫌わないでくれ、拒絶しないでくれ、俺は、俺は……ッ』
『……一方通行が幸せなら、それで良いじゃねえか』
『………ま、気にすんな。俺が欲しいのは、恋人よりも家族だったようだ』
彼が自分の理想の為にどれだけ足掻いてくれたかを、知っている。
一方通行は、視線を彷徨わせ、言葉を呑み込んだ。
(……、…俺は…)
どう、したいンだろう。
857 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 13:19:24.40 ID:kb2eJvlAO
+
858 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/26(土) 13:19:42.77 ID:ySmtVgCO0
今回はここまで。
859 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 14:36:18.68 ID:k2J9nQdb0
きたー!乙!
どうなるんだこの先・・・
860 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 15:28:42.09 ID:sp4YbmEU0
乙
垣根……オマエに(同性愛という)常識は通用しないんじゃなかったのかよ
861 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/01/26(土) 16:46:26.90 ID:6SFsWelU0
i⌒i /`ー-、 /゙) /゙)
( ̄  ̄) ./ 々 〉 _________________________ / / / /
( ̄  ̄)_└ク / (____________________,,)_(_/ (_/_ __
.  ̄|_|´__〈__,/ /__、 `ヽ /´ ヽ /´ r__、 /´ .r__(_,)(_,)´ r__,ヽ
{ィ|rwniト } {ni|ト }_ .{ } _ _{ ィ|irイ .{ ィ|irwli}_ { ィ|irwnト|
. ○i、^ヮ^|l、,○ ○、^|l ヾ)(^,ソ ヾ_)(丿 ,l|_^,○,,ノ○、l|.^ヮノ!,)○,_l|^ヮ^ノ{○
U__リ史.リ!_し' U,_ く,,___,(i__,ゝ.{_ヽ、.__〈)___,ノ_} ヽ、l)_,,ノ _U ゝ,_U、,リ史リ゙´ U_,,リ 史リ__U
ノ 八 ヽ、. `ソ``^ヾ、 `ソ `^"´ヾ´ /`^" ヾ. ,ノ´ 八{ / 八ヽ.
く_,ん_ソ__,> く_,._,._,,> く,__,.____,._,,> く_,.___,._,._,>. <,__,,んソゝ .く_,.ん_ソ_,>
862 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 17:30:40.21 ID:3ayuxSSQo
ふぅ•••同性愛とかあり得んだろ乙
863 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 17:49:23.57 ID:Udy9sfZU0
乙
上条さん、中性的というか性別以前に年齢がアウトという点はスルーしちゃうんですか
864 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 18:38:35.88 ID:TupvXNBIO
すごくいいとおもう
すごく
865 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 19:17:21.65 ID:GD9Zfa14o
追いついたー乙
それにしても
>>781
>全長15m程の大きなカブトムシ
デカ過ぎィ!
866 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 21:37:38.00 ID:mU5KCofCo
乙です
上条さんが変態になった
垣根がえっちな装備を渡したのが原因なので全ての罪は垣根に帰結するノダー
それにしても性別の垣根が云々というのなら未元物質で肉体作り替えちゃえばいry
867 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/26(土) 22:37:39.30 ID:Gb1g/C7S0
>>863
このスレは、どういう話なんだっけ?
>>865
まあ、多少はね
>>866
まあホモだからね、しょうがないね
投下。
868 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 22:37:40.59 ID:kb2eJvlAO
+
869 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/26(土) 22:37:59.43 ID:Gb1g/C7S0
季節は移り変わり、冬季。
恐らく補習で埋まるであろう冬休みを目前にして。
上条当麻は、自己嫌悪に陥っていた。
本日の国語の授業は源氏物語だった。
内容としては、ざっくり言うと、美青年主人公がロリを自分好みに育てて手を出して幻滅されながら結局結婚する話、である。
勿論文学的に素晴らしい作品であることはわかる。
だが、上条はその内容に感化され、酷く落ち込んでいた。
上条(…俺とフィアンマって、こんな感じなんじゃ…)
一線を超えてしまった。
挿れてこそいないものの、性的な行為に及んでしまった。
容姿がどうこうの問題ではない。
同性の、それも七歳の少年に手を出してしまったのだ。
十五歳の、この上条当麻が、である。
大問題だった。まだ女子中学生に手を出す方が健全で言い訳も出来たに違い無い。
上条(俺、犯罪者だよなあ…)
どんなに頭が良かったにせよ。
魔術に精通していて、その道では大人として扱われるとしても。
あの子は純粋な幼い子供な訳で。
加えて、上条に対して全幅の信頼を寄せてくれている。
そんな子供に性的な行為をしてしまった。
由々しき事態である。上条当麻は幼児性愛者の変態さん(笑)だったのだ。
自覚してしまった新事実に打ちひしがれていると、姫神に声をかけられた。
姫神秋沙。
巫女服のよく似合う、黒髪ストレートおとなしめ女子である。
姫神「上条くん。なんだか元気がないようだけれど。大丈夫?」
上条「だ、大丈夫大丈夫。あれだよ、一端覧祭の疲れが残ってるだけだろ、多分」
姫神「なら。良いけど。……あ。卵焼き食べる?」
上条「え、良いのか?」
姫神「うん。甘いのでも良ければ」
差し出された真っ黄色の卵焼き。
上条には姫神を救った記憶がない為、何故親切にされるのかはわからないものの、友人として有り難く受け取っておく。
上条はしょっぱい卵焼き派だったのだが、フィアンマに合わせるにつれ、甘い卵焼きの方が好みに変わっていった。
上条「ん、丁寧に焼いたんだな。美味い美味い」
姫神「…良かった」
870 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 22:38:00.63 ID:kb2eJvlAO
+
871 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/26(土) 22:38:23.29 ID:Gb1g/C7S0
右方のフィアンマは、イタリアへやって来ていた。
オッレルスへ会いに来た訳ではなく、一人の女性への見舞いの為である。
内臓のダメージが酷い彼女は、未だに退院出来ないでいる。
十二月だというのに、まだしばらく退院の見込みが立たないとのことだ。
ふぃあんま「…はいるぞ」
こんこんこん。
三回程ノックをした後、返事を聞いた後、そう告げて病室の中へ。
かつて前方のヴェントと呼ばれていた女性が、退屈そうにベッドへ腰掛けていた。
ヴェント「あら、わざわざ来てくれたの?」
ふぃあんま「おそくなったな」
ヴェント「イイよ、別に」
穏やかに笑ってみせて、ヴェントはフィアンマの髪を撫でる。
その視線は柔らかく真っ直ぐで、フィアンマを自らの亡き弟と重ねていた。
ふぃあんま「ん」
ヴェント「ん?」
フィアンマが差し出したのは、一つの花束。
真っ白なクリスマスローズが溢れている。
ヴェントは素直にそれを受け取ると、目を細めた。
ヴェント「『思い出を懐かしむ』『私を安心させて』『誹謗』…さてどれかしらん?」
ふぃあんま「まあ、いちばんさいごのものがおまえにはにあうのだろうが。もはやおまえがあくいをむけられるひつようはないからな。あんしんしろ、ぜんしゃふたつだ」
ヴェント「そ。……ま、その内退院出来るとは思うんだケドね」
ふぃあんま「…けいかはよくないのか」
ヴェント「微妙なトコロ。…投薬を拒み気味だってのも一因だろうケド」
科学技術に身を任せない彼女は、病院でも漢方薬など古来の技術を使ってもらっている。
なので、中々治らない。しかし、科学嫌いにも理由がある。仕方のないことだ。
ふぃあんま「……ひとまず、はなせるていどにはかいふくしていてあんどした。おれさまはかえるぞ」
ヴェント「ん、…じゃあね」
手を振り返し、フィアンマは廊下へ出る。
872 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 22:38:24.09 ID:kb2eJvlAO
+
873 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/26(土) 22:38:44.11 ID:Gb1g/C7S0
一方通行は、ぼんやりとテレビ画面を眺めていた。
ハワイ諸島で火山噴火が起きたらしい。
多数の死傷者が出た上、噴火の危険は未だに残るのだとか。
学園都市にはほとんど関係ないものの、痛ましい天災情報である。
一方「ハワイ、ねェ…」
平穏を生きる一方通行は、ニュースから悪意を受け取る事も無く。
垣根をちらりと見やった。
彼は現在、打ち止めの手作りパンケーキと格闘中である。
打ち止め「美味しいー? ってミサカはミサカは自信作に対する垣根の反応待ちをしてみたり!」
垣根「ああ、美味いわ。マジ美味いわ。天国行ける味だ」
打ち止め「ほんと!? ってミサカはミサカは大はしゃぎしてみる!」
垣根(生地は悪くねえのにトッピングセンスが極悪としか言い様がねえ。蜂蜜漬けじゃねえかコレ)
一方(顔色最悪だなァ……)
温かいストレートの紅茶で何度も飲み下しながら、垣根はにこにこと笑む。
そうしてにこにこと笑んだまま、皿をカブトムシ05へ押し付けた。
カブトムシ05「はい?」
垣根「全部食え」
カブトムシ05「口頭オーダーを確認。これより眼前の食物を完食します」
もぐもぐもぐー、と淡々と口に詰め込んでいくカブトムシ05。
打ち止めはその食べっぷりに上機嫌になりながら、おかわりを持ってきた。
先程のが蜂蜜まみれだとしたら、こちらはチョコソース塗れ。
一方「…帝督」
垣根「…あ? 何?」
垣根の聞き返す声は、軽く冷えていた。
会話を遮断したがっている者の声だった。
一方通行は言いよどみ、何でもない、と首を横に振る。
以前ならば、『途中まで言いかけたんなら最後まで言えっての、気持ち悪りいな』位の軽口を叩いていた垣根。
だが、黙ったまま。やっと口を開いたと思えば、『あっそ』という簡素な相槌。
―――気持ちが落ち着くまで、時間がかかる。
874 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 22:38:44.95 ID:kb2eJvlAO
+
875 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/26(土) 22:39:02.57 ID:Gb1g/C7S0
魔神のなり損ない。
それでいて、『グレムリン』の頂点に立つ、一人の少女。
純粋な魔神であるオーディン―――呼称はオッレルスを殺害することを期待されている者。
殺害し、魔神になりかわり、彼女がやるべき事は一つ。
左方のテッラの敗北によって科学サイドが勝者であると結論づけられたこの世界を滅茶苦茶に歪めることだ。
組織としての目的はそれで。
彼女自身、彼女個人が抱いている願いはもっと簡単で簡潔だ。
現在、純粋な魔神として生きているあの男を殺害する前に、多大な精神的苦痛を与えること。
その為ならどれだけ世界をぐちゃぐちゃにしてしまっても構わないし、何人死んでも知ったことではない。
「………」
彼女は現在、サーチを応用した術式により、一人の少年を観察していた。
右方のフィアンマ。
四、五歳程度の見目をしている、七歳の少年だった。
ローマ正教に所属している幼い子供。
だが、それは対外的な姿であり、元は『神の右席』の実質的なリーダーだったのだ。
左方のテッラを殺害したのもこの子供だと聞いている。
それだけの情報があれば、彼女個人の思いをさておいても、復讐という名目で殺すには大義名分が揃っている。
数年前、オティヌスが槍で腹部を貫いた相手でもある。
ただ、あの男を傷つける為に。
彼は愛する実の一人息子が傷つけられ、酷く取り乱していた。
その時の事を思い返すだけで、オティヌスは溜飲が下がっていくのを感じる。
この子供を使って、あの男を殺そう。それが出来なければ、この子供を目の前で殺してやる。
彼女はそう決めていた。そしてそれは、揺るがない事でもある。
「……、」
『とうま』
フィアンマが懐いているのは、黒いツンツン頭の少年。
学生服を着た万年無能力者(レベル0)、彼の名を上条当麻という。
他の呼称でいえば、幻想殺し。オティヌスの思い描く未来には必要のない邪魔なものだ。
「…さて」
一番愉快な順番は、上条、フィアンマ、オッレルスの順で眼前で殺害することだろう。
散々命乞いをさせて殺すのも、きっと愉しいに違い無い。
『あれ、フィアンマ散歩してたのか?』
『りょこうだ』
『えー、この短時間で?』
幸せそうな二人。
壊してやりたい、とオティヌスは思う。
既にバゲージシティでの『全体論の超能力者』開発に関する実験の下準備は済んでいる。
『主神の槍(グングニル)』を製造する為の準備を済ませておけば、後は心置きなく殺害だけに専念出来る。
「……楽しみだな」
まるで、映画の上映を心待ちにする乙女の様に。
魔神のなり損ないは、小さく笑った。
876 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 22:39:03.53 ID:kb2eJvlAO
+
877 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 22:39:16.61 ID:SbS04bec0
もっと詳しくふぃあんまと上条さんのH書かんかい!
878 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/26(土) 22:39:26.18 ID:Gb1g/C7S0
帰りにフィアンマと合流した上条は、コンビニへ寄った。
冬なので、アイスには目も向かない…と見せかけ、ちょっぴり向いた。
上条「やっぱり冬といえばチョコだよな」
ふぃあんま「ちょこれーとあいすばかりだな」
上条「こうもチョコ一色だと競争にならないような気がするんだけど」
ふぃあんま「ていばんどおりにいこうというあさはかなかんがえだろう」
上条「リスク回避って言ってやれよ、浅はかとか言わないの」
めっ、と叱り、アイス売り場から離れる。
買おうかと思ったが、寒いのでやはりやめたのだった。
何を買うか散々悩み、購入したのはピザまん。
ふぃあんま「…ぴっつぁか」
上条「中身はそうかもしれないけど…んー」
はい、と半分に割って渡され、強く握らないよう気をつけながらフィアンマは受け取る。
そうしてもぐ、と口に含むと、不服そうに眉を潜めた。
ふぃあんま「…ぴっつぁじゃない」
上条「まあ、出来合いのピザソースにとろけるチーズが心持ち入ってるだけだしな…」
ふぃあんま「………」もむもむ
上条(あ、でも気に入ったんだ)
二人で歩きながらむぐむぐと食べていると、不意に女子中学生が話しかけてきた。
美琴「! かわいい、何、アンタ弟なんて居たの?」
上条「あ、うーん…まあ、そんな感じかな…?」
フィアンマを見、女子中学生―――もとい御坂美琴は目をきらきらとさせて話しかける。
対して、フィアンマは美琴の様子を見、上条へ好意を持っていると即座に判断した。
そして、上条の左手をぎゅっと抱きしめて美琴を睨む。
ふぃあんま「…とうまはわたさんぞ」
上条「…何の話?」
今日も今日とて、上条当麻は鈍感少年なのであった。
879 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 22:39:27.12 ID:kb2eJvlAO
+
880 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/26(土) 22:40:00.01 ID:Gb1g/C7S0
「……フィアンマ、が?」
学園都市『無能力者』・『幻想殺し』―――― 上条当麻
「警告しに来たんだよ」
『グレムリン』の直接戦闘担当――― 雷神トール
「じゅうねんごも、にじゅうねんごも、いっしょにいたい」
『世界を救える程の力』を持つ魔術師―――― フィアンマ
881 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 22:40:00.92 ID:kb2eJvlAO
+
882 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/26(土) 22:40:25.73 ID:Gb1g/C7S0
今回はここまで。
ネタ・要望お待ちしてます。
883 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 22:42:03.42 ID:SbS04bec0
番外編でいいんで
ふぃあんまと上条さんのシックスナイン体制になって
ふぃあんま君が手コキからのフェラで
ごっくんを見たいです
884 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/26(土) 22:51:08.20 ID:g1EEiAQco
今回も乙です!
いちゃらぶわんつー&上フィアをもっとください!!!!!!!
885 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/27(日) 02:58:35.25 ID:QzHsIW170
乙
そういえば垣根と一方さんの生活ってあんまり描写されてないよね
二人で一緒にショタゲーやったりするんかな? ショタキャラの品評したりとか
つーか、今の垣根なら未元物質でショタセラとか生み出せるな……
886 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/27(日) 16:47:15.14 ID:td/u7C3D0
>>883
ウィッス
>>885
大体そんな感じの日常を送っております
敢えて生み出してしません
投下。
887 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/27(日) 16:47:16.58 ID:XWaXN4PAO
+
888 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/27(日) 16:47:36.31 ID:td/u7C3D0
フィアンマが美琴へ何かをやらかす前に、上条は彼を連れて帰って来た。
ピザまんを食べ終わったフィアンマは、やや不機嫌である。
上条「フィアンマさーん、何か怒ってらっしゃるんでせうか?」
ふぃあんま「おこってない」
上条「どう見ても不機嫌なんだけど…」
ふぃあんま「ふきげんじゃない!」
上条「痛い痛い」
上条の脇腹をぺちぺちと叩く小さい手。
上条は苦笑しながらフィアンマの頭を撫で、攻撃から逃れるべくひょいと抱き上げた。
上条「俺はフィアンマが一番大好きですよー」
ふぃあんま「にゃ、……ぅ」
御坂美琴と仲が良い様子が気に入らなかったのだろう。
そう結論付て、上条はのんびりとそう言った。
フィアンマは口ごもり、抱っこされたまま沈黙する。
上条はそんな幼子の背中を摩り、夕食の準備に取り掛かるのだった。
889 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/27(日) 16:47:37.16 ID:XWaXN4PAO
+
890 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/27(日) 16:47:52.70 ID:td/u7C3D0
出来上がった夕食をむぐむぐと食べ。
上条は、カレンダーを見て、ふと思い出した様に問いかけた。
上条「そういえば、誕生日っていつなんだ?」
ふぃあんま「たんじょうびか。…んー…」
上条(思い出せないのかな)
ふぃあんま「…こんげつだ」
上条「日にちは?」
ふぃあんま「なぜそんなことをきくんだ」
上条「いや、お祝いしようかなー、って」
上条は15歳の為、もう誕生日を祝うこととは縁遠い。
しかし、フィアンマは七歳、誕生日を迎えても八歳。
なので、お祝いしよう、と上条はふと思い立ったのである。
ふぃあんま「…おいわい?」
上条「そうそう。駄目か?」
ふぃあんま「…だめではないが」
居候なのに、と不思議そうな顔をするフィアンマに、上条は苦く笑う。
『いや、居候』
ふぃあんま(いそうろうといっていたが、…いや、あれはむかしか)
上条「別に居候とは思ってないよ。"俺"は」
ふぃあんま「ならばなんだ」
以前の自分はどうであれ。
今の自分はそうではない、と上条は笑んでみせた。
上条「家族だろ?」
ふぃあんま「……、…うん」
891 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/27(日) 16:47:53.95 ID:XWaXN4PAO
+
892 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/27(日) 16:48:38.98 ID:td/u7C3D0
打ち止め「クリスマスのお祝いがしたいです、ってミサカはミサカは宣言してみたり」
一方「…クリスマス?」
打ち止め「他のミサカ達によると、ご馳走と大きなケーキを食べて子供がプレゼントをもらうんだよ、ってミサカはミサカは豆知識を提示してみる」
一方「ンな事知ってる」
打ち止め「あなたもお祝いしたいよね、ってミサカはミサカは同意を求めてみたり」
カブトムシ05「…同意した方が良いのでしょうか?」
一方「どっちでもイイだろ。……っつゥか俺に言うな」
打ち止め「こういう家庭内企画はまずお母さんに諾否を求めるものじゃないってミサカはミサカはうきゅう」
一方「誰がお母さンだ」
すかさずチョップする一方通行。
カブトムシ05「…その場合、私はマスターである垣根帝督に諾否を求めるべきですね」
一方「オマエは話をややこしくすンじゃねェ」
垣根帝督、爆睡中。
会話を聞いている上で寝たフリなのか、聞いていないのかは不明だが、とにかく眠っている。
静かにしろ、と言いつつ、一方通行はしばし考えてみた。
クリスマス。
本来十字教徒でない学園都市の住人には関係ない。
ないのだが、学園都市は日本の一部であり。
日本という国は、沢山の宗教の中からイベントだけを抜き出して祝う。
なので、日本国におけるクリスマスはプレゼントとご馳走のイベントである。
一方「……祝うつっても、教会に行きてェ訳じゃねェだろ。鳥焼いたヤツとケーキ1ホールでイイのか?」
打ち止め「! 用意してくれるの、ってミサカはミサカは目を輝かせてみたり」
一方「オマエも買い出し行くンだよ」
肩を竦め、一方通行は缶コーヒーを手にする。
ふと、垣根が目を覚ました。
垣根「…クリスマス?」
カブトムシ05「はい」
カブトムシ05越しに情報を入手する垣根。
彼はしばし黙った後、思い出した様に言った。
垣根「ただしケーキはチーズケーキだ」
打ち止め「ブッシュドノエルじゃないの!? ってミサカはミサカは不服を唱えてみたり!」
祝う気満々なのであった。
893 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/27(日) 16:48:40.29 ID:XWaXN4PAO
+
894 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/27(日) 16:49:28.19 ID:td/u7C3D0
フィアンマの誕生日は十二月二十五日である。
降誕祭と重なった為、上条は誕生日優先にすることにした。
例年はクリスマスにちょっとショートケーキを食べて終わっていた。
が、今年はお祝いなので豪勢にしたいところである。
上条はフィアンマの髪をドライヤーで丁寧に乾かしてやりながら、首を傾げた。
上条「欲しい物って何か無いのか? クリスマスと誕生日両方」
ふぃあんま「ぷれぜんとか?」
上条「そうそう。あんまり高い物だとあげられないかもしれないけど……」
ふぃあんま「んー」
フィアンマは悩み、やや眠そうに上条へもたれかかる。
そうして、思い浮かんだのか、一言呟いた。
ふぃあんま「…そうだな、…かくやく。あるいは、やくそく」
上条「約束?」
少しだけ寂しそうな顔をして。
彼は、ぽつりと言う。
まるで叶わない願い事を口にするように。
895 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/27(日) 16:49:29.24 ID:XWaXN4PAO
+
896 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/27(日) 16:49:45.77 ID:td/u7C3D0
「じゅうねんごも、にじゅうねんごも、いっしょにいたい」
897 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/27(日) 16:49:46.93 ID:XWaXN4PAO
+
898 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/27(日) 16:50:03.65 ID:td/u7C3D0
赤い前髪とサイドの長い髪に隠れて、その顔は見えない。
上条は、しかし、どうしてそんなことを願うのか、と首を傾げた。
上条「わざわざ願わなくても、一緒に居られるだろ」
ふぃあんま「…はたしてほんとうにそうとはかぎらんだろう」
例えば。
上条が、普通に女の子と恋をして。
恋をした後、結ばれて。
結婚して、子供をなしたりすれば。
その時点で、フィアンマとの関係は切れてしまう。
別に、それはそれで仕方無いとは思えど。
欲しいものといえば、繋がり位しか、無かった。
ふぃあんま「…おまえは、ようしはわるくない。せいかくはいうにおよばず。…ゆえに、…だれかとむすばれるかもしれん」
上条「……、」
ふぃあんま「……だが、…おれさまは、ほかのにんげんにそういうきもちをむけるつもりはないし、あいされるともおもわん」
だから、つまり。
子供でなくなっても、自分を愛してくれるか。
そうして、一緒に居てくれるか。
そういう話をしているのだ。
上条「……、俺は、…フィアンマが子供だから、好きなんじゃないよ。フィアンマだから、好きなんだよ」
確かに、性的な行為に及んだのは、見目に誘われてだった。
男性においての性欲と好意はイコールではない。
だけれど、この年齢差が犯罪染みていたとしても。
性別が同じで、一般的にはまだまだ認めてもらい辛い関係だとしても。
上条「俺はフィアンマの家族だし、恋人にもなりたい。だから、十年、二十年、何年経っても、一緒に居るよ」
願われなくても、絶対に。
899 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/27(日) 16:50:04.62 ID:XWaXN4PAO
+
900 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/27(日) 16:50:24.13 ID:td/u7C3D0
十二月十九日。
上条当麻は、補習を終えてゆっくり家へ向かっていた。
バゲージシティで何やら事件が起きたらしい。
しかし、それはニュース、テレビ画面の向こうの話。
悲劇から逃れた分だけ幸福に、上条は穏やかな生を謳歌していた。
そんな彼は、ふと、誰かとぶつかった。
御坂美琴だった。
上条「ごめんごめん、大丈夫だったか?」
美琴「大丈夫大丈夫」
言って、彼女は尻餅をついた状態から立ち上がる。
美琴「ねえ、これから時間ある?」
上条「時間? あるけど」
美琴「そう。なら良かった」
じゃあ、こっちに来て。
誘われるまま、上条は首を傾げてついていく。
不意に、違和感に気がついた。
ぶつかったにも関わらず、前髪から紫電が跳んでいない。
いつもの彼女にしては、あまりにも落ち着き過ぎている。
上条「……、…お前…本当に、御坂、か?」
美琴「おや、早ぇな」
少年らしい乱暴な口調で言った彼女の指から、青白い閃光。
2メートル程の長さ。雷光の溶断ブレードだった。
彼女の顔がパキパキと音を立て、崩れていく。
中から姿を現したのは、長い金髪の少女のような印象の少年だった。
彼の指先が上条へ向き、上条は咄嗟に屈んで避ける。
上条「ッ、誰だ!?」
トール「『グレムリン』直接戦闘担当、雷神トールとでも自己紹介しておこうかね」
901 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/27(日) 16:50:25.12 ID:XWaXN4PAO
+
902 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/27(日) 16:50:43.62 ID:td/u7C3D0
上条の視線を受け流し、コーヒーを飲むよう勧めながら、トールはコーヒーを啜る。
程よい温かさの苦い液体が、喉を伝って胃袋まで落ちていった。
上条「…っていうか、何なんだよお前は」
トール「だから雷神トールだって。自己紹介しただろ?」
上条「何だって急に攻撃してきやがったんだ」
トール「いやあ、俺の目的がお前の殺害だったから」
冗談のような気軽さの言葉は、店内の騒がしさに溶けて注目を集めない。
しかし、そこに込められた真面目な殺意に、上条は思わず固まる。
トール「…ま、落ち着けよ。俺はまだ殺す気はないし、俺個人としてはあんたを殺るのは惜しい」
上条「……、なら、何が目的だ」
トール「警告しに来たんだよ」
上条「警告?」
トール「お前の同居してるちっこいガキ。あれが魔神の息子ってことは知ってるか?」
上条「……フィアンマ、が?」
トール「あれ、知らない? 一度接触したって聞いたんだけど…」
情報が古かったか、と首を傾げるトール。
トール「まあ、そいつだよ。お前がこの前ズコバコまではいかなかったけどペロペロした子」
上条「な、何で知って、ッ」
トール「色々と。魔術にも色々とあるんでな」
上条「ぐ、…」
トール「その程度で恥ずかしがるような人生送ってねえだろ」
上条「…お前、ケンカ売ってるよな?」
トール「間違っちゃいねえが」
ふぅ、とトールは息を吐き出す。
どう話を持っていこうか考えて、ついでに『視』た内容について回想した。
903 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/27(日) 16:50:44.60 ID:XWaXN4PAO
+
904 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga !桜_res]:2013/01/27(日) 16:51:11.18 ID:td/u7C3D0
上条に言われるまま、フィアンマはベッドへ俯せになる。
そうして、仰向けになった上条と逆方向に横たわると、上条自身へ手をかけた。
痛い程に勃起しているそれを扱いていると、自らの股間に生ぬるい感覚。
上条が、フィアンマの小さな性器へ丁寧に舌を這わせている。
この体勢が所謂シックスナインと呼ばれるそれであることも知らず、フィアンマは上条自身先端を口に含んだ。
小さな口に入り切っているかどうか、曖昧な様子。
それでも一生懸命先端を舐め回し、吸い付き、口に入らない部分は手で扱いた。
汚れていない指で、サイドの髪をそっと耳にかける。
そのどの動きさえ興奮を高め、刺激となり、上条は急速な射精感に身体を震わせた。
「っ、フィアン、マ」
掠れた声で呼び、上条はベッドシーツ表面を爪でかりり、と引っ掻いた。
それが引き金を引いたかの様に、びゅくびゅくと白濁の精汁が溢れていく。
フィアンマの白い肌を、頬を、白濁の液体が濡らし、穢した。
その苦味と青臭さにげほげほと噎せ、フィアンマは肩で息をする。
上条は愛撫をやめ、急速に思考が冴えていくのを感じながら、起き上がった。
フィアンマと向かい合わせで抱っこし、ティッシュで顔を拭いてやろうとする。
ごっくん。
上条の視界の端で、嚥下の動きが見えた。
喉に引っかかる、子種。
「ん、けほ、……にが、ぃ…」
不味い、と渋い顔をするフィアンマに、上条は口の中が渇いていった。
「そ、…んなもの、飲むなよ…」
上条には、アダルトビデオを見た記憶が無い。
それでも、今の状況が淫靡であることは、わかっていた。
905 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/27(日) 16:51:12.51 ID:XWaXN4PAO
+
906 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/27(日) 16:51:38.18 ID:td/u7C3D0
トール(勃ちそう)
上条「……」
トール「…ま、簡潔に言おうか。このままだと、お前もフィアンマも殺される」
上条「…殺される? 何の為に」
トール「俺の所属している魔術結社のリーダーがそう決めたから、としか言い様がねえ」
しかし。
自分は乗り気ではない、とトールは肩を竦める。
トール「それで、どうする?」
上条「…何が」
トール「フィアンマを守る為に命を賭けるか、このまま平凡に過ごして死ぬか」
お前は、どうしたい?
問いかけに、上条は黙り込む。
907 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/27(日) 16:51:39.23 ID:XWaXN4PAO
+
908 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/27(日) 16:52:27.05 ID:td/u7C3D0
今回はここまで。
いつもレスありがとうございます。今後も是非お願いします。
迷走中なのでストーリーが迷子になってます…
909 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/27(日) 18:30:16.24 ID:9zrqY4NW0
さっさとアナル開発しちゃえよ上条
910 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/27(日) 23:22:31.61 ID:BTjgi60IO
いや、この場合なら上条がするのではなくふぃあんまくんが上に乗るはずだ
911 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/28(月) 22:02:41.79 ID:bsY9myhS0
3Pも悪く無い
そう思っていた時期が僕にもありました
フィアンマさんを安価で陵辱しまくるスレを建てたい
どこぞに感化されまくった発想が僕にはあります
投下。
912 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/28(月) 22:02:45.66 ID:bCIviOLAO
+
913 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/28(月) 22:03:13.56 ID:bsY9myhS0
上条「………どうするも何も、答えは一つに決まってんだろ」
止まっていれば悲劇が起きてしまうのなら。
しかも、自分だけでなくフィアンマまでもが巻き込まれてしまうのならば、戦うしかない。
どれだけ嫌だと叫んだところで、最早土俵にあげられてしまっているのだから。
そうして上条は、やや疑いの視線をトールへ向けた。
上条「…お前は何で俺達を助けようとしてるんだ?」
トール「あん? そりゃあ、…お前が良い敵だから。あと、」
上条(良い敵?)
上条「…後?」
トール「オティヌス…ああ、リーダーな? アイツに従ってお前達を殺すより、お前達がいちゃついてんの見る方が愉しいから」
上条「いちゃ、」
プライバシーはどこへ、と項垂れる上条。
トールは快活に笑い、コーヒーを飲み終えた。
空っぽになった紙コップをぐしゃりと握り潰す。
トール「…ま、全幅の信頼を寄せる事はオススメしねえよ。いつか裏切る、だからあんたも好きなタイミングで俺を裏切って逃げれば良い」
追いかけるけど、と肩を竦め。
上条「わかった。…、…それで、どうすれば良い。そのお前の入ってる組織のリーダーからはどうやって逃げれば良いんだ」
トール「逃げるっつーか戦うっつーか…ま、その前に魔神のオッレルスが片付けるかもしれねえし。というか、その方が可能性としては高い。あの野郎は、こと息子に関してだけはヤバイ位キレるからな。って、訳でさ」
とりあえず、と前置きをして。
トール「泊めてくれよ」
上条「………はぁ!?」
914 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/28(月) 22:03:14.59 ID:bCIviOLAO
+
915 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/28(月) 22:03:30.33 ID:bsY9myhS0
『グレムリン』直接戦闘担当、雷神トールをお持ち帰り。
上条当麻は、訳がわからない、と頭を抱えていた。
上条「……何で俺がお前を泊めなきゃいけないんだよ」
トール「ほら、組織裏切っちまったからさあ、寝床がないんだよ。哀れみってことで一つ」
上条「上条さんは聖人君子じゃありませんのことよ、…寝首掻いたりしねえだろうな」
トール「寝首掻くような卑怯な真似はしねえよ。夜這いならともかく」
上条「!?」
トール「冗談だって、冗談」
ははは、と笑う彼はゲイではない。
バイ兼腐男子である。
貞操の危機を感じながら家の鍵を開けると、そこにはフィアンマが居た。
ベランダから身を乗り出している。
上条「ッ、フィアンマ!」
ふぃあんま「む」
フィアンマはベランダから身を乗り出したまま、きょろりと振り返った。
彼が手を伸ばしていたのは、向かいの建物の手すりで右往左往している子猫である。
トール「子猫?」
ふぃあんま「だれだきさまは」
トール「雷神トール。トールで良いぜ」
警戒心を露わにするフィアンマに小さく笑み、トールはしばし考える。
916 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/28(月) 22:03:31.25 ID:bCIviOLAO
+
917 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/28(月) 22:03:51.98 ID:bsY9myhS0
三分程熟考したトールはフィアンマの隣に立つ。
そうして手指で少々特殊な動作をした後、磁力によって周辺のものを繋ぎ合わせた。
そうして一つの橋の様なものを作り、子猫へ歩く様指示をする。
子猫はしばし怯えた後、そろそろと歩き出した。
磁力と周辺の鉄の含まれる物体によって造られた橋は、トールの集中する限り繋がれたまま。
無事手元までやって来た子猫を撫で、フィアンマはじっとトールを見上げた。
ふぃあんま「らいじんといったな」
トール「ああ」
ふぃあんま「……もくてきはなんだ。まじゅつしだろう」
トール「能力者だよ。留学生なんだ」
ふぃあんま「うそをつくな」
トール「…流石右方のフィアンマ、子供だましは効かねえか」
ベランダから戻り、窓を閉める。
子猫を膝上であやし、フィアンマは警戒しながら上条にくっついた。
ふぃあんま「なぜつれてきた」
上条「…流れ、かな」
ふぃあんま「……とうまをむやみにきずつけてみろ、うむをいわさずころすぞ」
トール「嫉妬すんなよ」
ふぃあんま「していない」
トール「…別に人殺しは趣味じゃねえ。俺がしたいのは楽しいケンカ、ただそれだけだ。安心しろよ」
918 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/28(月) 22:03:52.98 ID:bCIviOLAO
+
919 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/28(月) 22:04:11.76 ID:bsY9myhS0
魔術師二人が話し込んでいる間。
上条は悩み悩み、猫を洗っていた。
何か、『飼っちゃダメ』と言いづらい雰囲気である。
猫の身体を丁寧に洗ってタオルで拭いてやり。
上条が風呂場から出ると、トールとフィアンマは既にだいぶ仲良くなっていた。
どちらかというと、トールがフィアンマにデレているようだ。
トール「可愛いなコイツ」
ふぃあんま「……」
上条「…魔術師って皆仲良しなの?」
トール「んな訳無いだろ」
ベッドに座ったトールの膝上に座り、フィアンマは彼の金髪で遊んでいる。
長い金髪を勝手に編まれても問題無いらしく、トールは暇そうだ。
トールはそもそもフィアンマを殺せるとは思っていない。
禁書目録の知識によって安定した『聖なる右』と、通常の人間の肉体が戦えばただ消耗するだけだ。
まして、フィアンマはまだ強大な敵とは思えない。戦うメリットが無かった。
トール(…ま、もう少し年齢が嵩めば別…いや、オッレルスに殺されそうだな)
それはそれで面白い戦いになるか、とぼんやり思う雷神。
彼の本質は、突き詰めれば戦闘狂であり、強さを求める獣だった。
上条「…とりあえず晩飯食う? お前も、フィアンマも」
トール「おお、喜んで」
ふぃあんま「はんばーぐがいい」
上条「今日はトンカツって決まっちゃったからダメ」
ふぃあんま「む」
不服そうなフィアンマはトールに撫でられつつ、ややうとついた。
920 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/28(月) 22:04:12.96 ID:bCIviOLAO
+
921 :
小ネタ:自由神
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/28(月) 22:04:50.98 ID:bsY9myhS0
トール「ところで」
ふぃあんま「…」すやー
上条「あれ、フィアンマ寝ちゃったのか…何だ?」
トール「調教とかしないのか?」
上条「ぶっ」
トール「アナル開発とか」
上条「ば、ッ」
トール「大きい声出すと起きちまうぜ?」
ふぃあんま「んみゅ…」すやぁ
上条「ぐ…」
トール「こっちはわくわくしてんのによ」
上条「すんじゃねえよ」
トール「69だけじゃ物足りねえだろ?」
上条「……別にそんなことないけど」
トール「ふーん?」
上条「ニヤニヤすんな」
トール「……寝盗るってのもなかなか良いスパイスになるかね」
上条「おい」
トール「怒るなよ上条ちゃん、包丁はタンマタンマ」
922 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/28(月) 22:04:52.20 ID:bCIviOLAO
+
923 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/28(月) 22:05:18.06 ID:bsY9myhS0
原点に立ち返る。
今回は以上です。
924 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/28(月) 22:09:54.44 ID:bEuz78N50
掘れよズブッと
925 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/28(月) 22:26:38.09 ID:Lcb353+0o
乙
926 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/29(火) 07:23:13.32 ID:DYBibK6J0
外見は少女のようなトールがバイということはもしかして後ろは開発済みなんです?
二人の性的なキューピッドになるのか間男になるのか、私、気になります!
927 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/29(火) 11:44:08.29 ID:ixTcqf4O0
おもしろい
乙
928 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/30(水) 14:42:51.94 ID:r1o3smfO0
>>924
アッー!
>>926
バイでもヤる方かもしれないんだよなあ…♂
悩んでます。あ、でもNTRにはしません。
>>927
ありがとうございます
投下。
929 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/30(水) 14:42:53.20 ID:Wl5Lxb9AO
+
930 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/30(水) 14:43:12.37 ID:r1o3smfO0
上条をからかい終え、夕食が出来上がるまで。
膝上で眠ったフィアンマを構うことで、トールは暇を潰すことにした。
どんな人間も寝顔は素顔で愛らしいということだが。
トール(うーん、ガキが一番可愛いよな、寝顔は)
すやすやと眠るフィアンマの柔らかい頬を指先でつつき、トールはのんびりと思う。
彼は飽きずに力を求めるが、その実守るものが無い。
守るものが無いが故、自らの振るう力が戦争に匹敵すると呼ばれることも知っている。
戦争代理人。
自らの代名詞。
力を求め、暴力を身につけた末に得たモノ。
もう少し進めば、戦争の神とでも呼ばれるだろうか。
別にオーディンになりたい訳じゃないけど、とトールは思う。
トール(…それでも強くなりたいとは思うんだが)
守りたいものを見つけなければいけないなあ、と思う。
931 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/30(水) 14:43:13.39 ID:Wl5Lxb9AO
+
932 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/30(水) 14:43:32.04 ID:r1o3smfO0
打ち止めは、カブトムシ05と共に外出していた。
寒いので、しっかりと手を繋いで。
打ち止め「…あんまり温かくないってミサカはミサカは首を傾げてみたり」
カブトムシ05「私の体は人体ではなく、人の体の形として整えた未元物質ですから」
打ち止め「でも垣根の羽は温かいよ、ってミサカはミサカは疑問を持ってみる」
カブトムシ05「形状が違えば発熱もするでしょう。しかし、人体はそもそも発熱する形をしていません」
そういえば、と思い出したように彼は問いかける。
カブトムシ05「今回の外出目的は何でしょう?」
打ち止め「えっと、垣根と一方通行とあなたにクリスマスプレゼントを買いに来たの、ってミサカはミサカは説明してみる」
カブトムシ05「プレゼント購入、把握しました。…私にも、ですか?」
打ち止め「当たり前じゃない、ってミサカはミサカは胸を張ってみる」
にこにこと笑み、打ち止めはカブトムシ05の手を引いた。
ショッピングモールに入り、商品を眺めて、呟く。
寂しそうな、悲しそうな表情で。
打ち止め「…あのね、」
カブトムシ05「はい?」
打ち止めは、カブトムシ05と垣根の関係が、打ち止めと妹達下位個体との関係に近いと知っている。
カブトムシ05に話せば垣根にバレると知っていて、それでも考えた結果、カブトムシ05個人への言葉として紡いだ。
打ち止め「……どうしたら垣根と一方通行は前みたいに仲良く出来るのかな、ってミサカはミサカは呟いてみたり」
カブトムシ05「……、」
彼女はカブトムシ05の手をぎゅっと握り、俯く。
打ち止め「ミサカにはわからない。…ミサカは、…大好きな人には大好きって言うもん、ってミサカはミサカは垣根の行動の不明さについて愚痴ってみる…」
933 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/30(水) 14:43:33.02 ID:Wl5Lxb9AO
+
934 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/30(水) 14:43:48.49 ID:r1o3smfO0
紙パックのココアを飲みながら、垣根はテレビ画面を見つめていた。
淡々と流れるニュースを視聴するその姿勢は見せかけ。
実際には、カブトムシ05を通して、打ち止めの発言を聴いていた。
『嫌いになったり、ケンカした訳でもないのにどうして距離を取るんだろう、ってミサカはミサカは不思議に思ってみる』
『事情があるんです』
『事情は気持ちに勝るものとは思えない、ってミサカはミサカは一方通行の行動を思い返してみたり』
本来、一方通行は自らが抱える事情に従って無敵を目指すべきだった。
しかし、人を傷つけることを嫌がった彼は、事件を拒否した。
そうして誰も傷つけず、事を終わらせた。
垣根「………」
現実的な事情ではなく。
理想的な未来を突き通して、一方通行は幸福を勝ち取った。
だが、それは珍しい成功例であって。
垣根(…俺が取り組んだところで、そうなるとは限らねえ)
何もかもうまくいけば、この世界に悲劇なんて起こらない。
でも。
心の底から打ち止めを助けてくれる誰かを祈った時。
あの魔法使いは現れて、自分を助けてくれた。
神様というものは案外居るのかもしれない。
垣根「……なあ、一方通行」
一方「あン?」
缶コーヒーを啜り、一方通行は垣根を見やる。
赤い瞳と黒い瞳、双方からの視線がかちり合う。
垣根「…あのさ、」
935 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/30(水) 14:43:49.61 ID:Wl5Lxb9AO
+
936 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/30(水) 14:44:06.08 ID:r1o3smfO0
打ち止め「暗い話は終わり、ってミサカはミサカは話題を打ち切ってみたり」
言いながら、彼女は棚の高いところを指差した。
少し高いが、銀細工のネックレスの二本セットだった。
セット販売というだけでペアではない為、チェーンが女性用・男性用と分かれていないものである。
カブトムシ05「ネックレスですか」
打ち止め「うん、これを二人にプレゼントするのってミサカはミサカは提案してみる」
ちゃんとお金もあるんだよ、と提示されたのは、幼い子供には少々過ぎるお小遣い。
ネックレスは、鍵と扉。
扉側の中には、写真が入るものであるようだ。
所謂ロケットペンダントタイプである。
鍵側のネックレスを使わなければ、扉は開かないようになっている。
つまり、一度写真を入れれば最後、鍵側の誰かによってでしか開けられない。
カブトムシ05「どちらをどちらに?」
打ち止め「それが迷いどころなの、ってミサカはミサカは悩んでみたり」
うーん、と首を傾げる打ち止め。
カブトムシ05は、コイントスで決めましょうと言い出す。
結果は。
937 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/30(水) 14:44:06.91 ID:Wl5Lxb9AO
+
938 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/30(水) 14:44:22.22 ID:r1o3smfO0
まだ騒動は起きていない。
そんな訳で、雷神トールは一度は騒乱へ誘った上条を見送った。
上条はトールへフィアンマを預ける(=家へ居る)ことを渋っていたが、学校へは連れて行け無い。
加えて、フィアンマが『おれさまはらいじんよりつよい』と根拠を示して言ったので、仕方なく預けた。
上条(…本当に、大丈夫なのか…?)
雷神トール。
戦争代理人。
個人の力でもって戦争という状況を体現させる程の存在。
『グレムリン』を裏切ったとはいえ、完全な味方でもないと自ら告げている。
上条(…フィアンマの方が強いっていってもな…)
右方のフィアンマ。
『神の右席』の中でも最強。
どんな相手でも確実に倒す万能の術式、『聖なる右』を所持している。
魔術師としても優秀な腕を持つ、幼い子供。
上条(…やっぱ不安だな、早退しようかな……)
上条の不安とは反対に。
フィアンマはというと、トールにひっついていた。
トールは嫌がるでもなく、退屈そうにしている。
傍から見れば、とてもとても仲良しだった。
トール「俺と仲良くしてんのも作戦の一つ?」
ふぃあんま「ちをながさずしてすごせるのならば、それがいちばんだろう」
仲良くしておくことで、攻撃を億劫にさせる。
フィアンマは決して無邪気ではない。
心から懐いている相手は非常に少ない。
トールは小さく笑って、しかし同調は出来ないな、と首を傾げた。
トール「俺とは正反対だな」
ふぃあんま「そうか?」
目下のところ。
正反対の二人は、猫の里親を捜す事にした。
939 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/30(水) 14:44:23.07 ID:Wl5Lxb9AO
+
940 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/30(水) 14:45:22.79 ID:r1o3smfO0
「もう元には戻れねえんだよ」
学園都市第一位の『超能力者』・『未元物質』―――― 垣根帝督
「何あれ。修羅場?」
元『グレムリン』の直接戦闘担当――― 雷神トール
「……くろこおねえちゃん。おねがい」
『世界を救える程の力』を持つ魔術師―――― フィアンマ
「帝、督」
学園都市第二位の『超能力者』―――― 一方通行
941 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/30(水) 14:45:24.30 ID:Wl5Lxb9AO
+
942 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/30(水) 14:45:43.39 ID:r1o3smfO0
今回はここまで。
943 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/30(水) 15:01:06.01 ID:y3Tq/IVh0
上条さん早くふぃあんま掘れ
944 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/30(水) 15:59:06.52 ID:YbpyrX/bo
なんだろう垣根を応援してしまう
>>1
も垣根もがんばれ
945 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/30(水) 16:15:51.45 ID:vbUXyqxQo
一方通行の予告台詞がなんか切ねぇ……
垣根頑張れ
946 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/30(水) 19:41:34.68 ID:nhhEmwqH0
フェラしあって ふぃあんまの初射精はよ
947 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/30(水) 19:42:00.47 ID:nhhEmwqH0
7歳でも精通するから
だからはよ
948 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/30(水) 20:54:39.26 ID:AfQbIpsR0
おっつん
垣一にキュンキュンするでぇ……
949 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/31(木) 00:21:56.91 ID:txgbOKYN0
>>943
>>946-947
出ますよ〜次スレは
>>944
ありがとうございます
投下。
950 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/31(木) 00:22:04.77 ID:YI+gX1oAO
+
951 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/31(木) 00:22:26.76 ID:txgbOKYN0
コイントス。
表が一方通行。
裏が垣根帝督。
結果は、裏。
カギは一方通行へ。
扉は、垣根帝督へ。
それは現実へ即した配分でもあった。
『垣根帝督は、一方通行さんによって善性を発掘されました』
一方通行という少年が、良くも悪くも垣根の精神を左右するのは間違いない。
彼の存在は、もはや垣根帝督の『自分だけの現実』にすら介入しつつある。
カブトムシ05「では、ラッピングを依頼しましょうか」
打ち止め「うん! ってミサカはミサカは一緒にレジへ向かってみる」
952 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/31(木) 00:22:27.88 ID:YI+gX1oAO
+
953 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/31(木) 00:23:04.73 ID:txgbOKYN0
「…あのさ、」
空っぽになった紙パックを、机に置く。
ココアで潤した甘い口内が、急速に渇いていく。
本当に言ってしまって良いものか。
こんなことをして、大変なことになってしまうのでは。
もう一度だけ、自分らしくない勇気を。
そして、覚悟を。
空っぽになった缶を机に置き。
一方通行は、垣根の話を聞く体勢を取った。
「…なンだよ」
「……俺、が」
例えば。
例えば、と前置きをして。
「…お前の事が好きだって言ったら、どうする?」
部屋の中。
空気が、固まった。
垣根は、身体が小さく震えていたことに、そうしてようやく気がつく。
「帝、督」
名前を、呼ばれただけで。
その先の拒絶が、容易に想像出来た。
思わず、弾かれたように部屋を飛び出す。
あてもない逃亡を、始めた。
954 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/31(木) 00:23:05.80 ID:YI+gX1oAO
+
955 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/31(木) 00:23:21.16 ID:txgbOKYN0
右手に猫を抱え、左手はトールの手を握り。
フィアンマは子猫の里親を捜すべく、てくてくと歩いていた。
時刻は夕方。
そろそろ、授業を終えた学生が闊歩し始める時間帯。
これだけ人が多ければ里親も見つかるだろう、と見込んでの外出だ。
トール「やっぱこの時間ともなると人多いな」
ふぃあんま「しりあいのしりあいあたりがいればいいのだが」
トール「宛てとしては上条当麻の知り合い?」
ふぃあんま「そうだな。ほかにもいることにはいるのだが」
トール「ふーん?」
うにゃーん、と呑気に鳴く子猫を手に歩き進む。
不意に声をかけられた。
??「何やらお困りの様子に見えますわね。ええと、類人え…ツンツン頭の殿方の弟君だったような気がしますの」
茶髪をツインテールにしている、風紀委員の少女だった。
956 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/31(木) 00:23:22.12 ID:YI+gX1oAO
+
957 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/31(木) 00:23:44.17 ID:txgbOKYN0
ふぃあんま「…む。なまえは」
黒子「申し遅れましたわ。わたくし、風紀委員の白井黒子と申しますの」
ふぃあんま「くろこ、か」
覚えた、と頷く彼の腕の中で、子猫が鳴く。
ふぃあんま「このねこのさとおやをさがしている」
黒子「里親…というと、元は野良猫ですの?」
ふぃあんま「ああ」
ふむ、と考え込む黒子。
風紀委員として日々真面目に働く彼女としては、こうした瑣末事も解決してあげたい限りである。
そんな彼女の善意を誘うように、フィアンマはおずおずと頼み込む。
オプションは、トールの腕をぎゅっと抱きしめての愛らしさアピールである。
ふぃあんま「……くろこおねえちゃん。おねがい」
黒子「お…お姉ちゃん…っ」
御坂美琴の露払いを行っている彼女に、男性への興味は特にない。
しかし、子供ともなれば警戒心が揺らぐ。
加えて、彼女は普段後輩として御坂美琴(お姉様)に対して接している裏返しで、こうして慕われるとときめいてしまう性質だった。
黒子「…この白井黒子にお任せくださいな。必ずや里親を見つけてみせますの!」
目下、彼女の狙いは同じ雰囲気の初春飾利だった。
意気込む彼女に子猫を任せ、フィアンマは一安心と息を吐き出す。
黒子「ところで、貴方はどちら様ですの?」
トール「あー、俺? 俺は、…コイツの兄貴」
黒子(金髪と赤髪と黒髪…あまりにも似ていませんわね)
複雑な事情があるのだろう。
優秀な彼女の頭脳はそのような優しい結果を叩き出す。
そして子猫の里親を捜しに、彼女はその場から姿を消した。
トール「今のが『空間移動』ってやつか。…っつーか、本当警備ザルだよな」
ふぃあんま「そうだな」
958 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/31(木) 00:23:45.29 ID:YI+gX1oAO
+
959 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/31(木) 00:24:02.99 ID:txgbOKYN0
『…お前の事が好きだって言ったら、どうする?』
少年の一言。
たった一言の遠まわしな告白の言葉。
それがいつまでもいつまでも、一方通行の中でリフレインしている。
『……一方通行が幸せなら、それで良いじゃねえか』
「…俺は、」
『…これ以上賭けてどうすんだよ。確実な破産が見えてるギャンブルみてえなモンだ』
彼が天邪鬼であることを、知っている。
それでいて、大切なことを何一つ口に出さないで。
なまじ想像力があって、後ろ向きなものだから、悲観的なクセに。
考えて、追い詰められて、それでも弱音を吐かず、最後には暴力へ転化する。
名前を呼んだ。
自分は、拒絶をしようと思ったのか。
それとも、応えるつもりだったのか。
「…俺、は」
わからない。
答えなんて、まだ出せない。
それでも。
追いかけてやらないといけない、と思った。
960 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/31(木) 00:24:04.01 ID:YI+gX1oAO
+
961 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/31(木) 00:24:18.70 ID:txgbOKYN0
無意味な演算が繰り返されていることを認識した。
精神が不安定になったことによる、能力暴走だ。
「…何を期待してやがったんだ、俺は」
逃げる。
逃げる。
走る。
奔る。
頬を伝う生ぬるい液体が、飛沫となったことを知覚する。
全身がどうしようもない無力感に満たされていた。
打ち止めを救えないと思った、あの時の感覚に似ている。
『自分だけの現実』が、グズグズに侵されていた。
垣根帝督は、自分へ言い聞かせるように呟く。
「もう元には戻れねえんだよ」
掠れた声。
何処を目指しているのか。
何をしようとしているのか。
「もう、…終わりだ。くそ、…ちくしょう」
気づかれてしまった。
もう二度と、あの楽しい日々には、戻れない。
962 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/31(木) 00:24:19.75 ID:YI+gX1oAO
+
963 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/31(木) 00:24:38.24 ID:txgbOKYN0
昼食を兼ねて、おやつはクレープ。
夕方、雑踏を眺めながら、トールはフィアンマと共にクレープを食べていた。
彼等が食べているのは海老グラタン味のクレープである。
トール「値段の割にはいまいち足りねえな」
ふぃあんま「じょしがくせいむけだからじゃないか?」
トール「かもな。後は海老代か。高いもんな」
ふぃあんま「いせえびくれーぷというのもぶきみだが」
トール「食いづらくねえか? それは」
ややマイナス方向に感想を言い合っている彼らの前を、一人の少年が駆けていった。
能力暴走を起こしている彼の背中には、翼があった。
綺麗な翼ではなく、精神状態を表すように、ズタズタに皮膚を裂いて現れた翼だ。
天界を追われた天使の様な彼は、そのまま裏路地へ姿を消してしまう。
遅れて、白い髪に赤い髪の少年が走って来た。
地面を蹴り、その勢いを操作して、かなりのスピードを継続しながら。
彼はトールとフィアンマの前で立ち止まり、やや息切れしつつ問いかけた。
一方「ふぃ、フィアンマ、くン、アイツ、帝督、垣根、っ…が」
げほげほ、と咽て。
一方「何処行ったか、見てねェ、か?」
ふぃあんま「やつならあちらへいったぞ」
一方「ン、そォか。ありがとなァ、」
言うなり、彼は垣根が飛び込んだ路地裏へ姿を消した。
トール「何あれ。修羅場?」
わくわくとした声音、きらきらと光る瞳。
フィアンマはそんなトールの様子に肩を竦める。
ふぃあんま「しらんよ。ちじょうのもつれではないのか?」
964 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/31(木) 00:24:39.38 ID:YI+gX1oAO
+
965 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga !red_res]:2013/01/31(木) 00:25:10.90 ID:txgbOKYN0
真っ黒な髪。
真っ黒な瞳。
真っ黒なジャケット。
真っ黒なワイシャツ。
真っ黒なボタン。
黒。黒。黒。
どす黒く真っ黒い悪意。
カブトムシ05が、垣根帝督の善性を体現するのなら。
"彼"は、垣根帝督の悪性を体現する存在。
『……、…一方通行』
彼は垣根帝督という人間の悪意全てを司る。
好きな相手を傷つけたいという軽い感情さえも、増幅されて。
『一方通行……』
細い爪は、マニキュアでも塗ったかの様に、黒く染められていた。
肌だけは、真っ白で。
どす黒い黒瞳の奥には、赤が透けて見える。
酸化した血液のような、赤黒さ。
『…一方通行ァ……』
966 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/31(木) 00:25:12.04 ID:YI+gX1oAO
+
967 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/31(木) 00:25:32.74 ID:txgbOKYN0
一方通行は、裏路地へ入り込んだ。
垣根は見当たらない。
だが、そこかしこに白い羽が落ちている。
ハトかもしれないのに。
何故だか、一方通行には、それらが垣根のものである確信があった。
「……、…」
コツ、こつ。
足音が、いやに響いてしまう。
垣根は、一方通行を不安げに見やり、後ずさる。
ようやく追いついた。
結論は、まだ出せていない。
「アクセラ、レータ……」
「…帝督、」
能力暴走を起こしたのだろう。
彼の腕や首から、羽が飛び出ていた。
徹底的に痛めつけられた天使の様な姿だった。
「………帝督」
「ッ、……」
そうやって、いつだって全てを抱え込んで。
色んな傷を自分の中で内包して。
無理をして、精一杯虚勢を張って。
限界を迎えれば、彼はこうやって一人で泣く。
きっと、ずっとこうして生きてきたんだろう。
血みどろの仕事をした時も。
自分と同じように、研究所で汚泥と血液の中で溺れている時も。
「……俺は、………俺…」
―――よォやく、答えが出た。
968 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/31(木) 00:25:33.92 ID:YI+gX1oAO
+
969 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/31(木) 00:25:52.16 ID:txgbOKYN0
上条が家に帰ると、フィアンマがトールの脚の間に座っていた。
背中を向けて座り、あやとりをしているらしい。
トール「おー、お帰り」
上条「ただいま。何も無かったか?」
ふぃあんま「とくになにも」
トール「嵐の前の静けさってやつだな」
上条「……、」
軽い一言。
だが、それはまだまだ安心出来ないということを伝えていた。
上条「…っていうか、お前はどの位ウチに居るつもりなの?」
トール「目下のところ、後一ヶ月?」
上条「えええええ!!?」
970 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/31(木) 00:25:53.08 ID:YI+gX1oAO
+
971 :
次回予告
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/31(木) 00:26:20.73 ID:txgbOKYN0
「……あり、が、…とう」
学園都市第一位の『超能力者』・『未元物質』―――― 垣根帝督
「上条ちゃん、君に良い薬を差し上げよう」
元『グレムリン』の直接戦闘担当――― 雷神トール
『……学園都市を壊す? 愉しそうだな』
『未元物質』の暴走によって造られた生命体――― 番外個体(カキネワースト)
「オマエ、バカだよなァ」
学園都市第二位の『超能力者』―――― 一方通行
972 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/31(木) 00:26:22.05 ID:YI+gX1oAO
+
973 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/01/31(木) 00:27:13.68 ID:txgbOKYN0
今回はここまで。
誰だよ、妹達がヒロインとか言ったの…。
トールくんが準レギュラー(?)になるかもしれないです
次スレ立てませんとね
974 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/31(木) 01:38:00.26 ID:CYbqUJSLo
乙!
まさかの番外個体がカキネワーストw
痴情のもつれが激しくなりそうな予感にwktkです
975 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/31(木) 08:59:13.01 ID:/uQkKQJKo
おつ!
カキネワーストに不覚にも笑ってしまった
976 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/31(木) 13:02:06.57 ID:+rTIOgx50
おつおつ!
引き込まれてしんみりしてたところにカキネワーストで二度見してしまった…
新約キャラではトールが一番好きだから準レギュラー化するならそれはとっても嬉しいなって
977 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/31(木) 15:53:18.15 ID:xYwR6mc1o
垣根が鍵穴で一方通行が鍵か(意味深)
978 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/31(木) 16:52:10.01 ID:kALX14fP0
>>977
つまり一方通行が攻めで垣根が受けってことですねアッー!
979 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/31(木) 19:09:37.94 ID:fggpH0xSO
乙
男と男のちじょーのもつれ
愉しい……っ!
しかしカキワさんミサワさんと同じ字だと混乱しそう
980 :
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]:2013/02/01(金) 15:44:54.05 ID:0pEnHDPQ0
次スレ立てました。
HTML化依頼するのも何なので、残りレスはリクエストなり小ネタ提供なり雑談なりで埋めてしまってどうぞ。
次スレ
上条「…お前なんか、嫌いだ」ふぃあんま「…え」一方「帝督、好きだ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1359700936/
981 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 15:52:00.30 ID:b2eaNNPT0
スレ立ておつかれさまです!スレタイから漂う痴情の縺れ臭がヤバイ…
982 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 15:53:22.93 ID:gZT0z6lt0
上条さんとふぃあんまくんの濃厚なアナル開発
フェラで初射精(竿どころか玉までも全部呑み込むような濃厚なフェラ)、アナルセックスでふぃあんまくんトコロテン上条さんふぃあんまくんの童貞奪う
983 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 15:58:04.49 ID:gZT0z6lt0
埋め
984 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 15:58:34.50 ID:gZT0z6lt0
埋め
985 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 15:59:17.55 ID:gZT0z6lt0
986 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 16:00:32.32 ID:gZT0z6lt0
埋め
987 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 16:01:11.30 ID:gZT0z6lt0
埋め
988 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 16:02:19.79 ID:gZT0z6lt0
埋め
989 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 16:03:20.87 ID:gZT0z6lt0
埋め
990 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 16:03:55.18 ID:gZT0z6lt0
埋め
991 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 16:04:29.33 ID:gZT0z6lt0
埋め
992 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 16:05:02.53 ID:gZT0z6lt0
埋め
993 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 16:06:09.79 ID:gZT0z6lt0
埋め
994 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 16:09:33.10 ID:gZT0z6lt0
埋め
995 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 16:09:41.38 ID:a/xJs6GAO
1000ならトールくんはフロイラインちゃんと付き合い始める
996 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 16:09:55.73 ID:gZT0z6lt0
埋め
997 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 16:11:14.33 ID:gZT0z6lt0
埋め
998 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 16:11:57.10 ID:gZT0z6lt0
埋め
999 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 16:14:01.18 ID:gZT0z6lt0
埋め
1000 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/01(金) 16:14:31.18 ID:gZT0z6lt0
>>1000
なら上条さんふぃあんまくんの濃厚セックス祭りアナル開発フェラ初射精トコロテンその他エロエロ祭り
1001 :
1001
:Over 1000 Thread
☆.。 .:* ゜☆. 。.:*::::::::::::::::゜☆.。. :*☆:::::::::::::::::: 。.:*゜☆.。.:*
:::::::::::::=:。.: * ・゜☆ =:☆.。 .:*・゜☆. 。
:::::::::::::::::::::::::.:*゜☆ =:. :*・゜☆.::::::::::::☆
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::::::::::::::::: *=@☆.。::::::::::::::::::::::::::::::.:*・゜☆ =磨K☆.。
:::::::::::::::::::.:*・゜☆ :. :*・゜☆.::::::::::::::::::::::::::゜☆.
: =: : * ゜☆.。::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
☆.。 .:* ゜☆. 。.:*::::::::::::::::゜☆.。. :*☆:::::::::::::::::: 。.:*゜☆.。.:*
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ヽ .ィ'. ,! ハ/ 、 `!、 七夕に…
`ー-、_ く´ =@ / ヽ
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上条「…お前なんか、嫌いだ」ふぃあんま「…え」一方「帝督、好きだ」 @ 2013/02/01(金) 15:42:16.71 ID:a/xJs6GAO
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skiZxWbmYWaRpSSTXmL @ 2013/02/01(金) 15:23:42.30 ID:xMAyqMPu0
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ストライクウィッチーズ Parallel World 〜大空駆ける巨人と戦乙女〜 @ 2013/02/01(金) 15:07:04.35 ID:eJdmXATw0
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わグルま!避難所 3世代目 @ 2013/02/01(金) 14:29:00.54 ID:s9xW70Z90
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Viagra online @ 2013/02/01(金) 13:42:57.91 ID:asBiyyKX0
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